インテリヤクザは子守りができない

タタミ

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ケジメ

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 開いたままだったドアのところに会沢が立っていた。

(なんでいるんだよ)

 手を振られて、初瀬は反射的に口を歪めそうになったがギリギリで真顔を作った。

「アイザワさん!どうやってウチ入ったんですか」
「いや~玄関の鍵開いてたから入っちゃった。トーマくん、いくらオートロックあっても不用心だから気をつけた方がいいよ」
「うそ、マジすか?すいません!全然気づかなかった」
「……玄関開いてても勝手に入ってこないでください。チャイム鳴らすのが先ですよ」

 初瀬が苦言を呈すると、会沢は何も反省していない顔で笑いかけてくる。

「初瀬くん元気そうでよかったよ。トーマくんが泣きながら助けを求めてきた時はもう死んだのかと思ったけど」
「いやホントにオレもハセさん死んじゃったと思って。アイザワさんいてくれてホントよかったです。さすがオジキ」

 ニヤニヤしながら皆木の肩に手を置く会沢に、皆木はニコニコと答えている。ある程度会沢を警戒出来ていた皆木も、今回助けてもらったことでかなり心を許してしまっているようだった。
 懐き始めている様子に初瀬は納得いかない感情を抱えつつ、「会沢さんと仕事の話がある。リビング行ってろ」と皆木に言った。

「はい。ハセさん無理しないでくださいね。アイザワさんにはコーヒーでもいれときます。じゃ、オレはあっちにいるんで」
「ありがとね~。コーヒーは砂糖入れてほしい。いっぱい」

 頭を下げて出て行く皆木に注文をつけて、会沢は初瀬に向き直った。我が物顔でベッドに腰かけてくる。

「トーマくんにほだされてもうやめたのかと思ったよ、掃除」
「あいつは関係ないです。躾に手がかかるから実行する暇がなかっただけで」

 会沢は初瀬の言葉に「ふーん?」と生返事をしながら、懐から取り出したタバコを咥えた。初瀬はそれを見て条件反射でライターを取り出そうと右手を動かしてしまった。途端に肩が痛み眉を寄せると、会沢は「痛いねえ」と幼児に言うかのように眉を下げて自分で火をつける。初瀬をからかいたいがためにタバコを咥えたのだとわかり、初瀬は眉を寄せたままにした。

「しかしヘマする初瀬くん初めて見たなぁ。医者が結構焦ってたからヤバかったみたいだね」
「……会沢さんにご面倒をかけてしまって、申し訳ありません。ありがとうございました」

 いくら気に入らない男だとしても、会沢に命を救われたことは事実だ。初瀬は素直に礼を述べて、見返りに何を求められるのかと会沢を見つめる。難癖つけて初瀬を見殺しにする方が簡単なのに闇医者まで手配して助けたのだ。絶対に何か魂胆がある。
 会沢は煙を吐き、タバコの火を見て呟いた。

「ケジメで焼き入れるか」
「……それで済むなら、どうぞ」

 初瀬は今まで会沢に暴行をされたことがない。気に入られているからだ。しかし他の組員にはケジメとして焼き入れ、指詰め、殴る蹴るその他多数の暴行をしているのを間近で見てきたので、覚悟はできていた。
 抵抗せずに左腕を差し出すと、会沢はタバコを近づけて皮膚に触れる寸前で止めた。

「ウソウソ!冗談だよ。僕初瀬くんイジメたいわけじゃないし。でもちょっとはビビるかと思ったのにつまらん男だね~」

 会沢は肩をすくめて初瀬が持っていたコップにタバコを捨てた。皆木が注いだ水が無駄になる。内心だけで舌打ちをした初瀬がコップをサイドテーブルに置くと、会沢は初瀬に近づいて座り直した。

「さてと。じゃ本題ね。助けたお礼は初瀬くんからのキスでいいよ」
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