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第4章~オレの幼なじみがこんなに素直なわけがない~第7話
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劇の練習が終わったあと、リッちゃんに声をかけようと思っていたぼくだけど、なかなか、その想いを果たせないでいた。
……というのも、数日前は、ぼくをそうじ用具を入れるロッカーに閉じ込めたエリちゃんとケンタくんとヒロアキくんの三人が、
「ムネシゲ、いっしょに遊ぼう!」
と寄って来て、なかなか、離れることができなかったからだ。
ようやく、彼らから解放されたのは、園児たちのお迎えの時間が始まろうとしているころだった。
「リッちゃん、今日の黒いケモノの役、スゴかったね!」
お遊戯室のすみっこの方に座り込み、一人でお人形遊びをしていた彼女に声をかけると、
「別に……あれぐらい、当たり前だと思うけど……みんなが、まじめにやってないだけじゃないの?」
と、そっけない感じで返事を返してきた。
それでもめげずに、ぼくが、チカラを込めて、
「当たり前じゃないと思うよ! リッちゃんは、黒いケモノの役をお家でたくさん練習してきたの?」
と、たずねると、なぜか、不機嫌になった彼女は、
「私が練習しようがどうしようが、ムネリンには関係ないでしょう?」
と言って、そっぽを向いてしまった。
どうして彼女の機嫌が良くないのか、自分がなにか機嫌を損ねることを言ってしまったのか、そんなことが気になって悲しくなり、目から涙があふれそうになってしまう。
「ゴメンね、リッちゃん……」
そう言って涙をぬぐおうとすると、目の前の少女は、
「どうして、ムネリンが謝るの?」
と、少し焦ったような、もしくは、困ったような表情で、バツが悪そうに返答する。
「だ、だって、リッちゃんがなんだか悲しそうだから……」
ぼくが、そう答えると、彼女は、ため息をつきながら返答する。
「別にムネリンが悪いわけじゃないから……あと、私のために泣いたりする必要ないから……」
ぼくと目を合わせることなく、そう言ったリッちゃんの横顔は、なんだか、寂しそうにも見えたし、少しだけ嬉しそうに見えた。
「でも、ぼくはリッちゃんのお礼を言おうと思っていたから……」
「私にお礼を言うの? ムネリンが?」
「うん! 昨日、劇の練習がうまくいかないときがあったら、ムネリンは、『みんな、がんばってるんだから』って言って、助けてあげて。他の子が、酷いことを言ったら、『そんなこと言っちゃダメだよ?』って注意してね、って、ぼくに言ってくれたよね?」
ぼくが、そう言うと、「まあ、そんなこともあったかもね?」と、リッちゃんは、またも素っ気なく返答する。
「リッちゃんの言うとおりにしたら、劇の練習が、すごく上手く進み始めたよ! それに……」
「それに?」
「さっき、エリちゃんとケンタくんとヒロアキくんが、ぼくに『いっしょに遊ぼう!』って、誘ってくれたんだ! これって、リッちゃんのおかげだよ!」
ぼくは、本当に伝えたかったことを言い切ると、顔がカーッと赤くなるのを感じた。
どうして、そんな気持ちになったのかはわからないけど、とにかく、嬉しさと照れくささとともに、彼女に対して、ようやく、伝えられたような気がした達成感のような想いが同時に込み上げてきたのだと思う。
「だから―――。リッちゃんに、ありがとうって言いたいな、と思って……」
ぼくが、そこまで言い終わると、彼女は少しほおを赤く染めながら、
「そんなこと、いちいち、言わなくても良いよ」
と言いながらも、
「でも、ありがとう……」
と、ポツリと付け加えた。
今度は、ぼくが彼女にたずね返す。
「えっ……? ありがとう、ってどうして? ぼくは、リッちゃんにお礼を言われることなんて、なにもしてないよ?」
そう返答すると、目の前の少女は、「もう、なんでもイイの!」と、少しだけ怒ったように言い返してくる。
そして、
「ムネリンの名前には、私と同じ字があるって、ママが言ってたから……ムネリンと私は、似てるのかもね?」
と、ぼくにとっては理解不能な言葉を付け加える。
ぼくの名前は、タチバナムネシゲ。
それに対して、彼女の名前は、ナナマツリッカ。
ようやく、ひらがなとカタカナを読めるようになったぼくにとって、同じ字が名前に使われているようには思えないんだけど……。
「ぼくとリッカちゃんには、本当に同じ字が使われているの? 良くわからない……」
「私もわからないけど、小学校に行って、お勉強したらわかるようになるって、ママが言ってたの!」
本当に、そうなのか……? でも、もしも、そういうことなら、小学校で勉強をするのも、少しは楽しくなるかも……と、その時のぼくは感じた。
だから、
「そっか! じゃあ、小学校でお勉強するのが楽しみだね! リッちゃんも、武甲小学校に行くんでしょ?」
と、無邪気に問いかけたんだけど……。
彼女は、突然、
「知らない!!」
と、高く張った金切り声を上げた。
「私、どこの学校に行くか知らないもん!」
そう言うと、彼女は、手に持っていた布でできたお人形をぼくに投げつけて、走り去ろうとする。
そのとき、ちょうど、中浜先生が、
「リッちゃん、ママがお迎えに来たわよ」
と、彼女を呼びに来た。
……というのも、数日前は、ぼくをそうじ用具を入れるロッカーに閉じ込めたエリちゃんとケンタくんとヒロアキくんの三人が、
「ムネシゲ、いっしょに遊ぼう!」
と寄って来て、なかなか、離れることができなかったからだ。
ようやく、彼らから解放されたのは、園児たちのお迎えの時間が始まろうとしているころだった。
「リッちゃん、今日の黒いケモノの役、スゴかったね!」
お遊戯室のすみっこの方に座り込み、一人でお人形遊びをしていた彼女に声をかけると、
「別に……あれぐらい、当たり前だと思うけど……みんなが、まじめにやってないだけじゃないの?」
と、そっけない感じで返事を返してきた。
それでもめげずに、ぼくが、チカラを込めて、
「当たり前じゃないと思うよ! リッちゃんは、黒いケモノの役をお家でたくさん練習してきたの?」
と、たずねると、なぜか、不機嫌になった彼女は、
「私が練習しようがどうしようが、ムネリンには関係ないでしょう?」
と言って、そっぽを向いてしまった。
どうして彼女の機嫌が良くないのか、自分がなにか機嫌を損ねることを言ってしまったのか、そんなことが気になって悲しくなり、目から涙があふれそうになってしまう。
「ゴメンね、リッちゃん……」
そう言って涙をぬぐおうとすると、目の前の少女は、
「どうして、ムネリンが謝るの?」
と、少し焦ったような、もしくは、困ったような表情で、バツが悪そうに返答する。
「だ、だって、リッちゃんがなんだか悲しそうだから……」
ぼくが、そう答えると、彼女は、ため息をつきながら返答する。
「別にムネリンが悪いわけじゃないから……あと、私のために泣いたりする必要ないから……」
ぼくと目を合わせることなく、そう言ったリッちゃんの横顔は、なんだか、寂しそうにも見えたし、少しだけ嬉しそうに見えた。
「でも、ぼくはリッちゃんのお礼を言おうと思っていたから……」
「私にお礼を言うの? ムネリンが?」
「うん! 昨日、劇の練習がうまくいかないときがあったら、ムネリンは、『みんな、がんばってるんだから』って言って、助けてあげて。他の子が、酷いことを言ったら、『そんなこと言っちゃダメだよ?』って注意してね、って、ぼくに言ってくれたよね?」
ぼくが、そう言うと、「まあ、そんなこともあったかもね?」と、リッちゃんは、またも素っ気なく返答する。
「リッちゃんの言うとおりにしたら、劇の練習が、すごく上手く進み始めたよ! それに……」
「それに?」
「さっき、エリちゃんとケンタくんとヒロアキくんが、ぼくに『いっしょに遊ぼう!』って、誘ってくれたんだ! これって、リッちゃんのおかげだよ!」
ぼくは、本当に伝えたかったことを言い切ると、顔がカーッと赤くなるのを感じた。
どうして、そんな気持ちになったのかはわからないけど、とにかく、嬉しさと照れくささとともに、彼女に対して、ようやく、伝えられたような気がした達成感のような想いが同時に込み上げてきたのだと思う。
「だから―――。リッちゃんに、ありがとうって言いたいな、と思って……」
ぼくが、そこまで言い終わると、彼女は少しほおを赤く染めながら、
「そんなこと、いちいち、言わなくても良いよ」
と言いながらも、
「でも、ありがとう……」
と、ポツリと付け加えた。
今度は、ぼくが彼女にたずね返す。
「えっ……? ありがとう、ってどうして? ぼくは、リッちゃんにお礼を言われることなんて、なにもしてないよ?」
そう返答すると、目の前の少女は、「もう、なんでもイイの!」と、少しだけ怒ったように言い返してくる。
そして、
「ムネリンの名前には、私と同じ字があるって、ママが言ってたから……ムネリンと私は、似てるのかもね?」
と、ぼくにとっては理解不能な言葉を付け加える。
ぼくの名前は、タチバナムネシゲ。
それに対して、彼女の名前は、ナナマツリッカ。
ようやく、ひらがなとカタカナを読めるようになったぼくにとって、同じ字が名前に使われているようには思えないんだけど……。
「ぼくとリッカちゃんには、本当に同じ字が使われているの? 良くわからない……」
「私もわからないけど、小学校に行って、お勉強したらわかるようになるって、ママが言ってたの!」
本当に、そうなのか……? でも、もしも、そういうことなら、小学校で勉強をするのも、少しは楽しくなるかも……と、その時のぼくは感じた。
だから、
「そっか! じゃあ、小学校でお勉強するのが楽しみだね! リッちゃんも、武甲小学校に行くんでしょ?」
と、無邪気に問いかけたんだけど……。
彼女は、突然、
「知らない!!」
と、高く張った金切り声を上げた。
「私、どこの学校に行くか知らないもん!」
そう言うと、彼女は、手に持っていた布でできたお人形をぼくに投げつけて、走り去ろうとする。
そのとき、ちょうど、中浜先生が、
「リッちゃん、ママがお迎えに来たわよ」
と、彼女を呼びに来た。
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