初恋♡リベンジャーズ

遊馬友仁

文字の大きさ
365 / 454
第五部

第3章〜汚れた聖地巡礼について〜①

しおりを挟む
 7月27日(木)

 少しばかりの軌道修正はあったものの、ライブ配信の最後を飾る次回は、当初の予定どおり、のウワサが囁かれる場所で撮影を行うことが決まったことに安心したオレは、撮影準備を壮馬に任せて、もう一つの課題に取り組むことにした。

「お疲れさま。夏休み中なのに、わざわざ、済まないな」

 夏季休暇期間中も解放されている我が校の図書館で待ち合わせた文芸部の代表者に声をかける。
 
「いいえ、私もあの店主さんから課された課題の内容は、気になっていますし……それに、こういった調査は嫌いではないですからね」

 澄ました表情で答える天竹葵の協力姿勢に感謝しながら、オレは、

「それで、あの幽霊屋敷について、わかったことはあるか?」

と、たずねてみた。
 週の初めに、天竹と二人で古美術堂を訪ねたときに聞かされた、世界でもっとも有名な幽霊屋敷とされる、ウィンチェスター・ミステリー・ハウスについて、文芸部に調査を依頼していたのだ。

「まだ、基本的なことではありますが、まずは、『呪われた屋敷』と言われるミステリー・ハウスの基本的な情報を集めてみました」

 図書室の一角にある学習用の机に席を取ったあと、天竹は、タブレットPCを開いて、集めてきたというデータを示しながら、解説をはじめる。

「まずは、ミステリー・ハウスと当時のウィンチェスター家の置かれていた状況をあらためて、おさらいしておきましょう。ウィンチェスター社はアメリカの西部開拓時代、コルト社と共に『西部を征服した銃』と称される銃器の開発で有名になった企業。オリバー・ウィンチェスターが、ウィンチェスター・ライフルを開発しウィンチェスター社を設立したのは、西部開拓時代まっただ中の1873年のこと。世界中の戦争や紛争で大ヒットしたウィンチェスター・ライフルのおかげで、ウィンチェスター家は巨万の富を築き、大富豪の仲間入りを果たします」

「ところが、オリバー・ウィンチェスターの息子、ウィリアムと妻サラの代になり、不幸が訪れる。1866年に娘のアニーが、そして1880年に1代目であるオリバー、1881年に二代目ウィリアムが相次いで死亡。ひとり残されたサラは、孤独と喪失感に苛まれるようになり、そこで助言を求めたのがひとりの霊媒師でした」

「霊媒師はサラに、一家の不幸は『ウィンチェスター銃でこれまで命を奪われてきた人々の呪いのせいだ』と告げます。そして『西へ向かい、これまで亡くなった人々の霊魂を鎮めるため、家を建て続けるようにと助言します。呪いで死なないため、犠牲者の魂の居場所を作るためには、家を増築し続けなければならない』と……」

「これを真に受けたサラは、東部のコネチカット州から西部のカリフォルニア州に引っ越し、家の建設を開始しました。夫の遺産と、日々転がり込む会社の一部の収益を惜しむことなく投じ、その屋敷を増築しはじめた1884年から、彼女が亡くなる1922年までの38年間365日24時間、22人の職人によって絶えず休まず、屋敷は拡張を続けた――――――。これが、世界でもっとも有名な幽霊屋敷、ウィンチェスター・ミステリー・ハウスの概要です」

 ウィンチェスター家の来歴とミステリー・ハウスの概略について簡潔にまとめられた内容に感心しつつ、オレはたずねる。

「おおまかな内容は、あの古美術堂で聞いたとおりみたいだな。……で、肝心のミステリー・ハウスの実態は、どんなものなんだ?」

「それについても、詳細な情報が公表されていました。以下が、ウィンチェスター・ミステリー・ハウスの基本データです」

 そう言って、天竹はドキュメントにまとめた情報を指し示す。

【ウィンチェスター・ミステリーの基礎データ】
 
 ◆正式名称:Winchester Mystery House
 ◆住所:アメリカ合衆国カリフォルニア州サンノゼ525 サウス・ウィンチェスター通り
 ◆広さ
 総面積:24,000平方メートル、建物面積:72,000坪、7階建て
 ◆部屋
 総部屋数:160、舞踏室:2、寝室:40、浴室:13、金庫室:6、地下室:2
 ◆設備
 ドアの数:2,000枚、窓の数:10,000枚以上、暖炉の数:47、階段の数:40、煙突の数:17本、エレベーター:3基

「これらの部屋や設備だけでも充分圧巻の奇妙さですけど、この屋敷には部屋や設備の数だけではなく、いくつものユニークなギミックが満載のようです。以下が、その代表的なものです」

 ・天井に突き当たる階段
 ・天井にある手すり
 ・床に設置された窓
 ・開けたら壁のドア
 ・2階に設置された開けた先に足場のない即、外のドア
 ・廊下ピッタリに納められた馬車
 ・扉の横にもうひとつ小さな扉
 ・細すぎる廊下
 ・ヘアピンカーブの階段
 ・壁に突き当たる階段
 ・上がって降りるだけの階段
 ・開けると壁の棚
 ・ドアノブのないドア
 ・床部に設置された屋根
 ・床のない部屋

 などなど

「また、サラは『13』という数字と、『クモの巣』のモチーフに尋常じゃないこだわりを持っていて、屋敷内のあちこちにそれらを取り入れているそうです」

 ・クローゼットのフックの数が13、またはその倍数
 ・階段の段数が13
 ・シャンデリアのライト数が13
 ・浴室の数が13
 ・扉に打ったクギの数が13
 ・窓に設置された13色の石
 ・排水溝の数が13
 ・クモの巣が施されたティファニー製の窓

「さらに、屋敷に使われている調度品も建材も、一流のものばかり。増築を重ねたこの家の床や天井の高さは、ちぐはぐにズレていることもざらだそうです。この奇妙な家は屋敷の奥に作られた『降霊室』と呼ばれる部屋で、霊と相談しながら、サラ自身が設計をしていたのだとか。私はネット上に公開されている幾つかの写真を見ただけなんですけど……実際の建物を見なくても、この徹底したこだわりは、狂気じみていることが分かる気がしますね」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~

root-M
青春
高校一年生の三ツ瀬豪は、入学早々ぼっちになってしまい、昼休みは空き教室で一人寂しく弁当を食べる日々を過ごしていた。 そんなある日、豪の前に目を見張るほどの美人生徒が現れる。彼女は、生徒会長の巴あきら。豪のぼっちを察したあきらは、「一緒に昼食を食べよう」と豪を生徒会室へ誘う。 すると、あきらは豪の手作り弁当に強い興味を示し、卵焼きを食べたことで豪の料理にハマってしまう。一方の豪も、自分の料理を絶賛してもらえたことが嬉しくて仕方ない。 それから二人は、毎日生徒会室でお昼ご飯を食べながら、互いのことを語り合い、ゆっくり親交を深めていく。家庭の味に飢えているあきらは、豪の作るおかずを実に幸せそうに食べてくれるのだった。 やがて、あきらの要求はどんどん過激(?)になっていく。「わたしにもお弁当を作って欲しい」「お弁当以外の料理も食べてみたい」「ゴウくんのおうちに行ってもいい?」 美人生徒会長の頼み、断れるわけがない! でも、この生徒会、なにかちょっとおかしいような……。 ※時代設定は2018年頃。お米も卵も今よりずっと安価です。 ※他のサイトにも投稿しています。 イラスト:siroma様

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

負けヒロインに花束を!

遊馬友仁
キャラ文芸
クラス内で空気的存在を自負する立花宗重(たちばなむねしげ)は、行きつけの喫茶店で、クラス委員の上坂部葉月(かみさかべはづき)が、同じくクラス委員ので彼女の幼なじみでもある久々知大成(くくちたいせい)にフラれている場面を目撃する。 葉月の打ち明け話を聞いた宗重は、後日、彼女と大成、その交際相手である名和立夏(めいわりっか)とのカラオケに参加することになってしまう。 その場で、立夏の思惑を知ってしまった宗重は、葉月に彼女の想いを諦めるな、と助言して、大成との仲を取りもとうと行動しはじめるが・・・。

処理中です...