初恋♡リベンジャーズ

遊馬友仁

文字の大きさ
276 / 454
第四部

第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜①

しおりを挟む
 5月のゴールデンウィークを終えた翌週のこと――――――。

 二年A組のクラス委員を務めるオレと[[rb:紅野 > こうの]]アザミは、担任教師に呼び出され、放課後の相談室に向かっていた。

「あっ、黒田くんと紅野さん、このあと相談室に来てくれない?」

 午後の授業が終わったあと、ショート・ホーム・ルームの時間に、ユリちゃんこと[[rb:谷崎 > たにざき]]先生は、そう言って、オレたちを引き止めた。
 オレはともかく、放課後は所属する吹奏楽部の練習で忙しい紅野には、授業外のことで、あまり負担を掛けたくないのだが……。

「放課後に呼び出しって、なんだろう? 私、なにか、しちゃったかな?」

 先に教室を出て行った担任の姿が見えなくなってから、不安そうにつぶやく紅野だが、これまた、オレはともかく、品行方正を絵に描いたような優等生の[[rb:紅野 > こうの]]アザミが、問題を起こして相談室に呼び出されることなど考えられない。
 心配気な表情の彼女の懸念を取り除くため、オレは、なるべく明るい表情で彼女に返答する。

「オレだけ呼び出されたならともかく、紅野も一緒なら、注意されることでは無いよ。オレたち二人を呼んだってことは、クラスの行事か、クラスメートにことに関わることだと思うぞ」

「そっか……! 黒田くんが言うなら、そんな気がしてきた」

 朗らかな表情で返答する紅野に微笑を向けたあと、平静を装って、相談室のドアを開ける。
 紅野の不安をやわらげるため、彼女には「心配するな」という旨のことを伝えたが、実際のところ、唐突な呼び出しを受けたため、どんな頼み事をされるのか、オレ自身にも、気掛かりに感じる気持ちが無いわけではない。
 そんな心配を払拭するように、

「二年の黒田と紅野です。谷崎先生に呼ばれて来ました!」

入室理由を告げて、担任教師の元へ向かうと、ユリちゃん先生は、

「二人とも忙しい時にゴメンね」

と、申し訳なさそうに顔の前で両手を合わせる。

「なんですか? わざわざ、相談室に呼び出して……教室や職員室じゃダメだったんですか?」

「生徒の個人情報に関わることだからね~。職員室でも、ちょっと……この資料を持ち出すのだって、教頭の許可がいるんだから」

 そう言いながら、担任教師は、なにやら紙の束を取り出す。

「まあ、座って」

 と、着席を促されたオレたちがパイプ椅子に腰掛けるのを待ってから、ユリちゃん先生は、おもむろに本題を切り出した。

「二人に頼みたいってことは、[[rb:緑川 > みどりかわ]]くんのことなんだ」

 その名前を耳にしたとたん、隣同士で椅子に腰掛けていたオレと紅野は、互いに顔を見合わせる。

 [[rb:緑川武士 > みどりかわたけし]]――――――。

 その名前は、始業式の日に発表されたクラス編成の掲示板で、我が二年A組の場所にあった名前ではあるのだが、新年度が始まって以降、少なくとも校内で、彼の姿を見た生徒は居ない……。
 そう、彼は、高校二年に進級して早々、学校に来なくなった、いわゆる不登校生だ。

「新学期も始まって、もう、ひと月半になるけど、彼がまだ登校してきてないってのは、二人なら把握してるよね?」

 おそらく、国内の一般的な高校と同様に、うちの二年A組には、転入してきたばかりにもかかわらず、早くもクラスの中心になっている白草四葉のような生徒から、交流のないクラスメートからは、名前を思い出すのもやっとと思われている生徒まで色々な生徒が居るのだが……。
 これでも、オレと紅野は、クラス委員を務めているのだ。クラス全員の顔と名前、さらに、彼ら彼女らの交友関係は、すべて把握している。
 ただし、その例外的存在が、担任教師が、その名を口にした[[rb:緑川武士 > みどりかわたけし]]である。

 互いに顔を見合わせたオレと紅野の反応で、こちらの想いを察したのか、細かな説明を省いて、担任教師は話し続ける。

「来月には、学年前期の中間試験もあるでしょう? そろそろ登校してテストに備えてもらわないと、三年生への進級も危なくなるの……」

 ちなみに、我らが市立高校は、年間の授業は前期と後期の二期制で行われていて、前期の中間試験は6月、期末試験は9月に行われる。ユリちゃん先生の言うように、たしかに、試験に備えるなら、いまがギリギリの時期だろう。
 ここで、オレたちを呼んで話しをするということは、おおむね、その依頼の中身は想像がつくのだが……。

 ただし――――――。

 残念ながら、一年の時に同じクラス同士だったオレと紅野は、クラスが別だった緑川とは、ほぼ面識がないのだ。

「でも、私……緑川くんと、話ししたことは、ほとんど無いですよ?」

 担任教師の意を汲みながらも、機先を制して、自分と不登校生との関係について言及する紅野に続き、

「すんません、オレも同じくです」

と、カタチだけ申し訳なさそうにオレは、頭を下げる。
 それでも、

「たしかに、あなた達は、一年生のときも私が受け持っていたし、クラスが違った[[rb:緑川 > みどりかわ]]くんとは親しくないかも知れないけど……そこを何とか! 彼を担任していた岡田先生が異動になっちゃって、私も大変なのよ」

と、もう一度、こちらに向かって手を合わせるユリちゃん先生の姿を見ていると……。
 オレも紅野も、その頼みをこの場で断るのは難しい、と判断せざるを得なかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~

root-M
青春
高校一年生の三ツ瀬豪は、入学早々ぼっちになってしまい、昼休みは空き教室で一人寂しく弁当を食べる日々を過ごしていた。 そんなある日、豪の前に目を見張るほどの美人生徒が現れる。彼女は、生徒会長の巴あきら。豪のぼっちを察したあきらは、「一緒に昼食を食べよう」と豪を生徒会室へ誘う。 すると、あきらは豪の手作り弁当に強い興味を示し、卵焼きを食べたことで豪の料理にハマってしまう。一方の豪も、自分の料理を絶賛してもらえたことが嬉しくて仕方ない。 それから二人は、毎日生徒会室でお昼ご飯を食べながら、互いのことを語り合い、ゆっくり親交を深めていく。家庭の味に飢えているあきらは、豪の作るおかずを実に幸せそうに食べてくれるのだった。 やがて、あきらの要求はどんどん過激(?)になっていく。「わたしにもお弁当を作って欲しい」「お弁当以外の料理も食べてみたい」「ゴウくんのおうちに行ってもいい?」 美人生徒会長の頼み、断れるわけがない! でも、この生徒会、なにかちょっとおかしいような……。 ※時代設定は2018年頃。お米も卵も今よりずっと安価です。 ※他のサイトにも投稿しています。 イラスト:siroma様

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

カオルとカオリ

廣瀬純七
青春
一つの体に男女の双子の魂が混在する高校生の中田薫と中田香織の意外と壮大な話です。

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません

竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──

付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話

頼瑠 ユウ
青春
高校一年生の上条悠斗は、同級生にして幼馴染の一ノ瀬綾乃が別のクラスのイケメンに告白された事を知り、自身も彼女に想いを伝える為に告白をする。 綾乃とは家が隣同士で、彼女の家庭の事情もあり家族ぐるみで幼い頃から仲が良かった。 だが、悠斗は小学校卒業を前に友人達に綾乃との仲を揶揄われ、「もっと女の子らしい子が好きだ」と言ってしまい、それが切っ掛けで彼女とは疎遠になってしまっていた。 中学の三年間は拒絶されるのが怖くて、悠斗は綾乃から逃げ続けた。 とうとう高校生となり、綾乃は誰にでも分け隔てなく優しく、身体つきも女性らしくなり『学年一の美少女』と謳われる程となっている。 高嶺の花。 そんな彼女に悠斗は不釣り合いだと振られる事を覚悟していた。 だがその結果は思わぬ方向へ。実は彼女もずっと悠斗が好きで、両想いだった。 しかも、綾乃は悠斗の気を惹く為に、品行方正で才色兼備である事に努め、胸の大きさも複数のパッドで盛りに盛っていた事が発覚する。 それでも構わず、恋人となった二人は今まで出来なかった事を少しずつ取り戻していく。 他愛の無い会話や一緒にお弁当を食べたり、宿題をしたり、ゲームで遊び、デートをして互いが好きだという事を改めて自覚していく。 存分にイチャイチャし、時には異性と意識して葛藤する事もあった。 両家の家族にも交際を認められ、幸せな日々を過ごしていた。 拙いながらも愛を育んでいく中で、いつしか学校では綾乃の良からぬ噂が広まっていく。 そして綾乃に振られたイケメンは彼女の弱みを握り、自分と付き合う様に脅してきた。 それでも悠斗と綾乃は屈せずに、将来を誓う。 イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。 付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。

処理中です...