僕のペナントライフ

遊馬友仁

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第3幕・Empowerment(エンパワーメント)の章〜⑪〜

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 7月26日(水)

 横田さんの追悼試合が行われた翌日の水曜日の朝、友人たちに、こんなメッセージを送信すると――――――。 

 ==============

 二人に相談したいことがある

 時間が合うときにちょっと
 話しを聞いてもらえないかな?

 ==============

 二人からは、すぐに返信が届いた。

 ==============

 ボクは金曜の夜ならOK!

 けど、どんな相談なのか、
 事前に教えておいてよ

 ==============

 ユタカからは、こんな風に、日時の指定と相談内容に関する質問があり、続いて、ヒサシからは、

 ==============

 オレは、いつでも構わないぜ!

 ちょうど、コタローと話したい
 と思っていたからな!

 ==============

と、快い回答が返ってきた。

 仕事前時間帯にもかかわらず、すぐに応答し、忙しい合間をぬって、自分のために時間を取ってくれる友人たちに感謝しつつ、そんな彼らに、せめてもの誠意を示すため、僕は、相談内容についても、事前に明らかにしておくことにした。

 ==============

 相談したい内容というのは、
 御子柴さんのことなんだ

 前に話したときには、僕自身
 調子に乗ってたと思うけど……

 実は、どうすれば良いのか
 わからなくなってて……
 
 ==============
 
 正直に打ち明けるように、そう返信すると、二人からは、すぐにウサギとアザラシのスタンプで、

「了解!」
「OK!」

という応答があった。
 メッセージには現れないけど、僕の不甲斐なさに苦笑するユタカとヒサシの姿が想像できた。
 
 7月28日(金)

 友人たちの気持ちの温かさに感謝しながら迎えた週末の夜、夕食を終え、いつものようにサンテレビで、カープとの首位攻防の一戦を観戦していると、メッセージアプリに着信があったことを示すスマホのランプが点滅する。

 ==============

 事前に相談できていなくて
 ゴメンだけど・・・

 今日のコタローとの話し合いに
 特別ゲストを呼んでも良い?
 (ダメな時は、相手に断るから)

 ==============

 なにごとも、事前準備を怠らないユタカにしては珍しく、予告なしの相談だ。
 僕のプライベートな話しを退屈せずに聞いてくれるような人であれば、別に構わないけど……と、考えながら返信する。

 ==============

 僕の話しを聞いてくれるなら
 大丈夫だよ

 ==============

 僕の返信には、すぐに既読が付き、クマがお辞儀するスタンプが送られてきた。
 自分から相談を持ちかけたのに、友人に気を使われると、僕の方がかえって恐縮してしまう。

 そんなことを考えながら、昨シーズンまで阪神の監督を務めた矢野燿大やのあきひろさんがゲスト解説として招かれた『サンテレビボックス席』の中継に目を向ける。

 前日のジャイアンツ戦に敗れたことで、カープに首位の座を明け渡した我がチームにとっては、首位攻防三連戦の初戦にあたる大事な一戦だ。

 試合は、阪神が1点を先制したあと、3回に小園と野間の連続タイムリーで、カープに逆転を許してしまった。
 しかし、その直後の3回裏に先制タイムリーを放った森下が、チャンスでライト前にヒットを放つと、この打球を野間が後逸し、一気に再逆転。

 さらに、6回には二死一・二塁のチャンスで、投手の村上がそのまま打席に入ってヒットを放ちチャンスを広げると、近本の四球、中野と森下のタイムリーで4点の追加点をあげ、一気に試合を決めてしまった。

 この試合まで、10連勝と波に乗っていた相手だけに、本拠地甲子園で迎えるカープ戦は重要になると思っていたけど、意外なほどにアッサリと勝負が決まってしまった印象がある。

 カープの守備のと、ピッチャー村上のヒットが勝敗の分かれ目になったこの試合からは、シーズン終盤や、その後のクライマックスシリーズの対戦でも、両チームに重要なターニングポイントになるのではないか――――――?

 そんな予感が頭をよぎった。
 
 後半戦最初の首位攻防第一ラウンドを快勝したチームに気分を良くした、僕は、ふたたび友人たちと行う会話に頭を切り替える。
 ふだん、親しい人間には気を配ることの少ないユタカが、遠慮がちなようすでメッセージを送ってきた理由は、午後10時に始まったビデオ通話の開始と同時に判明することになった。

 【本日の試合結果】
 
 阪神 対 広島 13回戦  阪神 7ー2 広島

 初回に森下翔太もりしたしょうたのタイムリーで幸先よく先制したタイガースは、3回表に小園海斗こぞのかいと野間峻祥のまたかよしの連続タイムリーで逆転を許す。しかし、その裏の攻撃で、一死一・二塁から再び森下がヒットを放つと、ライトの野間が後逸する間に二人のランナーが生還して逆転。
 6回裏には、先発投手の村上頌樹むらかみしょうきがヒットを放って満塁となったチャンスに、近本光司ちかもとこうじの押し出し四球、中野拓夢なかのたくむと森下のタイムリーで追加点を挙げる。
 首位攻防戦の第一ラウンドを制したタイガースは、再びカープと並んで同率首位に立った。

 ◎7月28日終了時点の阪神タイガースの成績

 勝敗:48勝35敗 3引き分け 貯金13
 順位:同率首位
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