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第五部
第1章〜広報部のある企画について〜⑩
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「そうねぇ……この中なら、満地谷墓地の近くに住んでいる、地域の言い伝えに詳しい人や、柔琳寺のご住職とは親しくせさせてもらっているから、その人たちなら紹介できるわ」
静かで、奥ゆかしいようすでありながらも、どこか艶やかさを感じさせる幽艶な口調で答える店主の言葉に、親友は、前のめりになりながら、
「ありがとうございます! よろしくお願いします!」
と、応じている。
(店主さんから、ホラースポット特有の怪談が聞けるわけじゃないのか……)
少しガッカリしながらも、オレは、
「黄瀬も言っていたように、夜の訪問や撮影で注意するべきことなどはありませんか?」
と、念を押すようにたずねてみた。
「心霊スポットを訪問するときの注意事項ね……まずは、なんと言っても、危険エリアや立ち入り禁止区域じゃないかと言うことを確認しないとねぇ? 危ない場所でなくても私有地に踏み入ってしまったら、警察に通報される可能性も少なくないわ……場合によっては、私的制裁を受けるなんてことも……あなた達は、せっかく進学校に通っているのだから、自分たちのこれまでの経歴を無駄にしないでね?」
そう言いながら、妖艶な笑みを浮かべて、彼女は可笑しそうにクスクスと笑う。
さらに続けて、
「この中で、危険エリアや立ち入り禁止区域に該当する場所は把握しているの?」
と、資料の候補地を指差しながら、オレたちにたずねてきた。
「はい、二川のピクニックセンターは、立ち入り禁止エリアになっていますし、言うまでもなく、柔琳寺は私有地ですよね?」
質問をした者としてオレが返答すると、女性店主は、黙ったまま、ゆったりとうなずく。そして、そのまま、次の注意点の指摘にうつった。
「注意事項の二つ目は、自分たちの身を守るための防犯意識。心霊スポットは、夜に訪れるでしょうから、防犯対策も重要よ。一人での訪問は避け、必ず複数人で行動するように。グループで行動することで、万が一トラブルが発生した場合にも迅速に対応できるし、心霊的な恐怖心も軽減されるわ。また、訪問する際には、あらかじめ緊急連絡先を確認し、家族や友人に訪問する場所を伝えておいた方が良いわね。スマートフォンを利用して、万が一の事態に備えて緊急通報アプリや位置情報共有機能をオンにしておくと、なにか危険な目に遭ったときも、周りの人たちが対応しやすいわ」
なるほど……と、うなずきながら、壮馬はスマホのメモアプリに女性店主の言葉を記録し始めた。
「三つ目は、装備品や持ち物について……心霊スポットを訪れるときには、適切な装備品を持参することが重要よ。特に、夜間に訪れる場合は懐中電灯が必須アイテムね。多くの心霊スポットは、街灯などの明かりが全くない場所にあるから、足元をしっかりと照らすための強力な懐中電灯を用意しておくこと。さらに、予備のバッテリーや複数の懐中電灯を持参すると安心ね。あと、今回の候補地では、心配ないかも知れないけど……携帯電話の電波が届かない場所では、衛星電話や無線機など、他の通信手段を準備しておくと良いでしょう。これにより、万が一の事態に備えて迅速な対応が可能となるわ」
持ち物として、懐中電灯や予備バッテリーなど、予想の範囲内の回答の他に、衛星電話や無線機など、スマホ以外の通信手段が挙げられたことに、少し焦ってしまう。
「おい、壮馬。無線機なんて急に用意できないし、衛星通信が可能なスターリンク対応のスマホを契約する金なんて無いぞ?」
小声で語りかけると、親友も当然わかっている、という口ぶりで返答する。
「そりゃ、そうだ。仕方ないよ。今回は、スマホの電波が届かない場所は、撮影の候補地から除外しよう」
オレたち男子二名が、そんなやり取りをしている間、店の主の言葉に冷静に耳を傾けていた天竹が口を開いた。
「いま、お話しいただいた基本的な注意事項は胸に刻んでおこうと思います。その他に心がけておくことはありませんか?」
「そうね……もちろん、建物を傷つけない、ゴミは持ち帰ると言った基本的なこともそうだけど……ぜひ、お願いしたいのは、静かに行動して、不要な行動は避ける、と言ったことかしら? 心霊スポットでは、訪れる場所の雰囲気を壊さないように静かに行動することが重要」
彼女の言葉にうなずくと、店主は、そのまま語り続ける。
「特に、霊的な存在に対して尊重する気持ちを持って訪れるべき場所だから、無駄な騒音や大声での会話は避けるようにしてほしいわね。例えば、廃墟や墓地などでは、静寂が漂う中でこそ、その場所の持つ不気味さや恐怖感を体感できるものよ。心霊スポットの特有の雰囲気を楽しむためにも、静かに行動することが推奨されるわね。それに、他の訪問者がいないとも限らないもの。静かな環境を共有するために配慮が必要よ」
またも、クスクスと可笑しそうに笑う店主に対して、顔を見わせるオレたちを見据えながら、彼女は言葉を続けた。
「他には、心を平静に保って、ネガティブな感情を持ち込まない。気休め程度にしか思えないかも知れないけど、お守りや護符を持っておくことね。霊的な存在に対しては、心を平静に保つことが大切よ。心霊スポットに訪れる際、恐怖心や怒り、悲しみといったネガティブな感情を持ち込むと、それが霊的存在に影響を与えることがあるの」
先ほどに続いて、繰り返される非日常的なフレーズに、オレは、思わず固い唾を飲み込みながら問いかける。
「れ、霊的な存在ですか?」
「えぇ。特に、自分自身が精神的に不安定な状態である場合、霊的な影響を受けやすいと言われているわ。心を落ち着け、霊的存在に対して敬意を持ち、感謝の気持ちを忘れないことが重要ね。お守りや護符のアイテムは、霊的存在から身を守ると信じられており、心の支えとなることがあるわ。実際に心霊スポットを訪れたときに、霊的な気配を感じることがあっても、お守りがあることで心に安心感が生まれて、冷静に対処できることが期待されるの。こうした対策を行うことで、心霊スポットでの恐怖心を和らげることができるんじゃないかしら?」
最初は、一般常識的なことしか語られなかったが、超常現象や怪奇現象的な内容に触れるにつれて、徐々に熱を帯びてくる古美術堂の女性店主の言葉に、オレたち三人は、終始、圧倒されっぱなしだった。
静かで、奥ゆかしいようすでありながらも、どこか艶やかさを感じさせる幽艶な口調で答える店主の言葉に、親友は、前のめりになりながら、
「ありがとうございます! よろしくお願いします!」
と、応じている。
(店主さんから、ホラースポット特有の怪談が聞けるわけじゃないのか……)
少しガッカリしながらも、オレは、
「黄瀬も言っていたように、夜の訪問や撮影で注意するべきことなどはありませんか?」
と、念を押すようにたずねてみた。
「心霊スポットを訪問するときの注意事項ね……まずは、なんと言っても、危険エリアや立ち入り禁止区域じゃないかと言うことを確認しないとねぇ? 危ない場所でなくても私有地に踏み入ってしまったら、警察に通報される可能性も少なくないわ……場合によっては、私的制裁を受けるなんてことも……あなた達は、せっかく進学校に通っているのだから、自分たちのこれまでの経歴を無駄にしないでね?」
そう言いながら、妖艶な笑みを浮かべて、彼女は可笑しそうにクスクスと笑う。
さらに続けて、
「この中で、危険エリアや立ち入り禁止区域に該当する場所は把握しているの?」
と、資料の候補地を指差しながら、オレたちにたずねてきた。
「はい、二川のピクニックセンターは、立ち入り禁止エリアになっていますし、言うまでもなく、柔琳寺は私有地ですよね?」
質問をした者としてオレが返答すると、女性店主は、黙ったまま、ゆったりとうなずく。そして、そのまま、次の注意点の指摘にうつった。
「注意事項の二つ目は、自分たちの身を守るための防犯意識。心霊スポットは、夜に訪れるでしょうから、防犯対策も重要よ。一人での訪問は避け、必ず複数人で行動するように。グループで行動することで、万が一トラブルが発生した場合にも迅速に対応できるし、心霊的な恐怖心も軽減されるわ。また、訪問する際には、あらかじめ緊急連絡先を確認し、家族や友人に訪問する場所を伝えておいた方が良いわね。スマートフォンを利用して、万が一の事態に備えて緊急通報アプリや位置情報共有機能をオンにしておくと、なにか危険な目に遭ったときも、周りの人たちが対応しやすいわ」
なるほど……と、うなずきながら、壮馬はスマホのメモアプリに女性店主の言葉を記録し始めた。
「三つ目は、装備品や持ち物について……心霊スポットを訪れるときには、適切な装備品を持参することが重要よ。特に、夜間に訪れる場合は懐中電灯が必須アイテムね。多くの心霊スポットは、街灯などの明かりが全くない場所にあるから、足元をしっかりと照らすための強力な懐中電灯を用意しておくこと。さらに、予備のバッテリーや複数の懐中電灯を持参すると安心ね。あと、今回の候補地では、心配ないかも知れないけど……携帯電話の電波が届かない場所では、衛星電話や無線機など、他の通信手段を準備しておくと良いでしょう。これにより、万が一の事態に備えて迅速な対応が可能となるわ」
持ち物として、懐中電灯や予備バッテリーなど、予想の範囲内の回答の他に、衛星電話や無線機など、スマホ以外の通信手段が挙げられたことに、少し焦ってしまう。
「おい、壮馬。無線機なんて急に用意できないし、衛星通信が可能なスターリンク対応のスマホを契約する金なんて無いぞ?」
小声で語りかけると、親友も当然わかっている、という口ぶりで返答する。
「そりゃ、そうだ。仕方ないよ。今回は、スマホの電波が届かない場所は、撮影の候補地から除外しよう」
オレたち男子二名が、そんなやり取りをしている間、店の主の言葉に冷静に耳を傾けていた天竹が口を開いた。
「いま、お話しいただいた基本的な注意事項は胸に刻んでおこうと思います。その他に心がけておくことはありませんか?」
「そうね……もちろん、建物を傷つけない、ゴミは持ち帰ると言った基本的なこともそうだけど……ぜひ、お願いしたいのは、静かに行動して、不要な行動は避ける、と言ったことかしら? 心霊スポットでは、訪れる場所の雰囲気を壊さないように静かに行動することが重要」
彼女の言葉にうなずくと、店主は、そのまま語り続ける。
「特に、霊的な存在に対して尊重する気持ちを持って訪れるべき場所だから、無駄な騒音や大声での会話は避けるようにしてほしいわね。例えば、廃墟や墓地などでは、静寂が漂う中でこそ、その場所の持つ不気味さや恐怖感を体感できるものよ。心霊スポットの特有の雰囲気を楽しむためにも、静かに行動することが推奨されるわね。それに、他の訪問者がいないとも限らないもの。静かな環境を共有するために配慮が必要よ」
またも、クスクスと可笑しそうに笑う店主に対して、顔を見わせるオレたちを見据えながら、彼女は言葉を続けた。
「他には、心を平静に保って、ネガティブな感情を持ち込まない。気休め程度にしか思えないかも知れないけど、お守りや護符を持っておくことね。霊的な存在に対しては、心を平静に保つことが大切よ。心霊スポットに訪れる際、恐怖心や怒り、悲しみといったネガティブな感情を持ち込むと、それが霊的存在に影響を与えることがあるの」
先ほどに続いて、繰り返される非日常的なフレーズに、オレは、思わず固い唾を飲み込みながら問いかける。
「れ、霊的な存在ですか?」
「えぇ。特に、自分自身が精神的に不安定な状態である場合、霊的な影響を受けやすいと言われているわ。心を落ち着け、霊的存在に対して敬意を持ち、感謝の気持ちを忘れないことが重要ね。お守りや護符のアイテムは、霊的存在から身を守ると信じられており、心の支えとなることがあるわ。実際に心霊スポットを訪れたときに、霊的な気配を感じることがあっても、お守りがあることで心に安心感が生まれて、冷静に対処できることが期待されるの。こうした対策を行うことで、心霊スポットでの恐怖心を和らげることができるんじゃないかしら?」
最初は、一般常識的なことしか語られなかったが、超常現象や怪奇現象的な内容に触れるにつれて、徐々に熱を帯びてくる古美術堂の女性店主の言葉に、オレたち三人は、終始、圧倒されっぱなしだった。
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