69 / 70
第4章~⑲~
しおりを挟む
すぐに、通話アプリを起動して、小嶋夏海あてにコールを送るが、応答はない――――――。
次に、メッセージアプリで、いくつかスタンプを送るが、既読はつかない。
バスの車内なので、スマホを触るのを止めたのかも知れないが、通話にもスタンプにも反応がないということは、先ほどまでのメッセージの送信直後に、ブロックをされてしまった可能性を否めない。
(小嶋なら、やりかねないよなぁ……)
そう考えながら、ベンチから腰を上げる。
(さて、どうしたものか……)
こっちの話しを聞くことは、勝手に切り上げたくせに、自分の要望ばかりを並べたメッセージに、大いに憤りを感じたものの――――――。
『ナツミって、男子からしたら、面倒くさい性格じゃない?遠慮なく、ズケズケと自分の言いたいことを言うかと思えば、自分が想っていることとは、正反対のことを言うこともあるし……』
貴重なアドバイスをしてくれた同級生女子が、週末の通話アプリでの会話で、語った小嶋夏海評を思い出し、
(なんだ、中嶋の言うとおりじゃないか……)
と、思わず笑みがこぼれる。
(であれば、この小嶋夏海の要望が並べられたメッセージも……)
ただ、自分だけの独りよがりの考え方になってしまうことは危険だ――――――。
そう思い直しつつ、自分には頼りになる二人の女子のクラスメートが居ることを心強く感じながら、彼女たちへの相談内容を頭の中で考え始めた。
そして――――――。
(それなら、自分が出来る限り小嶋の要望を叶えるとしますか)
そう決断してから、悪友にメッセージを打つ。
==============
小嶋との話し合いは終わった
ちょっと寄る所があるので、
用事が終わってから学校に戻る
==============
スマホの画面には、すぐに既読のマークが付き、返信が返ってきた。
==============
了解!
みんなで、ナツキが
戻って来るのを待ってる!
==============
==============
しのびねぇな
(みんなに伝えておいてくれ)
==============
==============
構わんよ!
(これはオレたち全員の総意だ)
※大嶋だけは、小嶋のことを
許せない、って激オコだけどな
==============
メッセージを確認し、オレは、駅から続く道を西へと進路を取った。
※
駅前のバス停から、熱中症にならない程度に軽めの早足で歩くこと二十分――――――。
オレは、自分たちの元を去った同級生の依頼を果たすべく、彼女の家の前にある公園に立っていた。
『私のことは忘れて下さい――――――』
という彼女の願いがありながら、この場所を訪れることに、我ながら未練がましさを感じたが、これも、その本人の願いを叶えるためなのだから、仕方がない。
そんな矛盾を感じつつも、先月、無理やり《実験》に付き合ってもらった、キジトラ模様の猫を探す。
今日は、太陽が雲に隠れているとは言え、まだまだ蒸し暑さの残る昼間である。
夜行性という猫の習性を考えると、日が暮れてから、あらためて出直すべきか――――――などと、藤棚のそばの公園の入り口に立って考えていると、足元から、
ミャ~~~~
と、声がした。
鳴き声にひかれて視線をうつすと、あのキジトラ猫が、足元にすり寄って来ていた。しゃがみ込んで、キジトラに目線を合わすと、相手も、
マァ~~~~~
と、挨拶するかのように声をあげたあと、スリスリと頭部をオレの足元に擦りつけくる。。
猫が、ヒトやモノに頭部を擦りつけるのは、自分のニオイを付けて、マーキングしているのだ、ということを聞いたことがあるが――――――。
どうやら、この公園を住処にする気ままな存在は、自分のことを受け入れてくれているようだ。
「おぉ~、覚えていてくれたか~」
野良猫相手に、言葉が伝わるなどとは考えていないが、声を掛けながら頭を撫でると、キジトラは、ゴロンと腹を見せながら半回転し、背中を撫でろ、と要求してくる。
そのリクエストに応え、ソフトなタッチで背中をさすってやると、《トカリナ》の実験を行った日と同じように、
ゴロゴロ~
と、キジトラは気持ちよさそうに喉を鳴らし始めた。
「今日も撫でさせてくれて、アリガトな~。実験のパートナーからのお達しだからな。これからも、ちょくちょく様子を見に来ていいか?」
そうたずねると、言葉の意味を理解してくれたのか、すっかり愛想が良くなった縞模様は、
マァ~~~~~
と、返事を返してくれた。
「コイツの不思議な能力の影響かも知れんが……あの一度きりの実験で、良く手なづけたもんだな……でも、急に居なくなるなんて、ヒドい相棒だよな……」
胸ポケットの木製細工を意識しつつ、愛くるしい姿をさらすキジトラに、苦笑しながら、一人言をつぶやくと、あの実験の日と同じように、悪友・岡村康之と交わした、アミューズメント・プールでの会話の記憶がよみがえってきた。
「時間停止している最中に蓄積された快感が、停止解除された途端にまとめて襲ってくる現象は、実際にあり得るのか?」
その言葉に、思わず、マスクの上から唇に触れる。
つい、数十分前に、小島夏海の姿が消えたことに気付いた瞬間に、このマスクの裏に感じた強烈な感触の、その正体は――――――。
(ま、まさか…………!?)
そこまで想像して、身体全体が火照るのを感じ、猫を撫でる手が止まる。
それに気付いたのか、撫でられることに飽きたのか、キジトラは立ち上がると、一度、前脚を伸ばして身体を反らしたあと、スタスタと優雅に、オレの足元から去って行った。
「オレも、あいつと同じだってことか……!?」
無意識に、言葉を発しながら、ポツリと、つぶやく。
「ったく! なにが、『私のことは忘れてください』だ…」
申し訳ないが、夏休み限定の実験パートナーの依頼をすべて叶えてやることは出来なさそうだ……。
是が非でも、もう一度、彼女に出会って確かめないといけないことがある。
(そのためには……)
夏休み前に提出した『進路希望調査表』を思い出し、担任教師に、これから、志望校を変更することが可能かどうかを確認しなければならない――――――。
それは、入学してからこれまでの約一年半を無為に過ごして来た自分自身に、初めて明確な目標が出来たことを感じた瞬間でもあった。
次に、メッセージアプリで、いくつかスタンプを送るが、既読はつかない。
バスの車内なので、スマホを触るのを止めたのかも知れないが、通話にもスタンプにも反応がないということは、先ほどまでのメッセージの送信直後に、ブロックをされてしまった可能性を否めない。
(小嶋なら、やりかねないよなぁ……)
そう考えながら、ベンチから腰を上げる。
(さて、どうしたものか……)
こっちの話しを聞くことは、勝手に切り上げたくせに、自分の要望ばかりを並べたメッセージに、大いに憤りを感じたものの――――――。
『ナツミって、男子からしたら、面倒くさい性格じゃない?遠慮なく、ズケズケと自分の言いたいことを言うかと思えば、自分が想っていることとは、正反対のことを言うこともあるし……』
貴重なアドバイスをしてくれた同級生女子が、週末の通話アプリでの会話で、語った小嶋夏海評を思い出し、
(なんだ、中嶋の言うとおりじゃないか……)
と、思わず笑みがこぼれる。
(であれば、この小嶋夏海の要望が並べられたメッセージも……)
ただ、自分だけの独りよがりの考え方になってしまうことは危険だ――――――。
そう思い直しつつ、自分には頼りになる二人の女子のクラスメートが居ることを心強く感じながら、彼女たちへの相談内容を頭の中で考え始めた。
そして――――――。
(それなら、自分が出来る限り小嶋の要望を叶えるとしますか)
そう決断してから、悪友にメッセージを打つ。
==============
小嶋との話し合いは終わった
ちょっと寄る所があるので、
用事が終わってから学校に戻る
==============
スマホの画面には、すぐに既読のマークが付き、返信が返ってきた。
==============
了解!
みんなで、ナツキが
戻って来るのを待ってる!
==============
==============
しのびねぇな
(みんなに伝えておいてくれ)
==============
==============
構わんよ!
(これはオレたち全員の総意だ)
※大嶋だけは、小嶋のことを
許せない、って激オコだけどな
==============
メッセージを確認し、オレは、駅から続く道を西へと進路を取った。
※
駅前のバス停から、熱中症にならない程度に軽めの早足で歩くこと二十分――――――。
オレは、自分たちの元を去った同級生の依頼を果たすべく、彼女の家の前にある公園に立っていた。
『私のことは忘れて下さい――――――』
という彼女の願いがありながら、この場所を訪れることに、我ながら未練がましさを感じたが、これも、その本人の願いを叶えるためなのだから、仕方がない。
そんな矛盾を感じつつも、先月、無理やり《実験》に付き合ってもらった、キジトラ模様の猫を探す。
今日は、太陽が雲に隠れているとは言え、まだまだ蒸し暑さの残る昼間である。
夜行性という猫の習性を考えると、日が暮れてから、あらためて出直すべきか――――――などと、藤棚のそばの公園の入り口に立って考えていると、足元から、
ミャ~~~~
と、声がした。
鳴き声にひかれて視線をうつすと、あのキジトラ猫が、足元にすり寄って来ていた。しゃがみ込んで、キジトラに目線を合わすと、相手も、
マァ~~~~~
と、挨拶するかのように声をあげたあと、スリスリと頭部をオレの足元に擦りつけくる。。
猫が、ヒトやモノに頭部を擦りつけるのは、自分のニオイを付けて、マーキングしているのだ、ということを聞いたことがあるが――――――。
どうやら、この公園を住処にする気ままな存在は、自分のことを受け入れてくれているようだ。
「おぉ~、覚えていてくれたか~」
野良猫相手に、言葉が伝わるなどとは考えていないが、声を掛けながら頭を撫でると、キジトラは、ゴロンと腹を見せながら半回転し、背中を撫でろ、と要求してくる。
そのリクエストに応え、ソフトなタッチで背中をさすってやると、《トカリナ》の実験を行った日と同じように、
ゴロゴロ~
と、キジトラは気持ちよさそうに喉を鳴らし始めた。
「今日も撫でさせてくれて、アリガトな~。実験のパートナーからのお達しだからな。これからも、ちょくちょく様子を見に来ていいか?」
そうたずねると、言葉の意味を理解してくれたのか、すっかり愛想が良くなった縞模様は、
マァ~~~~~
と、返事を返してくれた。
「コイツの不思議な能力の影響かも知れんが……あの一度きりの実験で、良く手なづけたもんだな……でも、急に居なくなるなんて、ヒドい相棒だよな……」
胸ポケットの木製細工を意識しつつ、愛くるしい姿をさらすキジトラに、苦笑しながら、一人言をつぶやくと、あの実験の日と同じように、悪友・岡村康之と交わした、アミューズメント・プールでの会話の記憶がよみがえってきた。
「時間停止している最中に蓄積された快感が、停止解除された途端にまとめて襲ってくる現象は、実際にあり得るのか?」
その言葉に、思わず、マスクの上から唇に触れる。
つい、数十分前に、小島夏海の姿が消えたことに気付いた瞬間に、このマスクの裏に感じた強烈な感触の、その正体は――――――。
(ま、まさか…………!?)
そこまで想像して、身体全体が火照るのを感じ、猫を撫でる手が止まる。
それに気付いたのか、撫でられることに飽きたのか、キジトラは立ち上がると、一度、前脚を伸ばして身体を反らしたあと、スタスタと優雅に、オレの足元から去って行った。
「オレも、あいつと同じだってことか……!?」
無意識に、言葉を発しながら、ポツリと、つぶやく。
「ったく! なにが、『私のことは忘れてください』だ…」
申し訳ないが、夏休み限定の実験パートナーの依頼をすべて叶えてやることは出来なさそうだ……。
是が非でも、もう一度、彼女に出会って確かめないといけないことがある。
(そのためには……)
夏休み前に提出した『進路希望調査表』を思い出し、担任教師に、これから、志望校を変更することが可能かどうかを確認しなければならない――――――。
それは、入学してからこれまでの約一年半を無為に過ごして来た自分自身に、初めて明確な目標が出来たことを感じた瞬間でもあった。
0
あなたにおすすめの小説
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話
水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。
そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。
凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。
「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
「いや、気にするに決まってるだろ」
ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様)
表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。
小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』
本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」
かつて、私は信じていた。
優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な──
そんな普通のお兄ちゃんを。
でも──
中学卒業の春、
帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、
私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった!
家では「戦利品だー!」と絶叫し、
年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、
さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!?
……ちがう。
こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない!
たとえ、世界中がオタクを称えたって、
私は、絶対に──
お兄ちゃんを“元に戻して”みせる!
これは、
ブラコン妹と
中二病オタク姫が、
一人の「兄」をめぐって
全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──!
そしていつしか、
誰も予想できなかった
本当の「大好き」のカタチを探す、
壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。
現実とサキュバスのあいだで ――夢で告白した相手が、同居を始めた話
そう
青春
ある日家に突然現れた謎のサキュバスのホルさん!
好感度はMAXなようで流されるがまま主人公はホルさんと日常を過ごします。
ほのぼのラブコメというか日常系小説
オチなどはなく、ただひたすらにまったりします
挿絵や文章にもAIを使用しております。
苦手な方はご注意ください。
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる