魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第十二話 武器は装備しないと意味がない

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───武器屋『ホースワン』───
『ホースワン』とは、オダリムという街にある武器屋である。初心者が使いやすい武器や防具を多く取り揃えており、高品質低価格が売りである。品揃えも豊富で剣だけでも30種類以上ある。試し切りなども気軽に出来るので自分にあった武器や防具をじっくりと選ぶことができる。




☆   ☆   ☆   ☆






「オラァ!」
「ゴギャァ!」


 ポロックの森の中、俺はいつものようにモンスターを倒してレベルを上げていた。
 ゴブリンの脳天に木刀を降り下ろす。ゴブリンは仰向けに倒れた後、光の粒になって消えた。
 そして、俺の頭の中に軽快な効果音が鳴り響く。


(テレテテッテッテッテー)
「よっしゃ!これでレベル10だ!」
「うむ、やっとか」


 草むらからフランが出てくる。


「1つ言っておくけどな、レベル上がるのが遅いのはお前のせいだからな?お前の妨害がなければもっと早く上がるんだよ!」
「いやー、どれだけ弾を増やしてもお主に当たらんからわしもむきになってしまったんじゃ」
「増えるってレベルじゃねぇよ。最終的に四方八方から飛んで来てたじゃねぇか」
「それもこれも、お主の為を思ってのことじゃ。こんなに勇者思いの魔王がおる幸運をお主は感謝すべきなんじゃぞ?」
「うるせーよ!面白がってやっていることなんてお見通しなんだよ!」
「ひ、ひどい!私のことそんな風に思っていたのね!この人でなし!」
「二重の意味でお前が言うな」


 シクシクと嘘泣きをしているフランにイラッとしながら、木刀を腰に差す。
 とりあえず、これで新しいスキルが手に入る筈だ。楽しみだな。


「時間も遅いし神殿に行くのは明日にするか」
「それもそうじゃな。今日は帰って明日の朝に向かうとしよう」
「そうだ、神殿に行く前に武器屋によってもいいか?そろそろ防具を新調したいんだが」
「別に良いぞ。では、武器屋に向かった後に神殿に向かうとしよう」





☆   ☆   ☆   ☆





 次の日の朝、俺とフランは武器屋に向かっていた。
 武器が木刀しか使えないからせめて防具は良いものが欲しい。


「っと、忘れるところだった。フラン、1つ聞いても良いか?」
「なんじゃ?」
「呪いって他の武器を装備したらアウト何だよな?」
「そうじゃな」
「装備ってどうしたら出来るんだ?」
「装備の方法は2つある。1つはアイテムボックスから装備コマンドを選ぶこと。もう1つはその武器でダメージを与えることじゃ」
「なるほど」
「じゃが、杖は魔力を通しただけでも装備扱いになるから注意じゃな」
「じゃあ、他の武器を触る位なら大丈夫何だな?」
「触って素振り位ならしてもよいじゃろう。間違っても人に当てるではないぞ?」
「分かってるって」


 そんなこんなで武器屋『ホースワン』に到着。
 扉を開けて中に入ると様々な武器や防具がところ狭しと壁にかけられているのが目につく。そんな中、沢山の冒険者が店員に質問したり、武器や防具の吟味をしている。


「さすが、この街一番の武器屋だな。色んな武器や防具が置いてある」
「剣だけでも30種類以上あるらしいぞ」


 少し値段は高くなるがオーダーメイドもしているらしい。
 この呪われた木刀さえ無ければワクワクするんだが今はただ虚しい。
 武器をざっと見ていると、ふと1つの武器が目に留まった。


「フラン、1つ良いか?」
「なんじゃ?」
「投げナイフってセーフか?」
「鑑定で攻撃力が出たらアウトじゃ」
「爆弾とかもアウトか?」
「使い捨ての物はセーフじゃな」
「設置系の罠とかはどうだ?」
「セーフじゃ」

 
 結構厳しいな。飛び道具使えないのはかなり辛い。本格的に魔法頼りの戦闘が増えそうだな。
 となると、ここで買えるのはナイフ位か。手頃なものを買っておこう。
 武器コーナーには長いせずに防具コーナーへ向かう。防具のコーナーは金属製から革製まで多岐に渡る防具や盾が置いてある。


「どれにするんじゃ?」
「動きやすい革製の防具にしようと思ってるんだが、種類が多いな」


 色々な防具を手にとってみるが中々決まらない。シルバーウルフの革、コボルトの革、ベビードラゴンの革、どれが良いんだ?
 う~んと悩んでいると、この店のオーナーが店の奥からやって来た。


「これはこれはホウリ様。今日はでしたかな?」
「残念ながらじゃ無い。今日は防具を買いに来た」
ってなんじゃ?」
「……フランは知らなくていい」


 頭に?が浮かんでいるフランを横に俺はオーナーと話す。


「良い革製の防具が欲しいんだが何か無いか?防御と重さのバランスがとれた奴なら多少高くなってもいい」
「そうでございますね……」


 オーナーは紙の束を取り出してペラペラと捲る。


「……この辺りはいかがでしょう?」
「どれどれ」

 
 オーナーが挙げたリストをチェックする。金属製の防具は外すとして、俺に合いそうな革装備は……


「これとこれと、あとこれ持ってきてくれないか?」
「かしこまりました」


 オーナーが奥に下がっていく。その間壁にかかっている防具の品質と値段をチェックする。
 防具を真剣にチェックしていると不意に袖が引っ張られた。
 引っ張られた袖を見るとフランが不満そうな顔で袖を掴んでいた。


「ホウリ」
「何だ?」
「飽きた」
「我慢しろよ!」


 人の命がかかっている大事な事を飽きたって言ってんじゃねぇよ!


「嫌じゃ!嫌じゃ!つーまーらーん!」
「あーもう、駄々こねるな!そんなに暇なら武器のお試しでもしてこいよ!」
「……その手が合ったか!」


 フランは不満そうな顔をパァと明るくして手頃な剣を掴むと、お試し用の広場まで走っていった。
 ……何か嫌な予感がするけど厄介払い出来たし良いか。


「お待たせいたしました。こちらが商品です」


 オーナーがいくつかの商品を持ってきた。


「よし、それじゃあ見てみようか」


 そこから俺とオーナーの長い攻防が始まった。




☆   ☆   ☆   ☆




「────オーナーさん、悪い話じゃないでしょう?」
「うむむ、ですが、そこまで下げてしまうとこちらも厳しくなりますので……」
「でも、赤字じゃないですよね?これまで売れずに整備費用だけかかっている事を考えればここで売った方が良いと思いますよ?」
「……分かりました。ホウリ様には色々とお世話になっておりますので、この値段でお売りしましょう」


 よし、何とか値下げ交渉成功したな。
 ホクホクでレジに向かおうとすると、満足するまで試したのか剣を担いだフランがこちらに向かってきた。


「おーい、買い物は終わったか?」
「おう、バッチリだ!」


 剣を元の場所に戻しつつフランが成果を聞いてくる。


「して、いくらかかったんじゃ?」
「ゴールドウルフの防具を買ったんだが、1つ300万のところを100万まで値切った」
「お主、悪魔みたいじゃの……」


 若干批難がましい目でフランが見てくるのを無視してレジに向かう。
 レジではオーナーが防具を包んでいた。


「ゴールドウルフの防具2で200万Gになります」
「む?2つ?」
「冒険者カードで」
「かしこまりました」
「おい、ちょっと待て!」


 カードを取り出そうとするとフランが声を荒げた。


「お主の装備じゃろ?なぜ、2つも買っとるんじゃ?」
「ん?お前の分に決まってるだろ?」
「わ、わしの?」


 予想してなかったのか少し狼狽えるフラン。


「2つ買うことが値引きの条件に入ってんだよ。それに、お前にはそこそこ世話になってるしな」
「じゃ、じゃが、わしが防具を装備しても誤差にしかならんぞ?」
「んなこと分かってる。俺だけ高い装備してても変だからお前にも買うんだよ」


 それでもおどおどしているフラン。その目には迷いの表情が浮かんでいる。


「し、しかし」
「あーもう!買うって言ってんだから素直に貰っとけって」 


 包みを強引にフランに押し付ける。すると、俯いていたフランは包みをぎゅっと抱き抱えながら満面の笑みを浮かべた。


「そこまで言われては貰ってやっても良いぞ」
「素直じゃねぇ奴だな」


 プレゼントを受け取ってもらえたし良しとするか。
 改めて冒険者カードを取り出そうとすると、一人の店員が慌てたようにオーナーの所へ駆けてきた。


「オーナー、あのですね……」
「何?ふむふむ、なるほど……」


 何かあったのか?まあ、俺達には関係────いや、待てよ?さっきフランが使っていた剣、試し切りしただけにしては妙にくたびれていたような……。まさか!


「あのぉ、ホウリ様……」
「何でしょう……」
「お連れ様がこの店の広場にある設備を破壊しつくしたみたいでして……、そのぉ……」


 やっぱりか!やっぱりなのか!
 元凶であるフランを横目で睨み付けると、フランは包みを抱き抱えたままサッと目を反らした。


「フラン?」
「正直、すまんかったと思っとる」


 オーナーは弁償してくれと言い出しにくいのか、もごもごと口ごもっている。


「……この防具、正規の値段で買い取らせていただきます」
「……お買い上げありがとうございました」


 結局、600万を払って防具を買い取った。ナイフはおまけしてもらった。
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