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エピローグ3
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人の気配を感じて、初瀬は目を開けた。普段熟睡することは稀だったが、随分深く寝ていたようで部屋には既に朝日が差し込んでいる。
眩しさに目を瞬くと、光を遮るように覗き込まれた。
「おはよ、ガクさん」
先に起きていた皆木が素肌のまま微笑みかけてきて、昨晩のことが遠い昔のように感じる。自分たちはずっと前から恋人同士だったのではないかと、初瀬はまだ少し眠い頭で思った。
「腹減ったからなんか食いに行きません?近所にモーニングやってるカフェあるみたいで──」
ベッドサイドのパンフレットを見せようとしてきた皆木の腕を引いて、唇を重ねた。皆木は一瞬固まったが、初瀬の唇を柔く食んでくる。
「好きだ」
キスの合間に伝えると、皆木が「うっ……」と呻いてベッドに突っ伏した。照れ隠しかと寝癖のついた髪を撫でたら、何故か悔しげな顔をしてこちらを見てくる。
「ガクさんってホスト向いてそう……。とんでもなく売れそう……エグい……」
これは恋人になった初瀬の甘さに打ちのめされた皆木の戯言だったが、皆木とこれからも生きることが決まった以上何か仕事を探さなければならない初瀬には、就職先の提案に聞こえていた。
「ホストか……」
「え!?何その反応!?やんないよね!?」
「まだ金の心配はないが、いつかはなくなるからな。ホストは経歴適当でも問題ないし、ケツ持ちで内情も知ってる。短期間で稼いで飛べばそれなりに──」
「ぜっったいヤダ!断固反対!ガクさん絶対モテるからヤダヤダヤダ!!」
「ワガママ言うなよ。別に客とどうこうなるわけじゃねえだろ」
思った以上に強く拒絶され、初瀬は面食らいつつも宥めようと手を伸ばした。しかし頬に触れようと伸ばした手は皆木に掴まれ、文句と共にぶんぶんと振り回される。
「オレだけのガクさんがいい!!ウソでも客に優しくすんの無理!!金ならオレが稼ぐし!またウリでもなんでもして──」
「お前身体売るなんて絶対許さねえからな。買った客全員目の前でぶっ殺すぞ」
あり得ない発言に初瀬が反射的に凄むと、皆木は騒いで怒られたゴールデンレトリバーのように分かりやすくしょげてホールドアップした。
「ガクさんが言うとシャレになんねーからやめて……」
「洒落じゃねえよ」
「わかった、金輪際ウリしないから!でも代わりにガクさんも水商売しないで絶対!約束」
ベッドに脱力した皆木は、腕を伸ばして初瀬の手に触れる。確かめるような触れ方に、初瀬は握り返すことで応えた。
「そんなに嫌なら他を考える。でも俺はさておき、冬馬はもっと自分のこと大事にしろ。危ないことするな。約束だ」
「ガクさんこそ、自分のこと大事にしてください。……オレにはガクさんだけだから」
寝返って近づいてきた皆木を抱き締める。優しい香りがして、胸の空虚に暖かさが満ちていく。飯に行くよりもう少しこうしていたいと思って抱き締め直すと、大人しくしていた皆木が動いて下腹部を撫でた。形をなぞるようにされ、初瀬は無視できずに目を開いた。
「おい」
「……だめ?あ、これは性接待じゃないっすよ」
過去を揶揄するように笑った皆木の口を、初瀬は黙って塞いだ。笑いはすぐに吐息に変わり、2人分の体温が混ざり合っていく。
「ガクさん……大好き。世界で1番」
「知ってる。お互い様だろ」
この先何があっても手離さない。
唇に、指先に、想いを乗せて伝えていく。これからの人生を愛する人と歩める幸福に浸りながら、ふたりはいつまでも愛を囁き合っていった。
おわり
眩しさに目を瞬くと、光を遮るように覗き込まれた。
「おはよ、ガクさん」
先に起きていた皆木が素肌のまま微笑みかけてきて、昨晩のことが遠い昔のように感じる。自分たちはずっと前から恋人同士だったのではないかと、初瀬はまだ少し眠い頭で思った。
「腹減ったからなんか食いに行きません?近所にモーニングやってるカフェあるみたいで──」
ベッドサイドのパンフレットを見せようとしてきた皆木の腕を引いて、唇を重ねた。皆木は一瞬固まったが、初瀬の唇を柔く食んでくる。
「好きだ」
キスの合間に伝えると、皆木が「うっ……」と呻いてベッドに突っ伏した。照れ隠しかと寝癖のついた髪を撫でたら、何故か悔しげな顔をしてこちらを見てくる。
「ガクさんってホスト向いてそう……。とんでもなく売れそう……エグい……」
これは恋人になった初瀬の甘さに打ちのめされた皆木の戯言だったが、皆木とこれからも生きることが決まった以上何か仕事を探さなければならない初瀬には、就職先の提案に聞こえていた。
「ホストか……」
「え!?何その反応!?やんないよね!?」
「まだ金の心配はないが、いつかはなくなるからな。ホストは経歴適当でも問題ないし、ケツ持ちで内情も知ってる。短期間で稼いで飛べばそれなりに──」
「ぜっったいヤダ!断固反対!ガクさん絶対モテるからヤダヤダヤダ!!」
「ワガママ言うなよ。別に客とどうこうなるわけじゃねえだろ」
思った以上に強く拒絶され、初瀬は面食らいつつも宥めようと手を伸ばした。しかし頬に触れようと伸ばした手は皆木に掴まれ、文句と共にぶんぶんと振り回される。
「オレだけのガクさんがいい!!ウソでも客に優しくすんの無理!!金ならオレが稼ぐし!またウリでもなんでもして──」
「お前身体売るなんて絶対許さねえからな。買った客全員目の前でぶっ殺すぞ」
あり得ない発言に初瀬が反射的に凄むと、皆木は騒いで怒られたゴールデンレトリバーのように分かりやすくしょげてホールドアップした。
「ガクさんが言うとシャレになんねーからやめて……」
「洒落じゃねえよ」
「わかった、金輪際ウリしないから!でも代わりにガクさんも水商売しないで絶対!約束」
ベッドに脱力した皆木は、腕を伸ばして初瀬の手に触れる。確かめるような触れ方に、初瀬は握り返すことで応えた。
「そんなに嫌なら他を考える。でも俺はさておき、冬馬はもっと自分のこと大事にしろ。危ないことするな。約束だ」
「ガクさんこそ、自分のこと大事にしてください。……オレにはガクさんだけだから」
寝返って近づいてきた皆木を抱き締める。優しい香りがして、胸の空虚に暖かさが満ちていく。飯に行くよりもう少しこうしていたいと思って抱き締め直すと、大人しくしていた皆木が動いて下腹部を撫でた。形をなぞるようにされ、初瀬は無視できずに目を開いた。
「おい」
「……だめ?あ、これは性接待じゃないっすよ」
過去を揶揄するように笑った皆木の口を、初瀬は黙って塞いだ。笑いはすぐに吐息に変わり、2人分の体温が混ざり合っていく。
「ガクさん……大好き。世界で1番」
「知ってる。お互い様だろ」
この先何があっても手離さない。
唇に、指先に、想いを乗せて伝えていく。これからの人生を愛する人と歩める幸福に浸りながら、ふたりはいつまでも愛を囁き合っていった。
おわり
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感想ありがとうございます!めっちゃ嬉しいです😭最後まで読んでいただけてありがたいです🥹🫶
完結おめでとうございます…!!!
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ひゃ~コメントいただけてとても嬉しいです😭♡最後までお読みいただきありがとうございました‼️
ヤクザものが好きで、こちらの作品を見つけて更新を楽しみにさせて頂いております。
お2人のイチャイチャが楽しみです!
宜しくお願い致します。
応援しております!!!
コメントありがとうございます!読んでいただいてありがたいです…!🥹励みになりまくります🥹
完結までお付き合いいただけたら幸いです!🙏🎉