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第四部
第3章〜最も長く続く愛は、報われない愛である〜⑨
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緑川からの依頼を経て、ふたつ隣のクラスの女子生徒・山吹あかりの相談を受けた翌日の放課後――――――。
オレは、我が広報部の花金鳳花部長に時間をもらい、山吹から受けた相談の中身について、話しを聞いてもらった。
「山吹さんの話しが本当なら、たしかに、放置しておけない状況だけど……黒田くん、貴方も、相変わらず苦労を背負いこむ性質ね? それで、昨日の下校時に問題は起きなかったの?」
「えぇ……結局、山吹の家までオレと緑川で送って行ったんですけど、昨日は、例の三人はオレたちの前にはあらわれませんでした。ただ――――――」
「ただ……? 気になることでもあるの?」
「はい、一度、あの三人とすれ違ったことがあるだけのオレでも、昨日の帰り道は、物凄く気を張ってました。家に帰ってからの気疲れもハンパじゃなかったです。ナニも起こらない日でもこうなんだから、この2週間、そのプレッシャーを感じていた山吹のストレスは、相当なモノだったんだじゃないかと……」
そう、問題は、あの三人が、山吹に対して、物理的に手を出したりはしていない、ということにもあった。
いまの段階では、直接的な被害を受けている訳ではないため、彼らの行為を他人が止めることは難しい。
「なるほど……経験者としての意見は、とても参考になるわ。それに、山吹さんが、なるべくクラブのメンバーに気を使わせたくない、と考える理由もね」
相変わらず察しの良すぎる鳳花部長の言葉に、オレは黙ってうなずく。
こちらの反応を確認しながら、さらに部長は続けて語る。
「いつまでも、黒田くんや緑川くんが、彼女の下校に時間を合わせるという訳にもいかないでしょうし、私の方でも対策を考えてみるわ」
さすがは、我が部の頼りになる部長にして、生徒会の影の実力者でもある花金鳳花先輩である。
そして、部長の応対に感謝しながら、その日の広報部の活動を終了した下校時、いつの間に準備を終えたのか、各クラブの顧問から、生徒にこんな通達があった。
「最近、日没後の学校の周囲で不審者の目撃情報が相次いでいるので、下校時は、他のクラブの生徒を含めて、複数人で帰るように」
各学校には、周辺に不審者や危険人物があらわれたときのための対処マニュアルがあるそうなのだが、部長は、そのマニュアルを機能させるべく、「生徒からの不審者目撃情報が届いている」と、教師に報告を行ったようだ。
学校側から、こうした通達があれば、山吹の周りにも、自然なカタチで下校する生徒が集まるようになる。
とりあえず、今日は、緑川とともに、山吹の帰宅に付き合う必要は無くなった……と、安堵して、帰宅先が同じマンションである桃華と一緒に下校する。
「やっぱり、鳳花部長は、スゴいな……ナニをしても、仕事が早い」
独り言のようにつぶやくと、
「くろセンパイ、今さら、ナニ言ってるんですか? そんなこと、中学の時から、わかってたことじゃないですか?」
と、下級生女子は微笑みながら答える。まあ、桃華には、山吹あかりに関わることは伝えていないので、勘違いをするのも当然なのだが……さらに、彼女は「それよりも……」と、声を潜めて問いかけてくる。
「ホントに不審者が出たら、ちゃんと、ワタシの盾になって下さいよ! くろセンパイの尊い犠牲は、無駄にしませんから」
などと、冗談めかして語る後輩女子に、
「生命を落とす前提で語るのはヤメロ……」
ツッコミを入れつつ、本当にあの三人と遭遇し、桃華が絡まれたら、どう対処すべきだろう――――――と、緊張感を持ちながら帰宅する。
鳳花部長の素早い行動が、功を奏したのかはわからないが、この日は、オレと桃華や山吹たちだけでなく、他の生徒たちにも問題となることは起きなかったようだ。
ただ、翌日の金曜日は昼休みに、オレたちの所属する1年A組の教室で、ちょっとした騒動が起こった。
「緑川と黒田、ちょっと良い?」
教室後方のドアから、オレたちを呼び出したのは、C組の山吹あかりだった。
「時間があったら、今日のクラブが終わったあと、また一緒に帰れない?」
そんな提案をしてくるということは、なにか問題が起きたのか、と身構えたが、朗らかな表情と口調で語る姿からは、深刻なようすはうかがえない。
緑川と顔を見合わたオレが、「あぁ、別に構わないけど……」と、返答すると、
「良かった! じゃあ、また、帰るときにね!」
と笑顔で応じた山吹あかりは、言いたいことを伝えると、さっさと自分たちのクラスに戻っていく。
「いったい、なんの用なんだ?」
と、緑川とともに、二人で首をかしげていると、聞き慣れた声の女子生徒が声をかけてきた。
「へぇ~、緑川クンだけじゃなくて、黒田クンも山吹サンと仲良くなってたんだ~。知らなかったな~」
白磁のように美しいほおの周辺こそ、微笑みをたたえたように穏やかな雰囲気を出しているが、その瞳は、まったく笑っていない。
「シ、白草……ちょっと待ってくれ、きっと、ナニか大きな勘違いをしているから……最近、学校周辺で不審者の目撃情報が増えているから、クラブ活動をしている生徒は、なるべく集団で下校するように言われてるだけだ」
「ふ~ん……じゃあ、わたしも、またクラブ見学をして、部活が終わる時間まで待っておこうかな~」
その一言に、クラス内の部活所属者たちが一斉に色めき立ち、
「ヨツバちゃん、ダンス部の見学に来ない? ヨツバちゃんなら、いつでも歓迎するよ!」
「いや、ぜひ、我が野球部に! 2年のマネージャーを募集してるんだ!」
「体育会系なんて、ヨツバちゃんには、似合わないって! コーラス部なら、ヨツバちゃんの歌唱力を発揮してもらえるよ!」
などと、すぐにいくつものクラブ見学の勧誘が殺到する。
「え~、どうしようかな~」
そんな思わせぶりなことを言いながら、こちらをチラチラとうかがう女子生徒に対して、
「シロ、ちょっと来い!」
と、少々、強引ながら彼女の手を引いて廊下に飛び出し、山吹あかりの周辺に起こっていることと、自分たちが遭遇した三人組の危険性を説き、その危うい申し出を撤回させることに苦労したのは、説明するまでもないと思う。
オレは、我が広報部の花金鳳花部長に時間をもらい、山吹から受けた相談の中身について、話しを聞いてもらった。
「山吹さんの話しが本当なら、たしかに、放置しておけない状況だけど……黒田くん、貴方も、相変わらず苦労を背負いこむ性質ね? それで、昨日の下校時に問題は起きなかったの?」
「えぇ……結局、山吹の家までオレと緑川で送って行ったんですけど、昨日は、例の三人はオレたちの前にはあらわれませんでした。ただ――――――」
「ただ……? 気になることでもあるの?」
「はい、一度、あの三人とすれ違ったことがあるだけのオレでも、昨日の帰り道は、物凄く気を張ってました。家に帰ってからの気疲れもハンパじゃなかったです。ナニも起こらない日でもこうなんだから、この2週間、そのプレッシャーを感じていた山吹のストレスは、相当なモノだったんだじゃないかと……」
そう、問題は、あの三人が、山吹に対して、物理的に手を出したりはしていない、ということにもあった。
いまの段階では、直接的な被害を受けている訳ではないため、彼らの行為を他人が止めることは難しい。
「なるほど……経験者としての意見は、とても参考になるわ。それに、山吹さんが、なるべくクラブのメンバーに気を使わせたくない、と考える理由もね」
相変わらず察しの良すぎる鳳花部長の言葉に、オレは黙ってうなずく。
こちらの反応を確認しながら、さらに部長は続けて語る。
「いつまでも、黒田くんや緑川くんが、彼女の下校に時間を合わせるという訳にもいかないでしょうし、私の方でも対策を考えてみるわ」
さすがは、我が部の頼りになる部長にして、生徒会の影の実力者でもある花金鳳花先輩である。
そして、部長の応対に感謝しながら、その日の広報部の活動を終了した下校時、いつの間に準備を終えたのか、各クラブの顧問から、生徒にこんな通達があった。
「最近、日没後の学校の周囲で不審者の目撃情報が相次いでいるので、下校時は、他のクラブの生徒を含めて、複数人で帰るように」
各学校には、周辺に不審者や危険人物があらわれたときのための対処マニュアルがあるそうなのだが、部長は、そのマニュアルを機能させるべく、「生徒からの不審者目撃情報が届いている」と、教師に報告を行ったようだ。
学校側から、こうした通達があれば、山吹の周りにも、自然なカタチで下校する生徒が集まるようになる。
とりあえず、今日は、緑川とともに、山吹の帰宅に付き合う必要は無くなった……と、安堵して、帰宅先が同じマンションである桃華と一緒に下校する。
「やっぱり、鳳花部長は、スゴいな……ナニをしても、仕事が早い」
独り言のようにつぶやくと、
「くろセンパイ、今さら、ナニ言ってるんですか? そんなこと、中学の時から、わかってたことじゃないですか?」
と、下級生女子は微笑みながら答える。まあ、桃華には、山吹あかりに関わることは伝えていないので、勘違いをするのも当然なのだが……さらに、彼女は「それよりも……」と、声を潜めて問いかけてくる。
「ホントに不審者が出たら、ちゃんと、ワタシの盾になって下さいよ! くろセンパイの尊い犠牲は、無駄にしませんから」
などと、冗談めかして語る後輩女子に、
「生命を落とす前提で語るのはヤメロ……」
ツッコミを入れつつ、本当にあの三人と遭遇し、桃華が絡まれたら、どう対処すべきだろう――――――と、緊張感を持ちながら帰宅する。
鳳花部長の素早い行動が、功を奏したのかはわからないが、この日は、オレと桃華や山吹たちだけでなく、他の生徒たちにも問題となることは起きなかったようだ。
ただ、翌日の金曜日は昼休みに、オレたちの所属する1年A組の教室で、ちょっとした騒動が起こった。
「緑川と黒田、ちょっと良い?」
教室後方のドアから、オレたちを呼び出したのは、C組の山吹あかりだった。
「時間があったら、今日のクラブが終わったあと、また一緒に帰れない?」
そんな提案をしてくるということは、なにか問題が起きたのか、と身構えたが、朗らかな表情と口調で語る姿からは、深刻なようすはうかがえない。
緑川と顔を見合わたオレが、「あぁ、別に構わないけど……」と、返答すると、
「良かった! じゃあ、また、帰るときにね!」
と笑顔で応じた山吹あかりは、言いたいことを伝えると、さっさと自分たちのクラスに戻っていく。
「いったい、なんの用なんだ?」
と、緑川とともに、二人で首をかしげていると、聞き慣れた声の女子生徒が声をかけてきた。
「へぇ~、緑川クンだけじゃなくて、黒田クンも山吹サンと仲良くなってたんだ~。知らなかったな~」
白磁のように美しいほおの周辺こそ、微笑みをたたえたように穏やかな雰囲気を出しているが、その瞳は、まったく笑っていない。
「シ、白草……ちょっと待ってくれ、きっと、ナニか大きな勘違いをしているから……最近、学校周辺で不審者の目撃情報が増えているから、クラブ活動をしている生徒は、なるべく集団で下校するように言われてるだけだ」
「ふ~ん……じゃあ、わたしも、またクラブ見学をして、部活が終わる時間まで待っておこうかな~」
その一言に、クラス内の部活所属者たちが一斉に色めき立ち、
「ヨツバちゃん、ダンス部の見学に来ない? ヨツバちゃんなら、いつでも歓迎するよ!」
「いや、ぜひ、我が野球部に! 2年のマネージャーを募集してるんだ!」
「体育会系なんて、ヨツバちゃんには、似合わないって! コーラス部なら、ヨツバちゃんの歌唱力を発揮してもらえるよ!」
などと、すぐにいくつものクラブ見学の勧誘が殺到する。
「え~、どうしようかな~」
そんな思わせぶりなことを言いながら、こちらをチラチラとうかがう女子生徒に対して、
「シロ、ちょっと来い!」
と、少々、強引ながら彼女の手を引いて廊下に飛び出し、山吹あかりの周辺に起こっていることと、自分たちが遭遇した三人組の危険性を説き、その危うい申し出を撤回させることに苦労したのは、説明するまでもないと思う。
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