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番外編①
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「キャサリンが、聖女ですって?!」
「う、嘘に決まっているわ!」
私は信じられない気持ちでお父様の言葉に首を横にふる。お母様も激しく首を横にふっている。特にキャサリンをいじめまくっていたのはお母様だから、信じたくないんでしょうけど。私はキャサリンのことを無視していただけだから、何かがあってもきっと大丈夫。
「嘘よ。そんなわけがありませんわ!」
でも、一応演技はしないとね。
「だが、聖女様が亡くなったあと、ディル王国でキャサリンが神託を受けたと聞いた」
ソファーに座り両手を組むお父様は、何やら思案顔だ。
ハッとする。
まさか、お父様は……。そうだわ!
「お父様! キャサリンがこのままディル王国の王家に嫁げば良いのじゃなくて?」
そうすれば、厄介払いもできるし、我が家にとっても益があるはず。
何て素晴らしい考えかしら!
「それはできん」
だけど、お父様は険しい顔で首を横にふる。
「どうしてですの? 私がこの国の国母になり、キャサリンがかの国の王家に嫁ぐ。これ以上素晴らしい策はないわ!」
「ディル王国では、聖女は国を滅ぼすと言い伝えられている」
「お父様! それならば、キャサリンは捕らえられてしまっているのかしら?」
もし処刑されたとしても、私は痛くも痒くもないわ。
ディル王国では、聖女の扱いがそうだって話だけだもの!
「いや。キャサリンはもうディル王国にはいないらしい」
え?
「どうしてですの?」
既に追放されてしまったってことかしら?
それならそれでもいいわね。私と殿下の結婚に影響がなければ、キャサリンなどどうなったっていいわ。
「ディル王国の愛し子を連れて、追うならば国を滅ぼすと言い捨てて去ったらしい」
「愛し子?」
「知らぬのか? ディル王国では、愛し子が国を繁栄させると言い伝えられている」
愛し子、ね……。ふふふ。キャサリンったら、墓穴を掘っているだけじゃないの。
「お父様、キャサリンはディル王国の尋ね人になってしまったってことですの? 犯罪者が我が家から出てしまうなんて!」
私は顔をおおって泣いたふりをする。
「クララ、大丈夫よ。私たちにはお父様がいるわ」
お母様が私の頭を撫でる。
そんなこと知っているわ。それに、私には最愛の皇太子様がついているから、絶対大丈夫よ!
「いや。尋ね人にはなっていない。だが、私たちにも追いかけるなと言伝てがあったと」
よくわからないけど、勝手にいなくなってくれたんなら、本当にどうでもいいわ。
「それなら良かった」
私がホッとした顔をして見せたのに、お父様は険しい表情を崩さない。どうして?
「キャサリンを連れ戻さねば!」
「お父様! キャサリンは追いかけたら国を滅ぼすのでしょう?」
「聖女が我が国でそんなことをするわけがない! ディル王国を脅したにすぎないだろう。それに、愛し子と一緒にいるのならば、愛し子の加護も我が国のものになるわけだ。二人を保護するしかなかろう!」
決意に満ちたお父様は、私とお母様の表情が陰っていることに気づいてないのね。
「あなた。キャサリンを連れ戻して、どうされるつもりですの?」
お母様が眉間にシワを寄せたまま尋ねる。
「王家の人間と婚姻を結ぶ」
私もお母様も目を見開く。
その対象は、たった一人しかいないのに!
「お父様、ひどいわ! 私がコンラッド様を愛しているって知っているでしょう!」
さめざめと泣くふりをすると、お父様が困ったように首をふる。
「王からの命令なのだ。逆らえるわけがなかろう」
嘘よ!
青ざめた私の顔を見ても、お父様が言葉を撤回することはなかった。
お母様が、わなわなと震えている。
キャサリンが聖女だなんて最悪だわ!
……絶対に、覆してやるんだから!
◇
「ノーフォーク公爵よ。ディル王国国王直々の忠告を無視するとは、覚悟があってのことだな?」
私の体を拘束する男が、お父様に冷たく言い放つ。
私の顔には、冷たい刃物があてがわれている。私の体は、恐怖でガタガタと震える。
お父様も男に拘束されていて、青ざめた顔で小さく首を横にふる。
お母様は、拘束されたまま気を失ってしまっている。
「そ、そんなつもりは!」
「だが、聖女の居場所を探し回っていることは確かだろう?」
「お、王が命令したのです! 私はやめた方が言いと言ったのです!」
「言い訳など要らぬ。さあ、ノーフォーク公爵、もう聖女を探し回らないと約束するんだ」
お父様の視線が揺れる。
「約束しろ!」
「……約束いたします」
渋々告げるお父様に、大きなため息が落とされる。
「信用ならんな」
「……信用してもらうしか!」
「よし、次に言葉を違えたら、お前の命、貰い受けよう」
「ですが、王に命令されたら……」
ぶつぶつと告げるお父様が、鼻で笑われる。
「安心しろ。王家にも約束は取り付けてある。ついでに、王家はノーフォーク公爵家が勝手に始めたと言っていたぞ。もう、ノーフォーク公爵家は王家から見捨てられたのだ」
「そんな!?」
目を見開くお父様に、答える人間は誰もいなくなった。
私たちを拘束していた人間たちは、あっという間に消えてしまった。
私はへなへなと座り込む。そして、同じように座り込んだお父様を見る。
……これで、もうキャサリンを探すことはなくなるのね。
そうだわ!
「ねえ、お父様。これで、コンラッド様の婚約者は、私のままになるのでしょう?」
私の質問に、表情が固まったお父様は答えてくれなかった。
……私の幸せは、もとのままよね?
完
「う、嘘に決まっているわ!」
私は信じられない気持ちでお父様の言葉に首を横にふる。お母様も激しく首を横にふっている。特にキャサリンをいじめまくっていたのはお母様だから、信じたくないんでしょうけど。私はキャサリンのことを無視していただけだから、何かがあってもきっと大丈夫。
「嘘よ。そんなわけがありませんわ!」
でも、一応演技はしないとね。
「だが、聖女様が亡くなったあと、ディル王国でキャサリンが神託を受けたと聞いた」
ソファーに座り両手を組むお父様は、何やら思案顔だ。
ハッとする。
まさか、お父様は……。そうだわ!
「お父様! キャサリンがこのままディル王国の王家に嫁げば良いのじゃなくて?」
そうすれば、厄介払いもできるし、我が家にとっても益があるはず。
何て素晴らしい考えかしら!
「それはできん」
だけど、お父様は険しい顔で首を横にふる。
「どうしてですの? 私がこの国の国母になり、キャサリンがかの国の王家に嫁ぐ。これ以上素晴らしい策はないわ!」
「ディル王国では、聖女は国を滅ぼすと言い伝えられている」
「お父様! それならば、キャサリンは捕らえられてしまっているのかしら?」
もし処刑されたとしても、私は痛くも痒くもないわ。
ディル王国では、聖女の扱いがそうだって話だけだもの!
「いや。キャサリンはもうディル王国にはいないらしい」
え?
「どうしてですの?」
既に追放されてしまったってことかしら?
それならそれでもいいわね。私と殿下の結婚に影響がなければ、キャサリンなどどうなったっていいわ。
「ディル王国の愛し子を連れて、追うならば国を滅ぼすと言い捨てて去ったらしい」
「愛し子?」
「知らぬのか? ディル王国では、愛し子が国を繁栄させると言い伝えられている」
愛し子、ね……。ふふふ。キャサリンったら、墓穴を掘っているだけじゃないの。
「お父様、キャサリンはディル王国の尋ね人になってしまったってことですの? 犯罪者が我が家から出てしまうなんて!」
私は顔をおおって泣いたふりをする。
「クララ、大丈夫よ。私たちにはお父様がいるわ」
お母様が私の頭を撫でる。
そんなこと知っているわ。それに、私には最愛の皇太子様がついているから、絶対大丈夫よ!
「いや。尋ね人にはなっていない。だが、私たちにも追いかけるなと言伝てがあったと」
よくわからないけど、勝手にいなくなってくれたんなら、本当にどうでもいいわ。
「それなら良かった」
私がホッとした顔をして見せたのに、お父様は険しい表情を崩さない。どうして?
「キャサリンを連れ戻さねば!」
「お父様! キャサリンは追いかけたら国を滅ぼすのでしょう?」
「聖女が我が国でそんなことをするわけがない! ディル王国を脅したにすぎないだろう。それに、愛し子と一緒にいるのならば、愛し子の加護も我が国のものになるわけだ。二人を保護するしかなかろう!」
決意に満ちたお父様は、私とお母様の表情が陰っていることに気づいてないのね。
「あなた。キャサリンを連れ戻して、どうされるつもりですの?」
お母様が眉間にシワを寄せたまま尋ねる。
「王家の人間と婚姻を結ぶ」
私もお母様も目を見開く。
その対象は、たった一人しかいないのに!
「お父様、ひどいわ! 私がコンラッド様を愛しているって知っているでしょう!」
さめざめと泣くふりをすると、お父様が困ったように首をふる。
「王からの命令なのだ。逆らえるわけがなかろう」
嘘よ!
青ざめた私の顔を見ても、お父様が言葉を撤回することはなかった。
お母様が、わなわなと震えている。
キャサリンが聖女だなんて最悪だわ!
……絶対に、覆してやるんだから!
◇
「ノーフォーク公爵よ。ディル王国国王直々の忠告を無視するとは、覚悟があってのことだな?」
私の体を拘束する男が、お父様に冷たく言い放つ。
私の顔には、冷たい刃物があてがわれている。私の体は、恐怖でガタガタと震える。
お父様も男に拘束されていて、青ざめた顔で小さく首を横にふる。
お母様は、拘束されたまま気を失ってしまっている。
「そ、そんなつもりは!」
「だが、聖女の居場所を探し回っていることは確かだろう?」
「お、王が命令したのです! 私はやめた方が言いと言ったのです!」
「言い訳など要らぬ。さあ、ノーフォーク公爵、もう聖女を探し回らないと約束するんだ」
お父様の視線が揺れる。
「約束しろ!」
「……約束いたします」
渋々告げるお父様に、大きなため息が落とされる。
「信用ならんな」
「……信用してもらうしか!」
「よし、次に言葉を違えたら、お前の命、貰い受けよう」
「ですが、王に命令されたら……」
ぶつぶつと告げるお父様が、鼻で笑われる。
「安心しろ。王家にも約束は取り付けてある。ついでに、王家はノーフォーク公爵家が勝手に始めたと言っていたぞ。もう、ノーフォーク公爵家は王家から見捨てられたのだ」
「そんな!?」
目を見開くお父様に、答える人間は誰もいなくなった。
私たちを拘束していた人間たちは、あっという間に消えてしまった。
私はへなへなと座り込む。そして、同じように座り込んだお父様を見る。
……これで、もうキャサリンを探すことはなくなるのね。
そうだわ!
「ねえ、お父様。これで、コンラッド様の婚約者は、私のままになるのでしょう?」
私の質問に、表情が固まったお父様は答えてくれなかった。
……私の幸せは、もとのままよね?
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