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まさかの④
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私の言葉を聞いた神様は、面白い、とでも言いたげに、口許を緩めた。
「ズルい、か。だが、誰にもその未来などわからぬではないか」
「神様は私を手に入れるために神託を授けたんでしょ! 私が滅びの言葉を言ったら、それで自分の思い通りになるじゃない! それはズルいでしょ!」
私の言葉に、神様が、ククク、と笑いだす。
「なるほど、確かに一理あるな」
神様は笑いを納めると、私をじっと見る。
……これで私の未来が決まる?
私は、こくりと唾を飲むと、口を開いた。
「やり直させてくれるなら、もしまたあの言葉を言うことになったときには、今度は神様に従うから!」
どうせその選択肢しかないなら、せめて!
「では、もう一度チャンスを与えよう。だが、もしあの言葉を使うことがあれば、私の願いを叶えることにしよう」
神様の言葉に、私はホッと息をつく。
次の瞬間、私の意識は途絶えた。
◇
「これがキャサリンか」
目を細めて私を覗き込むお父様は、明らかに、私をかわいいとは思っていない。ただただ、商品としての価値を値踏みしているようにしか見えない。
「はい。公爵様」
弱々しく答える母の声に、私はハッとする。
そう、母の声!
私は母の声がした方を見つめる。
そこには、ボロボロの服をまとった、痩せ細った母の姿があった。
最後にお別れしたときの、母の姿だ。
……どうやら、私の人生は公爵家に引き取られるところからやり直しらしい。
「……みすぼらしい子供だ。まあいい。ダークブルーの公爵家の瞳は継いだようだし、ありがたがってコレを欲しがる家もあろう」
……コレ扱いか……。
「……娘はものではありません!」
きっぱりとした母の声に、驚く。
「うるさい。私の娘だ。どう扱おうと、私の勝手だろう!」
父上の言葉に、怒りが湧く。
「私の娘でもあるのです! 私の娘はものではありません!」
「ハッ。食べるものにも困る生活をしておいて、何を偉そうなことを。ほら、金を受けとるがいい!」
吐き捨てるように言った父親が、床に金貨を叩きつける。
だけどそれは、たったの10枚。
……この生活から言えば、数年は暮らせる大金ではあるのだけど。でも、公爵家の生活から言えば、よそ行きのドレスを仕立てる値段でしかない。
「拾え」
父の冷たい言葉に、母が首を必死に振っている。
「例え生活に困っていても、娘は渡しません!」
「足りぬか。あざとい」
ふん、と鼻をならした父上が、また金貨を胸元から出すと、無造作に床に叩きつける。
「要りません! お帰りください!」
母が私を抱き締める。
……そうだ。
前の時にも、母はこうやって4歳の小さな私を抱き締めてくれていた。
忘れていたけど、確かにあの時、私は父親だと言う初めて見る男の人の怒鳴り声におびえた。怖かった。だけど、何も言えなかった。
その年代の子供は、とても残酷だ。
貧乏な暮らしをしていた私は、すでに近所の子供たちのいじめのターゲットになっていて、前世の記憶もあって、反抗するなんてことを考えたこともなかった子供だった。
だけど、今は違う。
ただ、おびえる小さな子供ではない。
私は、変わると決めたんだから。
前回と同じ人生を、絶対に歩んでなんかやらないんだから。
「いやだ! わたし、いかない!」
私の言葉に、母が驚いたように目を見開く。
……私が、誰に何を言われても、ただただいじめられて泣いて帰ってくるのを知っているからだろう。
「なんだ! 慈悲を与えようとするこの私に反抗するのか!」
お父様が顔を赤くして私を睨む。
「どこがじひよ! じひっていうのは、ひとにやさしくすることよ! おかねで こどもをかうなんて、さいていよ!」
私はお父様をキッとにらんだ。
……前だったら、怖くて反抗などできなかっただろう。
だけど、未来を変えないといけないから。
お父様が目を細めた。そういえば、これは、何かを値踏みするときのお父様の癖だ。
「案外、頭は悪くないらしい。流石、私の娘だ。価値があがるな」
「かちなんて しるもんですか! わたしは、かあさまと いっしょにくらすの!」
「悪いが、子供の言うことなど、聞く義理はないのでな。行くぞ」
「やめて下さい!」
お父様が、私の腕を乱暴につかむ。当然、母は抵抗したけれど、男性の力によれよれの母が勝てるわけもない。
当然、幼い私が踏ん張って抵抗したところで、意味はない。
私はあっさり、お父様に体を捕まえられる。
私が逃げると思ったんだろうお父様は、私を抱きかかえる。
逃げなきゃ。
私には、それしかなかった。
私はお父様の肌があらわになっている首筋をがぶりと噛みついた。
「何をする!」
慌てたお父様が、咄嗟に私を突き放す。
宙に浮いた体が、スローモーションのように床に叩きつけられる。
ダメ、かもしれない。
母の驚きで目を見開いた顔を見ながら、私はガン、と頭を打ち付けて、意識を手放した。
「ズルい、か。だが、誰にもその未来などわからぬではないか」
「神様は私を手に入れるために神託を授けたんでしょ! 私が滅びの言葉を言ったら、それで自分の思い通りになるじゃない! それはズルいでしょ!」
私の言葉に、神様が、ククク、と笑いだす。
「なるほど、確かに一理あるな」
神様は笑いを納めると、私をじっと見る。
……これで私の未来が決まる?
私は、こくりと唾を飲むと、口を開いた。
「やり直させてくれるなら、もしまたあの言葉を言うことになったときには、今度は神様に従うから!」
どうせその選択肢しかないなら、せめて!
「では、もう一度チャンスを与えよう。だが、もしあの言葉を使うことがあれば、私の願いを叶えることにしよう」
神様の言葉に、私はホッと息をつく。
次の瞬間、私の意識は途絶えた。
◇
「これがキャサリンか」
目を細めて私を覗き込むお父様は、明らかに、私をかわいいとは思っていない。ただただ、商品としての価値を値踏みしているようにしか見えない。
「はい。公爵様」
弱々しく答える母の声に、私はハッとする。
そう、母の声!
私は母の声がした方を見つめる。
そこには、ボロボロの服をまとった、痩せ細った母の姿があった。
最後にお別れしたときの、母の姿だ。
……どうやら、私の人生は公爵家に引き取られるところからやり直しらしい。
「……みすぼらしい子供だ。まあいい。ダークブルーの公爵家の瞳は継いだようだし、ありがたがってコレを欲しがる家もあろう」
……コレ扱いか……。
「……娘はものではありません!」
きっぱりとした母の声に、驚く。
「うるさい。私の娘だ。どう扱おうと、私の勝手だろう!」
父上の言葉に、怒りが湧く。
「私の娘でもあるのです! 私の娘はものではありません!」
「ハッ。食べるものにも困る生活をしておいて、何を偉そうなことを。ほら、金を受けとるがいい!」
吐き捨てるように言った父親が、床に金貨を叩きつける。
だけどそれは、たったの10枚。
……この生活から言えば、数年は暮らせる大金ではあるのだけど。でも、公爵家の生活から言えば、よそ行きのドレスを仕立てる値段でしかない。
「拾え」
父の冷たい言葉に、母が首を必死に振っている。
「例え生活に困っていても、娘は渡しません!」
「足りぬか。あざとい」
ふん、と鼻をならした父上が、また金貨を胸元から出すと、無造作に床に叩きつける。
「要りません! お帰りください!」
母が私を抱き締める。
……そうだ。
前の時にも、母はこうやって4歳の小さな私を抱き締めてくれていた。
忘れていたけど、確かにあの時、私は父親だと言う初めて見る男の人の怒鳴り声におびえた。怖かった。だけど、何も言えなかった。
その年代の子供は、とても残酷だ。
貧乏な暮らしをしていた私は、すでに近所の子供たちのいじめのターゲットになっていて、前世の記憶もあって、反抗するなんてことを考えたこともなかった子供だった。
だけど、今は違う。
ただ、おびえる小さな子供ではない。
私は、変わると決めたんだから。
前回と同じ人生を、絶対に歩んでなんかやらないんだから。
「いやだ! わたし、いかない!」
私の言葉に、母が驚いたように目を見開く。
……私が、誰に何を言われても、ただただいじめられて泣いて帰ってくるのを知っているからだろう。
「なんだ! 慈悲を与えようとするこの私に反抗するのか!」
お父様が顔を赤くして私を睨む。
「どこがじひよ! じひっていうのは、ひとにやさしくすることよ! おかねで こどもをかうなんて、さいていよ!」
私はお父様をキッとにらんだ。
……前だったら、怖くて反抗などできなかっただろう。
だけど、未来を変えないといけないから。
お父様が目を細めた。そういえば、これは、何かを値踏みするときのお父様の癖だ。
「案外、頭は悪くないらしい。流石、私の娘だ。価値があがるな」
「かちなんて しるもんですか! わたしは、かあさまと いっしょにくらすの!」
「悪いが、子供の言うことなど、聞く義理はないのでな。行くぞ」
「やめて下さい!」
お父様が、私の腕を乱暴につかむ。当然、母は抵抗したけれど、男性の力によれよれの母が勝てるわけもない。
当然、幼い私が踏ん張って抵抗したところで、意味はない。
私はあっさり、お父様に体を捕まえられる。
私が逃げると思ったんだろうお父様は、私を抱きかかえる。
逃げなきゃ。
私には、それしかなかった。
私はお父様の肌があらわになっている首筋をがぶりと噛みついた。
「何をする!」
慌てたお父様が、咄嗟に私を突き放す。
宙に浮いた体が、スローモーションのように床に叩きつけられる。
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母の驚きで目を見開いた顔を見ながら、私はガン、と頭を打ち付けて、意識を手放した。
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