ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁

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第4章~➃~

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 打ち上げ開始時刻が迫ってきたためか、カワタさんとともに、ロッジの建物内にある受付前のロビーから花火観賞エリアのバーベキュー・フィールドに戻ると、数十人の人たちが集まって来ていた。

「あ、お父さん! どこ行ってたの?」

 元気な声で話す小学生くらいの男の子と、自分と同年代だろうか、高校生くらいの女子が、カワタさんに近寄って来る。

「ねぇ、聞いて! 先月プールに行った時に、一緒に遊んだお兄ちゃんが、今日も来てくれてるんだよ!」

 息子さんと思われる少年の声に、カワタさんが、笑顔で、

「そうか~! タイガ、ちゃんとお礼は言ったか?」

そう答えると、タイガくんは、「うん!」と、うなずいたあと、

「ほら、あそこに座ってるよ!」

と、バーベキュー・フィールドの一角にあるテーブルに陣取っているグループを指差す。

 五人のメンバーが揃うその一団は、一時間ほど前に、オレと一緒にカワタさんと挨拶を交わした面々、つまりは、友人とクラスメートの女子一同だった。

 カワタさんも、すぐに、そのことに気付いたのか、オレと顔を見合わせる。

「冗談で言ってたことが、事実だったとは……いや~、世間は狭いね」

 苦笑しながら言うカワタさんに、自分も同じ表情で同意する。

「ですね……」

 そんな自分たち二人の会話に、同年代の女子の方が割って入ってきた。

「岡村さんたち、とっても良い人たちだったよ!」

「そうか! ミユキも、ナツキくんのお友達と話していたのか?」

 カワタさんが、娘の言葉に応じると、彼女は屈託ない表情で答えた。

 そのタイミングで、自分たちの会話を遠目から見ていた康之が、こちらに向かって手を振る。

「うん! 岡村さんとメッセージアプリも交換させてもらったよ!」

「ハハハ……そうか……」

 父親として思うところがあるのだろう、オレの隣では乾いた笑いが起きている。

(ヤスユキは、あんな見た目ですが、女子に対しては純情なタイプなので……)

 心のなかで、悪友をフォローしつつ、中嶋との一件のこともあって、その友人をポジティブに評価してくれる女子がいることを、なんとなく嬉しく思えた。

 そんなことを考えていると、隣で腕時計に目をやったカワタさんが、つぶやいた。

「そろそろ時間だな」

「打ち上げが始まる前に、一言、挨拶をさせてもらいたいから、行かせてもらうね。それじゃ、ナツキくん。さっきも言ったけど、今夜は楽しんで行ってね!」

 そう言い残して、カワタさんは、子どもたちを連れて、バーベキュー・フィールドの端の方に歩いて行った。

「バイバイ、お兄ちゃん!」

 タイガくんが、オレに向かって手を振り、ミユキさんは、軽く会釈をして父親について行く。
 三人が去ったのに合わせて、自分もカワタ姉弟が話題にしていたクラスメートの元に向かうことにする。

「長いトイレだったな、ナツキ!どこまで行ってたんだよ!?」

 友人たちの囲むテーブルに着こうとすると、康之が、笑いながら、肩に腕を回してジャレついて来る。戻ってくるなり、これだ……。

 ミユキさんは、こいつのドコを見て、「とっても良い人」という評価を下したのか?

「ちょっと、カワタさんと積もる話しってのをしてたんだよ」

 そう返答した後、康之に伝える。

「これから、花火前の挨拶をするらしいから、しっかり聞いとけよ」

「おっ、そうなのか?」

カワタさんの子どもたちの話題の中心であった悪友は、アッサリと身体を離し、その姉弟とともに夫妻が並んでいる一家が集まっている方向に向き直った。

 すると、

「お集まりのみなさま!」

張り上げた声で、カワタさんが語り出す。

「今日は、花火観賞会にお越しいただいてありがとうございます。我が家の子どもたちもそうですが、猛暑や雨の影響で外出もままならず、せっかくの夏休みにもかかわらず、十分に楽しむことができなかった方も多いと思います。今夜は、ソーシャル・ディスタンスを守りながら、夏の思い出作りとして花火を楽しんでいただけると嬉しく思います。それでは、カウントダウン!」

 そう言って、高々と三本指を掲げたあと、集まった数十人の人々と声を合わせ、

「三・二・一!」

の秒読みのあと、カワタさん一家の背後の夜空に

ヒュ~!!

という音とともに、一筋の火の玉が打ち上がる。

 そして、数秒後、

 ド~~ン!!!!

という轟音とともに、火球は、真っ暗な空に大輪の花を咲かせた。

「「おお~!!!!」」

 集まった人々から一斉に拍手と歓声が上がる。
 二千発が打ち上がる花火観賞会が始まった――――――。
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