24 / 49
先輩の呼び出し(2年生の時)
しおりを挟む
「ハース君はいるかな?」
教室に顔を出したのは、先輩だった。ハースたちの一つ上の先輩だ。
ハースの顔がこわばる。
その表情に、周りのクラスメイトも緊張する。
一体何が起こるのか、想像できなかった。
「先輩、なんでしょうか? アリスのことなら譲りませんよ」
それはないだろう。
クラスメイトは皆心の中で総ツッコミする。
先輩の顔も困っている。
「いや、そうじゃなくて」
ハースがホッとする。もちろんクラスメイトもホッとした。
「えーっと、どうやったらそういう風にヤンデレを突き詰められるのかな、って」
「え? 何ですか?」
ハースがにこやかに聞き返した。クラスメイトたちは何だかヒヤヒヤした。
この先輩は命知らずなのかもしれないと誰もが思った。
「えーっと、だから……どうやって、好きな相手をこう……囲い込めるのかなって」
ああ、とハースがうなずいた。
「先輩、それは愛ですよ」
真剣な顔でハースが告げた。
「愛?」
先輩が首をかしげる。
「ええ。今はまだ先輩の愛が足りてないんじゃないですか?」
「愛、か……」
「先輩が愛を全面に押し出せば、きっと相手も応えてくれます!」
ハースが力強く言い切ると、先輩がコクリと頷いた。
「わかった。頑張ってみるわ! ありがとう!」
先輩が笑顔を見せて颯爽と去っていった。
1か月後、その先輩の名前が学院に轟いた。先生から厳重注意を受け謹慎になったからだ。女生徒に対する迷惑行為のせいだった。
あの会話を聞いていたクラスメイトの誰もが、やっぱり、と思った。当然の結末だとも思えた。
しかも、ハースもこうなる可能性は十分予測していたはずだ。
あの直後、ハースがぼそりと呟いていたからだ。
「ただし、相手が受け入れてくれる場合だけですよ」
クラスメイトは、ハースにヤンデレと呼び掛けるのだけはやめようと心に決めた。
教室に顔を出したのは、先輩だった。ハースたちの一つ上の先輩だ。
ハースの顔がこわばる。
その表情に、周りのクラスメイトも緊張する。
一体何が起こるのか、想像できなかった。
「先輩、なんでしょうか? アリスのことなら譲りませんよ」
それはないだろう。
クラスメイトは皆心の中で総ツッコミする。
先輩の顔も困っている。
「いや、そうじゃなくて」
ハースがホッとする。もちろんクラスメイトもホッとした。
「えーっと、どうやったらそういう風にヤンデレを突き詰められるのかな、って」
「え? 何ですか?」
ハースがにこやかに聞き返した。クラスメイトたちは何だかヒヤヒヤした。
この先輩は命知らずなのかもしれないと誰もが思った。
「えーっと、だから……どうやって、好きな相手をこう……囲い込めるのかなって」
ああ、とハースがうなずいた。
「先輩、それは愛ですよ」
真剣な顔でハースが告げた。
「愛?」
先輩が首をかしげる。
「ええ。今はまだ先輩の愛が足りてないんじゃないですか?」
「愛、か……」
「先輩が愛を全面に押し出せば、きっと相手も応えてくれます!」
ハースが力強く言い切ると、先輩がコクリと頷いた。
「わかった。頑張ってみるわ! ありがとう!」
先輩が笑顔を見せて颯爽と去っていった。
1か月後、その先輩の名前が学院に轟いた。先生から厳重注意を受け謹慎になったからだ。女生徒に対する迷惑行為のせいだった。
あの会話を聞いていたクラスメイトの誰もが、やっぱり、と思った。当然の結末だとも思えた。
しかも、ハースもこうなる可能性は十分予測していたはずだ。
あの直後、ハースがぼそりと呟いていたからだ。
「ただし、相手が受け入れてくれる場合だけですよ」
クラスメイトは、ハースにヤンデレと呼び掛けるのだけはやめようと心に決めた。
43
あなたにおすすめの小説
10日後に婚約破棄される公爵令嬢
雨野六月(旧アカウント)
恋愛
公爵令嬢ミシェル・ローレンは、婚約者である第三王子が「卒業パーティでミシェルとの婚約を破棄するつもりだ」と話しているのを聞いてしまう。
「そんな目に遭わされてたまるもんですか。なんとかパーティまでに手を打って、婚約破棄を阻止してみせるわ!」「まあ頑張れよ。それはそれとして、課題はちゃんとやってきたんだろうな? ミシェル・ローレン」「先生ったら、今それどころじゃないって分からないの? どうしても提出してほしいなら先生も協力してちょうだい」
これは公爵令嬢ミシェル・ローレンが婚約破棄を阻止するために(なぜか学院教師エドガーを巻き込みながら)奮闘した10日間の備忘録である。
お言葉を返すようですが、私それ程暇人ではありませんので
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<あなた方を相手にするだけ、時間の無駄です>
【私に濡れ衣を着せるなんて、皆さん本当に暇人ですね】
今日も私は許婚に身に覚えの無い嫌がらせを彼の幼馴染に働いたと言われて叱責される。そして彼の腕の中には怯えたふりをする彼女の姿。しかも2人を取り巻く人々までもがこぞって私を悪者よばわりしてくる有様。私がいつどこで嫌がらせを?あなた方が思う程、私暇人ではありませんけど?
お前との婚約は、ここで破棄する!
ねむたん
恋愛
「公爵令嬢レティシア・フォン・エーデルシュタイン! お前との婚約は、ここで破棄する!」
華やかな舞踏会の中心で、第三王子アレクシス・ローゼンベルクがそう高らかに宣言した。
一瞬の静寂の後、会場がどよめく。
私は心の中でため息をついた。
不愛想な婚約者のメガネをこっそりかけたら
柳葉うら
恋愛
男爵令嬢のアダリーシアは、婚約者で伯爵家の令息のエディングと上手くいっていない。ある日、エディングに会いに行ったアダリーシアは、エディングが置いていったメガネを出来心でかけてみることに。そんなアダリーシアの姿を見たエディングは――。
「か・わ・い・い~っ!!」
これまでの態度から一変して、アダリーシアのギャップにメロメロになるのだった。
出来心でメガネをかけたヒロインのギャップに、本当は溺愛しているのに不器用であるがゆえにぶっきらぼうに接してしまったヒーローがノックアウトされるお話。
9時から5時まで悪役令嬢
西野和歌
恋愛
「お前は動くとロクな事をしない、だからお前は悪役令嬢なのだ」
婚約者である第二王子リカルド殿下にそう言われた私は決意した。
ならば私は願い通りに動くのをやめよう。
学園に登校した朝九時から下校の夕方五時まで
昼休憩の一時間を除いて私は椅子から動く事を一切禁止した。
さあ望むとおりにして差し上げました。あとは王子の自由です。
どうぞ自らがヒロインだと名乗る彼女たちと仲良くして下さい。
卒業パーティーもご自身でおっしゃった通りに、彼女たちから選ぶといいですよ?
なのにどうして私を部屋から出そうとするんですか?
嫌です、私は初めて自分のためだけの自由の時間を手に入れたんです。
今まで通り、全てあなたの願い通りなのに何が不満なのか私は知りません。
冷めた伯爵令嬢と逆襲された王子の話。
☆別サイトにも掲載しています。
※感想より続編リクエストがありましたので、突貫工事並みですが、留学編を追加しました。
これにて完結です。沢山の皆さまに感謝致します。
婚約者とその幼なじみがいい雰囲気すぎることに不安を覚えていましたが、誤解が解けたあとで、その立ち位置にいたのは私でした
珠宮さくら
恋愛
クレメンティアは、婚約者とその幼なじみの雰囲気が良すぎることに不安を覚えていた。
そんな時に幼なじみから、婚約破棄したがっていると聞かされてしまい……。
※全4話。
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
婚約破棄は踊り続ける
お好み焼き
恋愛
聖女が現れたことによりルベデルカ公爵令嬢はルーベルバッハ王太子殿下との婚約を白紙にされた。だがその半年後、ルーベルバッハが訪れてきてこう言った。
「聖女は王太子妃じゃなく神の花嫁となる道を選んだよ。頼むから結婚しておくれよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる