フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁

文字の大きさ
39 / 60

第3章~彼の幼馴染みと彼女が修羅場すぎる~第10話

しおりを挟む
 ―――ところで、宗重むねしげ。クラスメートのことに構うこともいいけど、学生の本分であるテスト対策は問題ないの?

 オレの週末レポートを興味深そうに聞いてくれていたワカねえは、一転して中高生が、もっとも、避けたい話題を振ってきた。

 オレが、「うん、まあ、それはボチボチね……」と言葉を濁すと、叔母は聞いてもいない話を勝手に進める。

 ―――自己犠牲の精神を発揮して送りバントを決めることも大事だけどさ……ベンチに帰ってきて、『ナイスバント!』って、ハイタッチをしてくれる人間ばかりじゃないから、そのあたりは、肝に命じておいたほうがイイよ。

 などと、野球ファンにしか理解できない例えを語りながら、我が叔母は、一人で納得しているのだが……。
 
 地域柄なのか、それとも、トラさんチームの熱狂的なファンであるウチのジイさんの影響を受けたのか、ワカねえは、我が一族でも屈指のトラ◯チでもある。そもそも、ワカねえが、深夜アニメを見始めたのは、サンテレビのプロ野球中継が終わったあと、夜中にテレビを付けたら偶然アニメを放映していて興味を持った、ということがキッカケらしい(ちなみに、アニメのタイトルは『超変身コス∞プ◯イヤー』だったそうだ……)。

 閑話休題――――――。

 野球には、それほど詳しくないオレだが、自分の行動が、送りバントとして、誰かの次のステップにつながるのであれば、そのことを嬉しく感じる。それは、オレが保育園の年長組のときに演じた『泣き虫なケモノのおはなし』という絵本の内容にも通じるからだ。

「まあ、オレのしたことが誰かの役に立つのなら、嬉しいと思うよ」

 ―――ふ~ん、えらく殊勝なことを言うじゃん。まあ、良きかな良きかな……アンタが他人ひとのことを思える人間に育ってくれて、叔母としては嬉しいよ

「いや、そんな大したことはしてないと思うんだけど……」

 ―――いやいや! そうして、対人関係における経験値を積んでおくことは、あとの人生で絶対に役に立つよ!

「その経験値ってさ……ドラクエみたいに、貯めれば、レベルアップできるモンなの?」

 ―――うん! 当然、目には見えないけどね……ただ、私が生まれる前の時代なら、年齢には肩書と社会的地位が比例してたから、まさに、ドラクエの経験値理論が当てはまってたんだけど……。

「あぁ、いまでも、年齢 = レベルアップみたいな感じで、誕生日が来たらSNSに投稿してる芸能人が居るもんな~。誰とは言わんけど……」

 ―――まあ、あの芸能人の言っていることも、大きく間違っちゃいない。昔は、受験・就職・会社での出世、もしくは、恋愛・結婚・育児って感じで、人生のステージも年齢を上がるごとに迫ってきただろうし……これを中ボス・大ボス・ラスボスの順番に倒して、クリアして行くのも、年齢に比例する経験値だけで、対応できる場合が多かっただろうからね

「念のために聞くけど、やっぱり、いまは、そうじゃないの?」

 ―――そうだね~。男性だけが主な働き手で、終身雇用と賃金のベースアップが保証されているなんて時代は、バブル崩壊とともに消し飛んじゃったし……すべてのヒトが、大魔王ラスボスを倒すことを目的とするような時代では無いってことだけは、たしかでしょ?

「じゃあ、みんな、どんなことを目標にして生きていけばイイのさ?」

 ―――うん、そこで、私は、人生ドラクエ説じゃなくて、人生ポケモン説を唱えたいね!

「人生ポケモン説?」

 ―――そう! いまの世の中、ヒトの一生は、ひとつのストーリーをなぞって、道を外れないように進めていく『ドラクエ』のようなモノから、好きなポケモンを集めて育てるようなモノに変わってきた、ってこと。ポケモン的な人生は自由度が高いから、何をゴールに設定するのか……それは、プレーヤーの数だけ答えがあるってこと。

「いや……それってさぁ……もう明確な答えが無いってことと同じじゃないの?」

 ―――まあ、たしかに、そう言えるかもね~(笑)だけど、受験・就職・会社での出世、恋愛・結婚・育児だけが人生のすべてでは無い……年齢に合わせて『大魔王ラスボスを倒しに行くルートだけが絶対の正解ではない』って考えるだけでも、人生の視野は、色々と広がるってもんよ。

「そう、なんだ……」

 ―――これだけ世の中の動きが変わっても、いまの社会は、ドラクエ的な価値観から抜け出せていない部分も多いし、ポケモン的な生き方は、お手本となる先輩の事例……これをロールモデルって言うんだけど……自分に相応しい先例を見つけるのが難しいから、困難な道のりでもあるけどね。

「そっか……じゃあさ、ワカねえが、就職した会社を辞めて、いまの仕事をしてるのは、ポケモン的な人生を選んだってこと?」

 ―――おっ、なかなか鋭いところを突くじゃん? まあ、そこまで、カッコつけた決断って訳でもないけどさ。

「けど、そんな考え方もありかな、ってのは少しだけ思った……オレも、ワカねえみたいにポケモン的な人生の方が向いてるのかな? この先、良い会社に就職して、彼女ができて、結婚して、子どもが生まれるなんて、コミュ障のオレには想像もできないし……」

 ―――ん~、どうだろう? ただ、ポケモン的人生を歩もうと思ったら、ドラクエ的な人生よりも、コミュニケーション能力は、重要だよ。フリーランスな生き方は、ヒトとのつながりが全てだからね! そのためにも、いまのうちから、対人関係の経験値は積んどきな。お気に入りのポケモンがあらわれたとき、キチンとゲットできるようにね!

 そう言って、ワカねえは、カラカラと笑い声をあげる。
 コミュニケーション能力が重要なら、「自分には、ポケモン的な人生の方が向いている」と言ったことは撤回した方が良いのかも知れない。

 こんな話題になったのも、テスト前の学生なら誰もが考える、

(テストで良い点を取ったところで、人生のなんの役に立つんだ?)

という目前の現実から目を背けようとする考えが頭の片隅でグルグルと回っているからだろう。

 ただ、それでも――――――。

 ワカねえが言った、『人生ポケモン説』は、これまで、様々な助言を授けてくれた彼女の言葉の中でも、ひときわ印象に残ったことだけは、確実だ。
 
 そして、オレは、「いまのうちから、対人関係の経験値は積んどきな」というワカねえの一言で、

(これから、仲間として活動していくのに相応しい相手は、誰なんだろう―――?)

ということを否応なく考えさせられることになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件

暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる

釧路太郎
キャラ文芸
僕には露出狂のいとこが三人いる。 他の人にはわからないように僕だけに下着をチラ見せしてくるのだが、他の人はその秘密を誰も知らない。 そんな三人のいとこたちとの共同生活が始まるのだが、僕は何事もなく生活していくことが出来るのか。 三姉妹の長女前田沙緒莉は大学一年生。次女の前田陽香は高校一年生。三女の前田真弓は中学一年生。 新生活に向けたスタートは始まったばかりなのだ。   この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」にも投稿しています。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

高校生なのに娘ができちゃった!?

まったりさん
キャラ文芸
不思議な桜が咲く島に住む主人公のもとに、主人公の娘と名乗る妙な女が現われた。その女のせいで主人公の生活はめちゃくちゃ、最初は最悪だったが、段々と主人公の気持ちが変わっていって…!? そうして、紅葉が桜に変わる頃、物語の幕は閉じる。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

処理中です...