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第四章 レヴィの想い
<4>アラン様と僕4※レヴィ視点
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「アラン様!! 止まりましょう!! 血がこんなに……っ」
けれどアラン様は首を横に振った。
「だめだ。俺がケガしたなんてわかったら皆が動揺する。せっかく勝ったんだ。このまま帰る。大丈夫だ、帰ったらすぐ横になる」
「でも……」
「いいから。けど、ちょっとしんどいから肩貸してくれるか」
「……っ、はい!」
しばらく走って辿り着いた基地で馬ごと魔法陣に乗る。城内に戻った瞬間、耳元でアラン様が呟いた。
「よかった、かえって、これ……た」
「アラン様?」
横を向くと青ざめた顔と血の気のない唇が目に入る。僕は素早くアラン様を抱えるようにして馬から飛び降りた。
重力操作で軽くしたアラン様の体を姫抱きにした瞬間、僕は絶句した。上半身にざっくりと斜めに入った裂傷から、とめどなく血が流れている。子どもでもわかるほどの深い傷だった。
「アラン様っ!! アラン様っ!!」
泣き叫ぶ僕にアラン様が薄く目を開ける。小刻みに触れる片手がゆっくりと動き、いつものように僕の頬を引っ張った。けれど指先は氷のように冷たく、力はとても弱い。
「だい、じょうぶ、だから……ちょっとやすめば、よくなる……、から……」
ダメだ、このまま目を閉じたらアラン様は死んでしまう。
頭が真っ白になり、涙だけが溢れていく。見ためが少し大きくても所詮は10歳の子どもだ。
「い、いまっ……人を呼んで、きます、からっ!! だからっ! アラン様っ!! お願い、僕を置いていかないで……っ!!」
「いい、どうせ、すぐ来る。気配で……わかる、だろ……それ、より俺を……ひとりに、するな……よ」
アラン様の唇が弧を描く。その端から真っ赤な血が少しずつ垂れていく。
「だめ、だめです……! 一緒に……ずっと、一緒にいます、から……っ! だから……っ!!」
死なないでください、という言葉を口にすることはできなかった。その言葉を口にしたら、本当になるような気がして怖かった。
泣きじゃくることしたできない僕に、アラン様はいつもみたいに片眉を下げて困ったように笑う。
「しかな、ねえな……レ、ヴィは……っ、おとこ、が……かんたん、に、なく…な」
僕の目元をなんどかそっと拭ってくれたアラン様の白く美しい手からは、その後すぐにがっくりと力が抜ける。
「すこ、し……やすむ……なく、なよ……レヴィ……」
それが、僕がアラン様と交わした最後の言葉だった。
その後のことはよく覚えていない。駆けつけた救護部隊が僕の腕の中からアラン様を連れ去った後、その場で気を失ってしまったのだ。
気がついたら自室ベッドの上にいた。勝手に騎士団に紛れて戦いに参加したことには大目玉を食らったが、それ以上に皆に褒められた。
最期にアラン様少しの時間だけ意識を取り戻したという。「レヴィが支えてくれなかったら、戦地で死んでいた」と言っていたそうだ。わざわざ国王陛下と王妃様まで、僕の部屋を訊ねてくださった。
俺のせいだと言っても、二人は取り合ってはくれなかった。それどころかありがとうという言葉まで頂いた。王妃様は「私に強い癒しの力があれば救えたのに。私のせいよ」と静かに泣いていた。
結局レヴィ様は死ぬまで僕を守ってくれたのだ。
僕が皆に責められないように、憎まれないように。
すべては僕が無知で弱かったからだ。
剣術も、魔術も、人を見る目も養われていないから。だからウィンダミア王をただの老人と見誤った僕を庇って誰よりも尊敬してやまない、愛する人は亡くなってしまった。
だからアラン様を殺したのは僕だ。僕のせいだ。本当は今すぐにでも後を追ってしまいたい。ウィンダミア王の後を追って死んだ、あの騎士のように。
けれどこの命はアラン様が守ってくれたものだ。だから僕の命は僕自身のものではなく、アラン様のもの。後を追ってもきっと喜んでもらえない。
アラン様はベリンガム帝国を今よりもっと繁栄さえて、国民を守りたいといつもおっしゃっていた。それならば僕は命尽き果てるまで、アラン様のご意思を継ぐまでだ。
そのためには今よりもずっと強くならなければいけない。
弱さは罪だ。強くなければ大切なものは何一つ守れない。
それから僕は自分のせいだと泣き叫んで喚き散らすのをやめ、より厳しい修行に明け暮れる日々を送ったのだ。
けれどアラン様は首を横に振った。
「だめだ。俺がケガしたなんてわかったら皆が動揺する。せっかく勝ったんだ。このまま帰る。大丈夫だ、帰ったらすぐ横になる」
「でも……」
「いいから。けど、ちょっとしんどいから肩貸してくれるか」
「……っ、はい!」
しばらく走って辿り着いた基地で馬ごと魔法陣に乗る。城内に戻った瞬間、耳元でアラン様が呟いた。
「よかった、かえって、これ……た」
「アラン様?」
横を向くと青ざめた顔と血の気のない唇が目に入る。僕は素早くアラン様を抱えるようにして馬から飛び降りた。
重力操作で軽くしたアラン様の体を姫抱きにした瞬間、僕は絶句した。上半身にざっくりと斜めに入った裂傷から、とめどなく血が流れている。子どもでもわかるほどの深い傷だった。
「アラン様っ!! アラン様っ!!」
泣き叫ぶ僕にアラン様が薄く目を開ける。小刻みに触れる片手がゆっくりと動き、いつものように僕の頬を引っ張った。けれど指先は氷のように冷たく、力はとても弱い。
「だい、じょうぶ、だから……ちょっとやすめば、よくなる……、から……」
ダメだ、このまま目を閉じたらアラン様は死んでしまう。
頭が真っ白になり、涙だけが溢れていく。見ためが少し大きくても所詮は10歳の子どもだ。
「い、いまっ……人を呼んで、きます、からっ!! だからっ! アラン様っ!! お願い、僕を置いていかないで……っ!!」
「いい、どうせ、すぐ来る。気配で……わかる、だろ……それ、より俺を……ひとりに、するな……よ」
アラン様の唇が弧を描く。その端から真っ赤な血が少しずつ垂れていく。
「だめ、だめです……! 一緒に……ずっと、一緒にいます、から……っ! だから……っ!!」
死なないでください、という言葉を口にすることはできなかった。その言葉を口にしたら、本当になるような気がして怖かった。
泣きじゃくることしたできない僕に、アラン様はいつもみたいに片眉を下げて困ったように笑う。
「しかな、ねえな……レ、ヴィは……っ、おとこ、が……かんたん、に、なく…な」
僕の目元をなんどかそっと拭ってくれたアラン様の白く美しい手からは、その後すぐにがっくりと力が抜ける。
「すこ、し……やすむ……なく、なよ……レヴィ……」
それが、僕がアラン様と交わした最後の言葉だった。
その後のことはよく覚えていない。駆けつけた救護部隊が僕の腕の中からアラン様を連れ去った後、その場で気を失ってしまったのだ。
気がついたら自室ベッドの上にいた。勝手に騎士団に紛れて戦いに参加したことには大目玉を食らったが、それ以上に皆に褒められた。
最期にアラン様少しの時間だけ意識を取り戻したという。「レヴィが支えてくれなかったら、戦地で死んでいた」と言っていたそうだ。わざわざ国王陛下と王妃様まで、僕の部屋を訊ねてくださった。
俺のせいだと言っても、二人は取り合ってはくれなかった。それどころかありがとうという言葉まで頂いた。王妃様は「私に強い癒しの力があれば救えたのに。私のせいよ」と静かに泣いていた。
結局レヴィ様は死ぬまで僕を守ってくれたのだ。
僕が皆に責められないように、憎まれないように。
すべては僕が無知で弱かったからだ。
剣術も、魔術も、人を見る目も養われていないから。だからウィンダミア王をただの老人と見誤った僕を庇って誰よりも尊敬してやまない、愛する人は亡くなってしまった。
だからアラン様を殺したのは僕だ。僕のせいだ。本当は今すぐにでも後を追ってしまいたい。ウィンダミア王の後を追って死んだ、あの騎士のように。
けれどこの命はアラン様が守ってくれたものだ。だから僕の命は僕自身のものではなく、アラン様のもの。後を追ってもきっと喜んでもらえない。
アラン様はベリンガム帝国を今よりもっと繁栄さえて、国民を守りたいといつもおっしゃっていた。それならば僕は命尽き果てるまで、アラン様のご意思を継ぐまでだ。
そのためには今よりもずっと強くならなければいけない。
弱さは罪だ。強くなければ大切なものは何一つ守れない。
それから僕は自分のせいだと泣き叫んで喚き散らすのをやめ、より厳しい修行に明け暮れる日々を送ったのだ。
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