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第3章〜運命の人があなたならいいのに 現実はうまくいかない〜⑧
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声をあげた小田先輩は、腕を引いた長洲先輩の身体をそのまま受け止め、後ろからハグをするような体勢になる。
上級生の女子に向かっていたコルク弾は、目標物を失い、ほとんど音を立てることもなく、そのまま、ポトリと地面に落ちる。
一瞬のことで、誰もが言葉を発することができない中で、体格の良い同学年の男子に身体を支えられ、ほおを染める長洲先輩の姿は、目に焼き付くほど印象的だ。
一方の小田先輩は、とっさのことで力強く抱きしめていた、気のおけない仲の女子の表情に気がついたのか、
「あっ……スマン、さつき」
と言って、こちらも顔を紅くしながら、すっと腕のチカラを抜く。
その光景をみながら、ようやく、自分のしでかしたことに気づき、
「すいません、長洲先輩! オレが、暴発させてしまったせいで!」
あわてて、何度も頭を下げて謝ると、上級生の女子生徒は、少し戸惑った表情で、
「いやいや、気にしないで、タッチー! 当たってたとしても、私の顔なんだし……」
と、照れたように返答する。
そんな気遣いを見せてくれた長洲先輩に対して、ふただび、オレが謝罪しようとすると、それより前に上級生の男子が口を開いた。
「バカッ! さつきの顔に何かあったら、どうするんだ!」
その一言に、加害者になりかけたオレをはじめ、周囲の人々が思わず身体をすくませる。
その言葉に、いたたまれなくなったオレは、再度、
「長洲先輩、小田先輩、本当に申し訳ありませんでした」
と、深々と頭を下げる。すると、小田先輩は、
「いや……こっちこそ、声を荒げてすまなかった……立花くん責めようと思ってる訳じゃないんだ」
と、オレに向かって、申し訳なさそうに言葉を返す。
「いえ……自分が、周りに気を配れていなかったのが原因なので……」
オレが、そう返答すると、周囲をキョロキョロと見回した上坂部が、
「あれっ……? 弥生ちゃんは、どこに行ったんだだろう?」
と、つぶやくように、オレたち夏祭りの参加メンバーにたずねる。つられて、オレも辺りに視線を送るが、クラスメートの言うように、下級生の浦風さんの姿が見えない。
「たしか、立花が射的をしているときには、そばにいたよな?」
久々知の言葉に、上坂部はうなずきながら、心配そうな表情でポツリとつぶやく。
「お手洗いに行ったのかもだけど……普段の弥生ちゃんなら、私たちに何か言って行くと思うから……」
「オレ、ちょっと、探して来ます!」
上級生にケガをさせるかも知れなかった、という居心地の悪さと、その汚名をなんとか返上したいという打算、そして、なによりも、姿が見えなくなった下級生が、小田先輩に向けていた視線が気になっていたオレは、メンバーの返事を聞く前に走り出す。
「あっ、ちょっと、タッチー!」
背後からオレを呼ぶ上級生女子の声がしたが、
「すいません、ナニかあれば、すぐに連絡します!」
と、返事をして、オレは屋台が立ち並ぶを路地を人混みをかきわけながら走り出した。
真夏の夜のじっとりした汗ばむ暑さと、日頃の運動不足がたたり、駆け出したのは良いものの、数十メートルばかりの距離ですぐに息が上がる自分の身体に、情けなさを感じながら、路地の十字路を左折する。
浦風さんに、この辺りの土地勘があるのかはわからないが、もしも、ベンチで腰掛けて落ち着こうと考えるなら、参拝客で賑わっている神社ではなく、高架になっている線路の南側にある小さな公園に行くのではないか――――――?
そんな予感がしたオレは、高架の線路をくぐり、マンシビック浜崎という屋内プール施設の脇を抜けて、目的の公園にたどり着く。
小さな子ども用の滑り台などが設置されている児童公園を見渡すと、やや小柄で、白地に薄い黄色の小さな花柄の浴衣姿が見えた。
ホッと安堵して、息を整えながら、膝を抱えてベンチに座っている女子に語りかける。
「浦風さん、大丈夫?」
そっと声を掛けると、ハッと、こちらを見上げた彼女は、オレの顔を確認すると、やや気落ちしたような表情のあと、
「立花先輩……すみません」
と、つぶやくように返事をして、抱え込んだひざに顔を伏せる。その表情と言葉で、彼女が、誰を待っていたのか、誰に声を掛けて欲しかったのかが、瞬時に理解できた。
彼女の元を訪れたのが、一つ年上の男子生徒でなかったことを申し訳なく思いつつ、
「オレのせいで、こんなことになって、ゴメン……」
と、オレは、今日、何度目になるかわからない謝罪の言葉を口にする。
こちらの言葉が意外だったのか、少しだけ顔をあげた下級生は、小さな声で応じてくれた。
「立花先輩は、関係ないですよ……私の方こそ、勝手に屋台の場所から離れちゃって、申し訳ありません」
「みんな心配してるけど、浦風さんが、無事で良かった……もう少し、ここに居る?」
オレの問いかけに対して、かすかに首を振ったように感じた彼女の返答を確認し、オレは、グループLANEを起動させて、小田先輩宛に発信する。
浦風さんが見つかったことと、オレたちの居場所、人混みでつかれた彼女が落ち着くまでそばに居ることを伝えると、先輩は、「わかった、ありがとう」とだけ言って、通話を切った。
先輩との通話を終えたことで、手持ち無沙汰になったオレが、少しだけ距離をおいて、浦風さんの座るベンチに腰掛けると、彼女は、おもむろにこう語りかけてきた。
「立花先輩、少しだけ私の話しを聞いてくれませんか?」
上級生の女子に向かっていたコルク弾は、目標物を失い、ほとんど音を立てることもなく、そのまま、ポトリと地面に落ちる。
一瞬のことで、誰もが言葉を発することができない中で、体格の良い同学年の男子に身体を支えられ、ほおを染める長洲先輩の姿は、目に焼き付くほど印象的だ。
一方の小田先輩は、とっさのことで力強く抱きしめていた、気のおけない仲の女子の表情に気がついたのか、
「あっ……スマン、さつき」
と言って、こちらも顔を紅くしながら、すっと腕のチカラを抜く。
その光景をみながら、ようやく、自分のしでかしたことに気づき、
「すいません、長洲先輩! オレが、暴発させてしまったせいで!」
あわてて、何度も頭を下げて謝ると、上級生の女子生徒は、少し戸惑った表情で、
「いやいや、気にしないで、タッチー! 当たってたとしても、私の顔なんだし……」
と、照れたように返答する。
そんな気遣いを見せてくれた長洲先輩に対して、ふただび、オレが謝罪しようとすると、それより前に上級生の男子が口を開いた。
「バカッ! さつきの顔に何かあったら、どうするんだ!」
その一言に、加害者になりかけたオレをはじめ、周囲の人々が思わず身体をすくませる。
その言葉に、いたたまれなくなったオレは、再度、
「長洲先輩、小田先輩、本当に申し訳ありませんでした」
と、深々と頭を下げる。すると、小田先輩は、
「いや……こっちこそ、声を荒げてすまなかった……立花くん責めようと思ってる訳じゃないんだ」
と、オレに向かって、申し訳なさそうに言葉を返す。
「いえ……自分が、周りに気を配れていなかったのが原因なので……」
オレが、そう返答すると、周囲をキョロキョロと見回した上坂部が、
「あれっ……? 弥生ちゃんは、どこに行ったんだだろう?」
と、つぶやくように、オレたち夏祭りの参加メンバーにたずねる。つられて、オレも辺りに視線を送るが、クラスメートの言うように、下級生の浦風さんの姿が見えない。
「たしか、立花が射的をしているときには、そばにいたよな?」
久々知の言葉に、上坂部はうなずきながら、心配そうな表情でポツリとつぶやく。
「お手洗いに行ったのかもだけど……普段の弥生ちゃんなら、私たちに何か言って行くと思うから……」
「オレ、ちょっと、探して来ます!」
上級生にケガをさせるかも知れなかった、という居心地の悪さと、その汚名をなんとか返上したいという打算、そして、なによりも、姿が見えなくなった下級生が、小田先輩に向けていた視線が気になっていたオレは、メンバーの返事を聞く前に走り出す。
「あっ、ちょっと、タッチー!」
背後からオレを呼ぶ上級生女子の声がしたが、
「すいません、ナニかあれば、すぐに連絡します!」
と、返事をして、オレは屋台が立ち並ぶを路地を人混みをかきわけながら走り出した。
真夏の夜のじっとりした汗ばむ暑さと、日頃の運動不足がたたり、駆け出したのは良いものの、数十メートルばかりの距離ですぐに息が上がる自分の身体に、情けなさを感じながら、路地の十字路を左折する。
浦風さんに、この辺りの土地勘があるのかはわからないが、もしも、ベンチで腰掛けて落ち着こうと考えるなら、参拝客で賑わっている神社ではなく、高架になっている線路の南側にある小さな公園に行くのではないか――――――?
そんな予感がしたオレは、高架の線路をくぐり、マンシビック浜崎という屋内プール施設の脇を抜けて、目的の公園にたどり着く。
小さな子ども用の滑り台などが設置されている児童公園を見渡すと、やや小柄で、白地に薄い黄色の小さな花柄の浴衣姿が見えた。
ホッと安堵して、息を整えながら、膝を抱えてベンチに座っている女子に語りかける。
「浦風さん、大丈夫?」
そっと声を掛けると、ハッと、こちらを見上げた彼女は、オレの顔を確認すると、やや気落ちしたような表情のあと、
「立花先輩……すみません」
と、つぶやくように返事をして、抱え込んだひざに顔を伏せる。その表情と言葉で、彼女が、誰を待っていたのか、誰に声を掛けて欲しかったのかが、瞬時に理解できた。
彼女の元を訪れたのが、一つ年上の男子生徒でなかったことを申し訳なく思いつつ、
「オレのせいで、こんなことになって、ゴメン……」
と、オレは、今日、何度目になるかわからない謝罪の言葉を口にする。
こちらの言葉が意外だったのか、少しだけ顔をあげた下級生は、小さな声で応じてくれた。
「立花先輩は、関係ないですよ……私の方こそ、勝手に屋台の場所から離れちゃって、申し訳ありません」
「みんな心配してるけど、浦風さんが、無事で良かった……もう少し、ここに居る?」
オレの問いかけに対して、かすかに首を振ったように感じた彼女の返答を確認し、オレは、グループLANEを起動させて、小田先輩宛に発信する。
浦風さんが見つかったことと、オレたちの居場所、人混みでつかれた彼女が落ち着くまでそばに居ることを伝えると、先輩は、「わかった、ありがとう」とだけ言って、通話を切った。
先輩との通話を終えたことで、手持ち無沙汰になったオレが、少しだけ距離をおいて、浦風さんの座るベンチに腰掛けると、彼女は、おもむろにこう語りかけてきた。
「立花先輩、少しだけ私の話しを聞いてくれませんか?」
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