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マディー・ガリヴァの憂鬱⑱
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「叔父上、あのお姫様はだあれ?」
マディーを見上げたクリストファーが指差した先を、マディーも見る。
「ああ。マルファル侯爵家のローズ様だ」
「ローズ様かぁ」
マディーはまだ自分の腰のあたりまでしかないクリストファーを見る。
マットに良く似た可愛らしい顔が、赤らみほころんでいる。
マディーは思う。
クリストファーの初恋かも知れない、と。
同時に、叶うことのないその恋を、切なく思う。
クリストファーはマディーに連れられ、貴族が集う場に来ているが、本来ならば、貴族とは言えない立場だ。
平民と高位貴族。その恋が成就することはあり得ない。
だが、マディーは甥っ子の初めての恋をこの場で壊すようなことは出来なかった。
まだ6才。
きっと聡いクリストファーは、遠くない未来に自分の恋が成就しないと知ってしまうだろう。
ならばそのときまでは、クリストファーの恋を応援してあげたいと思うのも、致し方ないことなのかもしれない。
「ご挨拶に行こうか?」
マディーの提案に、クリストファーの顔が満面の笑みになる。
マットとは違う純粋な瞳がキラキラと輝いている。
「うん!」
マディーはその小さな手を引きながら、いつまでもその純粋さを忘れないでほしいと思う。
*
マディーは、その噂を耳にしたとき、信じられなかった。
あのクリストファーが?
あの純粋なクリストファーが?
マットとは違うはずのクリストファーが?
一体、クリストファーがどんな手を使ったのか、マディーは考えないことにした。
きっと純粋に愛の力で、クリストファーはマルファル侯爵家に婿入りが決まったのだと思うことにした。
それでも、マディーの口からため息が漏れることを止めようもなかった。
マディーを見上げたクリストファーが指差した先を、マディーも見る。
「ああ。マルファル侯爵家のローズ様だ」
「ローズ様かぁ」
マディーはまだ自分の腰のあたりまでしかないクリストファーを見る。
マットに良く似た可愛らしい顔が、赤らみほころんでいる。
マディーは思う。
クリストファーの初恋かも知れない、と。
同時に、叶うことのないその恋を、切なく思う。
クリストファーはマディーに連れられ、貴族が集う場に来ているが、本来ならば、貴族とは言えない立場だ。
平民と高位貴族。その恋が成就することはあり得ない。
だが、マディーは甥っ子の初めての恋をこの場で壊すようなことは出来なかった。
まだ6才。
きっと聡いクリストファーは、遠くない未来に自分の恋が成就しないと知ってしまうだろう。
ならばそのときまでは、クリストファーの恋を応援してあげたいと思うのも、致し方ないことなのかもしれない。
「ご挨拶に行こうか?」
マディーの提案に、クリストファーの顔が満面の笑みになる。
マットとは違う純粋な瞳がキラキラと輝いている。
「うん!」
マディーはその小さな手を引きながら、いつまでもその純粋さを忘れないでほしいと思う。
*
マディーは、その噂を耳にしたとき、信じられなかった。
あのクリストファーが?
あの純粋なクリストファーが?
マットとは違うはずのクリストファーが?
一体、クリストファーがどんな手を使ったのか、マディーは考えないことにした。
きっと純粋に愛の力で、クリストファーはマルファル侯爵家に婿入りが決まったのだと思うことにした。
それでも、マディーの口からため息が漏れることを止めようもなかった。
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