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番外編①
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「父上、ゼビア王立学院の卒業式へ、私を行かせてもらえないでしょうか?」
執務室で向かい合う私の言葉に、父上が、肩をすくめる。
「レナルド、クリスティアーヌ嬢も、その卒業式には出るのだろう?」
口にしたことはないが、私の気持ちがどこにあるのか、父上にはお見通しらしい。
「はい。ですが、個人的な感情だけで行きたいと言っているわけではありません」
「ほお。では、どういう意味で、行きたいと言っているんだ?」
もしかしなくても、父上にはすでにお見通しのことで、私の考えは幼いのかもしれない。だが、私はクリスティアーヌ嬢の友人として、わずかだとしても力になりたいのだ。
「我が国を守るためです。カッセル王国が、ゼビア王国に仕掛けてきているらしいことは、父上もご存じのはず。このままでは、ゼビア王国がカッセル王国に攻略されてしまうやもしれません。隣国であるゼビア王国を攻略すれば、カッセル王国はそう遠くないうちに、我が国へ攻撃を仕掛けてくるでしょう。ですが、戦いになれば、我が国の国民たちが疲弊することになります。ゼビア王国の平和を維持することで、我が国の平和も維持することにつながります。王立学院の卒業式は、すべての貴族が集まると聞いています。ゼビア王国の貴族たちが、カッセル王国とのことをどう考えているのか、知るいい機会だと思います。ですから、将来のゼビア王国を予測するために、ぜひ一度王立学院の卒業式へ参加したいのです。いずれ、この国の騎士団を率いる立場として」
今の騎士団は、父上の弟、つまり叔父上が率いている。
私も幼いころから、将来は騎士団を率いていくのだと言われてきたし、自分でもそうなるのだと思って、研鑽をつんできていた。
だから、あの噂を耳にした時から、一度ゼビア王国に行っておきたいと思っていたのだ。ゼビア王国の貴族たちが、現状をどう思っているのか、知りたかった。
それに、要所である城を譲ったという、信じられない話も耳にした。それが本当なのか確かめたくもあった。
クリスティアーヌ嬢が望む未来があるのかどうか、知りたかった。
私の言葉に、父上が頷く。
「そうだな。それはいい心がけだ」
ホッと私が小さく息を吐くと、父上が頬杖をついた。
「何なら、いっそクリスティアーヌ嬢も奪ってくるがいい」
楽しそうに笑う父上に、私は首を横に振る。
「そのことは、関係ないと」
「だが、ファビアン殿は、つまらぬ令嬢に骨抜きになっているのだろう? ファビアン殿が見向きもしないクリスティアーヌ嬢を奪ったところで、ゼビア王国との軋轢にはならぬだろう?」
あの噂は、当然父上も知っているか。
聞いた時、本気で腹が立った。……もちろん、そんなことを表には出しはしなかったけれど。
「クリスティアーヌ嬢は、ゼビア王国のために身を粉にして働くつもりでいるのです。その気持ちを、ないがしろにしたくはありません」
「……レナルドは、案外意気地がないな」
大袈裟にため息をつく父上に、私もため息をつき返す。
「意気地のあるなしではありません。常に理性的であれ、と言うのは、父上ではありませんか」
「皇太子にはワルテ殿を据えれば良い。ワルテ殿は、物事をよく見ている。私としても、ファビアン殿が次期国王になるよりも、ワルテ殿が次期国王であるほうが望ましい。意味は、分かるか?」
父上の言葉に、私は頷いた。
それは、今考えられる一番最良の策だ。
あの皇太子では、ゼビア王国は遅かれ早かれ滅ぶしかない。
口を開けば失言だらけ。無知であることを恥ずかしくも思ってもいない。どうしてそんな尊大にいられるのか不思議でしかなかった。
「血を流さぬ方法を考えます」
私の答えに、父上が頷いた。
「その方が良かろう。その役目を持って、レナルドを私の名代として行かせよう」
私は目を見開いた。まさか、そんな大役を任されるとは思ってもみなかった。
でも、すぐに覚悟は決まった。絶対に、ファビアン殿下を廃嫡させてみせる。
「ただ」
私が続けた言葉に、父上が首をかしげる。
「ただ?」
「それと、クリスティアーヌ嬢を奪うことは、別問題です。クリスティアーヌ嬢の気持ちがないのならば、我が国に連れ帰ってくることはあり得ません」
きっぱりと告げると、父上が大声で笑いだした。
「レナルドは、やっぱり意気地がないな」
「私の意気地など、どうでもいいのです。クリスティアーヌ嬢にとっての幸せを、願っているのです」
例え、私が失恋したとしても。
完
執務室で向かい合う私の言葉に、父上が、肩をすくめる。
「レナルド、クリスティアーヌ嬢も、その卒業式には出るのだろう?」
口にしたことはないが、私の気持ちがどこにあるのか、父上にはお見通しらしい。
「はい。ですが、個人的な感情だけで行きたいと言っているわけではありません」
「ほお。では、どういう意味で、行きたいと言っているんだ?」
もしかしなくても、父上にはすでにお見通しのことで、私の考えは幼いのかもしれない。だが、私はクリスティアーヌ嬢の友人として、わずかだとしても力になりたいのだ。
「我が国を守るためです。カッセル王国が、ゼビア王国に仕掛けてきているらしいことは、父上もご存じのはず。このままでは、ゼビア王国がカッセル王国に攻略されてしまうやもしれません。隣国であるゼビア王国を攻略すれば、カッセル王国はそう遠くないうちに、我が国へ攻撃を仕掛けてくるでしょう。ですが、戦いになれば、我が国の国民たちが疲弊することになります。ゼビア王国の平和を維持することで、我が国の平和も維持することにつながります。王立学院の卒業式は、すべての貴族が集まると聞いています。ゼビア王国の貴族たちが、カッセル王国とのことをどう考えているのか、知るいい機会だと思います。ですから、将来のゼビア王国を予測するために、ぜひ一度王立学院の卒業式へ参加したいのです。いずれ、この国の騎士団を率いる立場として」
今の騎士団は、父上の弟、つまり叔父上が率いている。
私も幼いころから、将来は騎士団を率いていくのだと言われてきたし、自分でもそうなるのだと思って、研鑽をつんできていた。
だから、あの噂を耳にした時から、一度ゼビア王国に行っておきたいと思っていたのだ。ゼビア王国の貴族たちが、現状をどう思っているのか、知りたかった。
それに、要所である城を譲ったという、信じられない話も耳にした。それが本当なのか確かめたくもあった。
クリスティアーヌ嬢が望む未来があるのかどうか、知りたかった。
私の言葉に、父上が頷く。
「そうだな。それはいい心がけだ」
ホッと私が小さく息を吐くと、父上が頬杖をついた。
「何なら、いっそクリスティアーヌ嬢も奪ってくるがいい」
楽しそうに笑う父上に、私は首を横に振る。
「そのことは、関係ないと」
「だが、ファビアン殿は、つまらぬ令嬢に骨抜きになっているのだろう? ファビアン殿が見向きもしないクリスティアーヌ嬢を奪ったところで、ゼビア王国との軋轢にはならぬだろう?」
あの噂は、当然父上も知っているか。
聞いた時、本気で腹が立った。……もちろん、そんなことを表には出しはしなかったけれど。
「クリスティアーヌ嬢は、ゼビア王国のために身を粉にして働くつもりでいるのです。その気持ちを、ないがしろにしたくはありません」
「……レナルドは、案外意気地がないな」
大袈裟にため息をつく父上に、私もため息をつき返す。
「意気地のあるなしではありません。常に理性的であれ、と言うのは、父上ではありませんか」
「皇太子にはワルテ殿を据えれば良い。ワルテ殿は、物事をよく見ている。私としても、ファビアン殿が次期国王になるよりも、ワルテ殿が次期国王であるほうが望ましい。意味は、分かるか?」
父上の言葉に、私は頷いた。
それは、今考えられる一番最良の策だ。
あの皇太子では、ゼビア王国は遅かれ早かれ滅ぶしかない。
口を開けば失言だらけ。無知であることを恥ずかしくも思ってもいない。どうしてそんな尊大にいられるのか不思議でしかなかった。
「血を流さぬ方法を考えます」
私の答えに、父上が頷いた。
「その方が良かろう。その役目を持って、レナルドを私の名代として行かせよう」
私は目を見開いた。まさか、そんな大役を任されるとは思ってもみなかった。
でも、すぐに覚悟は決まった。絶対に、ファビアン殿下を廃嫡させてみせる。
「ただ」
私が続けた言葉に、父上が首をかしげる。
「ただ?」
「それと、クリスティアーヌ嬢を奪うことは、別問題です。クリスティアーヌ嬢の気持ちがないのならば、我が国に連れ帰ってくることはあり得ません」
きっぱりと告げると、父上が大声で笑いだした。
「レナルドは、やっぱり意気地がないな」
「私の意気地など、どうでもいいのです。クリスティアーヌ嬢にとっての幸せを、願っているのです」
例え、私が失恋したとしても。
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