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まさかの⑪
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私とメリリース様は、草原に座り込んでいた。
風が、髪をなびかせる。
「……そう、なのね。それで、自分の人生を切り拓こうとしてるのね」
説明を終えた私が黙り込むと、メリリース様がようやく声を出した。
その声は、ただ感慨深そうで、その中には、戸惑いも、恐怖も見えなかった。
「メリリース様は、この話を、信じて下さるんですか? ……それに、聖女だって聞いて……怖く、ありませんか?」
「あら、どうして?」
まさかそんな切り返しをされると思わなくて、戸惑う。
「だって……荒唐無稽だもの」
「ふふ。だからよ」
「だから?」
私が眉を寄せると、メリリース様が大きく頷いた。
「私は、キャサリン様が、嘘をつく方ではないと思っているわ。そのキャサリン様が、あり得ないようなことを言い出したのだとしたら……真実だから、としか思えないわ」
「あり……がとうございます」
胸が熱くなる。
ここまで信じられていることがうれしくて、涙がにじむ。
「それにね。勇気を出したら、未来が変わるんだって、キャサリン様自身が証明したわけでしょう? それなら、私も頑張ってみようかな、って思えたのよ?」
微笑むメリリース様に、私は目を見開いた。
「本当に?」
こくり、とメリリース様が頷く。
「ええ。本当よ。このままじゃ、いけないのよ」
「……サイラス様との婚約を解消されるんですね?」
「そうね。やるわ」
決意に満ちたメリリース様の瞳は、キラキラと輝いていて、その美貌を更に輝かせていた。ああ、こんなに間近に推しの素晴らしい笑顔が見られるなんて!
「ねえ、いいアイデアを思いついたんだけど」
メリリース様は子供のように無邪気に笑う。メリリース様の横顔に見惚れていた私は、我に返る。
「いいアイデア、ですか?」
「そう、いいアイデア!」
「一体、どんなアイデアですか?」
私の問いかけに口を開きかけたメリリース様が、あ、と口をつぐんで、バツが悪そうに目を伏せた。
「ごめんなさい。忘れてくれる? 他の方法を考えないと」
「えーっと、どんなアイデアだったんです? もしかしたら、そのアイデアをもとに、他の方法も考えられるかもしれないですから」
私が首をかしげると、メリリース様は首を小さく振った。
「いいのよ。……私の力で解決するわけではないアイデアだから、ダメよ」
「……誰かの力を必要とするんですか?」
「だから、いいの。もう少し考えるわ。私の力で私の婚約を破棄できる方法を」
きっぱりと告げるメリリース様に、私はそれ以上追及できなかった。
「ちなみに、メリリース様とサイラス様の婚約は、どうして決まったんですか? ……サイラス様は、特にメリリース様に執着しているようにも見えないですし……、メリリース様だって、婚約嫌なんですよね? やっぱり、公爵家の令嬢だから、王族の妃になるものなんですか?」
私の疑問に、メリリース様が、ああ、と声を漏らした。
「私の話も聞いてくれるかしら?」
「もちろんです!」
「トップシークレットよ?」
ふふ、と微笑むメリリース様だったけど、その目はひどく真剣だった。
それに加えて”トップシークレット”の言葉に、私は戸惑う。
「トップ、シークレット?」
「ええ。私実は、男なの」
メリリース様の告白に、私は目を見開いた。
「え? だって……胸が……」
私の視線は、メリリース様の美しく膨らんだ胸に向かう。
「ふふふ。信じてない? 私は、間違いなく男なのよ? 胸は作りものだし……他も確認してみる?」
他を確認? ……?!
「い、いやいやいやいや。だ、大丈夫です!」
確認の方法を思いついて、私は焦ってお断りする。
ふふふ、とメリリース様は楽しそうに笑っているけど……。
「えーっと……色々と思うことはあるんですけれど、ディル王国は、同性同士の結婚は認められているんですね?」
私は首を傾げた。少なくとも、オールコック王国では、認められてはいなかったし、私が学んだディル王国の本の中にも、そんな文言は見たことがなかったけど、メリリース様とサイラス様の婚約が成立しているってことは、そういうこと、なんだよね?
「いいえ」
「え?!」
あっさりと否定したメリリース様に、私の頭の中は混乱する。
「それなのに、どうしてメリリース様とサイラス様は婚約してるんですか!?」
「私が”愛し子”だから」
一瞬止まったあと、私の脳がメリリース様の言葉をようやく処理した。
「ええ!?」
私の声が、草原に響く。
「驚くのならば、説明は不要かしら? 『妖精に口づけの祝福を受けた愛し子は、国を繁栄させる』から、王家は私を王族の中に取り込みたいのよ。どうやら、王家の目に届くところで生まれた”愛し子”は、400年前の建国当時以来らしいわ」
肩をすくめるメリリース様に、私はぎこちなく首を傾げる。
「えーっと、だからって、どうしてサイラス様と婚約を? それなら、皇太子とか、第二王子とか、いやそもそも王女って手だってありますよね?」
「今の王家に王女はいないのよ。私は男だから、子供を成すことはできない。だけど、公爵家の人間を嫁にしておいて、皇太子や騎士団を統べる第二王子が、妾にだけかまけていたとしたら、問題になるから。第三王子だったら王家の人間ってだけだし、別に妾だけにかまけても問題ないだろうって算段みたいなの」
「いやいやいや、第三王子だってダメでしょ! と言うか、”愛し子”を国のために性別偽らせるとか、意味が分かりません! この国大丈夫ですか!?」
ディル王国、違った意味でヤバい!
風が、髪をなびかせる。
「……そう、なのね。それで、自分の人生を切り拓こうとしてるのね」
説明を終えた私が黙り込むと、メリリース様がようやく声を出した。
その声は、ただ感慨深そうで、その中には、戸惑いも、恐怖も見えなかった。
「メリリース様は、この話を、信じて下さるんですか? ……それに、聖女だって聞いて……怖く、ありませんか?」
「あら、どうして?」
まさかそんな切り返しをされると思わなくて、戸惑う。
「だって……荒唐無稽だもの」
「ふふ。だからよ」
「だから?」
私が眉を寄せると、メリリース様が大きく頷いた。
「私は、キャサリン様が、嘘をつく方ではないと思っているわ。そのキャサリン様が、あり得ないようなことを言い出したのだとしたら……真実だから、としか思えないわ」
「あり……がとうございます」
胸が熱くなる。
ここまで信じられていることがうれしくて、涙がにじむ。
「それにね。勇気を出したら、未来が変わるんだって、キャサリン様自身が証明したわけでしょう? それなら、私も頑張ってみようかな、って思えたのよ?」
微笑むメリリース様に、私は目を見開いた。
「本当に?」
こくり、とメリリース様が頷く。
「ええ。本当よ。このままじゃ、いけないのよ」
「……サイラス様との婚約を解消されるんですね?」
「そうね。やるわ」
決意に満ちたメリリース様の瞳は、キラキラと輝いていて、その美貌を更に輝かせていた。ああ、こんなに間近に推しの素晴らしい笑顔が見られるなんて!
「ねえ、いいアイデアを思いついたんだけど」
メリリース様は子供のように無邪気に笑う。メリリース様の横顔に見惚れていた私は、我に返る。
「いいアイデア、ですか?」
「そう、いいアイデア!」
「一体、どんなアイデアですか?」
私の問いかけに口を開きかけたメリリース様が、あ、と口をつぐんで、バツが悪そうに目を伏せた。
「ごめんなさい。忘れてくれる? 他の方法を考えないと」
「えーっと、どんなアイデアだったんです? もしかしたら、そのアイデアをもとに、他の方法も考えられるかもしれないですから」
私が首をかしげると、メリリース様は首を小さく振った。
「いいのよ。……私の力で解決するわけではないアイデアだから、ダメよ」
「……誰かの力を必要とするんですか?」
「だから、いいの。もう少し考えるわ。私の力で私の婚約を破棄できる方法を」
きっぱりと告げるメリリース様に、私はそれ以上追及できなかった。
「ちなみに、メリリース様とサイラス様の婚約は、どうして決まったんですか? ……サイラス様は、特にメリリース様に執着しているようにも見えないですし……、メリリース様だって、婚約嫌なんですよね? やっぱり、公爵家の令嬢だから、王族の妃になるものなんですか?」
私の疑問に、メリリース様が、ああ、と声を漏らした。
「私の話も聞いてくれるかしら?」
「もちろんです!」
「トップシークレットよ?」
ふふ、と微笑むメリリース様だったけど、その目はひどく真剣だった。
それに加えて”トップシークレット”の言葉に、私は戸惑う。
「トップ、シークレット?」
「ええ。私実は、男なの」
メリリース様の告白に、私は目を見開いた。
「え? だって……胸が……」
私の視線は、メリリース様の美しく膨らんだ胸に向かう。
「ふふふ。信じてない? 私は、間違いなく男なのよ? 胸は作りものだし……他も確認してみる?」
他を確認? ……?!
「い、いやいやいやいや。だ、大丈夫です!」
確認の方法を思いついて、私は焦ってお断りする。
ふふふ、とメリリース様は楽しそうに笑っているけど……。
「えーっと……色々と思うことはあるんですけれど、ディル王国は、同性同士の結婚は認められているんですね?」
私は首を傾げた。少なくとも、オールコック王国では、認められてはいなかったし、私が学んだディル王国の本の中にも、そんな文言は見たことがなかったけど、メリリース様とサイラス様の婚約が成立しているってことは、そういうこと、なんだよね?
「いいえ」
「え?!」
あっさりと否定したメリリース様に、私の頭の中は混乱する。
「それなのに、どうしてメリリース様とサイラス様は婚約してるんですか!?」
「私が”愛し子”だから」
一瞬止まったあと、私の脳がメリリース様の言葉をようやく処理した。
「ええ!?」
私の声が、草原に響く。
「驚くのならば、説明は不要かしら? 『妖精に口づけの祝福を受けた愛し子は、国を繁栄させる』から、王家は私を王族の中に取り込みたいのよ。どうやら、王家の目に届くところで生まれた”愛し子”は、400年前の建国当時以来らしいわ」
肩をすくめるメリリース様に、私はぎこちなく首を傾げる。
「えーっと、だからって、どうしてサイラス様と婚約を? それなら、皇太子とか、第二王子とか、いやそもそも王女って手だってありますよね?」
「今の王家に王女はいないのよ。私は男だから、子供を成すことはできない。だけど、公爵家の人間を嫁にしておいて、皇太子や騎士団を統べる第二王子が、妾にだけかまけていたとしたら、問題になるから。第三王子だったら王家の人間ってだけだし、別に妾だけにかまけても問題ないだろうって算段みたいなの」
「いやいやいや、第三王子だってダメでしょ! と言うか、”愛し子”を国のために性別偽らせるとか、意味が分かりません! この国大丈夫ですか!?」
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