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第4幕・ARE(アレ)の章〜①〜
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8月6日(日)
8月に入り、高校球児のために甲子園球場を明け渡す我がチームは、毎年恒例のいわゆる『夏のロード』に突入した。
かつては、ビジターでの試合が続くこの時期のことを『死のロード』と言ったらしいが、京セラドームで試合が行われ、関西に戻ることができるようになってからは、選手たちに疲労がたまることも少なくなったのか、ここ10年の『夏のロード』では、トータルで見ると、大幅に勝ち越してさえいる。
ただ、今年は、昨シーズンから連敗中であり、新たな『鬼門』と認識されつつある横浜スタジアムで6試合が組まれる日程になっており、このベイスターズとの戦いが、8月の成績とペナントレースの最終順位に大きく影響するだろうと予想されていた。
僕個人の見解としても、チームがずっと苦手としているバンテリンドームでのドラゴンズ三連戦と、(2年前までは相性が良かったハズなのに)何故か勝てなくなってしまった横浜スタジアムでのベイスターズ三連戦は、8月の戦いを占う最初の関門だと考えていたのだけど――――――。
驚くことに、その最初の6試合を我がチームは、なんと、5勝1敗という好成績で乗り切った。
「今年のチームは、安定感のある戦い方をするな……」
チームが好調だった前半戦の時期には、そう感じることが多かったのだけど、カープ、ベイスターズ(ついでにジャイアンツもか?)との優勝争いが激しくなってくる時期に、こうした強さ見せはじめたことは、僕が見てきた十五年のシーズンでも、かつて無かったような気がする。
この日の試合は、2回表に梅野のタイムリーで先制すると、6回表には、佐藤輝明のタイムリー・ツーベースで2点を追加し、3対0とリードを広げた。その裏、牧秀悟とネフタリ・ソトの連続タイムリーで、3対2と1点差に迫られるも、先発の伊藤将司が粘りを見せて、リードを保ったまま、終盤を迎える。
勝負の別れ目となったのは、7回裏のベイスターズの攻撃だった――――――。
この回からマウンドに上った浜地真澄は、先頭の大和にヒットでの出塁を許すと、続く伊藤光のバント処理を誤り、無死二・三塁のピンチを招いてしまう。
次の打者の桑原将志を空振り三振に仕留めたものの、左打者である1番打者の佐野恵太を迎えたところで、左腕の島本浩也に投手交代。
ベイスターズも、今シーズンここまで不調が続いていた佐野に代打を送ったのだが、打席に入ったのは、佐野と同じく左打者の楠本泰史だった。
チームの中心選手であり、首位打者や最多安打のタイトルを持つ佐野に、同じ左打者の楠本を代打に起用したことは、ベイスターズ・ファンの中でも、賛否の意見が別れたようだ。
1点リードながらも、一死二・三塁という一打逆転のこのピンチで、僕はテレビ画面に向かって、
「頼む、島本……抑えてくれ……」
祈るように念を送る。
僕の祈りが通じた……わけではないだろうが、チームが窮地に陥ったとき、頼りになるリリーフ左腕は、代打の楠本をショートフライ、続く関根大気を高めのストレートで空振り三振に抑え、見事に無失点で乗り切ってみせた。
このあと、8回裏にもピンチを迎えたものの相手に得点を与えなかったチームは、1点差を凌ぎきり、4連勝で2位カープとのゲーム差を広げることに成功した。
2日前の試合でも、二死満塁のピンチで佐野を三振に打ち取ったことに続いて、勝利に貢献した島本に対して、岡田監督は、試合後のインタビューで、
「こっちが見極めて、こういう時には島本やと思って、投げさせているわけやから。それはお前、それは秘密よ。お前、何がええか言うのは。そんなん」
と、(いつもの口調で)スポーツ新聞の記者を煙に巻きつつ、称賛を送っていた。
タイガースの鉄壁リリーフ陣の代名詞とも言える『JFK』の全盛期を、僕は知らないのだが、守護神を務める岩崎優を筆頭に、安定した展開で試合を進めることに貢献する今シーズンのリリーフ陣も、プロ野球史の中でも、かなりレベルが高いのではないかと感じている。
とくに、この日、ピンチを無失点で締めた島本、イニング跨ぎを任せても安心な桐敷拓馬、速球と多彩な変化球を操る貴重な中継ぎ右腕の石井大智などが台頭してきたおかげで、どの投手が登板してきても、安心して試合を見ることができるようになった。
このまま、中継ぎを含めた投手陣が安定したチカラを発揮してくれれば……。
2年前の2021年シーズンの記憶と6月の失速という経験から、過度な期待を持たないようにしつつも、岡田監督の言う「アレ」への道が開きつつあるのではないか、という希望を感じさせる8月最初の1週間だった。
【本日の試合結果】
横浜 対 阪神 17回戦 横浜 2ー3 阪神
タイガースは、2回表に梅野のタイムリー・ツーベースで1点を先制。6回表には、佐藤輝明のタイムリー・ツーベースで2点を追加してリードを広げる。
その後、2点を返され、1点リードで迎えた7回裏には一死二・三塁、8回裏には二死一・三塁のピンチを迎えるが、いずれも、リリーフ陣の奮闘もあり無失点で切り抜けて4連勝。
ジャイアンツに敗れた2位カープとのゲーム差を2.5に広げた。
◎8月6日終了時点の阪神タイガースの成績
勝敗:54勝36敗 4引き分け 貯金18
順位:首位(2位と2.5ゲーム差)
8月に入り、高校球児のために甲子園球場を明け渡す我がチームは、毎年恒例のいわゆる『夏のロード』に突入した。
かつては、ビジターでの試合が続くこの時期のことを『死のロード』と言ったらしいが、京セラドームで試合が行われ、関西に戻ることができるようになってからは、選手たちに疲労がたまることも少なくなったのか、ここ10年の『夏のロード』では、トータルで見ると、大幅に勝ち越してさえいる。
ただ、今年は、昨シーズンから連敗中であり、新たな『鬼門』と認識されつつある横浜スタジアムで6試合が組まれる日程になっており、このベイスターズとの戦いが、8月の成績とペナントレースの最終順位に大きく影響するだろうと予想されていた。
僕個人の見解としても、チームがずっと苦手としているバンテリンドームでのドラゴンズ三連戦と、(2年前までは相性が良かったハズなのに)何故か勝てなくなってしまった横浜スタジアムでのベイスターズ三連戦は、8月の戦いを占う最初の関門だと考えていたのだけど――――――。
驚くことに、その最初の6試合を我がチームは、なんと、5勝1敗という好成績で乗り切った。
「今年のチームは、安定感のある戦い方をするな……」
チームが好調だった前半戦の時期には、そう感じることが多かったのだけど、カープ、ベイスターズ(ついでにジャイアンツもか?)との優勝争いが激しくなってくる時期に、こうした強さ見せはじめたことは、僕が見てきた十五年のシーズンでも、かつて無かったような気がする。
この日の試合は、2回表に梅野のタイムリーで先制すると、6回表には、佐藤輝明のタイムリー・ツーベースで2点を追加し、3対0とリードを広げた。その裏、牧秀悟とネフタリ・ソトの連続タイムリーで、3対2と1点差に迫られるも、先発の伊藤将司が粘りを見せて、リードを保ったまま、終盤を迎える。
勝負の別れ目となったのは、7回裏のベイスターズの攻撃だった――――――。
この回からマウンドに上った浜地真澄は、先頭の大和にヒットでの出塁を許すと、続く伊藤光のバント処理を誤り、無死二・三塁のピンチを招いてしまう。
次の打者の桑原将志を空振り三振に仕留めたものの、左打者である1番打者の佐野恵太を迎えたところで、左腕の島本浩也に投手交代。
ベイスターズも、今シーズンここまで不調が続いていた佐野に代打を送ったのだが、打席に入ったのは、佐野と同じく左打者の楠本泰史だった。
チームの中心選手であり、首位打者や最多安打のタイトルを持つ佐野に、同じ左打者の楠本を代打に起用したことは、ベイスターズ・ファンの中でも、賛否の意見が別れたようだ。
1点リードながらも、一死二・三塁という一打逆転のこのピンチで、僕はテレビ画面に向かって、
「頼む、島本……抑えてくれ……」
祈るように念を送る。
僕の祈りが通じた……わけではないだろうが、チームが窮地に陥ったとき、頼りになるリリーフ左腕は、代打の楠本をショートフライ、続く関根大気を高めのストレートで空振り三振に抑え、見事に無失点で乗り切ってみせた。
このあと、8回裏にもピンチを迎えたものの相手に得点を与えなかったチームは、1点差を凌ぎきり、4連勝で2位カープとのゲーム差を広げることに成功した。
2日前の試合でも、二死満塁のピンチで佐野を三振に打ち取ったことに続いて、勝利に貢献した島本に対して、岡田監督は、試合後のインタビューで、
「こっちが見極めて、こういう時には島本やと思って、投げさせているわけやから。それはお前、それは秘密よ。お前、何がええか言うのは。そんなん」
と、(いつもの口調で)スポーツ新聞の記者を煙に巻きつつ、称賛を送っていた。
タイガースの鉄壁リリーフ陣の代名詞とも言える『JFK』の全盛期を、僕は知らないのだが、守護神を務める岩崎優を筆頭に、安定した展開で試合を進めることに貢献する今シーズンのリリーフ陣も、プロ野球史の中でも、かなりレベルが高いのではないかと感じている。
とくに、この日、ピンチを無失点で締めた島本、イニング跨ぎを任せても安心な桐敷拓馬、速球と多彩な変化球を操る貴重な中継ぎ右腕の石井大智などが台頭してきたおかげで、どの投手が登板してきても、安心して試合を見ることができるようになった。
このまま、中継ぎを含めた投手陣が安定したチカラを発揮してくれれば……。
2年前の2021年シーズンの記憶と6月の失速という経験から、過度な期待を持たないようにしつつも、岡田監督の言う「アレ」への道が開きつつあるのではないか、という希望を感じさせる8月最初の1週間だった。
【本日の試合結果】
横浜 対 阪神 17回戦 横浜 2ー3 阪神
タイガースは、2回表に梅野のタイムリー・ツーベースで1点を先制。6回表には、佐藤輝明のタイムリー・ツーベースで2点を追加してリードを広げる。
その後、2点を返され、1点リードで迎えた7回裏には一死二・三塁、8回裏には二死一・三塁のピンチを迎えるが、いずれも、リリーフ陣の奮闘もあり無失点で切り抜けて4連勝。
ジャイアンツに敗れた2位カープとのゲーム差を2.5に広げた。
◎8月6日終了時点の阪神タイガースの成績
勝敗:54勝36敗 4引き分け 貯金18
順位:首位(2位と2.5ゲーム差)
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