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まさかの⑦
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ざわめく教室の中、私はただただ大人しく席についていた。
知り合いなんて一人もいないし。
ハワード先生は、私をこの学院に入学する手はずを整えてくれると、ディル王国には寄りもせずに他の国に旅立って行ったから、その伝手もない。
……それより何より、目立たずひっそり過ごして、平和に生きていきたい。
ヒソヒソと私に向く声も聞こえたけれど、それは、物珍しさから私を遠巻きに見ているディル王国の貴族令嬢たちで、その態度からして、仲良くなれそうな気はしなかった。
みなと同じワンピースドレスの制服を着ているのに、私だけ浮いているみたいだ。
ディル王国は、中等部から学院生活を始めるそうで、高等部から編入してきた私は、それだけでも注目される。更に隣国オールコック王国からの転入生ということで、十分噂のネタとしては面白いんだろう。
ハワード先生が最後に別れるときに、『ディル王国もいいものばかりではない』って言ってたのを思い出す。そのときは、オールコック王国よりひどくないだろうって思ってたけど。
閉鎖的、なのかな?
「あなたたち、ヒソヒソと話をするのは、はしたないんじゃなくって?」
高めの少しハスキーな声に、私は視線を向けてハッとする。
オールコック王国でも会ったことのないほどの美女が、女生徒たちをたしなめていた。
美女、だけど、キリッとした男役が似合いそう!
ウソウソウソ! ディル王国に来てよかったかも!
「申し訳ありません。メリリース様!」
どうやら、メリリース様、というのはこのクラスのカースト上位らしい。
制服の仕様が他の人とちょっと違うのも、特権階級だからなんだろうか? メリリース様の制服はゆるやかに首元がおおわれているデザインだ。
メリリース様は私と視線が合うと、ぺこりと会釈をしてくれた。私も会釈を返す。
「キャサリン様、ご気分を害されたとしたら申し訳ないわ。彼女たちも悪気はないんですの。私、メリリース = ドライスデールと申します。これから学友として、よろしくお願いいたしますわ」
名乗られて、私はあわてて立ち上がる。ドライスデール家は公爵家で、騎士団長を代々排出している家系だ。
メリリース様は、私より頭一つ背が高くて、見上げることになる。
身長も高いなんて理想的!
男装の麗人にしてみたいわ!
「キャサリン = ノーフォークと申します。よろしくお願いいたします」
「ふふ。かわいらしい方ね」
にこり、と笑うメリリース様は、同性の私でもドキリとしてしまうほど。
美女って、すごい。
でもでもまさか、異世界で推しができるなんて!
「今度、ゆっくりお話ししましょう? 私用事があるので、失礼しますわ」
メリリース様は軽く礼を取ると、私の前から去っていく。
注目の的ではあったけど、メリリース様が去ってからも、先ほどの不躾な視線は感じなくなった。
私はホッと息をついて席に着く。
メリリース様は、正義感が強い人らしい。ますます、カッコいい!
特に無理に誰かに合わせようとは思ってはいなかったから、不躾な視線はどうでも良かったし、前世からほぼボッチで暮らしてきたんだから、今更友達が必要だとは思えなかったけど。
……でも、メリリース様の親衛隊があるなら、入ってもいい!
きっとメリリース様をうっとりと見ている女子集団が……と思って見回してみたけれど、メリリース様に視線を向けてうっとりしている女生徒は存在しなかった。
……一人ぐらいファンがいても良さそうなのに。
あ、メリリース様が教室を出ていってしまった……。ああ、まさか異世界でテンションが上がることがあるなんて!
「ほら、これが答えだ! どうだ? この数字を掛ければよかっただけだろう?」
私の耳は、近くで聞こえる彼らの会話に向く。ヒソヒソ話は気にしてなかったけど……どちらかというと、この男子生徒二人の会話の方がよほど気になっていた。
何が気になるって……ズバリ、問題の解き方。
さっきから聞いてるんだけど……いや、それ違うでしょ、って感じで、口を出していいのかすごく迷っている。
で、どうやら、答えに行きついたらしい。……そもそも解き方違ってるんだけど……。
「ああ、そうですね……。これが答え、なんでしょうね。悔しいなぁ。いつも……」
「それ、間違ってます」
答えにたどり着いたと思っている二人に、私は声を出してしまった。
……心の中で突っ込んだつもりだったんだけど……つい。
ヒソヒソ話していた女生徒たちがざわめく。
……私が男子としゃべったのが物珍しいんだろうか? それともディル王国ではマナーを欠く行為なんだろうか? まあいいや。
「キャサリン嬢、だったかな? 何がどう間違ってるんだ?」
横柄な態度の男子生徒Aに、私は肩をすくめる。さっき、これが答えだと得意げな声を上げたのは、この男子生徒Aだ。イケメンなんだけど、その態度は改めたほうがモテると思う。うん。
でも、イケメンだからって、私は容赦はしない。
議論には負けません!
「そもそもの解き方が間違ってます」
私の言葉に、男子生徒Aがにやりと面白そうに笑う。そしてその向かいの男子生徒Bが、困ったように男子生徒Aを見ていた。
◇
深い緑の中、私は背の低い木の間に身をひそめる。
はぁはぁと切れる息を、できるだけ出さないように息を詰める。
……体力がないから、逃げ回るのも限界だ。
私は目の前にある草を見て、ああ、これは薬草になる草だな、と思う。
知識だけはばっちり詰め込んでいるけど、体力だけはどうしようもない。
「キャサリン嬢? どこだ?!」
近くに聞こえる声に、私は身を固くする。
私はいません。私はいません。
……なんで、こんな厄介なことになってるんだろう?
「キャサリン嬢!」
声を張り上げるのは、男子生徒A。イケメン。もとい、サイラス = ディル殿下。
そう、この国の、第三王子だ。
私は……どうやらサイラス様に執着されている。
……恋愛的な何か、は全然感じないのだけど。それより、おもちゃ的な何か?
前回の人生で、皇太子に裏切られたのは、結構トラウマになってるかもしれない。
サイラス様が構ってくるからと言って、うぬぼれずに、冷静な目で見れていると思う。
執着される理由は、私がサイラス様に興味を持たないからじゃないかと思っている。
……初日に、サイラス殿下と議論して、喧々諤々言い合ったのが悪かったんだろうなぁ。
知り合いなんて一人もいないし。
ハワード先生は、私をこの学院に入学する手はずを整えてくれると、ディル王国には寄りもせずに他の国に旅立って行ったから、その伝手もない。
……それより何より、目立たずひっそり過ごして、平和に生きていきたい。
ヒソヒソと私に向く声も聞こえたけれど、それは、物珍しさから私を遠巻きに見ているディル王国の貴族令嬢たちで、その態度からして、仲良くなれそうな気はしなかった。
みなと同じワンピースドレスの制服を着ているのに、私だけ浮いているみたいだ。
ディル王国は、中等部から学院生活を始めるそうで、高等部から編入してきた私は、それだけでも注目される。更に隣国オールコック王国からの転入生ということで、十分噂のネタとしては面白いんだろう。
ハワード先生が最後に別れるときに、『ディル王国もいいものばかりではない』って言ってたのを思い出す。そのときは、オールコック王国よりひどくないだろうって思ってたけど。
閉鎖的、なのかな?
「あなたたち、ヒソヒソと話をするのは、はしたないんじゃなくって?」
高めの少しハスキーな声に、私は視線を向けてハッとする。
オールコック王国でも会ったことのないほどの美女が、女生徒たちをたしなめていた。
美女、だけど、キリッとした男役が似合いそう!
ウソウソウソ! ディル王国に来てよかったかも!
「申し訳ありません。メリリース様!」
どうやら、メリリース様、というのはこのクラスのカースト上位らしい。
制服の仕様が他の人とちょっと違うのも、特権階級だからなんだろうか? メリリース様の制服はゆるやかに首元がおおわれているデザインだ。
メリリース様は私と視線が合うと、ぺこりと会釈をしてくれた。私も会釈を返す。
「キャサリン様、ご気分を害されたとしたら申し訳ないわ。彼女たちも悪気はないんですの。私、メリリース = ドライスデールと申します。これから学友として、よろしくお願いいたしますわ」
名乗られて、私はあわてて立ち上がる。ドライスデール家は公爵家で、騎士団長を代々排出している家系だ。
メリリース様は、私より頭一つ背が高くて、見上げることになる。
身長も高いなんて理想的!
男装の麗人にしてみたいわ!
「キャサリン = ノーフォークと申します。よろしくお願いいたします」
「ふふ。かわいらしい方ね」
にこり、と笑うメリリース様は、同性の私でもドキリとしてしまうほど。
美女って、すごい。
でもでもまさか、異世界で推しができるなんて!
「今度、ゆっくりお話ししましょう? 私用事があるので、失礼しますわ」
メリリース様は軽く礼を取ると、私の前から去っていく。
注目の的ではあったけど、メリリース様が去ってからも、先ほどの不躾な視線は感じなくなった。
私はホッと息をついて席に着く。
メリリース様は、正義感が強い人らしい。ますます、カッコいい!
特に無理に誰かに合わせようとは思ってはいなかったから、不躾な視線はどうでも良かったし、前世からほぼボッチで暮らしてきたんだから、今更友達が必要だとは思えなかったけど。
……でも、メリリース様の親衛隊があるなら、入ってもいい!
きっとメリリース様をうっとりと見ている女子集団が……と思って見回してみたけれど、メリリース様に視線を向けてうっとりしている女生徒は存在しなかった。
……一人ぐらいファンがいても良さそうなのに。
あ、メリリース様が教室を出ていってしまった……。ああ、まさか異世界でテンションが上がることがあるなんて!
「ほら、これが答えだ! どうだ? この数字を掛ければよかっただけだろう?」
私の耳は、近くで聞こえる彼らの会話に向く。ヒソヒソ話は気にしてなかったけど……どちらかというと、この男子生徒二人の会話の方がよほど気になっていた。
何が気になるって……ズバリ、問題の解き方。
さっきから聞いてるんだけど……いや、それ違うでしょ、って感じで、口を出していいのかすごく迷っている。
で、どうやら、答えに行きついたらしい。……そもそも解き方違ってるんだけど……。
「ああ、そうですね……。これが答え、なんでしょうね。悔しいなぁ。いつも……」
「それ、間違ってます」
答えにたどり着いたと思っている二人に、私は声を出してしまった。
……心の中で突っ込んだつもりだったんだけど……つい。
ヒソヒソ話していた女生徒たちがざわめく。
……私が男子としゃべったのが物珍しいんだろうか? それともディル王国ではマナーを欠く行為なんだろうか? まあいいや。
「キャサリン嬢、だったかな? 何がどう間違ってるんだ?」
横柄な態度の男子生徒Aに、私は肩をすくめる。さっき、これが答えだと得意げな声を上げたのは、この男子生徒Aだ。イケメンなんだけど、その態度は改めたほうがモテると思う。うん。
でも、イケメンだからって、私は容赦はしない。
議論には負けません!
「そもそもの解き方が間違ってます」
私の言葉に、男子生徒Aがにやりと面白そうに笑う。そしてその向かいの男子生徒Bが、困ったように男子生徒Aを見ていた。
◇
深い緑の中、私は背の低い木の間に身をひそめる。
はぁはぁと切れる息を、できるだけ出さないように息を詰める。
……体力がないから、逃げ回るのも限界だ。
私は目の前にある草を見て、ああ、これは薬草になる草だな、と思う。
知識だけはばっちり詰め込んでいるけど、体力だけはどうしようもない。
「キャサリン嬢? どこだ?!」
近くに聞こえる声に、私は身を固くする。
私はいません。私はいません。
……なんで、こんな厄介なことになってるんだろう?
「キャサリン嬢!」
声を張り上げるのは、男子生徒A。イケメン。もとい、サイラス = ディル殿下。
そう、この国の、第三王子だ。
私は……どうやらサイラス様に執着されている。
……恋愛的な何か、は全然感じないのだけど。それより、おもちゃ的な何か?
前回の人生で、皇太子に裏切られたのは、結構トラウマになってるかもしれない。
サイラス様が構ってくるからと言って、うぬぼれずに、冷静な目で見れていると思う。
執着される理由は、私がサイラス様に興味を持たないからじゃないかと思っている。
……初日に、サイラス殿下と議論して、喧々諤々言い合ったのが悪かったんだろうなぁ。
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