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第六十一話 俺の胃は宇宙だ
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────Very berryパフェ ジョッキサイズ────
王都のとある喫茶店にある期間限定のメニューである。大きめのビールジョッキにベリー系の果物やスポンジやアイスクリーム、生クリームなどをふんだんに盛り込んだパフェであり、一人で食べきれる人は多くない。本来は複数の人が集まって分け合って食べるものである。──────Maoupediaより抜粋
☆ ☆ ☆ ☆
ある日の昼下がり、俺はナップに呼ばれてとある喫茶店に来ていた。窓際の席で外を眺めているがナップの奴はまだこない。
「コーヒーとケーキのセットでございます」
「ありがとうございます」
店員が持ってきたケーキを食べながらコーヒーを楽しむ。
そろそろ喫茶店について1時間経つ。あと5分で来なかったら店員に伝言を残してここを立ち去ろう。
そう思っていると、窓の外から走って喫茶店に向かってくるナップの姿が見えた。ナップは大慌てで店内に入るとせわしなく店内を見渡す。そして、俺に気が付くと走って向かってきた。
「悪い、色々あって遅れてしまった」
「帰っていいか?」
「本当に申し訳ない!だから相談に乗ってくれ!」
「……ここの代金はお前持ちな」
「分かった」
席に着いたナップは店員にコーヒーを頼む。そして、店員が持ってきたコーヒーを一口飲んで一息つく。
「ふぅ」
「で?なんで俺を呼んだのかを聞かせてもらおうか」
「それは……その……」
「帰っていいか?」
「待って!本当に待って!」
席から立ち上がった俺の手にナップが縋り付いてくる。仕方ないな。
俺は再び席についてフォークを手に取る。
「さっさと話せ、こっちだって暇じゃないんだよ」
「その……なんだ……」
「店員さーん!お会計!」
「待って!話すから待って!」
伝票を掲げた右手をナップが押さえつけてくる。
「分かった、話すから!」
「次、言葉に詰まったら本当に帰るからな?」
「心得た」
俺は再び席に座ってナップの言葉を待つ。ナップは数秒黙っていたが、意を決したような表情になり口を開いた。
「実は……好きな人が出来たんだ」
「店員さーん!」
「事あるごとに店員を呼ぶな!」
俺が掲げた伝票をナップが奪い取ってくる。
「お前そんなことの為に俺を呼んだのか?」
「俺にとっては由々しき事態なんだよ!」
ナップがテーブルを叩きながら声を荒げる。どうでもいい相談だな。まあ、話くらいは聞いてやるか。
「なんで急にそんな話を?」
「急にじゃない。いつもこういう話をしている」
「なるほど、いつもこういう話をしてミルたちを困らせている訳か」
「困らせている訳ではない。皆も親身になって聞いてくれている」
得意げになって話すミル。真剣に相談をするミルと嫌々相談を聞く他のメンバーの姿が用意に想像できるな。
「だが皆に相談しても中々彼女が出来なくてな。こうなったら何でも叶えてくれるキムラ・ホウリに頼もうと思ってな」
「俺はDエモンか。それに俺は対価を貰うぞ?いいのか?」
「いくらだ?金ならいくらでも払う」
「対価は話を聞いてから決める。詳細を話してくれ」
俺が話を促すと、さっきの口下手の様子から一変してナップが饒舌に話始める。
「実はな、前にとても綺麗な人を見かけてな。その日以来、その人が頭から離れなくて……。どうしたらいいと思う?」
「その人の名前とかは分かるのか?」
「分からない。だが、高価そうな衣服を身にまとった人だったな」
「どこで見たんだ?」
「神殿だ」
なるほど、神殿か。となれば関係者か?
「神官の人か?」
「かもしれない。だが、普通の神官よりも身分は高そうだったな」
「身分が高い神官を見たことないのか?王都ってお前らパーティーの拠点だろ?」
「見たことないな」
身分が高い神官は新聞などにもよく載るから有名である事は多い。
だが、王都の身分が高い神官は全員男だった筈だ。つまり……
「女にもてないからって、男にいった訳か?」
「ちゃんと女だ!」
「女に見える男もいるぞ?本当に女と言い切れるか?」
「他の人が『聖女だー』『噂以上に神々しいー』って言ってたから女に間違いない」
「そうか」
女性に間違いはないと。……待てよ?『噂以上に神々しい』って事は他の街のお偉いさんって事か?となれば心当たりが一人だけいるな。
「もしかして、その女って髪の毛はブロンドだったか?」
「ああ、よくわかったな」
神殿のお偉いさんでブロンドの女性なんて一人しか知らない。俺は確信がを得る為にナップに質問する。
「お前がその人を見たのはいつだ?」
「一昨日だな。この近くの神殿で見た」
だったらコレトの事で間違いない。一昨日、この街の神殿にヘルプに行っていたと言ってたから条件にも合う。
「オーケー、目星は付いた。俺の知り合いで間違いないだろう」
「本当か!?誰なんだ!?」
「それよりも一つ大切な事を聞かせてくれ」
「なんだ?」
「お前はどのくらい本気なんだ?」
この答え次第で俺は手を貸すかを決める。もしも、可愛いから遊びたいとか抜かしたら速攻で断ってやる。
「それは……」
「どうなんだ?」
俺の問いかけにナップは言葉を詰まらせる。
「どうした?答えられないのか?」
「……らないんだ」
「ん?」
「分からないんだ」
ナップがテーブルの上で拳を握りしめる。
「あの人を見た時、今までに無かった気持ちが湧いてきたんだ。フランさんを見た時に俺は恋をしたんだと思った。だが、あの人を見た時の気持ちはそれ以上だった。これが本当に恋なのか、俺は知りたい」
「その気持ちが何なのかを知りたいから俺に依頼したいと?」
「……悪いか?」
ナップが顔を真っ赤にしながら睨みつけてくる。
表情や仕草を見るに嘘はついてないな。
「お前、結構可愛いところあるんだな」
「うるさい!」
ナップが更に顔を赤くして机を叩く。これじゃあ、恥ずかしいのか怒っているのか分からないな。
「で、引き受けてくれるのか?」
「対価を払ってくれるんだったらな」
「いくらだ?」
真剣な表情で聞いてくるナップ。そんなナップに俺は首を振って答える。
「対価は金じゃない」
「じゃあ何を?」
「お前、闘技大会に出るんだよな?」
「ああ、それがどうした?」
「それじゃ対価はお前が予選で戦った相手の情報だ」
「それだけでいいのか?」
「そんな訳ないだろ。条件はもう一つある」
俺はケーキのいちごを口に入れて言葉を続ける。
「もしもお前が本戦に進んだ場合、俺が指示したら棄権してもらう」
「……俺に負けろと?」
「ああ、その通りだ。飲めないんだったら話は終わりだ」
本当だったら対価なしでやってもいいんだが、今は余裕があまりない。情報集めは急いでやる必要があるし楽に勝ち上がに越したことは無い。あまりいい手段じゃないのは分かっているが少しでも確実性を上げたい。
「乗るか乗らないか、どっちだ?」
「そこまでして勝ちたいのか!」
「そうだ」
「今まで見損なっていたが、さらに見損なったぞ!」
余程腹が立ったのか怒鳴り散らすナップ。周りの客の視線がすべてこちらに向いている中、俺は落ち着いてコーヒーを一口飲む。
「落ち着け、他の客に迷惑だ」
「しかし!」
「落ち着けって言ってるだろ?」
「……うっ」
俺の迫力に気圧されたナップはおとなしく椅子に座る。俺は心配そうに見ていた店長にジェスチャーで心配ないと伝える。
「確かにお前の言う通り俺がやっている事は誉められたことじゃない」
「そこまで分かっていながらこんな事を……」
「言っておくが俺は今年の闘技大会に命を賭けている」
「そんなの誰だって……」
「違う」
俺はナップの言葉を即刻切り捨てる。
「そいつらは命を賭ける程に努力しているって意味だろ?」
「お前は違うのか?」
「優勝できなかったら文字通り死ぬ。俺だけじゃなくて他のパーティーメンバーもな」
「何?」
ナップが怪訝そうに眉をひそめる。
「どういう意味だ?」
「事情を聞いたらお前も巻き込まれるぞ?それでもいいのか?」
「だったらいい。俺もまだ死にたくないんでな」
「懸命だな」
ナップが諦めたように言う。
「そういう事だ。全員の命を背負っている俺は手を抜く訳にはいかない。法律に反することはやらないが、グレーな事は平気でやるからな」
「お前なりの覚悟って奴か」
「そういう事だ」
ぶっちゃけ俺が負けたら戦争が再開する危険性すらあるから、絶対に勝たなくてはいけない。そのためには打てる手はすべて打つ。それが、信じてくれたあいつらに出来る事だから。
「それで?どうするんだ?」
「……一つ聞きたいが、お前らがしていることは悪ではないな?」
「勿論だ」
「……分かった、今回は諦めよう」
「助かる」
これで少し楽になるかもしれないな。
俺の条件を呑んだナップは前のめりになって目を輝かせる。
「その人の名前は何ていうんだ?」
「がっつくな。その女性にコンタクトを取った後に、どうするかを連絡するから今日は帰れ」
「な!?名前ぐらいは教えてくれてもいいだろ!?」
「お前の事だ、名前を教えたら俺が連絡する前にその人物を探そうとするだろ」
「ソンナコトナイヨー」
「目がバタフライしてるぞ」
海にいるイルカのように目が泳いでいるナップ。分かりやすい奴だ。
「そういう事だから、おとなしく俺の連絡を待ってろ」
「分かった……」
不満そうなナップを残して俺は席を立つ。
「俺はもう行く。人と会う約束をしていてな」
「おう、会計は俺にまかせろ」
ナップは奪い取っていた伝票を取り出して葉を見せてニカッと笑う。俺はナップに背を向けると手を振って返事をする。
喫茶店を出た俺は人通りが多くなってきた通りを進む。それにしても今日は人と会う予定が多いな。色々とやることが多いな。
色々と考えを巡らせながら俺は通りを歩くのであった。
「会計してくれ」
「かしこまりました。お客様のお会計は──────10万Gになります」
「……へ?1万Gの間違いだよな?」
「10万Gです」
「は!?何を食ったらそんな金額になるんだ!?」
「イチゴと栗とチーズとクレープのケーキがそれぞれ80個ずつ、期間限定の『Very berryパフェ ジョッキサイズ』が50個、コーヒー10杯、オレンジュースが60杯etc……でございます」
「あいつどんだけ食ってんだ!?大食いの大会でもあったのか!?」
「『Very berryパフェ ジョッキサイズ』をどんどんと飲み込んでいく様子は見てて気持ちが良かったですね。お客様もかなり盛り上がっていました」
「そんな事どうでも……」
「お礼にお家計は半額にさせていただきました」
「かなり重要だった!?というか半額で10万Gってetcの部分はどうなってるんだ!?」
「断っておきますが、これ以上は割引できませんよ?」
「畜生!払えばいいんだろ!覚えておけホウリ!」
前言撤回、俺は走って通りを進むのであった。
王都のとある喫茶店にある期間限定のメニューである。大きめのビールジョッキにベリー系の果物やスポンジやアイスクリーム、生クリームなどをふんだんに盛り込んだパフェであり、一人で食べきれる人は多くない。本来は複数の人が集まって分け合って食べるものである。──────Maoupediaより抜粋
☆ ☆ ☆ ☆
ある日の昼下がり、俺はナップに呼ばれてとある喫茶店に来ていた。窓際の席で外を眺めているがナップの奴はまだこない。
「コーヒーとケーキのセットでございます」
「ありがとうございます」
店員が持ってきたケーキを食べながらコーヒーを楽しむ。
そろそろ喫茶店について1時間経つ。あと5分で来なかったら店員に伝言を残してここを立ち去ろう。
そう思っていると、窓の外から走って喫茶店に向かってくるナップの姿が見えた。ナップは大慌てで店内に入るとせわしなく店内を見渡す。そして、俺に気が付くと走って向かってきた。
「悪い、色々あって遅れてしまった」
「帰っていいか?」
「本当に申し訳ない!だから相談に乗ってくれ!」
「……ここの代金はお前持ちな」
「分かった」
席に着いたナップは店員にコーヒーを頼む。そして、店員が持ってきたコーヒーを一口飲んで一息つく。
「ふぅ」
「で?なんで俺を呼んだのかを聞かせてもらおうか」
「それは……その……」
「帰っていいか?」
「待って!本当に待って!」
席から立ち上がった俺の手にナップが縋り付いてくる。仕方ないな。
俺は再び席についてフォークを手に取る。
「さっさと話せ、こっちだって暇じゃないんだよ」
「その……なんだ……」
「店員さーん!お会計!」
「待って!話すから待って!」
伝票を掲げた右手をナップが押さえつけてくる。
「分かった、話すから!」
「次、言葉に詰まったら本当に帰るからな?」
「心得た」
俺は再び席に座ってナップの言葉を待つ。ナップは数秒黙っていたが、意を決したような表情になり口を開いた。
「実は……好きな人が出来たんだ」
「店員さーん!」
「事あるごとに店員を呼ぶな!」
俺が掲げた伝票をナップが奪い取ってくる。
「お前そんなことの為に俺を呼んだのか?」
「俺にとっては由々しき事態なんだよ!」
ナップがテーブルを叩きながら声を荒げる。どうでもいい相談だな。まあ、話くらいは聞いてやるか。
「なんで急にそんな話を?」
「急にじゃない。いつもこういう話をしている」
「なるほど、いつもこういう話をしてミルたちを困らせている訳か」
「困らせている訳ではない。皆も親身になって聞いてくれている」
得意げになって話すミル。真剣に相談をするミルと嫌々相談を聞く他のメンバーの姿が用意に想像できるな。
「だが皆に相談しても中々彼女が出来なくてな。こうなったら何でも叶えてくれるキムラ・ホウリに頼もうと思ってな」
「俺はDエモンか。それに俺は対価を貰うぞ?いいのか?」
「いくらだ?金ならいくらでも払う」
「対価は話を聞いてから決める。詳細を話してくれ」
俺が話を促すと、さっきの口下手の様子から一変してナップが饒舌に話始める。
「実はな、前にとても綺麗な人を見かけてな。その日以来、その人が頭から離れなくて……。どうしたらいいと思う?」
「その人の名前とかは分かるのか?」
「分からない。だが、高価そうな衣服を身にまとった人だったな」
「どこで見たんだ?」
「神殿だ」
なるほど、神殿か。となれば関係者か?
「神官の人か?」
「かもしれない。だが、普通の神官よりも身分は高そうだったな」
「身分が高い神官を見たことないのか?王都ってお前らパーティーの拠点だろ?」
「見たことないな」
身分が高い神官は新聞などにもよく載るから有名である事は多い。
だが、王都の身分が高い神官は全員男だった筈だ。つまり……
「女にもてないからって、男にいった訳か?」
「ちゃんと女だ!」
「女に見える男もいるぞ?本当に女と言い切れるか?」
「他の人が『聖女だー』『噂以上に神々しいー』って言ってたから女に間違いない」
「そうか」
女性に間違いはないと。……待てよ?『噂以上に神々しい』って事は他の街のお偉いさんって事か?となれば心当たりが一人だけいるな。
「もしかして、その女って髪の毛はブロンドだったか?」
「ああ、よくわかったな」
神殿のお偉いさんでブロンドの女性なんて一人しか知らない。俺は確信がを得る為にナップに質問する。
「お前がその人を見たのはいつだ?」
「一昨日だな。この近くの神殿で見た」
だったらコレトの事で間違いない。一昨日、この街の神殿にヘルプに行っていたと言ってたから条件にも合う。
「オーケー、目星は付いた。俺の知り合いで間違いないだろう」
「本当か!?誰なんだ!?」
「それよりも一つ大切な事を聞かせてくれ」
「なんだ?」
「お前はどのくらい本気なんだ?」
この答え次第で俺は手を貸すかを決める。もしも、可愛いから遊びたいとか抜かしたら速攻で断ってやる。
「それは……」
「どうなんだ?」
俺の問いかけにナップは言葉を詰まらせる。
「どうした?答えられないのか?」
「……らないんだ」
「ん?」
「分からないんだ」
ナップがテーブルの上で拳を握りしめる。
「あの人を見た時、今までに無かった気持ちが湧いてきたんだ。フランさんを見た時に俺は恋をしたんだと思った。だが、あの人を見た時の気持ちはそれ以上だった。これが本当に恋なのか、俺は知りたい」
「その気持ちが何なのかを知りたいから俺に依頼したいと?」
「……悪いか?」
ナップが顔を真っ赤にしながら睨みつけてくる。
表情や仕草を見るに嘘はついてないな。
「お前、結構可愛いところあるんだな」
「うるさい!」
ナップが更に顔を赤くして机を叩く。これじゃあ、恥ずかしいのか怒っているのか分からないな。
「で、引き受けてくれるのか?」
「対価を払ってくれるんだったらな」
「いくらだ?」
真剣な表情で聞いてくるナップ。そんなナップに俺は首を振って答える。
「対価は金じゃない」
「じゃあ何を?」
「お前、闘技大会に出るんだよな?」
「ああ、それがどうした?」
「それじゃ対価はお前が予選で戦った相手の情報だ」
「それだけでいいのか?」
「そんな訳ないだろ。条件はもう一つある」
俺はケーキのいちごを口に入れて言葉を続ける。
「もしもお前が本戦に進んだ場合、俺が指示したら棄権してもらう」
「……俺に負けろと?」
「ああ、その通りだ。飲めないんだったら話は終わりだ」
本当だったら対価なしでやってもいいんだが、今は余裕があまりない。情報集めは急いでやる必要があるし楽に勝ち上がに越したことは無い。あまりいい手段じゃないのは分かっているが少しでも確実性を上げたい。
「乗るか乗らないか、どっちだ?」
「そこまでして勝ちたいのか!」
「そうだ」
「今まで見損なっていたが、さらに見損なったぞ!」
余程腹が立ったのか怒鳴り散らすナップ。周りの客の視線がすべてこちらに向いている中、俺は落ち着いてコーヒーを一口飲む。
「落ち着け、他の客に迷惑だ」
「しかし!」
「落ち着けって言ってるだろ?」
「……うっ」
俺の迫力に気圧されたナップはおとなしく椅子に座る。俺は心配そうに見ていた店長にジェスチャーで心配ないと伝える。
「確かにお前の言う通り俺がやっている事は誉められたことじゃない」
「そこまで分かっていながらこんな事を……」
「言っておくが俺は今年の闘技大会に命を賭けている」
「そんなの誰だって……」
「違う」
俺はナップの言葉を即刻切り捨てる。
「そいつらは命を賭ける程に努力しているって意味だろ?」
「お前は違うのか?」
「優勝できなかったら文字通り死ぬ。俺だけじゃなくて他のパーティーメンバーもな」
「何?」
ナップが怪訝そうに眉をひそめる。
「どういう意味だ?」
「事情を聞いたらお前も巻き込まれるぞ?それでもいいのか?」
「だったらいい。俺もまだ死にたくないんでな」
「懸命だな」
ナップが諦めたように言う。
「そういう事だ。全員の命を背負っている俺は手を抜く訳にはいかない。法律に反することはやらないが、グレーな事は平気でやるからな」
「お前なりの覚悟って奴か」
「そういう事だ」
ぶっちゃけ俺が負けたら戦争が再開する危険性すらあるから、絶対に勝たなくてはいけない。そのためには打てる手はすべて打つ。それが、信じてくれたあいつらに出来る事だから。
「それで?どうするんだ?」
「……一つ聞きたいが、お前らがしていることは悪ではないな?」
「勿論だ」
「……分かった、今回は諦めよう」
「助かる」
これで少し楽になるかもしれないな。
俺の条件を呑んだナップは前のめりになって目を輝かせる。
「その人の名前は何ていうんだ?」
「がっつくな。その女性にコンタクトを取った後に、どうするかを連絡するから今日は帰れ」
「な!?名前ぐらいは教えてくれてもいいだろ!?」
「お前の事だ、名前を教えたら俺が連絡する前にその人物を探そうとするだろ」
「ソンナコトナイヨー」
「目がバタフライしてるぞ」
海にいるイルカのように目が泳いでいるナップ。分かりやすい奴だ。
「そういう事だから、おとなしく俺の連絡を待ってろ」
「分かった……」
不満そうなナップを残して俺は席を立つ。
「俺はもう行く。人と会う約束をしていてな」
「おう、会計は俺にまかせろ」
ナップは奪い取っていた伝票を取り出して葉を見せてニカッと笑う。俺はナップに背を向けると手を振って返事をする。
喫茶店を出た俺は人通りが多くなってきた通りを進む。それにしても今日は人と会う予定が多いな。色々とやることが多いな。
色々と考えを巡らせながら俺は通りを歩くのであった。
「会計してくれ」
「かしこまりました。お客様のお会計は──────10万Gになります」
「……へ?1万Gの間違いだよな?」
「10万Gです」
「は!?何を食ったらそんな金額になるんだ!?」
「イチゴと栗とチーズとクレープのケーキがそれぞれ80個ずつ、期間限定の『Very berryパフェ ジョッキサイズ』が50個、コーヒー10杯、オレンジュースが60杯etc……でございます」
「あいつどんだけ食ってんだ!?大食いの大会でもあったのか!?」
「『Very berryパフェ ジョッキサイズ』をどんどんと飲み込んでいく様子は見てて気持ちが良かったですね。お客様もかなり盛り上がっていました」
「そんな事どうでも……」
「お礼にお家計は半額にさせていただきました」
「かなり重要だった!?というか半額で10万Gってetcの部分はどうなってるんだ!?」
「断っておきますが、これ以上は割引できませんよ?」
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