インテリヤクザは子守りができない

タタミ

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性接待

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 何やら弁解してくる皆木に呆れた視線を投げて、初瀬はソファから立ち上がった。素行については速攻でモノを盗むタイプではないと分かればいったん合格だ。今晩殺さずに済むならとりあえずそれでいい。皆木に家事能力があるとは思えないが明日以降基本的な家事はやらせよう。

(とはいえ、勝手に逃げ出してくれれば一番楽だ。明日の朝にはいなくなってねえかな)

 次のペットが用意されるまで一人でいられるならそれでいいなどと疲弊した願望を抱きながらキッチンに向かおうとすると、皆木に手を掴まれた。

「待った、フェラはしていい?あ、してもいいっすか?」

 少しドヤ顔で雑な敬語を使ってくる皆木に、初瀬は再び呆れた視線を投げた。

「お前まだふざけてんのか。殴られ足りねえみたいだな」
「ふざけてねーって!お礼っすよ、お礼。オレに飯も風呂もくれたし、こんないいマンションにも住めるみたいだし」

 初瀬はもう一度殴ろうとした手を下ろした。皆木はからかって言っているわけではないようで、顔つきは善行をしてやろうといったものだった。

「正直若頭の家に住めって言われた時は、ヤクぶっこまれてヤリ捨てされると思ったんだけどさ~。ハセさんヤクザにしてはいい人でしょ?エンリョしなくていいっすよ、変態プレイもしたけりゃサービスするし。客って変な性癖多いから慣れっ子」

 笑顔で何を言っているんだコイツは。
 言葉にするのも疲れて、初瀬はただ皆木にため息を吐いた。皆木は初瀬に近づいて腕にすり寄ってきたが、それでも無言で見るだけの初瀬に目を瞬いた。

「……あ~。もしかしてこれからヤク漬けにするつもりだった?」

 勝手な解釈をして気まずそうに頭をかくと、皆木は顎に手を当てて一丁前に思案顔をし始める。

「いや、まぁ、ハセさん若いし?ツラもいいし、殺されないなら別にいいっちゃいいんだけど……。オレ実は薬ほとんどヤッたことないんすよ。合わなかったらゲロとか吐きまくるかも──」

 思案顔でバカな想定を語った皆木の頭を、初瀬は結局再び殴った。

「いってえ!あのさ、ちょっとは加減して!?」
「勝手に俺をシャブ中の変態に仕立てあげんじゃねえよ。組は薬も捌いているが俺はやらない。そもそもお前にフェラされて何が嬉しいんだよ」
「今までは皆よろこんでたし……!お礼の定番だったんだよ、あんたが変なんだって!」

 お礼で男にフェラをされて喜ぶ、というか何かの対価に未成年に性接待を求めるような環境が当たり前だと主張され、初瀬は頭痛がしてきた。もちろん最悪な大人と愚かな子どもという組み合わせは何度も見てきたが、交流を持ったことはなかったのだ。その実態に色々と嫌気がさしてくる。

「お前がいた環境が狂ってんだよ。次俺に性接待しようとしたらマジで殺すぞ」
「セーセッタイって何すか」

 皆木の語彙の少なさに閉口しかけたが、ここで何も教えなければこれからも会話困難な場面が多々あるだろうと思い直す。皆木は馬鹿ではあるが今のところ殺さなければならないほどでもない。つまり皆木が逃げ出さない限り共同生活がある程度続くわけで、初瀬の話す内容をいちいち聞き返されていてはストレスが倍増する。

「……お前が男相手にしてたお礼全般のことだよ。俺にしようとするな、わかったな」
「え~!?それ以外オレなんにもできないんスけど。あ、カップ麺でいいなら作れるか……?」

 首をひねる皆木には家事全般期待できなそうで、本当にお荷物を受け取ってしまったと後悔しながら初瀬は深く息を吐いた。
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