43 / 43
第八章
最終話
しおりを挟むエミリアンは身体強化した渾身の力でルイスの身体を引き留めたていた、ルイスは狂ったように暴れるが、背中からウエストの辺りを抱きしめるようにして彼女の魔力を注ぎこみ彼ごと黒いモノを浄化するためだけに集中していた。
この黒い穢れはとても悲しいモノで出来ている。
ルイスは苦しんで苦しんで散々黒いモノを撒き散らしたけれど、全てを浄化され、彼が倒れて動かなくなるまでエミリアンは放さなかった。
全てが浄化されますように、苦しみが癒えますように…
そうでなければ、何のための生なのかわからないではないか
恨みを晴らして、国を滅ぼし、世界を壊したとしても
その後も黒い渇きは続き、永遠に癒える事は無い苦しみが待っている…
アレンは、何とか近寄ろうとしたがエミリアンの全力の魔力の前では彼の結界能力をしても、弾かれ直ぐ近くにいるのに何も出来ず、ただただ、見守ることしか出来なかった。
歯がゆくて長い時だった。
目が霞むほどの白い強烈な光は次第に淡い光へと変わり、長い時間の後に治まった時にはエミリアンとアレンの身体は床に崩おれていた。
すぐさま、アレンはエミリアンを助け起こし抱き上げると、他の者を呼びルイスの生死を確認させると、ルイスの意識は戻らなかったが生きてはいた。
抱き上げた時、エミリアンの身体はとても冷たく、触った瞬間とても嫌な予感がしたが、弱くても心臓が動いているのを確認する。
医療塔の一部も破壊されていたが、すぐに魔術師団の修復屋と呼ばれる部署に修理にかからせた。
アレンは生きた心地がしなかった、すぐさま医療塔に運びエミリアンに治療を受けさせる。
彼女の魔力は枯渇しており、大変危険な状態だと言われ、アレン自ら彼女に毎日少しづつ魔力を与えた。
一度に与えても溜める事が出来ずに溢れ出てしまうので、毎日少しずつ何回も与えるのが良いのだと言われたのだ。
そう、彼女の魔力を溜める器官が壊れかけているのだこれを修復するのは大変な時間がかかるだろうと言われた。
毎日アレンから魔力を分け与えて貰いエミリアンは少しずつその壊れた器官を治していったが、眠ったまま一年経ってもまだ目覚めなかった。
その頃には、城からアレンの屋敷に連れて戻り、屋敷での治療に切り替えた。
屋敷にはアンドレアも居る、毎日アンドレアもアレンの見よう見まねで彼女に魔力を与えるようになった。
アンドレアの魔力は強く、エミリアンと同じ治癒能力を持っている。
きっとエミリアンもそのうち目覚めるはずだ。
そして、それからまた一年が過ぎた。
「うちの眠り姫様はまだ目覚めないね、アンディー」
「とーさま、かーさまは、もーすぐおきるとおもいます」
アレンはエミリアンが眠りについて1年経過した頃に、正式にアンドレアを自分の養子にした。
今回の事がなければもっと早くにエミリアンに相談してからそうしようと思っていたが彼女がいつ目覚めるかわからない状態だとアンドレアが心細いのではないかと思ったのだ。
『今日からとーさまになったので、そう呼んでくれ、私でも良いか?』
その問いかけを受け、アンドレアはその時からアレンをとーさまと呼んでくれた。
二人のやり取りを見ると中の良い親子にしか見えないので、ヤナス皇太子はとても羨ましがっている。
アンドレアはとても賢く、魔法の才もあるようで、休みの日に時間があればアレンが直接色々な事を彼に教えた。
アレンは小さなアンドレアに遊びをからめて魔法を教えるのがとても上手かった。
そしてルイスは、あの後三か月以上経ってから目覚めた。
彼は今まで生きてきた記憶の殆どを無くしていたが、まるで水が土に染み込むように新しく教えられる事を頭に入れて行き、二年経つ頃には普通に生活できるようになっていた。
彼には新しい環境が用意され、ベルダへの派遣兵の一人として赴きそちらで生活している。
それからしばらく経ってアンドレアが言うようにエミリアンは目覚めた。
二人がそろっている時に、ぽっかりと目を開けたエミリアンは、かすれた声で二人に「ありがとう」と言った。
長い時間眠っていた身体が元気になるまで、それから暫くの時間を要したけれど、アレンもアンドレアもそんなことは関係なかった。
甲斐甲斐しくエミリアンの世話を焼く二人は血が繋がっていなくてもそっくりだと屋敷の者達も微笑ましく思ったのだった。
ある日の午後、アンドレアはマリンやカタニー達と庭で遊んでいた。
ノックをして彼女が過ごしている居間にアレンは入ってくると、エミリアンの座るソファーの側に立ち、声をかけた。
「今、時間をとってもらっても良いか?」
部屋には二人きりだった。
「アレン様、今日はお仕事はお休みですか?」
「ああ、今日は吉日なのでお前に聞いて貰いたい事があるのだ」
「吉日?」
「そうだ、お前が国を救った日だ、あれから三年経つ」
「私が救ったのじゃなくて、皆で戦って勝った日です」
「そうだな、そうとも言うかもしれん」
アレンがエミリアンを見下ろす瞳は優しい。
エミリアンはだいぶ元気になったがアレンが過保護で、まだ屋敷で過ごす事が多い。
そう言えば来年からは、アンドレアは王立魔法学園に通う事になっているので、なんやかやと必要な物をアレンを通して侍女長のザリやの執事長のファーブルが用意してくれている。
今度、プレストン商会のアリスが商品を持って来てくれると聞いている。
アレンはエミリアの座る前に片膝を付いて彼女の右手を取った。
「エミリアン、私の妻になってくれないか?とても愛している。これからも愛していく、ずっと傍に居て欲しい」
エミリアンは胸がいっぱいになった。
人の心はうつろうものだけれど、アレンが愛してくれるように、彼女もまた愛している。
この愛情を積み重ねて、もっと深いものにしていけると思うのだ…
ぶっきらぼうだけれど、暖かい人だ。いつも彼女をさりげなく包んでくれて守ってくれていた。
彼女もアレンと一緒に年を重ねて行きたいと願う、大切にしたい。
「…私もアレン様を愛してる、ずっと愛していきたい‥」
アレンはエミリアンのたよりない小柄な体を引き寄せ抱きしめた。
それをこっそり覗き見していたアンドレアは窓から離れてマリンとカタニーに笑いかけた。
おわり
102
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたのでファンシーショップ始めました。 ― 元婚約者が、お人形さんを側室にしようとして大恥をかきました ―
鷹 綾
恋愛
隣国の王子から「政略的にも個人的にも魅力を感じない」と婚約破棄された、ファンタジア王国第三女王タナー。
泣きも怒りもせず、彼女が考えたのは――「いつか王宮の庇護がなくなっても困らない生き方」だった。
まだ八歳。
それでも先を見据え、タナーは王都の片隅で小さなファンシーショップを開くことを決意する。
並ぶのは、かわいい雑貨。
そして、かわいい魔法の雑貨。
お茶を淹れてくれるクマのぬいぐるみ店員《テイデイ・バトラー》、
冷めないティーカップ、
時間になると小鳥が飛び出すアンティーク時計――。
静かに広がる評判の裏で、
かつての元婚約者は「お人形さんを側室にしようとして」赤っ恥をかくことに。
ざまぁは控えめ、日常はやさしく。
かわいいものに囲まれながら、女王は今日も穏やかにお店を開けています。
---
この文面は
✔ アルファポリス向け文字数
✔ 女子読者に刺さるワード配置
✔ ネタバレしすぎない
✔ ほのぼの感キープ
を全部満たしています。
次は
👉 タグ案
👉 ランキング用超短縮あらすじ(100字)
どちらにしますか?
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
※表紙 AIアプリ作成
転生皇女セラフィナ
秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。
目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。
赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。
皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。
前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。
しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。
一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。
「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」
そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。
言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。
それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。
転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。
※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる