41 / 60
第3章~彼の幼馴染みと彼女が修羅場すぎる~第12話
しおりを挟む
中間テストが終わった数日後の夜――――――。
いつもより、少し早めに夕食を終えたオレは、自宅から少し離れた柄口駅まで自転車を飛ばし、駅前のシスタードーナツで二人の女子生徒を待っていた。
スマホを触りながら、数十分の間、時間をつぶしていると、
「立花、こんな時間に出てきてもらって悪いわね」
と、制服姿の大島睦月が声をかけてきた。となりには、同じく帰宅途中の浜小春が並んでいる。
「いや、誘ったのはこっちの方だからな。二人の方こそ、吹奏楽部の練習終わりに付き合ってもらって申し訳ない」
スマホのブラウザを閉じて、待ち受け画面を確認すると、時刻は午後8時を回っていた。
あくまでネットやアニメから得た知識ではあるが、吹奏楽部は、どの学校でも練習時間が非常に長いと聞く。
毎年、高校野球の友情応援に駆り出される我が校のブラスバンド部も、当然その例外ではないようだ。
「私たちは、練習時間が長くなるのを覚悟して入部してるからね。まあ、お腹が空いてしまうのだけは、我慢できないけど……」
そう言った大島のトレイには、グラタンパイとフレンチ・クルーラーのドーナツが、となりの浜のトレイには、ポン・デ・リングとハニーチェロが並んでいた。
「それなら、食べながらで良いから、話しを聞いてくれるか?」
二人に席に座るようにうながしながら、今日の本題を切り出そうとすると、彼女たちは同時にうなずいて席に着き、こちらの話しを聞くモードに入ってくれた。
「テストが終わってから、色々と考えていたんだが……上坂部と久々知がカップルになるには、まだ、いくつか障害があると思う。そこで、オレよりクラスメートの事情に詳しそうな二人に確認したいことがあるんだ。二人の目から見て、テスト明けから、久々知と名和のようすに、変わったことはなかったか?」
オレの問いかけに対して、大島睦月は、グラタンパイにかじりついたまま、「う~ん、どうだろう?」と、小さく首をかしげる。
一方の浜小春は、ちぎったポン・デ・リングの生地を可愛らしく咀嚼したあと、
「私も、なるべく注意深く名和さんや久々知くんのことを見ていたんだけど、特に変わったようすは無かったかも……」
彼女は、そう返答し、「それにね――――――」と、なにかを感じ取っているような口ぶりで付け足した。
「なんだ、気になることがあるのか?」
オレがたずねると、浜小春は、小さく……だが、ハッキリとうなずいた。
「私、男の子のことは良くわからないんだけど……彼女がいるのに、他の女子に目移りする男子って、いくつか特長があると思うんだ」
「ん? それは、どんな特長なんだ?」
「うん、具体的に言うと、『彼女との関係がマンネリ化してる』『異性に刺激を求めるタイプであること』『自分に自身が持てないタイプであること』の三つなんじゃないかと考えてるんだ。立花くんは、どう思う?」
なるほど、彼女の言うことは、的を射ているかも知れない。
これまで、オレは、上坂部と名和の二人にばかり目を向けていたが、肝心の久々知大成が、その気にならなければ、名和から上坂部に交際相手が変わることはないのだ。
「うん、浜の言うとおりかもな……いま言ってくれた三つの条件は、どれも久々知に当てはまっていない気がする。まだ、久々知と名和は、付き合って数週間だからマンネリってことは無いはずだし、異性に刺激を求めるなら、幼なじみの上坂部には不利な条件だ。そして、久々知は、どうみても自分に自身が持てない、なんてタイプじゃなさそうだもんなぁ……」
オレが、つぶやくように言葉を吐き出すと、目の前に座る女子二名は、パイやドーナツをほおばりながら、コクコクとうなずく。
テストが終わったばかりの高揚感からか、先日ひとりで、クラス委員や転校生のことを考えているときには、もう少し可能性がある案件だと思っていたが――――――。
「これは、短期決戦じゃなくて、長期戦を覚悟しないといけないのかも知れないな……」
木製の椅子の背もたれに背中を預けながら、天井を見上げて嘆くように口にすると、グラタンパイを食べ終えた大島睦月が、思案顔でつぶやく。
「なにか、葉月と久々知の間で、刺激になるような出来事が起これば、いまの二人の関係に変化があらわれるかも知れないけどね……」
「そうだね……いまのままだと、二人の仲が進展することは無さそう……あっ、そう言えば、変わったようすといえば、テスト明けのことじゃないけど、久々知くんは、上坂部さんが男子から告白されるのを内心ではあまり快く思っていないのかも……他の男子が、上坂部さんの話しをしていると、表情が曇ることがあるから」
「そうだっけ? やっぱり、小春は、よく他人のことを観察してるわね」
友人の発言に、大島睦月が感心したように相づちを打つ。
なんだ? 久々知は、自分は名和と付き合っていながら、やっぱり、幼なじみのことは気になるのか? でも、もしそうなら、上坂部にも、ワンチャンくらいはあるってことか?
さっきまでの絶望感から比べると、少しだけ希望が見えたようにも感じながら、女子同士の会話に耳を傾けていると、二人の話しは、思わぬ方向に進んでいっている。
「別に、そんなにクラスの人たちのことを見てるわけじゃないけど……」
消え入りそうな声で返答する浜に対して、クスリと微笑んだ大島は、いたずらっぽい口調で応じる。
「そっか、いまの小春は、もっと気になる相手がいるもんね! 他の人のことで、あれだけ一生懸命になれる男子は尊敬するなぁ、って……」
「もう、そんなこと、いま言わなくても良いでしょう!? それなら、睦月だって、北先生のことになると……」
クスクスと笑っていた親友に、小柄なクラスメートが猛抗議をすると、普段はクールな表情の女子生徒も急に顔色が赤くなった。どうやら、二人は、クラブの顧問の先生をはじめ共通の知り合いのことでら盛り上がっているらしい。
やはり、吹奏楽部には、浜小春が気になるような男子がいるのだろうか?
そんなことをボンヤリと考えながらも、オレは、ふたたび、上坂部葉月の幼なじみ奪還(?)計画について、頭をひねり始めた。
いつもより、少し早めに夕食を終えたオレは、自宅から少し離れた柄口駅まで自転車を飛ばし、駅前のシスタードーナツで二人の女子生徒を待っていた。
スマホを触りながら、数十分の間、時間をつぶしていると、
「立花、こんな時間に出てきてもらって悪いわね」
と、制服姿の大島睦月が声をかけてきた。となりには、同じく帰宅途中の浜小春が並んでいる。
「いや、誘ったのはこっちの方だからな。二人の方こそ、吹奏楽部の練習終わりに付き合ってもらって申し訳ない」
スマホのブラウザを閉じて、待ち受け画面を確認すると、時刻は午後8時を回っていた。
あくまでネットやアニメから得た知識ではあるが、吹奏楽部は、どの学校でも練習時間が非常に長いと聞く。
毎年、高校野球の友情応援に駆り出される我が校のブラスバンド部も、当然その例外ではないようだ。
「私たちは、練習時間が長くなるのを覚悟して入部してるからね。まあ、お腹が空いてしまうのだけは、我慢できないけど……」
そう言った大島のトレイには、グラタンパイとフレンチ・クルーラーのドーナツが、となりの浜のトレイには、ポン・デ・リングとハニーチェロが並んでいた。
「それなら、食べながらで良いから、話しを聞いてくれるか?」
二人に席に座るようにうながしながら、今日の本題を切り出そうとすると、彼女たちは同時にうなずいて席に着き、こちらの話しを聞くモードに入ってくれた。
「テストが終わってから、色々と考えていたんだが……上坂部と久々知がカップルになるには、まだ、いくつか障害があると思う。そこで、オレよりクラスメートの事情に詳しそうな二人に確認したいことがあるんだ。二人の目から見て、テスト明けから、久々知と名和のようすに、変わったことはなかったか?」
オレの問いかけに対して、大島睦月は、グラタンパイにかじりついたまま、「う~ん、どうだろう?」と、小さく首をかしげる。
一方の浜小春は、ちぎったポン・デ・リングの生地を可愛らしく咀嚼したあと、
「私も、なるべく注意深く名和さんや久々知くんのことを見ていたんだけど、特に変わったようすは無かったかも……」
彼女は、そう返答し、「それにね――――――」と、なにかを感じ取っているような口ぶりで付け足した。
「なんだ、気になることがあるのか?」
オレがたずねると、浜小春は、小さく……だが、ハッキリとうなずいた。
「私、男の子のことは良くわからないんだけど……彼女がいるのに、他の女子に目移りする男子って、いくつか特長があると思うんだ」
「ん? それは、どんな特長なんだ?」
「うん、具体的に言うと、『彼女との関係がマンネリ化してる』『異性に刺激を求めるタイプであること』『自分に自身が持てないタイプであること』の三つなんじゃないかと考えてるんだ。立花くんは、どう思う?」
なるほど、彼女の言うことは、的を射ているかも知れない。
これまで、オレは、上坂部と名和の二人にばかり目を向けていたが、肝心の久々知大成が、その気にならなければ、名和から上坂部に交際相手が変わることはないのだ。
「うん、浜の言うとおりかもな……いま言ってくれた三つの条件は、どれも久々知に当てはまっていない気がする。まだ、久々知と名和は、付き合って数週間だからマンネリってことは無いはずだし、異性に刺激を求めるなら、幼なじみの上坂部には不利な条件だ。そして、久々知は、どうみても自分に自身が持てない、なんてタイプじゃなさそうだもんなぁ……」
オレが、つぶやくように言葉を吐き出すと、目の前に座る女子二名は、パイやドーナツをほおばりながら、コクコクとうなずく。
テストが終わったばかりの高揚感からか、先日ひとりで、クラス委員や転校生のことを考えているときには、もう少し可能性がある案件だと思っていたが――――――。
「これは、短期決戦じゃなくて、長期戦を覚悟しないといけないのかも知れないな……」
木製の椅子の背もたれに背中を預けながら、天井を見上げて嘆くように口にすると、グラタンパイを食べ終えた大島睦月が、思案顔でつぶやく。
「なにか、葉月と久々知の間で、刺激になるような出来事が起これば、いまの二人の関係に変化があらわれるかも知れないけどね……」
「そうだね……いまのままだと、二人の仲が進展することは無さそう……あっ、そう言えば、変わったようすといえば、テスト明けのことじゃないけど、久々知くんは、上坂部さんが男子から告白されるのを内心ではあまり快く思っていないのかも……他の男子が、上坂部さんの話しをしていると、表情が曇ることがあるから」
「そうだっけ? やっぱり、小春は、よく他人のことを観察してるわね」
友人の発言に、大島睦月が感心したように相づちを打つ。
なんだ? 久々知は、自分は名和と付き合っていながら、やっぱり、幼なじみのことは気になるのか? でも、もしそうなら、上坂部にも、ワンチャンくらいはあるってことか?
さっきまでの絶望感から比べると、少しだけ希望が見えたようにも感じながら、女子同士の会話に耳を傾けていると、二人の話しは、思わぬ方向に進んでいっている。
「別に、そんなにクラスの人たちのことを見てるわけじゃないけど……」
消え入りそうな声で返答する浜に対して、クスリと微笑んだ大島は、いたずらっぽい口調で応じる。
「そっか、いまの小春は、もっと気になる相手がいるもんね! 他の人のことで、あれだけ一生懸命になれる男子は尊敬するなぁ、って……」
「もう、そんなこと、いま言わなくても良いでしょう!? それなら、睦月だって、北先生のことになると……」
クスクスと笑っていた親友に、小柄なクラスメートが猛抗議をすると、普段はクールな表情の女子生徒も急に顔色が赤くなった。どうやら、二人は、クラブの顧問の先生をはじめ共通の知り合いのことでら盛り上がっているらしい。
やはり、吹奏楽部には、浜小春が気になるような男子がいるのだろうか?
そんなことをボンヤリと考えながらも、オレは、ふたたび、上坂部葉月の幼なじみ奪還(?)計画について、頭をひねり始めた。
2
あなたにおすすめの小説
陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件
暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる
釧路太郎
キャラ文芸
僕には露出狂のいとこが三人いる。
他の人にはわからないように僕だけに下着をチラ見せしてくるのだが、他の人はその秘密を誰も知らない。
そんな三人のいとこたちとの共同生活が始まるのだが、僕は何事もなく生活していくことが出来るのか。
三姉妹の長女前田沙緒莉は大学一年生。次女の前田陽香は高校一年生。三女の前田真弓は中学一年生。
新生活に向けたスタートは始まったばかりなのだ。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」にも投稿しています。
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
高校生なのに娘ができちゃった!?
まったりさん
キャラ文芸
不思議な桜が咲く島に住む主人公のもとに、主人公の娘と名乗る妙な女が現われた。その女のせいで主人公の生活はめちゃくちゃ、最初は最悪だったが、段々と主人公の気持ちが変わっていって…!?
そうして、紅葉が桜に変わる頃、物語の幕は閉じる。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
幼馴染に告白したら、交際契約書にサインを求められた件。クーリングオフは可能らしいけど、そんなつもりはない。
久野真一
青春
羽多野幸久(はたのゆきひさ)は成績そこそこだけど、運動などそれ以外全般が優秀な高校二年生。
そんな彼が最近考えるのは想い人の、湯川雅(ゆかわみやび)。異常な頭の良さで「博士」のあだ名で呼ばれる才媛。
彼はある日、勇気を出して雅に告白したのだが―
「交際してくれるなら、この契約書にサインして欲しいの」とずれた返事がかえってきたのだった。
幸久は呆れつつも契約書を読むのだが、そこに書かれていたのは予想と少し違った、想いの籠もった、
ある意味ラブレターのような代物で―
彼女を想い続けた男の子と頭がいいけどどこかずれた思考を持つ彼女の、ちょっと変な、でもほっとする恋模様をお届けします。
全三話構成です。
昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件
マサタカ
青春
俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。
あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。
そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。
「久しぶりですね、兄さん」
義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。
ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。
「矯正します」
「それがなにか関係あります? 今のあなたと」
冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。
今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人?
ノベルアッププラスでも公開。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる