魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!

松原硝子

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第五章 ヴァンダービルトの呪い

<9>調査開始※レヴィ視点

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胸の中で寝息を立てるエリス様の寝顔を僕はうっとりと眺めている。
「可愛い……あ、少しよだれ出てる」

薄く開いた桜貝のような唇からほんの少しだけ漏れた透明な雫に親指をそっと押し当てる。
唾液を拭った親指を舌で舐めとった。

「甘い……」
エリス様はどこもかしこも甘くていい匂いがする。
本当は今すぐどこもかしこも舐め回してしまいたい。けれど、そんなことをしたら嫌われてしまうだろう。

夫婦になったとはいえ、まだエリス様の気持ちが僕にあるわけじゃない。
きっとまだ、可愛い弟子の域を出ていない。

エリス様としてアラン様が僕のもとに戻ってきてくれた時、叫びだしたいほど狂気的な歓喜で胸がいっぱいだった。

今度こそ、この人を守り一生愛し続ける。
それが僕の生きる意味なのだ。

「ん……」
エリス様が鼻にかかったような甘い声を出して、胸に顔を摺り寄せてきた。

無意識なのはわかっているが、こんなに可愛いことをされたら心にも体にもクるものがある。今にも不埒な動きを見せそうな自分の手を律して目を閉じる。

何度も深呼吸をして、煩悩を頭から取り払う。
だが脳裏に浮かぶのは僕の下で淫らに乱れるエリス様の姿だ。

(くそ……こんなんじゃそのうち、寝てる間に襲ってしまいそうだ)

僕は再び目を開けると天を仰ぐ。
そもそも、エリス様が側にいてくださるなら呪いなんてこのままでも構わない。

そのせいか最近は解呪薬の開発を放置してしまっている。
解呪薬が完成したら、魔力供給の必要もなくなってエリス様とキスをする必要もななくなってしまうのだ。

「解呪できてよかったな! これでもう俺たちが結婚してる必要もないよな?」
妄想の中のエリス様が僕に向かって明るく微笑む。

嫌だ。そんなこと絶対に現実にはさせない。

けれど呪いを受けたままでは大きなデメリットもある。
ヴァンダービルト家の当主は代々、短命なのだ。祖父も父も、驚くほど早く命を終えた。

アラン様は僕を置いて逝ってしまったけれど、今度はエリス様を僕が置いていくことになってしまうかもしれない。

(それも絶対に嫌なんだよなあ)
やはり解呪薬を完成させるか、エリス様と共に呪いを解かなければ死んでも死にきれない結果になってしまう。

解呪するまでにエリス様に僕を愛してもらう。もしくは解呪してもエリス様の心も体も僕から離れないようにする方法を考えなければ。

「考えることもやることも多いな……」

視線を下げると、この世で一番愛らしい寝顔が視界に広がる。
「ああ可愛い……今度は絶対に離さない。ずっとずっと、僕だけのものにしたい」
額にかかる髪の毛をそっと払って、まろやかな額に触れるだけのキスを落とした。
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