【完結】花が結んだあやかしとの縁

mazecco

文字の大きさ
17 / 71
休日

15話 仲直り

しおりを挟む
食パンをたべたあと、私は顔も洗わずに動画を見ながらソシャゲにいそしんだ。人(?)がいるのにこんなことをしてるなんて罪悪感がすごい。綾目はこんな私と5年間過ごしてきたから大丈夫だろうけど、薄雪はさすがに思うところがあるんじゃ…。

「私のことは気にしなくていいですよ」

「だから心を読まないでくださいよ…」

「アチラ側でも私はこうして、何もせずただじっと時が流れるのを眺めているだけでしたから。私にとってもいつもと変わらぬ過ごし方です」

「…退屈じゃなかったんですか?」

「退屈でしたよ。毎日変わらない場所でさして変わらない風景を眺める日々は」

「薄雪ってアレですか?地縛霊的な」

「地縛霊?」

「ひとつの場所から動きたくても動けない存在的な、アレ?」

「花雫!薄雪さまになんてこと言うんだ!薄雪さまは地縛霊なんかじゃない!!高貴なる大木古桜の…」

「綾目」

「薄雪さま!!さすがに黙ってはいられません!!花雫はいま薄雪さまを地縛霊なんかと…」

「あまり変わらないでしょう。花雫はアチラ側を知らないのだからそう怒らないように」

「ふぐぐ…」

「あ、薄雪…ごめんなさい。私もしかしてとても失礼なことを…」

「かまわないですよ。実際あなたの言う通り私はひとつの場所から動けなかったので」

「それもこれも風のあやかしが薄雪さまを…」

「こら綾目。彼のことを悪く言うんじゃないよ」

きっと綾目は薄雪のことがだいすきだから怒っているんだろう。なのに薄雪が私や風のあやかし?ばかり庇うから…綾目は頬を膨らませてそっぽを向いてしまった。それでも怒りはおさまらなかったのか、ふすまを開けてもぞもぞと布団と布団の間に入り込む。私は自分が失言してしまったことに落ち込み、バツが悪くて薄雪の顔を見られずにいた。

「花雫」

「……」

「本当に気にしないでください。綾目は怒っているけれど、私は特段気にはしていないんです」

「それでも…ごめんなさい」

「ふむ。どうやら私は花雫をひどく落ち込ませてしまったようだ。ヒトは難しい」

「いや、ちがう。わたしが薄雪を…」

「どうしたら元気になるかな。そうだ、もう一度トーストを…」

相変わらず人の話を聞かないあやかしだ。薄雪が私の言葉を無視してまたトーストを焼こうとしていたので思わず笑ってしまった。どうも彼にはペースを狂わされる。落ち込ませた人に逆に気を遣われちゃうなんてな。私はカチコチのパンをトースターに突っ込んでいた薄雪の腕に手を乗せ、食パンを冷凍庫に戻した。

「薄雪、私もうおなかいっぱいだから、食パンはいいです」

「そうですか。ではどうしたらいいですか?」

「じゃあもう一度謝らせてください。ごめんなさい、薄雪」

「…はい」

「これで仲直りしてください」

「仲たがいしたつもりはなかったんですがね」

私は襖に近づき、布団の間に潜り込んでいる綾目にも声をかけた。

「綾目、ごめんね。仲直りしよう?」

「……」

「もうあんなこと言わないから。ごめん」

「…僕も、ごめん。怒りすぎた」

「じゃあ、仲直りしてくれる?」

「……」

綾目はもぞもぞと布団の間から手だけを出した。私がその手を握ると、綾目も握り返してくれる。私はクスっと笑いその手を掴んで布団から綾目を引っ張り出した。顔を出した綾目は気まずそうにチラッと私の目を見る。私が口角を上げて見せると、彼もぎこちなく笑った。

あやかしであれど、意志疎通がとれるモノと一緒に過ごすのはやっぱり難しいし苦手かもしれない。気を遣うし、そんなつもりでなくても怒らせてしまうこともある。

「花雫!おなかすいたー!!ごはん食べてもいい?!」

「私も何かいただこうかな。確か昨晩の日本酒が残っていたはず…」

「え?!朝からお酒飲むんですか?!」

「朝って…もうお昼前だよ花雫…」

「そうですよ花雫」

「いえ昼前でも…。ま、いっか。あやかしだし」

怒らせたはずの同居人は先ほどのことを忘れたようにケロっとしている。これ以上気を遣わせないようにしてくれてるのかな…。私のこと、いやになってないかな…。

「いいえ花雫」

ひとりでグチグチ考えていると、薄雪がそっと私の手を握る。

「あやかしは本当の恨み以外はすぐに忘れるものです。それに、あやかしは少しすれ違っただけで離れたりしません。もっと深いところで繋がっているのです。花が結んだ、この縁で」
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜

二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。 そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。 その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。 どうも美華には不思議な力があるようで…?

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

『後宮薬師は名を持たない』

由香
キャラ文芸
後宮で怪異を診る薬師・玉玲は、母が禁薬により処刑された過去を持つ。 帝と皇子に迫る“鬼”の気配、母の遺した禁薬、鬼神の青年・玄曜との出会い。 救いと犠牲の狭間で、玉玲は母が選ばなかった選択を重ねていく。 後宮が燃え、名を失ってもなお―― 彼女は薬師として、人として、生きる道を選ぶ。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

処理中です...