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可哀想
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「アイザワさん、オレがいれたコーヒーじゃ気に入らねえのかな」
初瀬との話が済んだ会沢は意外にもあっさりと帰り、清々した気持ちでリビングのソファに座ったところで、皆木が呟いた。聞こえてしまった初瀬はペットボトルの水を飲みながら皆木を見た。
「なんの話だよ」
「ハセさんの助け求めた時も『トーマくんはコーヒーでもいれといて。ドリップで』って言われてメーカー指定されたから買いに行ってまでいれたんすけど、やっぱいいやって飲まなくて。で、今も飲まずに帰っちゃったから」
皆木はわざわざソーサーに乗せたコーヒーカップを持ったまま立っている。確かに会沢が寝室から出た時、皆木はコーヒーを勧めたが会沢は忙しいと断って帰って行った。その時の皆木は絵に描いたようにしゅんとして、会沢を送る際にもカップを持って出ていた。
「お前、からかわれてんだよ」
「え?どういうことっすか」
「会沢さんは健気で可哀想なやつ見るのが好きなんだ。お前がコーヒー飲んでもらえねえだけで飼い主が死んだ犬みたいな顔するせいだろ」
「ええ~してないっすよ、なんすかそれ。じゃあもったいないからハセさん飲んでください。オレ、コーヒー飲めねえし」
「いらねえよ。砂糖死ぬほど入ってんだろそれ」
初瀬が提案を無下にすると、皆木はまた飼い主が死んだ犬のような顔をした。コーヒーが無駄になることと、自分のやったことが飼い主の役に立たなかったという事実がそういう顔をさせるのだろうか。
初瀬は会沢のように可哀想な犬を見て「可哀想だねえ」と言うだけ言って愉しむ趣味はなく、普通に心が痛むタイプなので舌打ちをして手招いた。
「ちょっとは飲んでやる。貸せ」
「マジすか、よかった!ドリップ?ってやつでいれてます。うまいらしいんで」
皆木にカップを渡されて、初瀬は仕方なく口をつけた。コーヒーの香りはいいものの、口に入った瞬間大量の糖分が流れ込んでくる。
(あっま……茶色いガムシロか?これ)
甘いものが嫌いな初瀬は一口で十分だったが、隣に座った皆木がにこやかに見てくるのでもう一口飲んでから、皆木が見ていないところで残りを捨てようとテーブルに置いた。
「起きたら腹減ったな。出前でも取るか」
「待った。ハセさん普通にしてっからスルーしちゃってたけど、まだベッドで寝てた方がいいっすよ」
「別に平気だよ。座ってるだけだろ」
「いやダメだって!死にかけたんすよ?そうだ、1回ガーゼと包帯変えましょう。オレ医者に色々教わったんで任せてください。ほら、部屋戻って!」
皆木は本気のようで怪我をしていない方の腕を引っ張られ、初瀬は渋々立ち上がる。そのまま再び寝室に戻ると、ベッドに腰かけさせられた。
「よし。じゃシャツ脱がせますね」
闇医者が置いていったという医療道具を床に並べて、皆木は初瀬のシャツのボタンに指をかけた。慣れた手つきでボタンが外され、初瀬は皆木の動きに合わせて腕を抜いた。続いて包帯を取るのかと思ったら、皆木は立ったままじっと初瀬の身体を見つめている。刺青でも凝視してるのかと怪訝な目を向けると、皆木の視線が身体から初瀬の顔に移った。
「あ、すんません。改めていい身体だなと思って。記憶してオカズに──イタッ!痛い!」
「バカ言ってねえで早くしろ。テメエ俺で抜いたらウチ追い出すぞ」
「え!?いや、抜いてないっすよ!?一度もない!ホントに!会った時からいい男だと思ってるけどさすがにね!?だから追い出さないで……!」
初瀬との話が済んだ会沢は意外にもあっさりと帰り、清々した気持ちでリビングのソファに座ったところで、皆木が呟いた。聞こえてしまった初瀬はペットボトルの水を飲みながら皆木を見た。
「なんの話だよ」
「ハセさんの助け求めた時も『トーマくんはコーヒーでもいれといて。ドリップで』って言われてメーカー指定されたから買いに行ってまでいれたんすけど、やっぱいいやって飲まなくて。で、今も飲まずに帰っちゃったから」
皆木はわざわざソーサーに乗せたコーヒーカップを持ったまま立っている。確かに会沢が寝室から出た時、皆木はコーヒーを勧めたが会沢は忙しいと断って帰って行った。その時の皆木は絵に描いたようにしゅんとして、会沢を送る際にもカップを持って出ていた。
「お前、からかわれてんだよ」
「え?どういうことっすか」
「会沢さんは健気で可哀想なやつ見るのが好きなんだ。お前がコーヒー飲んでもらえねえだけで飼い主が死んだ犬みたいな顔するせいだろ」
「ええ~してないっすよ、なんすかそれ。じゃあもったいないからハセさん飲んでください。オレ、コーヒー飲めねえし」
「いらねえよ。砂糖死ぬほど入ってんだろそれ」
初瀬が提案を無下にすると、皆木はまた飼い主が死んだ犬のような顔をした。コーヒーが無駄になることと、自分のやったことが飼い主の役に立たなかったという事実がそういう顔をさせるのだろうか。
初瀬は会沢のように可哀想な犬を見て「可哀想だねえ」と言うだけ言って愉しむ趣味はなく、普通に心が痛むタイプなので舌打ちをして手招いた。
「ちょっとは飲んでやる。貸せ」
「マジすか、よかった!ドリップ?ってやつでいれてます。うまいらしいんで」
皆木にカップを渡されて、初瀬は仕方なく口をつけた。コーヒーの香りはいいものの、口に入った瞬間大量の糖分が流れ込んでくる。
(あっま……茶色いガムシロか?これ)
甘いものが嫌いな初瀬は一口で十分だったが、隣に座った皆木がにこやかに見てくるのでもう一口飲んでから、皆木が見ていないところで残りを捨てようとテーブルに置いた。
「起きたら腹減ったな。出前でも取るか」
「待った。ハセさん普通にしてっからスルーしちゃってたけど、まだベッドで寝てた方がいいっすよ」
「別に平気だよ。座ってるだけだろ」
「いやダメだって!死にかけたんすよ?そうだ、1回ガーゼと包帯変えましょう。オレ医者に色々教わったんで任せてください。ほら、部屋戻って!」
皆木は本気のようで怪我をしていない方の腕を引っ張られ、初瀬は渋々立ち上がる。そのまま再び寝室に戻ると、ベッドに腰かけさせられた。
「よし。じゃシャツ脱がせますね」
闇医者が置いていったという医療道具を床に並べて、皆木は初瀬のシャツのボタンに指をかけた。慣れた手つきでボタンが外され、初瀬は皆木の動きに合わせて腕を抜いた。続いて包帯を取るのかと思ったら、皆木は立ったままじっと初瀬の身体を見つめている。刺青でも凝視してるのかと怪訝な目を向けると、皆木の視線が身体から初瀬の顔に移った。
「あ、すんません。改めていい身体だなと思って。記憶してオカズに──イタッ!痛い!」
「バカ言ってねえで早くしろ。テメエ俺で抜いたらウチ追い出すぞ」
「え!?いや、抜いてないっすよ!?一度もない!ホントに!会った時からいい男だと思ってるけどさすがにね!?だから追い出さないで……!」
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