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第4章~オレの幼なじみがこんなに素直なわけがない~第11話
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「な、なに~! 二人が付き合ってるのは、偽装だっただと~!?」
上坂部を放課後の空き教室に呼び出し、隣のクラスの次屋にロッカーに閉じ込められ、空き教室の椅子を盛大に床に撒き散らして、職員室で説教を喰らう羽目になった翌日のこと――――――。
放課後、久々知とリッカから、教室に残るように誘われていたオレが、約束どおり、ショート・ホーム・ルームが終わったあと、時間をつぶしていると、クラスメートが帰っていったところで、二人からあらためて声をかけられた。
そうして、久々知大成の口から告げられた内容への反応が、冒頭の言葉である。
「ちょっと、声が大きいって!」
名和リッカは、そう言って教室内を見渡すが、幸いなことにクラスに他の生徒は残っていなかった。
自分の声に、二人が過剰な反応を示したので、オレは声のボリュームを落として、クラスメートにたずねる。
「それで、このことを知ってるのは、他に誰かいるのか?」
こちらの問いかけに、二人は、揃ってクビを横に振った。
彼らの反応で、当面の間は他言無用なのだろうということを察したオレは、さらに質問を重ねる。
「ここで、オレに打ち明けたってことは、どんな事情があるのか聞かせてくれるんだろうな?」
引き続き、声を潜めながらオレがたずねると、口を開きかけたリッカを制して、
「それは、オレから説明させてくれ!」
と、久々知が名乗りを上げた。
クラス委員男子の話しをかいつまんで説明すると、こういうことらしい。
久々知大成は、幼なじみの上坂部葉月のことが、ずっと気になっていたが、彼女の気持ちがわからないため、告白をする勇気がなかった。
二人が幼なじみとして仲が良いことは、校内のほとんどの生徒が知っていたので、これまで誰にも自分の悩みを打ち明けることができなかったが、転校生として二人の関係をフラットに見ることが出来る名和リッカに相談したところ、
「じゃあ、私と付き合うフリをして、彼女の反応を確かめてみれば?」
と、提案されたらしい。
そして、リッカの提案に乗り、「転校生から告白されたので付き合おうと思う」と上坂部に告げたのが、オレが目撃したヨネダ珈琲・武甲之荘店での出来事だということだ。
あの日、健気に自分を応援する幼なじみの元から走り去った当人の言葉によると、喫茶店から脱兎のごとく飛び出して行った理由は、上坂部の反応を直視する勇気がなかったから、ということらしい。
真相を知ると、なんとも脱力してしまう話しではある。
そのヘタレ気質のせいで、彼の幼なじみは、ひと目もはばからず、大号泣していたのだが――――――。
そして、オレは、そのおかげで、食い逃げならぬ、コーヒーの飲み逃げ状態だった久々知のドリンク代だけでなく、彼女を慰めるために、上坂部のドリンク代と名物のホワイトノワールの代金も支払うことになり、ライトノベル3冊分の出費を強いられたのだ。
カラオケに行ったついでに、ラノベ1冊ぶんプラスアルファの金額は回収した訳ではあるが、こうして真実を聞かされると、それだけでは、到底、釣り合いが取れていない、と感じる。
ここは、無駄に心を傷つけられたクラス委員の女子と、痛めつけられたオレの財布の中身に賭けても、ガゼルパンチの一発かデンプシーロールによる連打をお見舞いしたいところではある(自分の身体能力の問題で出来る訳ないけど)。
そんなオレの内心を見透かすように、
「本当にスマン! オレを一発ブン殴ってくれ」
と、久々知大成は、余計なオトコ気のようなモノを見せるが、女子が見ている前で、ネコパンチじみたへなちょこ技を繰り出す訳にも行かないので冷静に、
「いや、そう言うの良いから……オレのことよりも、大事な幼なじみの気持ちを大切にすることを考えろよ」
と、この場面でしか出来ない説教じみたことを言ってみる。
すると、クラス委員の男子は、感激したように瞳を潤ませて、
「立花、おまえ、メチャクチャ良いヤツだな!」
と、涙ぐんだ。
(いや、マジでそう言うのこそ、いらんから...…)
と感じつつ、痛んだ財布の中身の対価を要求してみることを考えた。
「まあ、そこまで思ってくれるなら、今度、ラーメンでもおごってくれよ。ぶたの月と大漢と和実とロッケンビリーの4件で手を打とうじゃないか?」
ニヤリと口角を崩しながら言うと、クラスメートは、
「あぁ、立花がそれでイイなら!」
と、オレの要求をアッサリと受け入れる。
ちなみに、いま上げた4店舗は、いずれもラーメンマニアが県外からも訪れる市内屈指の人気店であり、全店舗を回ると、ラーメン一杯ずつであっても、軽く北里柴三郎の1枚くらいは飛んで行く。
過大と思われたリクエストが通ったことで、取引成立の握手を交わしたオレは、せっかくなので、気になったことを聞いてみた。
「ところでさ、こう言う偽装の交際から、お互いマジで好意を持つなんて話しは、なかったのか?」
すると、それまで男同士の会話を黙って聞いていたリッカが、あきれたように口を開く。
「バカじゃないの? マンガやラノベじゃあるまいし」
その一言に、久々知も追従し、
「そうだぞ! 現実は、マンガやアニメとは違うからな」
と、断言する。
いや、ちょっと待て! しっかり者のはずなのに、自分にだけはポンコツな部分を見せる幼なじみとか、マンガやアニメやギャルゲーやラノベやウェブ小説にしか、存在しないだろう?
おまえは、どれだけ恵まれているんだ、と小一時間、問い詰めてやりたかったが、一時はダメヒロイン認定してしまった上坂部葉月のスペックの高さを再認識し、わざわざ、幼なじみ本人である男子にその事を告げてやる必要もないか、と考えてオレは、口を閉ざした。
号泣! 絶叫! 教会への出家! も辞さないほど、喫茶店で落ち込んでいた女子クラス委員の恋の迷い道は、あまりにもベタなラブコメ映画のような、両片想いという結論に落ち着いたのだった。
こうして、
「勘弁して下さい~」
と、動画の視聴者から、悪気のないアホみたいなリクエストをもらった時にお笑い芸人が発するギャグ(詳しくは、競馬で◯億円を借金したと主張する芸人の公式チャンネルを参照のこと)を口にしたくなるような展開に、辟易しつつも、
(まあ、この先、上坂部の想いが報われるなら、ヨシとするか……)
と思い直して、もう一度、クラスメートに告げる。
「今度こそ、上坂部の気持ちを裏切るなよ」
オレの言葉に、久々知大成は、
「おう!」
と、力強く応えた。
上坂部を放課後の空き教室に呼び出し、隣のクラスの次屋にロッカーに閉じ込められ、空き教室の椅子を盛大に床に撒き散らして、職員室で説教を喰らう羽目になった翌日のこと――――――。
放課後、久々知とリッカから、教室に残るように誘われていたオレが、約束どおり、ショート・ホーム・ルームが終わったあと、時間をつぶしていると、クラスメートが帰っていったところで、二人からあらためて声をかけられた。
そうして、久々知大成の口から告げられた内容への反応が、冒頭の言葉である。
「ちょっと、声が大きいって!」
名和リッカは、そう言って教室内を見渡すが、幸いなことにクラスに他の生徒は残っていなかった。
自分の声に、二人が過剰な反応を示したので、オレは声のボリュームを落として、クラスメートにたずねる。
「それで、このことを知ってるのは、他に誰かいるのか?」
こちらの問いかけに、二人は、揃ってクビを横に振った。
彼らの反応で、当面の間は他言無用なのだろうということを察したオレは、さらに質問を重ねる。
「ここで、オレに打ち明けたってことは、どんな事情があるのか聞かせてくれるんだろうな?」
引き続き、声を潜めながらオレがたずねると、口を開きかけたリッカを制して、
「それは、オレから説明させてくれ!」
と、久々知が名乗りを上げた。
クラス委員男子の話しをかいつまんで説明すると、こういうことらしい。
久々知大成は、幼なじみの上坂部葉月のことが、ずっと気になっていたが、彼女の気持ちがわからないため、告白をする勇気がなかった。
二人が幼なじみとして仲が良いことは、校内のほとんどの生徒が知っていたので、これまで誰にも自分の悩みを打ち明けることができなかったが、転校生として二人の関係をフラットに見ることが出来る名和リッカに相談したところ、
「じゃあ、私と付き合うフリをして、彼女の反応を確かめてみれば?」
と、提案されたらしい。
そして、リッカの提案に乗り、「転校生から告白されたので付き合おうと思う」と上坂部に告げたのが、オレが目撃したヨネダ珈琲・武甲之荘店での出来事だということだ。
あの日、健気に自分を応援する幼なじみの元から走り去った当人の言葉によると、喫茶店から脱兎のごとく飛び出して行った理由は、上坂部の反応を直視する勇気がなかったから、ということらしい。
真相を知ると、なんとも脱力してしまう話しではある。
そのヘタレ気質のせいで、彼の幼なじみは、ひと目もはばからず、大号泣していたのだが――――――。
そして、オレは、そのおかげで、食い逃げならぬ、コーヒーの飲み逃げ状態だった久々知のドリンク代だけでなく、彼女を慰めるために、上坂部のドリンク代と名物のホワイトノワールの代金も支払うことになり、ライトノベル3冊分の出費を強いられたのだ。
カラオケに行ったついでに、ラノベ1冊ぶんプラスアルファの金額は回収した訳ではあるが、こうして真実を聞かされると、それだけでは、到底、釣り合いが取れていない、と感じる。
ここは、無駄に心を傷つけられたクラス委員の女子と、痛めつけられたオレの財布の中身に賭けても、ガゼルパンチの一発かデンプシーロールによる連打をお見舞いしたいところではある(自分の身体能力の問題で出来る訳ないけど)。
そんなオレの内心を見透かすように、
「本当にスマン! オレを一発ブン殴ってくれ」
と、久々知大成は、余計なオトコ気のようなモノを見せるが、女子が見ている前で、ネコパンチじみたへなちょこ技を繰り出す訳にも行かないので冷静に、
「いや、そう言うの良いから……オレのことよりも、大事な幼なじみの気持ちを大切にすることを考えろよ」
と、この場面でしか出来ない説教じみたことを言ってみる。
すると、クラス委員の男子は、感激したように瞳を潤ませて、
「立花、おまえ、メチャクチャ良いヤツだな!」
と、涙ぐんだ。
(いや、マジでそう言うのこそ、いらんから...…)
と感じつつ、痛んだ財布の中身の対価を要求してみることを考えた。
「まあ、そこまで思ってくれるなら、今度、ラーメンでもおごってくれよ。ぶたの月と大漢と和実とロッケンビリーの4件で手を打とうじゃないか?」
ニヤリと口角を崩しながら言うと、クラスメートは、
「あぁ、立花がそれでイイなら!」
と、オレの要求をアッサリと受け入れる。
ちなみに、いま上げた4店舗は、いずれもラーメンマニアが県外からも訪れる市内屈指の人気店であり、全店舗を回ると、ラーメン一杯ずつであっても、軽く北里柴三郎の1枚くらいは飛んで行く。
過大と思われたリクエストが通ったことで、取引成立の握手を交わしたオレは、せっかくなので、気になったことを聞いてみた。
「ところでさ、こう言う偽装の交際から、お互いマジで好意を持つなんて話しは、なかったのか?」
すると、それまで男同士の会話を黙って聞いていたリッカが、あきれたように口を開く。
「バカじゃないの? マンガやラノベじゃあるまいし」
その一言に、久々知も追従し、
「そうだぞ! 現実は、マンガやアニメとは違うからな」
と、断言する。
いや、ちょっと待て! しっかり者のはずなのに、自分にだけはポンコツな部分を見せる幼なじみとか、マンガやアニメやギャルゲーやラノベやウェブ小説にしか、存在しないだろう?
おまえは、どれだけ恵まれているんだ、と小一時間、問い詰めてやりたかったが、一時はダメヒロイン認定してしまった上坂部葉月のスペックの高さを再認識し、わざわざ、幼なじみ本人である男子にその事を告げてやる必要もないか、と考えてオレは、口を閉ざした。
号泣! 絶叫! 教会への出家! も辞さないほど、喫茶店で落ち込んでいた女子クラス委員の恋の迷い道は、あまりにもベタなラブコメ映画のような、両片想いという結論に落ち着いたのだった。
こうして、
「勘弁して下さい~」
と、動画の視聴者から、悪気のないアホみたいなリクエストをもらった時にお笑い芸人が発するギャグ(詳しくは、競馬で◯億円を借金したと主張する芸人の公式チャンネルを参照のこと)を口にしたくなるような展開に、辟易しつつも、
(まあ、この先、上坂部の想いが報われるなら、ヨシとするか……)
と思い直して、もう一度、クラスメートに告げる。
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と、力強く応えた。
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