6 / 92
#5
しおりを挟む
俺は塩を売った代金として手に入れた聖銀貨と引き換えに、10億円という大金を手に入れた。
これで金の心配は必要ないと安心しかけたが、実はまだ現地通貨は僅か99Gしか手元に無い事に俺は気付く。
そこで俺は当面の活動資金を手に入れる為、Mitsurinで塩を今度は20kg注文すると、それを持って再びアルの商会へと向かうことにした。
塩を持って来れば前回と同じ金額で買い取ると言っていたので、その言葉に有り難く乗っからせて貰う事にしたのだ。
20kgの塩の入った段ボール箱を担ぎ、俺は街中を進む。
この重さでも然程苦にならないあたり、〈肉体超強化〉の有り難さを実感する。
「アル! すまないがこの塩も買い取ってくれ!」
幸いにも直ぐにアルと再会できた俺は、そう願い出る。
「……また、えらく早いね。勿論僕の方は歓迎さ。前と同じ金額で買い取らせてもらうよ」
塩20kgを以前のレートのまま、無事20万Gで買い取ってもらえ、こうして俺は当面の活動資金を手に入れた。
◆
その日は、適当な宿を取って夜を明かし、次の日を迎えた。
ネット銀行の口座残高についてはもはや不安はない。
10億円などむしろ使い切る方が大変だし、多少減ってもまた金貨なり聖銀ミスリル貨なりを買取して貰えばいいだけだ。
問題は現地通貨の方だ。
10万Gはそこそこの金額ではあるが、宿暮らしを一月も続ければすぐ飛んでいきそうな額だ。
仕方なしに、今日も俺はアルの元へ塩を売りにいく。
「おや、今日もかい?」
「不味かったか?」
「いやいや、コウヤから売ってもらった塩はとても質がいいからね。すぐに売り捌けるから、こちらとしては大歓迎だよ」
大仰な素振りで、そう示すアル。
「そうか。それは俺も助かる」
「……しかしそれ程の量があるのなら、どうして君一人で運んでくるんだい? 人を雇った方がいいだろうに」
「人を雇うか……。ただ、信用できるかが問題だな……」
そもそもこの世界に来てまだ2日目だ。
どうやって雇えばいいか、見当すらつかない。
「ふむ。それだったら奴隷を買うのはどうだい? 彼らなら隷属の首輪で主人に反抗出来ないから、裏切られる心配はないよ」
「なるほど……」
異世界モノの小説で良くあるパターンだな。
……だが、案外悪くはない提案かもしれない。
「もし良かったら、僕が店を紹介するけど?」
「ああ、頼む」
そうして俺はアルの勧める奴隷を扱っている商会へと向かうことになった。
「おお、アルメヒ様からのご紹介ですか。それはそれは……」
アルから預かった紹介状を見せると、商人の表情が一気に和らぐ。
「それで御予算はいかほどで?」
「そうだな。予算は30万G以内で頼む」
「その額ですと、余り質の良い奴隷は御用意出来ませんが……」
「構わない。とりあえず予算内で買える奴隷を見せてくれ」
「畏まりました。少々お待ちを」
暫く待った後連れて来られたのは、如何にも柄の悪そうな中年のおっさんと、どこか虚ろな目をした20代くらい青年。
そして、見た目まだ10代前半の全身ガリガリの少女の3人だ。
特に最後の少女は、全身にいくつもの傷が有り正直見ていて痛ましい。歩くのさえ辛そうだ。
予算30万Gだとこんな感じなのか……。
少々奴隷の値段を安く見積もり過ぎていたかもしれない。
「いかがでしょう? 気になる奴隷はおりましたか?」
先頭のおっさんはまず無しだ。なんかこっちを睨んでいるし、とてもじゃないが良好な関係が築けそうにない。
2番目の青年は論外だ。目付きがどう見てもヤバい。コイツなんかの薬でもやってるんじゃね? としか思えない。
となると残る選択肢は最後の少女になる訳だが……。
俺が今必要としているのは、仕入れた商品の運搬など多少なりとも力仕事が出来る人材だ。
だが、見る限りこの少女では求める最低限の仕事すらこなせそうにない。
そんな風に観察していると、ふと少女と目が合う。
「助けて下さい」俺にはそんな声が聞こえた気がした。
「あー、じゃあこの子で……」
気が付けば、俺は少女を指差してそう呟いていた。
「おお、フィナですか。こちらは27万Gとなります。……ですがアルメヒ様のご紹介ですし、ここは特別に2万G値引きして25万Gとさせて頂きます」
まだ現地通貨が少ない俺にとっては嬉しい値引きだ。
奴隷商人の言葉がホントなら、アルもそれなりに名の知れた商人なのかもな。
内心でアルにお礼を述べておく。
こうして俺は奴隷の少女フィナを手に入れたのだった。
これで金の心配は必要ないと安心しかけたが、実はまだ現地通貨は僅か99Gしか手元に無い事に俺は気付く。
そこで俺は当面の活動資金を手に入れる為、Mitsurinで塩を今度は20kg注文すると、それを持って再びアルの商会へと向かうことにした。
塩を持って来れば前回と同じ金額で買い取ると言っていたので、その言葉に有り難く乗っからせて貰う事にしたのだ。
20kgの塩の入った段ボール箱を担ぎ、俺は街中を進む。
この重さでも然程苦にならないあたり、〈肉体超強化〉の有り難さを実感する。
「アル! すまないがこの塩も買い取ってくれ!」
幸いにも直ぐにアルと再会できた俺は、そう願い出る。
「……また、えらく早いね。勿論僕の方は歓迎さ。前と同じ金額で買い取らせてもらうよ」
塩20kgを以前のレートのまま、無事20万Gで買い取ってもらえ、こうして俺は当面の活動資金を手に入れた。
◆
その日は、適当な宿を取って夜を明かし、次の日を迎えた。
ネット銀行の口座残高についてはもはや不安はない。
10億円などむしろ使い切る方が大変だし、多少減ってもまた金貨なり聖銀ミスリル貨なりを買取して貰えばいいだけだ。
問題は現地通貨の方だ。
10万Gはそこそこの金額ではあるが、宿暮らしを一月も続ければすぐ飛んでいきそうな額だ。
仕方なしに、今日も俺はアルの元へ塩を売りにいく。
「おや、今日もかい?」
「不味かったか?」
「いやいや、コウヤから売ってもらった塩はとても質がいいからね。すぐに売り捌けるから、こちらとしては大歓迎だよ」
大仰な素振りで、そう示すアル。
「そうか。それは俺も助かる」
「……しかしそれ程の量があるのなら、どうして君一人で運んでくるんだい? 人を雇った方がいいだろうに」
「人を雇うか……。ただ、信用できるかが問題だな……」
そもそもこの世界に来てまだ2日目だ。
どうやって雇えばいいか、見当すらつかない。
「ふむ。それだったら奴隷を買うのはどうだい? 彼らなら隷属の首輪で主人に反抗出来ないから、裏切られる心配はないよ」
「なるほど……」
異世界モノの小説で良くあるパターンだな。
……だが、案外悪くはない提案かもしれない。
「もし良かったら、僕が店を紹介するけど?」
「ああ、頼む」
そうして俺はアルの勧める奴隷を扱っている商会へと向かうことになった。
「おお、アルメヒ様からのご紹介ですか。それはそれは……」
アルから預かった紹介状を見せると、商人の表情が一気に和らぐ。
「それで御予算はいかほどで?」
「そうだな。予算は30万G以内で頼む」
「その額ですと、余り質の良い奴隷は御用意出来ませんが……」
「構わない。とりあえず予算内で買える奴隷を見せてくれ」
「畏まりました。少々お待ちを」
暫く待った後連れて来られたのは、如何にも柄の悪そうな中年のおっさんと、どこか虚ろな目をした20代くらい青年。
そして、見た目まだ10代前半の全身ガリガリの少女の3人だ。
特に最後の少女は、全身にいくつもの傷が有り正直見ていて痛ましい。歩くのさえ辛そうだ。
予算30万Gだとこんな感じなのか……。
少々奴隷の値段を安く見積もり過ぎていたかもしれない。
「いかがでしょう? 気になる奴隷はおりましたか?」
先頭のおっさんはまず無しだ。なんかこっちを睨んでいるし、とてもじゃないが良好な関係が築けそうにない。
2番目の青年は論外だ。目付きがどう見てもヤバい。コイツなんかの薬でもやってるんじゃね? としか思えない。
となると残る選択肢は最後の少女になる訳だが……。
俺が今必要としているのは、仕入れた商品の運搬など多少なりとも力仕事が出来る人材だ。
だが、見る限りこの少女では求める最低限の仕事すらこなせそうにない。
そんな風に観察していると、ふと少女と目が合う。
「助けて下さい」俺にはそんな声が聞こえた気がした。
「あー、じゃあこの子で……」
気が付けば、俺は少女を指差してそう呟いていた。
「おお、フィナですか。こちらは27万Gとなります。……ですがアルメヒ様のご紹介ですし、ここは特別に2万G値引きして25万Gとさせて頂きます」
まだ現地通貨が少ない俺にとっては嬉しい値引きだ。
奴隷商人の言葉がホントなら、アルもそれなりに名の知れた商人なのかもな。
内心でアルにお礼を述べておく。
こうして俺は奴隷の少女フィナを手に入れたのだった。
368
あなたにおすすめの小説
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる