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第2章~運命の人があの人ならいいのに現実はうまくいかない~第14話
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クラス委員の上坂部葉月とファストフード店で話し合った翌日、いつものように登校すると、前日と変わらず、教室には幼なじみの久々知大成と談笑している彼女の姿があった。
オレの席のひとつ隣の列で楽しげに会話を交わす四~五人のグループの中には、上坂部と久々知の幼なじみコンビとともに、名和リッカも加わっている。
放課後に話し合ったクラスメートのようすを確認するべく、チラリとグループの方に視線を送ると、偶然だろうか、転入生と目があった。
一瞬、気まずく感じて、すぐに視線をそらしたのだが、こちらの動きに気づいたのか、彼女は、なにごとかを考えるような仕草をしたあと、クスリと微笑んだ気がした。
「ん、どうしたんだ、リッカ? ナニか、面白いことでもあったのか?」
久々知がたずねる声が、かすかに聞こえてくる。
「ううん、昨日から気になっていたことの原因がわかっただけだから」
名和リッカのそんな返答を耳にすると同時に、オレの席に珍しく訪問者があらわれた。
しかも、女子生徒2名である。
先日、他校の演劇を観に行く前に、上坂部と大島が訪ねてきて以来、今学期二度目の出来事だ。
今回の訪問者は、大島睦月と彼女とく同じ吹奏楽部に所属している浜小春だが、いずれにしても、レア・イベントであることは間違いない。
二人は、上坂部や久々知、そして、名和リッカが居るグループから、オレの席が視覚になるような位置に立って語りかけてきた。
「今日のようすだと、昨日の葉月との話し合いは上手く行ったみたいね?」
声のボリュームを絞りながらたずねる大島に、オレは、「おう……」と短く応じる。
すると、もうひとりの訪問者である浜小春が、ホッとしたような表情で、言葉をもらした。
「よかった……立花くん、ありがとう。できれば、これからも上坂部さんのチカラになってあげて。私も出来ることは協力させてもらうから」
これまで、ほとんど話したことがなかった女子生徒の声に、「あぁ、わかった」と、また短く答えると、小柄な女子生徒は、「うん!」と、嬉しそうに応じる。
大島が言っていた、一年のとき、クラスで孤立しかけていた彼女のことを気にかけて、上坂部がクラスのみんなとの仲を取り持ったということに、浜小春自身も感謝しているのだろう、ということが伝わってきた。
大島睦月の他にも、上坂部葉月を推してくれる生徒が居るというのは心強い。
「いま、小春が言ったように、私たちも出来ることがあれば、立花に協力させてもらうから……良かったら、放課後に少し話せない? おたがい、持っている情報を共有しましょう」
相変わらず、慎重に声のトーンを落として語る大島の提案に黙ってうなずいて、賛同の意志を示す。
こうして、テスト前の期間であるにもかかわらず、オレは、2日続けて、放課後に女子生徒と会合を持つことになった。
――――――その日の放課後。
校内を適当に回りながら時間をつぶしたあと、自分たちのクラスに戻ると、約束どおり、吹奏楽部の部員である大島と浜の二人が、教室に残っていた。
「立花、テスト前なのに悪いわね」
声をかけてきた大島に、「いや、大丈夫だ」と返答し、彼女たちが座っている席の近くに生徒の座席を借りることにする。
「お互いの情報を共有しようってことだけど、オレはなにを話せば良いんだ?」
大島の隣の席の生徒の椅子に腰をおろしたオレがたずねると、女子二名が、続けて口を開いた。
「あなたは、葉月にどんなアドバイスをしたの? 昨日からのあのコの変貌ぶりは気になるし……」
「うん! 上坂部さん、スゴく大人っぽい雰囲気になったよね!」
大島の言葉に賛同するように、浜がうなずく。そんな二人のようすを見ながら、返答する。
「大島にも話したけど、参考になりそうなYourTuberの動画を紹介しただけだよ。昨日は、上坂部自身の意志と動画の内容をアイツがどう理解しているかを確認しただけだ」
「そう……今日も、葉月の態度が変わらなかったということは、久々知へのアプローチは継続するってことなのね?」
「オレは、そう認識している。ところで、オレの方からも聞いて良いか? 女子の目から見て、名和リッカって、どういう評価なんだ? 久々知との関係は長く持つと思うか?」
そうたずね返すと、意外なことにあまり普段は、クラス内であまり自己主張をしないタイプの浜小春が口を開いた。
「私は、あんまり話したことがないんだけど……名和さんは、イイ人だと思うよ。気が利くタイプだと思うし。まだ、転校してきて、そんなに時間が経っていないから、どこか一歩引いてクラスの雰囲気を眺めているのかな、って感じる。いまは、冷静にクラスのみんなのことを見てるんじゃないかな?」
「そ、そうか……」
浜の言葉に無難に返答するが、転入生のカラオケボックスでの態度の豹変ぶりを見たオレにとっては、少なくともイイ人という評価を受け入れることはできない。
ただ、そう思っているのは、オレだけのようで、大島は友人の言葉を肯定する。
「小春が言うなら、そうなのかもね。あなたは、他人の言うことや考えを深読みしすぎて、話せなくなることが多いから……」
どうやら、大島睦月は、友人として浜の人物批評の能力を評価しているようだ。
「けど、大島には伝えたけど、名和は、『告白よけのために久々知と付き合っている』と、オレに話したんだぞ? そのことについては、二人はどう思う?」
女子二名にふたたび問いかけると、二人とも、さすがに、複雑な表情になり、「それは……」と、言葉を濁す。
そして、今度も大島より先に浜が言葉を発した。
「もし、本当に名和さんがそう言ったなら、上坂部さんが可哀想な気はするけど……でも、きっと、なにかの事情があると思うんだ。そうだとすれば、名和さんと久々知くんの関係は、長く続かないってことになるけど……」
「そ、そうか……」
またも、短く返答すると、浜小春は「うん!」と、力強くうなずく。
結局のところ、放課後に語り合ったクラスメートから有益な情報を得られたという感触はあまりなかったのだが、それでも、上坂部の味方になってくれる女子生徒と話し合えたことは心強く感じる。
今後、上坂部の周辺でなにか問題があれば大島や浜にも相談してみよう、とオレは考えていたのだが……。
このあと、上坂部、久々知、そして、名和リッカを巡る関係は、(これまでのオレの行動の影響で)大きく動くことになる。
オレの席のひとつ隣の列で楽しげに会話を交わす四~五人のグループの中には、上坂部と久々知の幼なじみコンビとともに、名和リッカも加わっている。
放課後に話し合ったクラスメートのようすを確認するべく、チラリとグループの方に視線を送ると、偶然だろうか、転入生と目があった。
一瞬、気まずく感じて、すぐに視線をそらしたのだが、こちらの動きに気づいたのか、彼女は、なにごとかを考えるような仕草をしたあと、クスリと微笑んだ気がした。
「ん、どうしたんだ、リッカ? ナニか、面白いことでもあったのか?」
久々知がたずねる声が、かすかに聞こえてくる。
「ううん、昨日から気になっていたことの原因がわかっただけだから」
名和リッカのそんな返答を耳にすると同時に、オレの席に珍しく訪問者があらわれた。
しかも、女子生徒2名である。
先日、他校の演劇を観に行く前に、上坂部と大島が訪ねてきて以来、今学期二度目の出来事だ。
今回の訪問者は、大島睦月と彼女とく同じ吹奏楽部に所属している浜小春だが、いずれにしても、レア・イベントであることは間違いない。
二人は、上坂部や久々知、そして、名和リッカが居るグループから、オレの席が視覚になるような位置に立って語りかけてきた。
「今日のようすだと、昨日の葉月との話し合いは上手く行ったみたいね?」
声のボリュームを絞りながらたずねる大島に、オレは、「おう……」と短く応じる。
すると、もうひとりの訪問者である浜小春が、ホッとしたような表情で、言葉をもらした。
「よかった……立花くん、ありがとう。できれば、これからも上坂部さんのチカラになってあげて。私も出来ることは協力させてもらうから」
これまで、ほとんど話したことがなかった女子生徒の声に、「あぁ、わかった」と、また短く答えると、小柄な女子生徒は、「うん!」と、嬉しそうに応じる。
大島が言っていた、一年のとき、クラスで孤立しかけていた彼女のことを気にかけて、上坂部がクラスのみんなとの仲を取り持ったということに、浜小春自身も感謝しているのだろう、ということが伝わってきた。
大島睦月の他にも、上坂部葉月を推してくれる生徒が居るというのは心強い。
「いま、小春が言ったように、私たちも出来ることがあれば、立花に協力させてもらうから……良かったら、放課後に少し話せない? おたがい、持っている情報を共有しましょう」
相変わらず、慎重に声のトーンを落として語る大島の提案に黙ってうなずいて、賛同の意志を示す。
こうして、テスト前の期間であるにもかかわらず、オレは、2日続けて、放課後に女子生徒と会合を持つことになった。
――――――その日の放課後。
校内を適当に回りながら時間をつぶしたあと、自分たちのクラスに戻ると、約束どおり、吹奏楽部の部員である大島と浜の二人が、教室に残っていた。
「立花、テスト前なのに悪いわね」
声をかけてきた大島に、「いや、大丈夫だ」と返答し、彼女たちが座っている席の近くに生徒の座席を借りることにする。
「お互いの情報を共有しようってことだけど、オレはなにを話せば良いんだ?」
大島の隣の席の生徒の椅子に腰をおろしたオレがたずねると、女子二名が、続けて口を開いた。
「あなたは、葉月にどんなアドバイスをしたの? 昨日からのあのコの変貌ぶりは気になるし……」
「うん! 上坂部さん、スゴく大人っぽい雰囲気になったよね!」
大島の言葉に賛同するように、浜がうなずく。そんな二人のようすを見ながら、返答する。
「大島にも話したけど、参考になりそうなYourTuberの動画を紹介しただけだよ。昨日は、上坂部自身の意志と動画の内容をアイツがどう理解しているかを確認しただけだ」
「そう……今日も、葉月の態度が変わらなかったということは、久々知へのアプローチは継続するってことなのね?」
「オレは、そう認識している。ところで、オレの方からも聞いて良いか? 女子の目から見て、名和リッカって、どういう評価なんだ? 久々知との関係は長く持つと思うか?」
そうたずね返すと、意外なことにあまり普段は、クラス内であまり自己主張をしないタイプの浜小春が口を開いた。
「私は、あんまり話したことがないんだけど……名和さんは、イイ人だと思うよ。気が利くタイプだと思うし。まだ、転校してきて、そんなに時間が経っていないから、どこか一歩引いてクラスの雰囲気を眺めているのかな、って感じる。いまは、冷静にクラスのみんなのことを見てるんじゃないかな?」
「そ、そうか……」
浜の言葉に無難に返答するが、転入生のカラオケボックスでの態度の豹変ぶりを見たオレにとっては、少なくともイイ人という評価を受け入れることはできない。
ただ、そう思っているのは、オレだけのようで、大島は友人の言葉を肯定する。
「小春が言うなら、そうなのかもね。あなたは、他人の言うことや考えを深読みしすぎて、話せなくなることが多いから……」
どうやら、大島睦月は、友人として浜の人物批評の能力を評価しているようだ。
「けど、大島には伝えたけど、名和は、『告白よけのために久々知と付き合っている』と、オレに話したんだぞ? そのことについては、二人はどう思う?」
女子二名にふたたび問いかけると、二人とも、さすがに、複雑な表情になり、「それは……」と、言葉を濁す。
そして、今度も大島より先に浜が言葉を発した。
「もし、本当に名和さんがそう言ったなら、上坂部さんが可哀想な気はするけど……でも、きっと、なにかの事情があると思うんだ。そうだとすれば、名和さんと久々知くんの関係は、長く続かないってことになるけど……」
「そ、そうか……」
またも、短く返答すると、浜小春は「うん!」と、力強くうなずく。
結局のところ、放課後に語り合ったクラスメートから有益な情報を得られたという感触はあまりなかったのだが、それでも、上坂部の味方になってくれる女子生徒と話し合えたことは心強く感じる。
今後、上坂部の周辺でなにか問題があれば大島や浜にも相談してみよう、とオレは考えていたのだが……。
このあと、上坂部、久々知、そして、名和リッカを巡る関係は、(これまでのオレの行動の影響で)大きく動くことになる。
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