ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁

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第3章~⑮~

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 それは、簡潔なメッセージだったが、その内容に安堵している自分に気付いた。
 すぐさま、送られてきたメッセージに返答をする。

 ==============
 返信ありがとう!
 大嶋から聞いたかも知れないが
 プールに行ったメンバーに
 声を掛けさせてもらっている

 久々に連絡が取れたし、
 少し話せないかな?
 ==============

  一瞬、頭をよぎった「小嶋の声が聞きたい」という文言は、悩んだ末、気味悪がられてはいけない、と考え直して、書き込まないでおくと、二日前のメッセージとは異なり、すぐに既読マークがつき、返信があった。

 ==============
 ゴメン。
 今日は話すのは遠慮したい

 お誘い、ありがとう。
 花火、楽しみにしてる。
 ==============

 やはり、なにか連絡を取りにくい事情でもあるのだろうか?
 しかし、これ以上、考えてもネガティブな思考に陥るだけだし、彼女のプライバシーに立ち入ることになってしまうかも知れない……そう思い直して、《YES!》と書かれたコアラのスタンプを送信し、

 ==============
 わかった。
 花火大会の詳細については、
 あらためて連絡させてもらう

 あと、なにかあったら、
 遠慮なく連絡してくれ
 ==============

と、メッセージを返信しておいた。

 これ以上のメッセージ交換はしないつもりで内容を送信したので、彼女からの返信は期待していなかったのだが、しばらくすると、意外にもスマホの着信ランプが光った。

 ==============
 ありがとう。

 色々と話せるようになったら、
 話しを聞いてもらおうかな

 あと、連絡が取れない時も
 ウチの前の公園のネコの
 様子を確認してくれると嬉しい
 ==============

 前半の内容には納得できたが、メッセージの後半の内容には、明らかに不可解な点があった。

 しかし、文章のやり取りで、そのことを指摘するのも難しいと感じ、彼女が自分で話したい、と思った時にたずねれば良いか、と考えて、《OK》と書かれたコアラのスタンプを返信しておくだけにした。

 8月20日(金)くもり時々雨

 天気予報の精度は高く、八月としては異例の雨が降り続く一週間となった。連日の雨天順延で、高校野球の全国大会も決勝戦の日程が二度も変更されるなど、夏の長雨は、さまざまな分野に影響を与えていた。

 例年なら、台風の到来だけを心配しておけば良かったが、ここまで雨の日が続くと、一週間後の花火大会の日まで雨が振り続けるのではないか――――――という不安な気持ちが頭をもたげる。

(来週は、晴れてくれると良いが……)

 そんな祈りにも似た想いを込めて、翌週の花火観賞についての連絡を参加メンバーに送ることにした。

 ==============
 ・花火大会についてのお知らせ

 集合日時:8月28日午後5時
 集合場所:駅前改札口

 持ちもの:
 ①水分補給用ドリンク
 ②虫除け対策グッズ

 その他、質問などはお気軽に
 ==============

 メンバーとのコミュニケーションを一括で行うため、この機会に作成し、参加してもらったチャットグループに、メッセージを送信する。

 今回の花火の打ち上げ場所は、ベイエリアにある人工島の宿泊施設(ロッジ)の一角で開催される。
両親は、クルマで会場に向かうそうだが、我が家のマイカーでは友人一同を乗せると定員オーバーとなるため、自分たち高校生組は、電車とバスを乗り継いで参加することになった。

 花火の打ち上げは、午後七時半ころから始まるらしいので、余裕を持って、開始の一時間前に会場に到着できるように集合時間を設定した。

 色々なことを取り仕切れる哲夫とは違い、こうした連絡をすることには慣れていなかったので、参加メンバーから、どんな返信が来るのか不安だったのだが、ほぼ全員からスタンプやメッセージなどで、ねぎらいや感謝の言葉が返ってきたので、安心する。

 そして、同時に、メンバーの性格の良さに救われる想いになった(ちなみに、送信したメッセージの文面は、夏休みの最初の頃に小嶋夏海からもらった連絡事項の書き方を参考にさせてもらったことを告白しておく)。

 現状で、自分に出来ることは、すべてやり尽くした。

 さらに、オレは、

(無事に花火大会が決行されて、一番大きな花火が打ち上がった時には……)

と、決意を胸に秘めて、メンバーから返信されてきたメッセージを眺める。

 あとは、当日の天候に問題がないことを祈るのみ、だ――――――。

 そんなことを考えながら、落ち着かない気分を振り払うために、スマホの画面を動画サイトに切り替える。

 トップ画面には、数日前に更新されたばかりの、三十年前に有名アーティストがリリースした楽曲の公式ミュージック・ビデオが表示されていた。

 発表から数十年が経過したその曲を再生する。

 夏の終わりを感じさせる切ないメロディーと歌詞に、自分を重ね合わせ、ベッドに横たわりながら、気が付くと、目尻から熱を帯びた水滴がこぼれるのを感じた。
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