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20話 こ、これは本能だから仕方無いんだもんっ!
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これ以上この話を詰めても仕方が無いと判断されたのか、ミスズさんに対する考察は打ち切られた。それにより私も話題の中心から外れたので、いそいそとミリアさんが小さな袋―――多分アイテム袋を持って近付いてくる。
「色々とアヤメの為に買ってきたんですよ!」
そう言って心底楽しそうにニコニコと笑顔を浮かべながら、袋に手を入れてごそごそと中を漁る。そこまで楽しそうにされると期待しちゃうじゃないか。尻尾も荒ぶるよ。あっリサさん掴まないで…!
「まずはこれですね。初めてあげた時大変気に入っていたようだったので」
最初にミリァさんが取り出したのは、見覚えのある茶色い肉の塊。どうやらご飯前に食べさせてもらったオーク肉の燻製みたいだ。くれるの? なら遠慮無く食べるよ?
恐らくは薄く削って小さくしてから食べるものだろうけど、そんなチマチマしてたら私には物足りない。だからガブッと差し出された塊そのままに齧り付いた。
「アヤメッ!?」
「塩辛くない、ですか…?」
驚き心配そうに見詰めてくるミリアさんとリサさんを後目に、もぐもぐと口の中で味わう。確かに保存食とだけあって塩味は強いけど、今の私にとっては丁度良いくらいだ。デカイからね、私。え、関係無い?
「……大丈夫そうですね。本当はオヤツ感覚であげていこうと思っていたのですが…」
「食い意地張ってますねぇ…」
「会った時からそうなんです。アヤメの巨体から考えれば妥当なのかも知れませんが…普段食事はどうしていたのでしょう?」
「普通に他のモンスターを狩っていたんじゃないですか?」
最初はね。最初はそうしてたよ。後から必要無いって気付いて、無駄な努力をしたと落ち込んだけど。
「じゃあ気を取り直して……はいっ!」
名残惜しく燻製をもぐもぐしていると、ミリアさんが新しく何かを取り出した。見たところ食べ物では無くて……これは、ベルト?
「首輪……なんですけど」
「まず無理ですよね」
これ首輪だったのね。でも多分普通の犬用とかのサイズだから、私にはまず嵌らない。
「そもそもミスズさんの許可無くそんなもの付けていいんですか?」
「本人に聞ければ早いですけど居ませんし、それに何か証を付けておかないとアヤメが他の冒険者から敵と認識されかねないですから」
あぁ成程。その為の首輪なのね。うぅん…ミリアさんが折角買ってきてくれた物だから付けたいのは山々なんだけど……あっ、もしかして!
「アヤメ?」
ツンツンとミリアさんの腕を突き、手にしていた首輪に私の前脚を差し出す。すると私が言わんとしていることが分かったのか、あっと声を上げて私の望み通り首輪を足に付けてけれた。うん、ピッタリ。
「その手がありましたか…」
「これじゃ首輪じゃなくて腕輪ですね。似合ってますけど」
ミリアさんが買ってきてくれた首輪は、茶色い革に青い糸で刺繍が施されたとても綺麗なものだった。さらに正面に当たる部分には金属のプレートがぶら下がっていて、何やら文字らしきものが書かれている。
「アヤメと書いてあるんですよ。後で勉強しましょうね」
ほうほう。これがこの世界…というか、ミリアさん達が使う文字なのか。アルファベットっぽい感じもするけど、形が違うかな。これは覚えるのが大変そうだね……。
「モンスターに勉強…」
「アヤメは賢いですから。なのでこんなものも買ってきました」
続いてミリアさんが取り出したのは、数冊の本らしきもの。薄くて表紙に可愛らしい絵が書いてあるから、子供向けの本なのかな?
「これは子供たちが文字を覚えたりする時に使う教本ですよ。とても丁寧な内容なので、アヤメにも分かりやすいと思います」
ミリアさんの説明に成程と頷く。確かに何も知らない私にとって、初心者向けの教本から初めてもらえるのはとても有難い。……まぁ、狼に初心者向けもなにも無いとは思うけど。
「一応書くものも買ってきましたが…」
そう言うミリアさんの手には羽根ペンが。うん、無理だね。普通のペンなら咥えて何とか…って感じだろうし。
「他には何を買ってきたんです?」
「後は…アヤメに合うかは分かりませんが、犬用の玩具を少し」
犬用の玩具……あれか、フリスビーとかか。流石に私は元人間なのでね。そんなものに夢中にはなりませんよ。
「試してみましょうか」
早速とばかりに取り出したのは、片手で握れる大きさのボール。あぁ、そういうのもあるよね。でもそんな物を投げても追い掛けたりなんて――――………
「アヤメは足も速いですね」
………気が付けば、私は投げられたボールを咥えていた。こ、こんな筈では…ッ! こ、これは本能だから! 私の意思じゃないんだからっ!
「とはいえここだと狭過ぎますねぇ」
「元々安全地帯はそういう場所じゃないですしね。アヤメ程の巨体では満足に羽を伸ばせないでしょう」
「うぅん…アヤメを外に出すという事は出来ないんです?」
「外を知らなければ帰還石は発動しませんからね。となると八十階層以上を徒歩で戻らなければなりません。現実的とは言えませんね」
なんか知らない情報がポンっと出てきたよ? 外を知らないと帰還石が発動しない?
「地道に昇るか、アヤメ一人で頑張って貰うかしか方法は無いという事ですね」
「ええ。しかしアヤメは道も知りませんから、一人だけで上まで昇れるかは分かりません。それにアヤメだけで単独行動をさせると、私達はアヤメの場所を把握出来なくなってしまいます」
「ならこのまま同じ階層に一緒に居る方が都合が良いと」
「そうなりますね。アヤメにも私達と一緒に居ることは了承してもらえましたから、暫くは現状維持という事に落ち着いています」
……私、外に出られるなら出たいなぁとは思ってるんだけどね。でもミリアさん達と過ごすのは楽しいし、会えなくなるのも寂しいから暫くは諦めるしかないのかな。私の我儘に付き合わせる訳にもいかないもんね。
「色々とアヤメの為に買ってきたんですよ!」
そう言って心底楽しそうにニコニコと笑顔を浮かべながら、袋に手を入れてごそごそと中を漁る。そこまで楽しそうにされると期待しちゃうじゃないか。尻尾も荒ぶるよ。あっリサさん掴まないで…!
「まずはこれですね。初めてあげた時大変気に入っていたようだったので」
最初にミリァさんが取り出したのは、見覚えのある茶色い肉の塊。どうやらご飯前に食べさせてもらったオーク肉の燻製みたいだ。くれるの? なら遠慮無く食べるよ?
恐らくは薄く削って小さくしてから食べるものだろうけど、そんなチマチマしてたら私には物足りない。だからガブッと差し出された塊そのままに齧り付いた。
「アヤメッ!?」
「塩辛くない、ですか…?」
驚き心配そうに見詰めてくるミリアさんとリサさんを後目に、もぐもぐと口の中で味わう。確かに保存食とだけあって塩味は強いけど、今の私にとっては丁度良いくらいだ。デカイからね、私。え、関係無い?
「……大丈夫そうですね。本当はオヤツ感覚であげていこうと思っていたのですが…」
「食い意地張ってますねぇ…」
「会った時からそうなんです。アヤメの巨体から考えれば妥当なのかも知れませんが…普段食事はどうしていたのでしょう?」
「普通に他のモンスターを狩っていたんじゃないですか?」
最初はね。最初はそうしてたよ。後から必要無いって気付いて、無駄な努力をしたと落ち込んだけど。
「じゃあ気を取り直して……はいっ!」
名残惜しく燻製をもぐもぐしていると、ミリアさんが新しく何かを取り出した。見たところ食べ物では無くて……これは、ベルト?
「首輪……なんですけど」
「まず無理ですよね」
これ首輪だったのね。でも多分普通の犬用とかのサイズだから、私にはまず嵌らない。
「そもそもミスズさんの許可無くそんなもの付けていいんですか?」
「本人に聞ければ早いですけど居ませんし、それに何か証を付けておかないとアヤメが他の冒険者から敵と認識されかねないですから」
あぁ成程。その為の首輪なのね。うぅん…ミリアさんが折角買ってきてくれた物だから付けたいのは山々なんだけど……あっ、もしかして!
「アヤメ?」
ツンツンとミリアさんの腕を突き、手にしていた首輪に私の前脚を差し出す。すると私が言わんとしていることが分かったのか、あっと声を上げて私の望み通り首輪を足に付けてけれた。うん、ピッタリ。
「その手がありましたか…」
「これじゃ首輪じゃなくて腕輪ですね。似合ってますけど」
ミリアさんが買ってきてくれた首輪は、茶色い革に青い糸で刺繍が施されたとても綺麗なものだった。さらに正面に当たる部分には金属のプレートがぶら下がっていて、何やら文字らしきものが書かれている。
「アヤメと書いてあるんですよ。後で勉強しましょうね」
ほうほう。これがこの世界…というか、ミリアさん達が使う文字なのか。アルファベットっぽい感じもするけど、形が違うかな。これは覚えるのが大変そうだね……。
「モンスターに勉強…」
「アヤメは賢いですから。なのでこんなものも買ってきました」
続いてミリアさんが取り出したのは、数冊の本らしきもの。薄くて表紙に可愛らしい絵が書いてあるから、子供向けの本なのかな?
「これは子供たちが文字を覚えたりする時に使う教本ですよ。とても丁寧な内容なので、アヤメにも分かりやすいと思います」
ミリアさんの説明に成程と頷く。確かに何も知らない私にとって、初心者向けの教本から初めてもらえるのはとても有難い。……まぁ、狼に初心者向けもなにも無いとは思うけど。
「一応書くものも買ってきましたが…」
そう言うミリアさんの手には羽根ペンが。うん、無理だね。普通のペンなら咥えて何とか…って感じだろうし。
「他には何を買ってきたんです?」
「後は…アヤメに合うかは分かりませんが、犬用の玩具を少し」
犬用の玩具……あれか、フリスビーとかか。流石に私は元人間なのでね。そんなものに夢中にはなりませんよ。
「試してみましょうか」
早速とばかりに取り出したのは、片手で握れる大きさのボール。あぁ、そういうのもあるよね。でもそんな物を投げても追い掛けたりなんて――――………
「アヤメは足も速いですね」
………気が付けば、私は投げられたボールを咥えていた。こ、こんな筈では…ッ! こ、これは本能だから! 私の意思じゃないんだからっ!
「とはいえここだと狭過ぎますねぇ」
「元々安全地帯はそういう場所じゃないですしね。アヤメ程の巨体では満足に羽を伸ばせないでしょう」
「うぅん…アヤメを外に出すという事は出来ないんです?」
「外を知らなければ帰還石は発動しませんからね。となると八十階層以上を徒歩で戻らなければなりません。現実的とは言えませんね」
なんか知らない情報がポンっと出てきたよ? 外を知らないと帰還石が発動しない?
「地道に昇るか、アヤメ一人で頑張って貰うかしか方法は無いという事ですね」
「ええ。しかしアヤメは道も知りませんから、一人だけで上まで昇れるかは分かりません。それにアヤメだけで単独行動をさせると、私達はアヤメの場所を把握出来なくなってしまいます」
「ならこのまま同じ階層に一緒に居る方が都合が良いと」
「そうなりますね。アヤメにも私達と一緒に居ることは了承してもらえましたから、暫くは現状維持という事に落ち着いています」
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