初恋♡リベンジャーズ

遊馬友仁

文字の大きさ
33 / 454

第5章〜白草四葉センセイの超恋愛学演習・応用〜②

しおりを挟む
「………………」
「………………」

 編集スタジオ室内のあまりの温度差に耐えきれず、オレは、壮馬にたずねる。

「なあ、もう説明は終わった、ってことでイイのか?」

(ボクに聞かれても……)

 肩をすくめる壮馬の反応にうなずき返し、スマホの録画停止ボタンをタップして、今度は、白草に向かって、ゆっくりと語りかけた。

「あのさ、白草……ショート・コントか一人漫談を始める時は、あらかじめ、そう言ってくれないか? こっちもキチンと、白草が提供する『笑い』を受け入れるために、ココロの準備を整えるからさ……」

「あっ! ゴメンね……今度から、ちゃんと、始める前に右手を挙げて『ショート・コント!』って、宣言してから始めるから……」

 彼女は、そう謝ったあと、

「――――――って、違う違う!!」

 教え子の冷静な提案に、自称・マドンナ講師は、軽快なノリツッコミを披露する。

「いまの実演のドコをどう見たら、ショート・コントに見えるのよ!?」

「「ん~~~全部?」」

 オレと壮馬は、声を揃えて返答する。
 そして、さらに続けてオレたちは、お互いの見解を披露し合った。

「いや、今のはどう見ても、オンナ芸人が演じる一人漫談って、シチュエーションだっただろ? 一瞬、Rー1グランプリのリハーサルが始まったんだと本気で思ったぞ、オレは……」

「いやいや! ボクは、何年か前まで年末に放送してた、『芸能人のシュールな芸に笑ったら、覆面のシバキ隊にシバかれるバラエティー番組』が始まったのかと思ったよ……」

「あぁ、たしかに、笑ってイイのか迷う以上に、笑いをこらえるのに苦労したモノな……」

 白草には申し訳ないが、感心するように講義に耳を傾けていた先ほどまでと異なり、オレたちは、講師役を前にして忌憚のない意見を交換する。

「ちょっと! ヒトが真剣にレクチャーしてるのに、何なのその言い方は!?」

「いや……『何なの?』と言われても……」

 烈しい剣幕で問い詰める白草に対して、恐縮しながらも、オレは頭をかきながら返答する。
 その言動が、癇に障ったのか、カリスマが剥がれかけたマドンナ講師は、左手を腰にあて、

「聞・く・態・度!!」

 二人の聞き手を交互に指さしながら、説教モードに入ることを示唆してくる。
 決して大柄ではない彼女から発せられる、大いなる怒りの感情を察したオレたちは、

「「はい!!」」

と、素直に応じて、正座スタイルでクッションに座り直し、居住まいを正した。
 そんな男子二名のようすを目視したのち、

「この際だから言っておくけど……」

そう前置きしたのち、超恋愛学の講師は、威厳を取り戻そうとしたのか、滔々と語り出した。

「だいたい、二人とも、女子の求める『かわいいッ!!』って言葉に鈍感過ぎだと思う!」

 彼女の言葉は、このように始まり、

「誤解を恐れずに言えば、この言葉を言われて嬉しくならない女子なんていないんじゃないかな? 女の子はね……好きなヒトにとって、一番カワイイ存在になりたいものなの……」

と、言いながら、自らを納得させるようにうなずいた。 
 
「そりゃ、世の中、女優やトップモデル、そして、、生まれつき可愛さに恵まれているヒトたちは居るかも知れない」

 自らの演説に酔う選挙立候補者のように、ここでチカラを込めた彼女は、さらに、持論の展開を続ける。

「でもね……『オレにとっては、キミがいちばんカワイイよ……』そう言われるだけで、人生がハッピーになる! 好意を寄せる相手に『カワイイ!』って、言ってもらえるだけで、もっと可愛くなれる気がする。好きなヒトからもらえる『カワイイ』の一言からでしか摂取できない特殊な栄養素が、女子にはあるの」

 そして、一拍、間を置いて、さらに声に力を込めたカリスマ講師は、

「そう……《可愛い》って言葉は、女子にとって《哲学》なの。ナニが可愛いって、見た目じゃない! 存在が可愛いってこと。なんて言うか、全体から滲み出てくるもの……それが、《恋》とか《愛》っていうモノの本質じゃない?」

と、一気に自身の見解を語り終えたのだった。
 いつものように、白草四葉特有の自己肯定感高めの発言が含まれているが、いつまで続くかわからない彼女の独壇場に、もはやオレの心には、ツッコミを入れる気力が残っていなかった。
 立ち上がって、大きくはない室内を左右に歩きながら一人語りを続ける彼女に気取られないよう、壮馬は小声で問い掛ける。

「竜司……! 白草さんの言ってること理解できる?」

「いや! 三割も理解できてない自信だけはある! とりあえず、女子に『リンゴが三個あって、二個買ってきたら幾つになるか?』と聞かれたら、『三個のリンゴをドコで買ったか聞いて、二個のリンゴを一緒に買いに行けばイイ』ということだけはわかった……」

「ボクに劣らず、古い例えをありがとう! 白草さんの話の中身はサッパリだけど……あらためて、人気ユア・チューバーになるには、可愛らしさよりも、ヒトを楽しませるお笑いのセンスが必要なことと、竜司のマンガの好みの二つだけは理解できたよ……」

 ささやくように語り合う二人に気付いたようすはなく、講師役は、自説を披露し終えると、

「どう? わかった?」

と、特にオレに対して念を押すようにたずねてきた。

「すべて理解できた……とは言い切れないが、理解できるように、努力する」

 そう応じた返答に、白草は、

「そう……いい心掛けね」

と、満足したようすだ。
 さらに、続けて、カリスマ講師は、

「いま挙げたシチュエーションの実例だと、黒田クンには、一つ目の例を実践するのは難しいかもね……でも、二つ目か三つ目の例なら、自然なカタチで出来るんじゃない? ちょっと、やって見せて?」

実践演習ロール・プレイングを求めてきた。

「なっ! いまココでかよ!?」

 拒絶反応を示すオレに対し、白草はゆっくりとうなずき、挑発的な笑みを浮かべて、語りかけてくる。

「紅野サン相手に、ぶっつけ本番でヤリきる自信があるなら、実践練習ナシでも構わないけど?」

「わ、わかったよ……」

 そう言って渋々、了承すると、

「じゃ、どれだけデキるか、やってみよう? まずは、シチュエーションその2の方からね!」

と、言ってから白草四葉は、急に上目遣いになり、目の前にいるこちらを潤んだ瞳で見つめだした。その表情の変化に、思わず心拍数が上がるのを感じ、オレはうつむき加減になってしまう。
 そんなこちらのようすを相変わらずの上目遣いで、覗き込みながら、講師役は、右の手のひらを上に向け、「ほら、はやく!!」といった感じでクイクイと手招きをした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~

root-M
青春
高校一年生の三ツ瀬豪は、入学早々ぼっちになってしまい、昼休みは空き教室で一人寂しく弁当を食べる日々を過ごしていた。 そんなある日、豪の前に目を見張るほどの美人生徒が現れる。彼女は、生徒会長の巴あきら。豪のぼっちを察したあきらは、「一緒に昼食を食べよう」と豪を生徒会室へ誘う。 すると、あきらは豪の手作り弁当に強い興味を示し、卵焼きを食べたことで豪の料理にハマってしまう。一方の豪も、自分の料理を絶賛してもらえたことが嬉しくて仕方ない。 それから二人は、毎日生徒会室でお昼ご飯を食べながら、互いのことを語り合い、ゆっくり親交を深めていく。家庭の味に飢えているあきらは、豪の作るおかずを実に幸せそうに食べてくれるのだった。 やがて、あきらの要求はどんどん過激(?)になっていく。「わたしにもお弁当を作って欲しい」「お弁当以外の料理も食べてみたい」「ゴウくんのおうちに行ってもいい?」 美人生徒会長の頼み、断れるわけがない! でも、この生徒会、なにかちょっとおかしいような……。 ※時代設定は2018年頃。お米も卵も今よりずっと安価です。 ※他のサイトにも投稿しています。 イラスト:siroma様

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

カオルとカオリ

廣瀬純七
青春
一つの体に男女の双子の魂が混在する高校生の中田薫と中田香織の意外と壮大な話です。

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません

竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──

付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話

頼瑠 ユウ
青春
高校一年生の上条悠斗は、同級生にして幼馴染の一ノ瀬綾乃が別のクラスのイケメンに告白された事を知り、自身も彼女に想いを伝える為に告白をする。 綾乃とは家が隣同士で、彼女の家庭の事情もあり家族ぐるみで幼い頃から仲が良かった。 だが、悠斗は小学校卒業を前に友人達に綾乃との仲を揶揄われ、「もっと女の子らしい子が好きだ」と言ってしまい、それが切っ掛けで彼女とは疎遠になってしまっていた。 中学の三年間は拒絶されるのが怖くて、悠斗は綾乃から逃げ続けた。 とうとう高校生となり、綾乃は誰にでも分け隔てなく優しく、身体つきも女性らしくなり『学年一の美少女』と謳われる程となっている。 高嶺の花。 そんな彼女に悠斗は不釣り合いだと振られる事を覚悟していた。 だがその結果は思わぬ方向へ。実は彼女もずっと悠斗が好きで、両想いだった。 しかも、綾乃は悠斗の気を惹く為に、品行方正で才色兼備である事に努め、胸の大きさも複数のパッドで盛りに盛っていた事が発覚する。 それでも構わず、恋人となった二人は今まで出来なかった事を少しずつ取り戻していく。 他愛の無い会話や一緒にお弁当を食べたり、宿題をしたり、ゲームで遊び、デートをして互いが好きだという事を改めて自覚していく。 存分にイチャイチャし、時には異性と意識して葛藤する事もあった。 両家の家族にも交際を認められ、幸せな日々を過ごしていた。 拙いながらも愛を育んでいく中で、いつしか学校では綾乃の良からぬ噂が広まっていく。 そして綾乃に振られたイケメンは彼女の弱みを握り、自分と付き合う様に脅してきた。 それでも悠斗と綾乃は屈せずに、将来を誓う。 イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。 付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。

処理中です...