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ならば⑨
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「学院長は一計を案じただけですわ。このつまらないパーティーの後、いつものように儀式は行われる予定でしてよ」
クリスティアーヌ様が首を横に振る。
「な、そんなわけが!」
ファビアン殿下が目をむく。
「いいえ、ファビアン殿下。私は国王陛下から、そう聞いておりますわ」
きっと、本当のこと、なんでしょうね。
でも、ここでクリスティアーヌ様に負けてしまったら、意味がなくなるもの。
「クリスティアーヌ嬢が、国王陛下に悪い知恵を与えているのですわ!」
言いがかりでも何でもいいわ。私が求めているのは、皇太子の婚約者の立場だもの。
「それは、国王陛下の言葉が信じられないということなのかしら?」
クリスティアーヌ様が首をかしげる。私はハッとして、首を横に振った。
良い言い訳を探さなければ!
「クリスティアーヌ様の悪事を明らかにしているだけですわ!」
「では、国王陛下に確認をしてはどうでしょうか?」
クリスティアーヌ様が肩をすくめる。頭の回転が速すぎるわ! 私は本気で、ワッとファビアン殿下に泣きつく。ファビアン殿下がこぶしを握ったまま、体をプルプルと震わせる。ええ、怒って頂戴。
ファビアン殿下が怒鳴り散らしている間に、次の手を考えなければ!
「それで、ファビアン殿下の良いところだという”頭の良さ”は否定されたように思いますけれど、他に、どんないいところがありますの?」
クリスティアーヌ様のニコリと笑う余裕の表情に、私は口を震わせる。
……まだ、負けたわけじゃないわ。
「ファビアン殿下に執着していらっしゃるクリスティーナ様だって、理解されているでしょう? ファビアン殿下のお姿のすばらしさを!」
きっと、カエルの世界ではモテるはずよ。
クリスティアーヌ様がじっとファビアン殿下を見つめる。
すぐに返って来ない返事に、少し力を抜く。
怒りの表情のファビアン殿下は、クリスティアーヌ様の無表情でじっと見つめる様子に、怪訝な表情になる。
「私に見惚れているのか。クリスティアーヌ嬢に見つめられるのも忌々しいわ!」
見惚れているのは、きっと違うと思うけれど。自惚れさんなのも、困ったものだわ。
「いいえ。どこが素晴らしいお姿なのか、しっかりと分析をしようとしてみただけですわ。ですが、素晴らしいお姿の方を他に知っておりますので、その方と比べると、どこも勝ってはいらっしゃらないようですわ」
クリスティアーヌ様の淡々とした物言いに、ファビアン殿下の表情は怒りの表情に戻る。
でも、しょうがないわ。
「わ、私を誰と比べているのだ!」
「レナルド = バール殿下ですわ」
ああ、と会場から同意の声が漏れている。
私だって、心の中でうなずいてしまう。
物語に出てきそうな王子様を上げろと言われたら、バール王国のレナルド殿下一択でしょうね。
出回っている絵姿は、それはそれは素敵ですわ。まだ庶民として暮らしていた時に、肌身離さず持っていたのよ。
……ファビアン殿下の絵姿が出回ることがない、ってところが、ファビアン殿下の姿が女性たちに好まれていないってことを現しているわね。
……そもそも、他の面でもファビアン殿下とレナルド殿下を比べてはいけないと思うけれど。
忌々しそうな表情になったファビアン殿下は、さも気にしないと言うように鼻を鳴らした。
……他の面では勝っているつもりなんでしょうね……。
「レナルド殿と比べられたら、誰でも負けるだろうな!」
「そうでしょうね。でも、ファビアン殿下は、ご自分でご自分のお姿を冷静に見つめることができておられないようにも思いますわ。もちろん、ノエリア様も」
「どういう意味かしら! ファビアン殿下のお姿は、本当に素晴らしく素敵だわ!」
クリスティアーヌ様の言葉を即座に否定してうっとりとファビアン殿下を見つめると、ファビアン殿下は大きくうなずいた。そして、ファビアン殿下はクリスティアーヌ様を睨みつけた。
「私に執着しているのを隠すために、そんなことを言い出しただけだろう!」
……どう考えても、クリスティアーヌ様は執着などしていなさそうだわ。むしろ、ファビアン殿下を嫌っているかもしれないわ。
「ファビアン殿下、申し訳ありませんが、私、ファビアン殿下に執着はありませんの。そもそも、そのお姿が、好みではなくて」
クリスティアーヌ様の微笑みに、ファビアン殿下が目を見開いた。こんなにハッキリと言ってしまう令嬢は初めてで、驚いてしまう。
「う、嘘でしょう! 執着しているのを隠すために、そんなことを言い出しただけでしょう!」
ああ、言うことに事欠いてファビアン殿下と同じことを言ってしまったわ!
「嘘ではありませんわ。ファビアン殿下のお姿を見て、苦手だと思ったことはあれ、素敵だと思ったことはありませんのよ」
クリスティアーヌ様、正直すぎるわ!
「こ、こんな素晴らしいファビアン殿下のお姿が苦手だなんて、嘘よ! 嘘に決まっているわ!」
「ノエリア様は、本気でそう思っていらっしゃるんでしょうね。人の好みはそれぞれだもの。否定はしないわ」
本気なわけがないわ! ファビアン殿下は、私の好みなどじゃないわ! レナルド殿下が好みの顔よ!
……なんて、言えるわけがないけど。
「私のどこが苦手だと言うんだ!」
「その厚ぼったい唇が……なんだか気持ち悪くて。口づけなど、絶対したくありませんわ! それに、やけに大きいその目も、何だか気持ち悪くて! カエルのようではありませんか?」
ぷ、と吹き出してしまって、慌てて顔を伏せた。
……今の、バレなかったかしら?
横に立つファビアン殿下を見ると、ファビアン殿下は怒りの表情で顔を真っ赤にして、クリスティアーヌ様を睨みつけている。
……気づかれて、ないわよね?
ごまかさなければ!
「そ、それならば、最初から婚約をしなければよかったではありませんか!」
私は慌ててそう叫ぶ。
「国民のためだと言われたら、拒否して逃げるわけにもいきませんわ」
クリスティアーヌ様が首を横にふる。
そうね。国民のため、って言葉に、同意しかないわ。ファビアン殿下一人に任せたら、きっとこの国はすぐに滅びてしまうもの。
私は、ファビアン殿下の婚約者になるつもりだけれど、国民のため、なんて考えていないからできることよ。
「何が国民のためだ! なぜ私がクリスティアーヌ嬢と結婚するのが、国民のためなのだ?!」
……ファビアン殿下は、本当に愚かだわ。
「ファビアン殿下の尻ぬぐいができて、うまくコントロールできる人間がお妃にならないと、この国が滅んでしまうからですわ。筆頭貴族の一員として、国民を路頭に迷わせるわけにはいきませんもの。ですから、公爵令嬢としての義務として、ファビアン殿下との婚約を受けたのです」
本当に貴族って、大変ね。
義務で婚約だなんて。
……私は、私のために婚約するんだから、クリスティアーヌ様とは違うわ。
ファビアン殿下を愛してなどいないのは同じだけれど。
クリスティアーヌ様が首を横に振る。
「な、そんなわけが!」
ファビアン殿下が目をむく。
「いいえ、ファビアン殿下。私は国王陛下から、そう聞いておりますわ」
きっと、本当のこと、なんでしょうね。
でも、ここでクリスティアーヌ様に負けてしまったら、意味がなくなるもの。
「クリスティアーヌ嬢が、国王陛下に悪い知恵を与えているのですわ!」
言いがかりでも何でもいいわ。私が求めているのは、皇太子の婚約者の立場だもの。
「それは、国王陛下の言葉が信じられないということなのかしら?」
クリスティアーヌ様が首をかしげる。私はハッとして、首を横に振った。
良い言い訳を探さなければ!
「クリスティアーヌ様の悪事を明らかにしているだけですわ!」
「では、国王陛下に確認をしてはどうでしょうか?」
クリスティアーヌ様が肩をすくめる。頭の回転が速すぎるわ! 私は本気で、ワッとファビアン殿下に泣きつく。ファビアン殿下がこぶしを握ったまま、体をプルプルと震わせる。ええ、怒って頂戴。
ファビアン殿下が怒鳴り散らしている間に、次の手を考えなければ!
「それで、ファビアン殿下の良いところだという”頭の良さ”は否定されたように思いますけれど、他に、どんないいところがありますの?」
クリスティアーヌ様のニコリと笑う余裕の表情に、私は口を震わせる。
……まだ、負けたわけじゃないわ。
「ファビアン殿下に執着していらっしゃるクリスティーナ様だって、理解されているでしょう? ファビアン殿下のお姿のすばらしさを!」
きっと、カエルの世界ではモテるはずよ。
クリスティアーヌ様がじっとファビアン殿下を見つめる。
すぐに返って来ない返事に、少し力を抜く。
怒りの表情のファビアン殿下は、クリスティアーヌ様の無表情でじっと見つめる様子に、怪訝な表情になる。
「私に見惚れているのか。クリスティアーヌ嬢に見つめられるのも忌々しいわ!」
見惚れているのは、きっと違うと思うけれど。自惚れさんなのも、困ったものだわ。
「いいえ。どこが素晴らしいお姿なのか、しっかりと分析をしようとしてみただけですわ。ですが、素晴らしいお姿の方を他に知っておりますので、その方と比べると、どこも勝ってはいらっしゃらないようですわ」
クリスティアーヌ様の淡々とした物言いに、ファビアン殿下の表情は怒りの表情に戻る。
でも、しょうがないわ。
「わ、私を誰と比べているのだ!」
「レナルド = バール殿下ですわ」
ああ、と会場から同意の声が漏れている。
私だって、心の中でうなずいてしまう。
物語に出てきそうな王子様を上げろと言われたら、バール王国のレナルド殿下一択でしょうね。
出回っている絵姿は、それはそれは素敵ですわ。まだ庶民として暮らしていた時に、肌身離さず持っていたのよ。
……ファビアン殿下の絵姿が出回ることがない、ってところが、ファビアン殿下の姿が女性たちに好まれていないってことを現しているわね。
……そもそも、他の面でもファビアン殿下とレナルド殿下を比べてはいけないと思うけれど。
忌々しそうな表情になったファビアン殿下は、さも気にしないと言うように鼻を鳴らした。
……他の面では勝っているつもりなんでしょうね……。
「レナルド殿と比べられたら、誰でも負けるだろうな!」
「そうでしょうね。でも、ファビアン殿下は、ご自分でご自分のお姿を冷静に見つめることができておられないようにも思いますわ。もちろん、ノエリア様も」
「どういう意味かしら! ファビアン殿下のお姿は、本当に素晴らしく素敵だわ!」
クリスティアーヌ様の言葉を即座に否定してうっとりとファビアン殿下を見つめると、ファビアン殿下は大きくうなずいた。そして、ファビアン殿下はクリスティアーヌ様を睨みつけた。
「私に執着しているのを隠すために、そんなことを言い出しただけだろう!」
……どう考えても、クリスティアーヌ様は執着などしていなさそうだわ。むしろ、ファビアン殿下を嫌っているかもしれないわ。
「ファビアン殿下、申し訳ありませんが、私、ファビアン殿下に執着はありませんの。そもそも、そのお姿が、好みではなくて」
クリスティアーヌ様の微笑みに、ファビアン殿下が目を見開いた。こんなにハッキリと言ってしまう令嬢は初めてで、驚いてしまう。
「う、嘘でしょう! 執着しているのを隠すために、そんなことを言い出しただけでしょう!」
ああ、言うことに事欠いてファビアン殿下と同じことを言ってしまったわ!
「嘘ではありませんわ。ファビアン殿下のお姿を見て、苦手だと思ったことはあれ、素敵だと思ったことはありませんのよ」
クリスティアーヌ様、正直すぎるわ!
「こ、こんな素晴らしいファビアン殿下のお姿が苦手だなんて、嘘よ! 嘘に決まっているわ!」
「ノエリア様は、本気でそう思っていらっしゃるんでしょうね。人の好みはそれぞれだもの。否定はしないわ」
本気なわけがないわ! ファビアン殿下は、私の好みなどじゃないわ! レナルド殿下が好みの顔よ!
……なんて、言えるわけがないけど。
「私のどこが苦手だと言うんだ!」
「その厚ぼったい唇が……なんだか気持ち悪くて。口づけなど、絶対したくありませんわ! それに、やけに大きいその目も、何だか気持ち悪くて! カエルのようではありませんか?」
ぷ、と吹き出してしまって、慌てて顔を伏せた。
……今の、バレなかったかしら?
横に立つファビアン殿下を見ると、ファビアン殿下は怒りの表情で顔を真っ赤にして、クリスティアーヌ様を睨みつけている。
……気づかれて、ないわよね?
ごまかさなければ!
「そ、それならば、最初から婚約をしなければよかったではありませんか!」
私は慌ててそう叫ぶ。
「国民のためだと言われたら、拒否して逃げるわけにもいきませんわ」
クリスティアーヌ様が首を横にふる。
そうね。国民のため、って言葉に、同意しかないわ。ファビアン殿下一人に任せたら、きっとこの国はすぐに滅びてしまうもの。
私は、ファビアン殿下の婚約者になるつもりだけれど、国民のため、なんて考えていないからできることよ。
「何が国民のためだ! なぜ私がクリスティアーヌ嬢と結婚するのが、国民のためなのだ?!」
……ファビアン殿下は、本当に愚かだわ。
「ファビアン殿下の尻ぬぐいができて、うまくコントロールできる人間がお妃にならないと、この国が滅んでしまうからですわ。筆頭貴族の一員として、国民を路頭に迷わせるわけにはいきませんもの。ですから、公爵令嬢としての義務として、ファビアン殿下との婚約を受けたのです」
本当に貴族って、大変ね。
義務で婚約だなんて。
……私は、私のために婚約するんだから、クリスティアーヌ様とは違うわ。
ファビアン殿下を愛してなどいないのは同じだけれど。
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