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12話 これ聞いていいやつ?
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「おーしっ! 出来たぞー!」
(おっ!)
リンダさんの声が聞こえた瞬間待ってましたとばかりに立ち上がろうとしたけれど、すんでのところでミリアさんの存在を思い出し何とか堪える。おっとっと。危ない危ない…。
「ほれ。どれくらいが好みか分からんかったんで、一応ミディアムレアにしといたぞ。足りなきゃまだ焼くからな」
そう言ってリンダさんがドンッと私の前に置いたのは、美味しそうな匂いをこれでもかと漂わせる肉の塊。……うん、これステーキとは呼べない気が…あ、違うわこれ。何枚ものステーキが重なってるんだ。
積み重なったお肉達をどう食べようかと悩んでいると、いそいそとミリアさんが近付いてきた。その手にはしっかりとフォークとナイフが握られている。結構食い意地張ってるのね……。
「私が食べさせてあげますねっ!」
……ごめんなさい。食い意地が張ってるとか勘違いした私を許して下さい。
ミリアさんがナイフを入れると、まるで抵抗を感じさせない程すんなりと切れていく。そして無事大きめの一切れになったお肉にフォークを刺して持ち上げると、中から覗いたのは鮮やかな赤身。焼き加減完璧じゃん……。
「はい、あーん」
あーんと口を大きく開けて、ホカホカと湯気が踊るお肉を迎え入れる。誤ってフォークまで噛まないよう慎重に口を閉じ、ミリアさんがフォークを引き抜いたのを確認してから漸く牙をお肉に突き立てる。
「っ!」
その瞬間溢れ出した肉汁とお肉本来の甘さに、思わず尻尾が荒ぶる。正直に言おう。めっちゃ美味しい…!
程よい歯応えがありつつも筋は無く、ただただ口の中に幸せを残して溶けていく。味としては牛に近いけれど、癖がなくて凄い食べ易い。これ絶対お高いやつだ……まぁ貰えるなら遠慮無く食べるんですけどねっ!
「美味しいですか?」
「ガウッ!」
「凄い目がキラキラしてるわね……リンダ、追加要るかも」
「任せろ。焼き加減は同じで良いか?」
「いえ。今度はレアにしてみない? アヤメなら普通に生でも食べられるでしょうから、そっちの方が好みに近いかも」
リンダさんとアリーシャさんが何やら会話しているけど、今の私はそれどころじゃない。ミリアさんを催促して、どんどん口に運んでもらう。
「凄い食べっぷりですね…何だか私もお腹が空いてきました」
「じゃあガレフからスープを貰ってきなさいな。アヤメは私が食べさせるから」
「……分かりました」
渋々といった様子でミリアさんがアリーシャさんとバトンタッチ。私としては怪我人のミリアさんにはちゃんと食べて欲しいから、寧ろ交代してくれて助かった。
「ちゃんと味わってる? 喉に詰まっちゃっても知らないわよ?」
怒涛の勢いで食べていたからか、そうアリーシャさんに心配されてしまった。大丈夫、ちゃんと噛んでるから。五回くらい。
「追加焼けたぞー」
わぁい!
◆ ◆ ◆
ふぃぃ……食べた食べた。本当はもっと食べられそうだったけど、リンダさんの負担を考えて十五枚程で止めておいた私は偉い。
「在庫無くなったな……」
「見ていて気持ちのいい食べっぷりだったわね」
「沢山食べるのは良い事だ」
ガレフさんだけなんかズレてる気がするけど……まぁいいか。ちなみにミリアさんだけど、お腹いっぱいになって眠気が来たのかまた私のお腹で熟睡中である。怪我人だからね。仕方無いね。
「さてと。腹拵えも済んだ事だし、今後の計画を立てねぇとな」
「ええ。取り敢えず一旦上へ戻った方がいいでしょうね。ミリアを狙ってきたヤツについても報告しなきゃだし」
眠るミリアさんを放置して話を進める二人。そこに後片付けを終わらせたガレフさんが合流して、本格的に三人で会話を交わしていく。その内容は、ミリアさんが生死の境を彷徨う事になった原因について。
ちなみに私だって当然気になっているので、静かに耳を立てて会話の行く末を見届ける。
「パーティーの要たるミリアを的確に狙ってきたんだ。他にも過去犠牲になった冒険者は居るだろうし、案外情報はあるかもな」
「だが俺は見えなかったぞ。気が付けば後ろにいたミリアが血を流して倒れていたんだ」
「んなもん俺だってそうさ。やり返してやりたいが、相手が分かんねぇんじゃあどうしようもねぇ」
「……」
「アリーシャ?」
「……私はあの時、確かに見たわ。オークジェネラルの後ろで、薄気味悪い笑みを浮かべた口元を」
「「っ!?」」
アリーシャさんの言葉に二人が息を呑む。薄気味悪い笑み……それがミリアさんを傷付けた相手の手掛かり。
「あれがモンスターだったのか。それとも別の何かだったのかは分からない。唯一分かるのは……明らかな悪意と敵意を持って、ミリアを狙ったって言う事だけ」
「…ソイツは、オークジェネラルを従えてたのか?」
「分からない。でもモンスターは本能的に強者に従うものだから、アレがモンスターだったとしたなら有り得ない話じゃないわ」
ふぅむ……事はそう単純じゃないみたいだ。話を聞いていた二人も押し黙ってしまった。……というか今気にする事じゃないかもだけど、魔物じゃなくてモンスターって呼ぶんだね。
オークジェネラルを従える程の強いモンスター。若しくは……悪意を持った何者か。アリーシャさんは濁していたけれど、狙ってきたのは同族の可能性だってある。信じたくはないけどね。
でもアリーシャさんがわざわざモンスター以外を候補に上げたという時点で、そういう存在は確かに居るんだろう。
「……なぁ。パーティーの要だからじゃなくて、ミリアだから狙った可能性はあると思うか?」
「それこそまさかよ。ミリアの事を知る存在なんてもう居ないんだから」
「ま、そうだよなぁ……」
……なんか、聞いちゃいけない事を聞いちゃった気分だわ。でも私は出来る狼なんでね。当然誰にも話したりしませんよ。……そもそも話す口が無いからねっ!
(おっ!)
リンダさんの声が聞こえた瞬間待ってましたとばかりに立ち上がろうとしたけれど、すんでのところでミリアさんの存在を思い出し何とか堪える。おっとっと。危ない危ない…。
「ほれ。どれくらいが好みか分からんかったんで、一応ミディアムレアにしといたぞ。足りなきゃまだ焼くからな」
そう言ってリンダさんがドンッと私の前に置いたのは、美味しそうな匂いをこれでもかと漂わせる肉の塊。……うん、これステーキとは呼べない気が…あ、違うわこれ。何枚ものステーキが重なってるんだ。
積み重なったお肉達をどう食べようかと悩んでいると、いそいそとミリアさんが近付いてきた。その手にはしっかりとフォークとナイフが握られている。結構食い意地張ってるのね……。
「私が食べさせてあげますねっ!」
……ごめんなさい。食い意地が張ってるとか勘違いした私を許して下さい。
ミリアさんがナイフを入れると、まるで抵抗を感じさせない程すんなりと切れていく。そして無事大きめの一切れになったお肉にフォークを刺して持ち上げると、中から覗いたのは鮮やかな赤身。焼き加減完璧じゃん……。
「はい、あーん」
あーんと口を大きく開けて、ホカホカと湯気が踊るお肉を迎え入れる。誤ってフォークまで噛まないよう慎重に口を閉じ、ミリアさんがフォークを引き抜いたのを確認してから漸く牙をお肉に突き立てる。
「っ!」
その瞬間溢れ出した肉汁とお肉本来の甘さに、思わず尻尾が荒ぶる。正直に言おう。めっちゃ美味しい…!
程よい歯応えがありつつも筋は無く、ただただ口の中に幸せを残して溶けていく。味としては牛に近いけれど、癖がなくて凄い食べ易い。これ絶対お高いやつだ……まぁ貰えるなら遠慮無く食べるんですけどねっ!
「美味しいですか?」
「ガウッ!」
「凄い目がキラキラしてるわね……リンダ、追加要るかも」
「任せろ。焼き加減は同じで良いか?」
「いえ。今度はレアにしてみない? アヤメなら普通に生でも食べられるでしょうから、そっちの方が好みに近いかも」
リンダさんとアリーシャさんが何やら会話しているけど、今の私はそれどころじゃない。ミリアさんを催促して、どんどん口に運んでもらう。
「凄い食べっぷりですね…何だか私もお腹が空いてきました」
「じゃあガレフからスープを貰ってきなさいな。アヤメは私が食べさせるから」
「……分かりました」
渋々といった様子でミリアさんがアリーシャさんとバトンタッチ。私としては怪我人のミリアさんにはちゃんと食べて欲しいから、寧ろ交代してくれて助かった。
「ちゃんと味わってる? 喉に詰まっちゃっても知らないわよ?」
怒涛の勢いで食べていたからか、そうアリーシャさんに心配されてしまった。大丈夫、ちゃんと噛んでるから。五回くらい。
「追加焼けたぞー」
わぁい!
◆ ◆ ◆
ふぃぃ……食べた食べた。本当はもっと食べられそうだったけど、リンダさんの負担を考えて十五枚程で止めておいた私は偉い。
「在庫無くなったな……」
「見ていて気持ちのいい食べっぷりだったわね」
「沢山食べるのは良い事だ」
ガレフさんだけなんかズレてる気がするけど……まぁいいか。ちなみにミリアさんだけど、お腹いっぱいになって眠気が来たのかまた私のお腹で熟睡中である。怪我人だからね。仕方無いね。
「さてと。腹拵えも済んだ事だし、今後の計画を立てねぇとな」
「ええ。取り敢えず一旦上へ戻った方がいいでしょうね。ミリアを狙ってきたヤツについても報告しなきゃだし」
眠るミリアさんを放置して話を進める二人。そこに後片付けを終わらせたガレフさんが合流して、本格的に三人で会話を交わしていく。その内容は、ミリアさんが生死の境を彷徨う事になった原因について。
ちなみに私だって当然気になっているので、静かに耳を立てて会話の行く末を見届ける。
「パーティーの要たるミリアを的確に狙ってきたんだ。他にも過去犠牲になった冒険者は居るだろうし、案外情報はあるかもな」
「だが俺は見えなかったぞ。気が付けば後ろにいたミリアが血を流して倒れていたんだ」
「んなもん俺だってそうさ。やり返してやりたいが、相手が分かんねぇんじゃあどうしようもねぇ」
「……」
「アリーシャ?」
「……私はあの時、確かに見たわ。オークジェネラルの後ろで、薄気味悪い笑みを浮かべた口元を」
「「っ!?」」
アリーシャさんの言葉に二人が息を呑む。薄気味悪い笑み……それがミリアさんを傷付けた相手の手掛かり。
「あれがモンスターだったのか。それとも別の何かだったのかは分からない。唯一分かるのは……明らかな悪意と敵意を持って、ミリアを狙ったって言う事だけ」
「…ソイツは、オークジェネラルを従えてたのか?」
「分からない。でもモンスターは本能的に強者に従うものだから、アレがモンスターだったとしたなら有り得ない話じゃないわ」
ふぅむ……事はそう単純じゃないみたいだ。話を聞いていた二人も押し黙ってしまった。……というか今気にする事じゃないかもだけど、魔物じゃなくてモンスターって呼ぶんだね。
オークジェネラルを従える程の強いモンスター。若しくは……悪意を持った何者か。アリーシャさんは濁していたけれど、狙ってきたのは同族の可能性だってある。信じたくはないけどね。
でもアリーシャさんがわざわざモンスター以外を候補に上げたという時点で、そういう存在は確かに居るんだろう。
「……なぁ。パーティーの要だからじゃなくて、ミリアだから狙った可能性はあると思うか?」
「それこそまさかよ。ミリアの事を知る存在なんてもう居ないんだから」
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