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㉒医師の過ごしてきた環境
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『異次元の旅人』が再び消えていなくなる話を耳にしてしまった、とロティルは伝えた。ベッドでカヤミの横に座り、項垂れている。
『何処からか現れた人間が、また急にいなくなった噂』
『白い光に包まれて、恐らく消えてしまった』
『2度と戻ってこなかったらしい』
「カヤミにも、いつか突然⋯⋯そんな可能性があるんじゃないかって、そう考えたら怖くなってきて⋯⋯」
掠れた声になり、憔悴しているロティル。あぐらに近い姿勢をしながら隣で見つめるカヤミは、心配を和らげられるよう言葉を選びながら返答する。
「俺は⋯⋯何もないと言い切れるかは、正直わからない 。
けど、今のを聞いた印象は、その話をしてた人達は、目の前で消えたのを直接見たわけじゃ、多分ないよな。
ただの家出した人のことを言ってるみたいにも聞こえる。それに 噂、恐らく、らしい ⋯⋯不確定な言葉ばかりだし。ロティルだって、消えた人なんて今まで見たことないだろ」
「『異次元の旅人』 自体⋯⋯会ったのはカヤミが初めてで」
解釈を聞いてロティルは少しだけ顔を上げた。カヤミは口元に手を当てて、また何か考えているようだ。
「ん。 あとは、そうだな⋯⋯俺がこっちに来る前、向こうでいつも思ってた。
ここから いなくなりたい って」
「え⋯⋯」
医者になる事を義務付けられていたカヤミの家。その為の勉強等が最優先で、年端もいかない頃から常に親から圧力をかけられ続けてきた。自由を許されず、抑えつけられた10数年⋯⋯
長年ずっと我慢した甲斐もあり、最終的に素晴らしい学歴で無事に医師免許も取得。やっと解放される筈だったが。
職場の病院の環境も全くと言っていいほど、良くはなかった。親が医者ということが周囲に知られていたのもあってか、必要以上にキツい物言いをされたり、妬み嫉みからの嫌がらせ、非協力的で、足を引っ張られるような出来事。
業務を必死に覚えて何とか こなしてはいたが、人との関わりでは気持ちはずっと閉ざされ続けたまま。親からの重圧も殆ど変わりなかった。
心の休まる時がなく、安眠出来ない日々が続く。
誰も信用できない
俺は人を助ける仕事をしてるのに
俺を助けてくれる人は 誰もいない
なんか⋯⋯疲れた
ここから いなくなってしまいたい
そんな気持ちで迎えたある朝の通勤途中。自転車に乗っていた時、強風と共に突然空間が歪み、白い光に包まれ⋯⋯
目を開けると、こっちの世界に来ていた。突然の夜の森。訳がわからず、スマホを取り出し何とかしようとしたが、満充電だったにも関わらず電池は0になっていて、間もなく画面は暗くなる。
その後、ずっと森を彷徨い、持っていたペットボトルの水も尽き、靴も紛失。そして、海岸で座り込んでいた所をジゼに助けられ、海辺の町の治療院に身を寄せることとなった。
「いなくなりたいっていう願いを 〝 何か 〟 が叶えてくれたのかもしれない、なんて考えたりしてるんだけど」
「今まで⋯⋯そんな環境にいたの⋯⋯? カヤミは辛いことが、多い な 何 で⋯⋯」
「悪い⋯⋯気分が、もっと滅入っちゃうか」
カヤミの過去の話を聞いて、悲痛な面持ちになるロティル。感情が更に揺れ始める。
「まぁ⋯⋯要するに、前とは逆で ここにいたい と思っていれば、多分⋯⋯大丈夫なんじゃないかな。
かなり単純な考察だけど、当事者の俺が言うんだから噂話よりは多少 説得力ない?」
自分の経験したことをもとに語り、カヤミは割と穏やかな表情でいたが、再び下を向いてしまったロティルの周りには暗雲が漂っている。
「理屈は、何となくわかったけど⋯⋯白い光は、それから見てないの?」
「⋯⋯⋯⋯昨日の、 頭が痛かった⋯⋯って話。その直前に見た。同じものだと思う⋯⋯」
「⋯⋯っ!? また 見てる のか」
息を呑む音をさせ、ロティルが青ざめていく。
「起きた直後だったし、眩しかっただけで関係ないかもしれない。どっちにしろ、俺は今この場にいるんだから気にする必要は⋯⋯」
「⋯⋯」
「ロティル」
「⋯⋯出来れば カヤミの言う 多分 大丈夫を 俺は 信じたい けど これから先また なにか あったら」
ロティルの言葉が辿々しくなり、震えている声と身体。カヤミがそれに気がついた。
『何処からか現れた人間が、また急にいなくなった噂』
『白い光に包まれて、恐らく消えてしまった』
『2度と戻ってこなかったらしい』
「カヤミにも、いつか突然⋯⋯そんな可能性があるんじゃないかって、そう考えたら怖くなってきて⋯⋯」
掠れた声になり、憔悴しているロティル。あぐらに近い姿勢をしながら隣で見つめるカヤミは、心配を和らげられるよう言葉を選びながら返答する。
「俺は⋯⋯何もないと言い切れるかは、正直わからない 。
けど、今のを聞いた印象は、その話をしてた人達は、目の前で消えたのを直接見たわけじゃ、多分ないよな。
ただの家出した人のことを言ってるみたいにも聞こえる。それに 噂、恐らく、らしい ⋯⋯不確定な言葉ばかりだし。ロティルだって、消えた人なんて今まで見たことないだろ」
「『異次元の旅人』 自体⋯⋯会ったのはカヤミが初めてで」
解釈を聞いてロティルは少しだけ顔を上げた。カヤミは口元に手を当てて、また何か考えているようだ。
「ん。 あとは、そうだな⋯⋯俺がこっちに来る前、向こうでいつも思ってた。
ここから いなくなりたい って」
「え⋯⋯」
医者になる事を義務付けられていたカヤミの家。その為の勉強等が最優先で、年端もいかない頃から常に親から圧力をかけられ続けてきた。自由を許されず、抑えつけられた10数年⋯⋯
長年ずっと我慢した甲斐もあり、最終的に素晴らしい学歴で無事に医師免許も取得。やっと解放される筈だったが。
職場の病院の環境も全くと言っていいほど、良くはなかった。親が医者ということが周囲に知られていたのもあってか、必要以上にキツい物言いをされたり、妬み嫉みからの嫌がらせ、非協力的で、足を引っ張られるような出来事。
業務を必死に覚えて何とか こなしてはいたが、人との関わりでは気持ちはずっと閉ざされ続けたまま。親からの重圧も殆ど変わりなかった。
心の休まる時がなく、安眠出来ない日々が続く。
誰も信用できない
俺は人を助ける仕事をしてるのに
俺を助けてくれる人は 誰もいない
なんか⋯⋯疲れた
ここから いなくなってしまいたい
そんな気持ちで迎えたある朝の通勤途中。自転車に乗っていた時、強風と共に突然空間が歪み、白い光に包まれ⋯⋯
目を開けると、こっちの世界に来ていた。突然の夜の森。訳がわからず、スマホを取り出し何とかしようとしたが、満充電だったにも関わらず電池は0になっていて、間もなく画面は暗くなる。
その後、ずっと森を彷徨い、持っていたペットボトルの水も尽き、靴も紛失。そして、海岸で座り込んでいた所をジゼに助けられ、海辺の町の治療院に身を寄せることとなった。
「いなくなりたいっていう願いを 〝 何か 〟 が叶えてくれたのかもしれない、なんて考えたりしてるんだけど」
「今まで⋯⋯そんな環境にいたの⋯⋯? カヤミは辛いことが、多い な 何 で⋯⋯」
「悪い⋯⋯気分が、もっと滅入っちゃうか」
カヤミの過去の話を聞いて、悲痛な面持ちになるロティル。感情が更に揺れ始める。
「まぁ⋯⋯要するに、前とは逆で ここにいたい と思っていれば、多分⋯⋯大丈夫なんじゃないかな。
かなり単純な考察だけど、当事者の俺が言うんだから噂話よりは多少 説得力ない?」
自分の経験したことをもとに語り、カヤミは割と穏やかな表情でいたが、再び下を向いてしまったロティルの周りには暗雲が漂っている。
「理屈は、何となくわかったけど⋯⋯白い光は、それから見てないの?」
「⋯⋯⋯⋯昨日の、 頭が痛かった⋯⋯って話。その直前に見た。同じものだと思う⋯⋯」
「⋯⋯っ!? また 見てる のか」
息を呑む音をさせ、ロティルが青ざめていく。
「起きた直後だったし、眩しかっただけで関係ないかもしれない。どっちにしろ、俺は今この場にいるんだから気にする必要は⋯⋯」
「⋯⋯」
「ロティル」
「⋯⋯出来れば カヤミの言う 多分 大丈夫を 俺は 信じたい けど これから先また なにか あったら」
ロティルの言葉が辿々しくなり、震えている声と身体。カヤミがそれに気がついた。
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