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レナとサイールの検討会
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「えーっと、私の研究室でも、いいかな?」
魔法局にやって来たレナが、サイールの名前を出すとすんなりと話が通った。
そして現れたサイールが、レナに尋ねる。
レナは困ったように首を横にふった。
「婚約者でもない男性と二人きりにはなりません」
やはり、とサイールはうなずいた。
「それでは、私が信頼する先生のところに行こう」
サイールはそう言うと、魔法局の薬草園に向かって歩き出す。
「先生は女性だからね。レナ嬢が咎められるようなことはないよ」
戸惑っていたレナも歩き出した。
二人がたどり着いたのは、薬草園の隅の小屋だ。
トントン、とサイールがドアを叩くと、どうぞ、とちょっとしわがれた声が聞こえた。
「ジャイ先生。この間お話ししたレナ嬢をつれてきましたよ」
ドアが開き、中にいたのは、高齢の女性だった。
「レナ・フルサールと申します」
レナが礼をとると、ジャイ先生と呼ばれた女性がにこりと笑う。
「いらっしゃい。私はジャイリー・バムよ。薬草園の管理をしているの。サイール坊っちゃんは先生と言うけど、単に薬草の世話をしているおばさんよ? こちらにはハーブティーしかないけれど、ゆっくりしていきなさい」
そう言って、ジャイリーは奥にあるコンロからガラスの入れ物にお湯を注いだ。お湯のなかでハーブが舞っていた。
「ジャイ先生、そろそろ坊っちゃんはやめてください」
サイールが苦笑すると、レナがクスリと笑った。レナにあった緊張が緩んだ。
「いつまでたっても、私からすれば坊っちゃんよ。さあ、召し上がれ」
レナの前に、ハーブティーとハーブが入ったクッキーが置かれた。
「いただきます」
レナがお茶のカップを取る。爽やかな香りがレナの緊張をほぐすようだった。
レナがお茶を味わう姿をじっと見ていたサイールは、レナが一息つくのを待っていた口を開いた。
「それで、レナ嬢、術式を見せてくれるかな?」
レナはうなずくと、術式を書いた紙をサイールに渡した。
サイールは、うなずきながら術式に目を通していく。
「確かにこれで10分ほどに延びそうだね。それくらいの時間があれば、認定されるかもしれないね」
明るい声で告げたサイールだったが、言われた方のレナは不安そうな顔をしていた。
「どうかしたかな、レナ嬢」
サイールの問いかけに、レナが首を横に降る。
「これ以上長い時間記録することが出来ないのかな、と思っていて」
なるほど、とサイールはうなずいた。もっと長く。それはサイールにも理解できる悩みだった。
「えーっと、例えばなんだけど、この術式を、試しに逆にしてみたら?」
「逆に、ですか?」
レナの疑問に、サイールがうなずく。
「術式同士が干渉して、時間が短くなっているって可能性はあるからね。これは短時間の魔法の術式だろう? これが作用していると考えると、この順番を変えてみるっていうのも手かなと」
「そんなことがあるんですか?」
「最近、発見したんだ。逆にするだけで作用する時間が延びる魔法もあるよ」
サイールの言葉に、レナが目を見開く。
「そんな大事なこと、一介の学生に教えてもいいことなんですか?」
そういう類いの発見は、魔法局で厳密に管理されたりすることもある。
だからこその疑問だった。
だが、サイールは肩をすくめる。
「まだ正式に検証もしていないことだからね」
「ありがとうございます」
一介の学生のために教えてくれるヒントとしては大きいだろう。
「いや。私も、この術式に興味があるからね。……これからも相談に来てくれれば、相談に乗るよ」
サイールがニコりと笑う。
「ありがとうございます!」
本当に素晴らしい人は、自分の能力をひけらかさないだけではなく、自分の知識も惜しみ無く教えようとしてくれるのだと、レナは感じた。
真剣な顔で自分を見るレナに、サイールはドキリとする。
だが、レナには婚約者がいるのを思い出して、その淡い気持ちを振り払った。
サイールの様子を見ていたジャイリーが、そっと微笑んだ。
魔法局にやって来たレナが、サイールの名前を出すとすんなりと話が通った。
そして現れたサイールが、レナに尋ねる。
レナは困ったように首を横にふった。
「婚約者でもない男性と二人きりにはなりません」
やはり、とサイールはうなずいた。
「それでは、私が信頼する先生のところに行こう」
サイールはそう言うと、魔法局の薬草園に向かって歩き出す。
「先生は女性だからね。レナ嬢が咎められるようなことはないよ」
戸惑っていたレナも歩き出した。
二人がたどり着いたのは、薬草園の隅の小屋だ。
トントン、とサイールがドアを叩くと、どうぞ、とちょっとしわがれた声が聞こえた。
「ジャイ先生。この間お話ししたレナ嬢をつれてきましたよ」
ドアが開き、中にいたのは、高齢の女性だった。
「レナ・フルサールと申します」
レナが礼をとると、ジャイ先生と呼ばれた女性がにこりと笑う。
「いらっしゃい。私はジャイリー・バムよ。薬草園の管理をしているの。サイール坊っちゃんは先生と言うけど、単に薬草の世話をしているおばさんよ? こちらにはハーブティーしかないけれど、ゆっくりしていきなさい」
そう言って、ジャイリーは奥にあるコンロからガラスの入れ物にお湯を注いだ。お湯のなかでハーブが舞っていた。
「ジャイ先生、そろそろ坊っちゃんはやめてください」
サイールが苦笑すると、レナがクスリと笑った。レナにあった緊張が緩んだ。
「いつまでたっても、私からすれば坊っちゃんよ。さあ、召し上がれ」
レナの前に、ハーブティーとハーブが入ったクッキーが置かれた。
「いただきます」
レナがお茶のカップを取る。爽やかな香りがレナの緊張をほぐすようだった。
レナがお茶を味わう姿をじっと見ていたサイールは、レナが一息つくのを待っていた口を開いた。
「それで、レナ嬢、術式を見せてくれるかな?」
レナはうなずくと、術式を書いた紙をサイールに渡した。
サイールは、うなずきながら術式に目を通していく。
「確かにこれで10分ほどに延びそうだね。それくらいの時間があれば、認定されるかもしれないね」
明るい声で告げたサイールだったが、言われた方のレナは不安そうな顔をしていた。
「どうかしたかな、レナ嬢」
サイールの問いかけに、レナが首を横に降る。
「これ以上長い時間記録することが出来ないのかな、と思っていて」
なるほど、とサイールはうなずいた。もっと長く。それはサイールにも理解できる悩みだった。
「えーっと、例えばなんだけど、この術式を、試しに逆にしてみたら?」
「逆に、ですか?」
レナの疑問に、サイールがうなずく。
「術式同士が干渉して、時間が短くなっているって可能性はあるからね。これは短時間の魔法の術式だろう? これが作用していると考えると、この順番を変えてみるっていうのも手かなと」
「そんなことがあるんですか?」
「最近、発見したんだ。逆にするだけで作用する時間が延びる魔法もあるよ」
サイールの言葉に、レナが目を見開く。
「そんな大事なこと、一介の学生に教えてもいいことなんですか?」
そういう類いの発見は、魔法局で厳密に管理されたりすることもある。
だからこその疑問だった。
だが、サイールは肩をすくめる。
「まだ正式に検証もしていないことだからね」
「ありがとうございます」
一介の学生のために教えてくれるヒントとしては大きいだろう。
「いや。私も、この術式に興味があるからね。……これからも相談に来てくれれば、相談に乗るよ」
サイールがニコりと笑う。
「ありがとうございます!」
本当に素晴らしい人は、自分の能力をひけらかさないだけではなく、自分の知識も惜しみ無く教えようとしてくれるのだと、レナは感じた。
真剣な顔で自分を見るレナに、サイールはドキリとする。
だが、レナには婚約者がいるのを思い出して、その淡い気持ちを振り払った。
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