捨てた騎士と拾った魔術師

吉野屋

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第八章

最終話

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 エミリアンは身体強化した渾身の力でルイスの身体を引き留めたていた、ルイスは狂ったように暴れるが、背中からウエストの辺りを抱きしめるようにして彼女の魔力ちからを注ぎこみ彼ごと黒いモノを浄化するためだけに集中していた。

 この黒い穢れはとても悲しいモノで出来ている。

 ルイスは苦しんで苦しんで散々黒いモノを撒き散らしたけれど、全てを浄化され、彼が倒れて動かなくなるまでエミリアンは放さなかった。


 全てが浄化されますように、苦しみが癒えますように…

 そうでなければ、何のための生なのかわからないではないか

 恨みを晴らして、国を滅ぼし、世界を壊したとしても

 その後も黒い渇きは続き、永遠に癒える事は無い苦しみが待っている…

 


  アレンは、何とか近寄ろうとしたがエミリアンの全力の魔力の前では彼の結界能力をしても、弾かれ直ぐ近くにいるのに何も出来ず、ただただ、見守ることしか出来なかった。

 歯がゆくて長い時だった。

 目が霞むほどの白い強烈な光は次第に淡い光へと変わり、長い時間ののちに治まった時にはエミリアンとアレンの身体は床に崩おれていた。


 すぐさま、アレンはエミリアンを助け起こし抱き上げると、他の者を呼びルイスの生死を確認させると、ルイスの意識は戻らなかったが生きてはいた。

 抱き上げた時、エミリアンの身体はとても冷たく、触った瞬間とても嫌な予感がしたが、弱くても心臓が動いているのを確認する。

 医療塔の一部も破壊されていたが、すぐに魔術師団の修復屋と呼ばれる部署に修理にかからせた。

 アレンは生きた心地がしなかった、すぐさま医療塔に運びエミリアンに治療を受けさせる。

 彼女の魔力は枯渇しており、大変危険な状態だと言われ、アレン自ら彼女に毎日少しづつ魔力を与えた。

 一度に与えても溜める事が出来ずに溢れ出てしまうので、毎日少しずつ何回も与えるのが良いのだと言われたのだ。

 そう、彼女の魔力を溜める器官が壊れかけているのだこれを修復するのは大変な時間がかかるだろうと言われた。

 毎日アレンから魔力を分け与えて貰いエミリアンは少しずつその壊れた器官を治していったが、眠ったまま一年経ってもまだ目覚めなかった。

 その頃には、城からアレンの屋敷に連れて戻り、屋敷での治療に切り替えた。
 
 屋敷にはアンドレアも居る、毎日アンドレアもアレンの見よう見まねで彼女に魔力を与えるようになった。

 アンドレアの魔力は強く、エミリアンと同じ治癒能力を持っている。

 きっとエミリアンもそのうち目覚めるはずだ。



 そして、それからまた一年が過ぎた。

 「うちの眠り姫様はまだ目覚めないね、アンディー」

 「とーさま、かーさまは、もーすぐおきるとおもいます」

 アレンはエミリアンが眠りについて1年経過した頃に、正式にアンドレアを自分の養子にした。
 
 今回の事がなければもっと早くにエミリアンに相談してからそうしようと思っていたが彼女がいつ目覚めるかわからない状態だとアンドレアが心細いのではないかと思ったのだ。

『今日からとーさまになったので、そう呼んでくれ、私でも良いか?』

 その問いかけを受け、アンドレアはその時からアレンをとーさまと呼んでくれた。

 二人のやり取りを見ると中の良い親子にしか見えないので、ヤナス皇太子はとても羨ましがっている。

 アンドレアはとても賢く、魔法の才もあるようで、休みの日に時間があればアレンが直接色々な事を彼に教えた。

 アレンは小さなアンドレアに遊びをからめて魔法を教えるのがとても上手かった。


 
 そしてルイスは、あの後三か月以上経ってから目覚めた。

 彼は今まで生きてきた記憶の殆どを無くしていたが、まるで水が土に染み込むように新しく教えられる事を頭に入れて行き、二年経つ頃には普通に生活できるようになっていた。

 彼には新しい環境が用意され、ベルダへの派遣兵の一人として赴きそちらで生活している。



 それからしばらく経ってアンドレアが言うようにエミリアンは目覚めた。

 二人がそろっている時に、ぽっかりと目を開けたエミリアンは、かすれた声で二人に「ありがとう」と言った。

 長い時間眠っていた身体が元気になるまで、それから暫くの時間を要したけれど、アレンもアンドレアもそんなことは関係なかった。

 甲斐甲斐しくエミリアンの世話を焼く二人は血が繋がっていなくてもそっくりだと屋敷の者達も微笑ましく思ったのだった。

 

 ある日の午後、アンドレアはマリンやカタニー達と庭で遊んでいた。

 ノックをして彼女が過ごしている居間にアレンは入ってくると、エミリアンの座るソファーの側に立ち、声をかけた。

 「今、時間をとってもらっても良いか?」

 部屋には二人きりだった。

 「アレン様、今日はお仕事はお休みですか?」

 「ああ、今日は吉日なのでお前に聞いて貰いたい事があるのだ」

 「吉日?」

 「そうだ、お前が国を救った日だ、あれから三年経つ」

 「私が救ったのじゃなくて、皆で戦って勝った日です」

 「そうだな、そうとも言うかもしれん」


 アレンがエミリアンを見下ろす瞳は優しい。

 エミリアンはだいぶ元気になったがアレンが過保護で、まだ屋敷で過ごす事が多い。

 そう言えば来年からは、アンドレアは王立魔法学園に通う事になっているので、なんやかやと必要な物をアレンを通して侍女長のザリやの執事長のファーブルが用意してくれている。

 今度、プレストン商会のアリスが商品を持って来てくれると聞いている。



 アレンはエミリアの座る前に片膝を付いて彼女の右手を取った。

 「エミリアン、私の妻になってくれないか?とても愛している。これからも愛していく、ずっと傍に居て欲しい」

 エミリアンは胸がいっぱいになった。

 人の心はうつろうものだけれど、アレンが愛してくれるように、彼女もまた愛している。

 この愛情を積み重ねて、もっと深いものにしていけると思うのだ…

 ぶっきらぼうだけれど、暖かい人だ。いつも彼女をさりげなく包んでくれて守ってくれていた。

 彼女もアレンと一緒に年を重ねて行きたいと願う、大切にしたい。

 「…私もアレン様を愛してる、ずっと愛していきたい‥」


 アレンはエミリアンのたよりない小柄な体を引き寄せ抱きしめた。

 それをこっそり覗き見していたアンドレアは窓から離れてマリンとカタニーに笑いかけた。




                                              おわり

                                         
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