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第八十八話 まるで意味が分からんぞ!
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───ポーション───
ポーションとは傷の回復を早くする効果のある薬品である。効果は品質にもよるが、弱めの回復スキル位の効果である。使用法は口から接種するか、傷口に掛けるかの2つである。口からの使用は意識がない人への利用が出来ず、傷口への使用は痛みが激しいというデメリットがある。─────Maoupediaより抜粋
☆ ☆ ☆ ☆
ホウリさん達の拠点に付いた私たちはベッドにホウリさんを寝かせる。
「ホウリさん!」
「ホウリさん!」
「今からノエルを連れてくるから二人とも静かにしておけ」
私とロワさんが気を失っているホウリさんの横で叫びまくり、ミエルさんに注意を受ける。
改めてホウリさんの傷を見ると凄い傷だ。これは神殿で治療してもどうにもならないかもしれない。
「どうしよう……ホウリさんが……」
「大丈夫です、うちには優秀なヒーラーがいます。ホウリさんは必ず助かります」
タオルでホウリさんの傷口を押さえながら、ロワさんが自信満々に言います。
「わ、私に何か出来ることは……」
「何か回復のスキルは使えますか?」
「いえ、何も」
「でしたら、ポーションを持ってきてください。そこのテーブルに置かれている奴です」
「分かりました」
テーブルに置かれているポーションをありったけ持ってきて、ロワさんの傍に置く。ロワさんはポーションをタオルに染み込ませて傷口を抑える。
そうしていると、2階からミエルさんと共に小さな女の子が降りてきた。
「ノエルちゃん!」
「ロワお兄ちゃん!?ホウリお兄ちゃんは!?」
「傷が深いです!早く手当てを!」
「うん!」
ノエルちゃんは星の杖を取り出してホウリさんにかざす。すると、ホウリさんの傷口が緑色の光に包み込まれ、見る見るうちに傷が塞がっていった。
「凄い……」
「ノエルちゃんの回復スキルは一流ですからね。もう安心です」
「ちょっと待ってロワお兄ちゃん、中の傷が結構大きいよ。完全に治すにはもっと時間がかかると思う」
「えっと、内臓の傷がひどいって事?」
「うん、中の傷が出来て時間が結構経っているから、もっと治療が必要なの」
素人目に見ても致命傷だったのに、時間があれば治るのだろうか。しかもこんな小さな女の子の治療で傷が治るのも信じられないし、治る速度も尋常じゃない。一体何者なんだろうか?
あれ?ノエルって名前、法廷でラマンジェさんが言っていたような?確か神の使いの名前が……
「ノエル・カタラーナ?」
「ほう?ホウリから聞いておったか?」
私が呟いた瞬間に背後から、さっきの赤髪の女の子が部屋に入ってきた。
「えっと……フランさんでしたっけ?チイラさんを倒したんですか?」
「あの程度の奴わしの相手ではない。心をバッキバキに折ってやったわ」
「へ?あのチイラさんの心を折る?どうやったんですか?」
「ホウリが書いたこの『相手の心を上手に折る方法』を読めばお主も上手に心が折れるぞ。定価8万Gじゃ」
フランさんが手に分厚い本を持つ。高いけどちょっと欲しいかも。
フランさんが本を仕舞ってホウリさんのそばへと移動する。
「これは……峠は越えたか。みんな頑張ったのう。ノエル、わしも手伝うぞ」
「ホウリさんの指示があってこそですよ」
「ホウリさんの指示?」
ロワさんが駆け付けた時にはホウリさんは既に切られていた。いつ指示したのだろうか?
「そういえば、お主はホウリから何も聞いておらぬのだったな?」
「はい、聞いても何も教えてくれなくて困ってたんですよ」
「それはホウリの優しさじゃな」
「ホウリさんの優しさ?」
「その前にホウリが黙っとった事を全部話そう。その方が話しやすいじゃろう」
「分かりました。僕が話しましょう」
ロワさんが意気揚々に喋り始めました。
「ホウリさんは勇者でフランさんは魔王でノエルちゃんは神の使いです」
「……どういうことですか?」
「それでは分からぬじゃろうが。もっと詳しく説明するんじゃ」
「次はノエルが説明する!」
「うむ、任せた。わしはホウリの体に異常がないか調べるとする」
治療が終わったのか、ノエルちゃんが笑顔で手を上げる。表情を見るに治療は終わったみたい。
説明を任されたノエルちゃんが意気揚々と話し始める。
「ホウリお兄ちゃんはね、ノエルを助けてくれてるんだ」
「そうなんだ。ノエルちゃんは神の使いなの?」
「そうだよ!」
なるほど、ホウリさんはこの子を守るために裁判を起こしたのか。裁判までは皆でこの子を守っていたと。かなり大変な旅だったに違いない。
「今まで追手の人とかに追われていたんだね?大変だったね」
「追手?」
私の言葉にノエルちゃんが首を傾げる。幼いから言葉の意味が分からないのかな?
「えっと、誰かから逃げたんだよね?」
「ううん?そんな人いなかったよ?」
「本当?」
そうか、ノエルちゃんを怖がらせないために追手はホウリさんやフランさんが陰で倒していたんだろう。
何せフランちゃんは神の使いだ。外に出られずに部屋に籠りっきりだったに違いない。そう思うと自然に涙が出てくる。
「……いままで大変だったね、ノエルちゃん」
「うん?大変ってなに?」
「だって今までどこへも行けずに暗い部屋で一人で……」
「ノエル、皆で旅行に行ったり遊びに行ったりしてるよ?」
「……想像で?」
「本当だよ?」
私はミエルさんやロワさんを見てみると、2人とも大きく頷く。私より優雅な生活してない!?
「え!?そんなことして大丈夫だったの!?追われてたんでしょ!?」
「ホウリの奴が完璧に隠蔽してたからな。私たちは好き勝手出来ていたな」
「そもそも追手すら来なかったんですか!?」
ホウリさんの力を甘くみていたかもしれない。
「じゃ、じゃあホウリさんはサンドの街からの追跡をかわしつつ、闘技大会の準備をして、裁判の準備もしていたと?」
「そうですね」
「……そんな事出来るんですか?」
「現に出来ているな」
「………………」
説明を聞いた私は言葉を失う。なんか、ホウリさんが正体不明の生物に思える。
「……整理すると、ホウリさんがノエルちゃんと出会って裁判を起こすと決意した。それで、皆さんと出会って裁判の準備を進めていたと」
「そうじゃな。大まかには当たっておる」
「次は裁判を起こした後の話だな。ホウリは裁判を起こした後、私たちに手紙を残した。それがこれだ」
ミエルさんは『ミエルへ』と書かれた手紙を取り出します。
「ここにはホウリにもしもの事があった場合の指示が書かれている」
「さっきのホウリさんの指示というのは手紙の事ですか」
「そうじゃな、わしら全員に書いてあるぞ」
皆さんが自身への手紙を掲げます。
もしもの備えもしておくなんて、用意周到と言わざる負えない。
「それで皆さんは手紙を元に私たちを助けに来たという訳ですね」
「本当に救援信号が来た時には驚いたがな」
「それで、ここからが本題だ」
ミエルさんはもう一つの手紙を取り出す。私はそこに書かれている文字を見てみる。
「ラビへ?」
「ラビさんへの手紙ですよ」
「何せお主が裁判をするんだからな。ほら」
「……へ?」
手紙を差し出された私は一瞬固まる。言われてみると、ホウリさんはまだ起きないんだし私がやるしかない。裁判もほぼ勝負が決まっているし私でもなんとかなりそうだ。だけど……
私は差し出された手紙を受け取れずにいた。
「どうした?」
「……私でいいんですか?」
「どういう意味ですか?」
「私が負けたらあなたたちの立場も危ないです。そんな大切な戦いを私なんかに任せていいんですか?」
万が一にでも負けたらここにいる人たちが全員ひどい目にあうだろう。
私はまともに裁判に出た事がない新人だ。私以外にも適任はいると思ってしまうのは当然だろう。
「その手紙は受け取れないです」
「そういうのは手紙を見てから言うんじゃな」
「見るだけ見て、無理だと感じたのならば他の者に頼めばいい」
「そうですよ!まずはホウリさんの言葉を聞いてあげてください」
皆さんに押し切られる形で手紙を受け取る。何が書いてあるんだろうか。
私が手紙を受け取ったのを見たミエルさんは満足そうに頷く。
「今日は危ないから泊まると良い。二階の一番奥の部屋を使うといい」
「何か必要な物があるのならば言うといい」
「はい、ありがとうございます」
私はお辞儀をして二階へと上がる。
言われた部屋に入ってベッドに座って渡された手紙を開ける。月明かりに照らされる中、私は手紙の中身を読み始める。
☆ ☆ ☆ ☆
『ラビへ』
この手紙を見ているのなら、裁判が終わる前に俺の身に何かが起こったのだろう。もしも、裁判が終わっていたり、俺が無事の場合はすぐに手紙を焼いてほしい。
前置きが長くなると読む気が起きないと思うから、さっそく本題に入ろう。断っておくが、重要な情報を先に書いておく。
まず、この手紙には俺のやってきたことが書かれている。詳しく書くと長くなるから2枚目を読んでくれ。
次にラビを助手に選んだ理由を説明する。恐らく、ラビは他の検察官に頼まずに自分に頼んだか気になっていると思う。俺はラビの事を事前に調べさせてもらった結果、ラビが適任であった。信じられないと思うが今回の裁判の一番の適任であるんだ。理由はいくつかある。1つ、ラビは観察眼に優れている。例えば、俺に初めてあった時に最初はいなかったと気付けた。部屋には数十人の人がいたにも関わらずだ。操作や相手の様子を観察するのに必要な要素だ。2つ、正義感。ラビの中には悪を許さないという強い心がある。これの必要性は言わなくても分かるな?3つ、度胸。どんな状況でも自分のやりたいことを通すという意思がラビにはある。今回の裁判はかなり特殊だ。いつもとは違って貴族が多い裁判だから、堂々と受け答えが出来るラビが適任なんだ。長々と書いたが、いつも通りのラビで良いって事だ。
次になぜラビに情報を伏せていたかについて説明する。ノエルについてはフラン達から聞いてると思うが、敵はノエルを狙っている。つまり、ノエルの事を知っている奴も狙われるという事だ。裁判の途中でラビが俺から何も知らされない会話を相手に聞こえるようにしていたと思う。あれはラビが俺から何も知らされてない事のアピールだ。だから、この手紙を見た後も何も知らないフリを続けてほしい。
最後になるが、ここからは俺の気持ちを書く。読み飛ばしても構わない。俺はラビに裁判を引き継いで欲しいと思う。ラビだったら裁判をやり通せるだろう。裁判の進め方は3枚目に書いてある。だが、自分にはできないと思ったのならば他の検察官に任せても良い。なにせ俺たちの今後がかかっているからな。無理だと思ったのなら気にせず他の奴に任せてくれ。後は任せた。
こんな俺に付き合ってくれてありがとう
キムラ・ホウリ
☆ ☆ ☆ ☆
1枚目の手紙を読み終えて、一度封筒に手紙を戻す。そして、そのままベッドに倒れ込む。
今の状況であれば、別の人に頼むのが普通だろう。裁判に負ければさっきの人たちもどうなるか分からない。他の慣れている人に任せるのが一番だろう。だけど……
色々と考えながら、私は手紙を抱きしめる。私の心は既に決まっていた。
ポーションとは傷の回復を早くする効果のある薬品である。効果は品質にもよるが、弱めの回復スキル位の効果である。使用法は口から接種するか、傷口に掛けるかの2つである。口からの使用は意識がない人への利用が出来ず、傷口への使用は痛みが激しいというデメリットがある。─────Maoupediaより抜粋
☆ ☆ ☆ ☆
ホウリさん達の拠点に付いた私たちはベッドにホウリさんを寝かせる。
「ホウリさん!」
「ホウリさん!」
「今からノエルを連れてくるから二人とも静かにしておけ」
私とロワさんが気を失っているホウリさんの横で叫びまくり、ミエルさんに注意を受ける。
改めてホウリさんの傷を見ると凄い傷だ。これは神殿で治療してもどうにもならないかもしれない。
「どうしよう……ホウリさんが……」
「大丈夫です、うちには優秀なヒーラーがいます。ホウリさんは必ず助かります」
タオルでホウリさんの傷口を押さえながら、ロワさんが自信満々に言います。
「わ、私に何か出来ることは……」
「何か回復のスキルは使えますか?」
「いえ、何も」
「でしたら、ポーションを持ってきてください。そこのテーブルに置かれている奴です」
「分かりました」
テーブルに置かれているポーションをありったけ持ってきて、ロワさんの傍に置く。ロワさんはポーションをタオルに染み込ませて傷口を抑える。
そうしていると、2階からミエルさんと共に小さな女の子が降りてきた。
「ノエルちゃん!」
「ロワお兄ちゃん!?ホウリお兄ちゃんは!?」
「傷が深いです!早く手当てを!」
「うん!」
ノエルちゃんは星の杖を取り出してホウリさんにかざす。すると、ホウリさんの傷口が緑色の光に包み込まれ、見る見るうちに傷が塞がっていった。
「凄い……」
「ノエルちゃんの回復スキルは一流ですからね。もう安心です」
「ちょっと待ってロワお兄ちゃん、中の傷が結構大きいよ。完全に治すにはもっと時間がかかると思う」
「えっと、内臓の傷がひどいって事?」
「うん、中の傷が出来て時間が結構経っているから、もっと治療が必要なの」
素人目に見ても致命傷だったのに、時間があれば治るのだろうか。しかもこんな小さな女の子の治療で傷が治るのも信じられないし、治る速度も尋常じゃない。一体何者なんだろうか?
あれ?ノエルって名前、法廷でラマンジェさんが言っていたような?確か神の使いの名前が……
「ノエル・カタラーナ?」
「ほう?ホウリから聞いておったか?」
私が呟いた瞬間に背後から、さっきの赤髪の女の子が部屋に入ってきた。
「えっと……フランさんでしたっけ?チイラさんを倒したんですか?」
「あの程度の奴わしの相手ではない。心をバッキバキに折ってやったわ」
「へ?あのチイラさんの心を折る?どうやったんですか?」
「ホウリが書いたこの『相手の心を上手に折る方法』を読めばお主も上手に心が折れるぞ。定価8万Gじゃ」
フランさんが手に分厚い本を持つ。高いけどちょっと欲しいかも。
フランさんが本を仕舞ってホウリさんのそばへと移動する。
「これは……峠は越えたか。みんな頑張ったのう。ノエル、わしも手伝うぞ」
「ホウリさんの指示があってこそですよ」
「ホウリさんの指示?」
ロワさんが駆け付けた時にはホウリさんは既に切られていた。いつ指示したのだろうか?
「そういえば、お主はホウリから何も聞いておらぬのだったな?」
「はい、聞いても何も教えてくれなくて困ってたんですよ」
「それはホウリの優しさじゃな」
「ホウリさんの優しさ?」
「その前にホウリが黙っとった事を全部話そう。その方が話しやすいじゃろう」
「分かりました。僕が話しましょう」
ロワさんが意気揚々に喋り始めました。
「ホウリさんは勇者でフランさんは魔王でノエルちゃんは神の使いです」
「……どういうことですか?」
「それでは分からぬじゃろうが。もっと詳しく説明するんじゃ」
「次はノエルが説明する!」
「うむ、任せた。わしはホウリの体に異常がないか調べるとする」
治療が終わったのか、ノエルちゃんが笑顔で手を上げる。表情を見るに治療は終わったみたい。
説明を任されたノエルちゃんが意気揚々と話し始める。
「ホウリお兄ちゃんはね、ノエルを助けてくれてるんだ」
「そうなんだ。ノエルちゃんは神の使いなの?」
「そうだよ!」
なるほど、ホウリさんはこの子を守るために裁判を起こしたのか。裁判までは皆でこの子を守っていたと。かなり大変な旅だったに違いない。
「今まで追手の人とかに追われていたんだね?大変だったね」
「追手?」
私の言葉にノエルちゃんが首を傾げる。幼いから言葉の意味が分からないのかな?
「えっと、誰かから逃げたんだよね?」
「ううん?そんな人いなかったよ?」
「本当?」
そうか、ノエルちゃんを怖がらせないために追手はホウリさんやフランさんが陰で倒していたんだろう。
何せフランちゃんは神の使いだ。外に出られずに部屋に籠りっきりだったに違いない。そう思うと自然に涙が出てくる。
「……いままで大変だったね、ノエルちゃん」
「うん?大変ってなに?」
「だって今までどこへも行けずに暗い部屋で一人で……」
「ノエル、皆で旅行に行ったり遊びに行ったりしてるよ?」
「……想像で?」
「本当だよ?」
私はミエルさんやロワさんを見てみると、2人とも大きく頷く。私より優雅な生活してない!?
「え!?そんなことして大丈夫だったの!?追われてたんでしょ!?」
「ホウリの奴が完璧に隠蔽してたからな。私たちは好き勝手出来ていたな」
「そもそも追手すら来なかったんですか!?」
ホウリさんの力を甘くみていたかもしれない。
「じゃ、じゃあホウリさんはサンドの街からの追跡をかわしつつ、闘技大会の準備をして、裁判の準備もしていたと?」
「そうですね」
「……そんな事出来るんですか?」
「現に出来ているな」
「………………」
説明を聞いた私は言葉を失う。なんか、ホウリさんが正体不明の生物に思える。
「……整理すると、ホウリさんがノエルちゃんと出会って裁判を起こすと決意した。それで、皆さんと出会って裁判の準備を進めていたと」
「そうじゃな。大まかには当たっておる」
「次は裁判を起こした後の話だな。ホウリは裁判を起こした後、私たちに手紙を残した。それがこれだ」
ミエルさんは『ミエルへ』と書かれた手紙を取り出します。
「ここにはホウリにもしもの事があった場合の指示が書かれている」
「さっきのホウリさんの指示というのは手紙の事ですか」
「そうじゃな、わしら全員に書いてあるぞ」
皆さんが自身への手紙を掲げます。
もしもの備えもしておくなんて、用意周到と言わざる負えない。
「それで皆さんは手紙を元に私たちを助けに来たという訳ですね」
「本当に救援信号が来た時には驚いたがな」
「それで、ここからが本題だ」
ミエルさんはもう一つの手紙を取り出す。私はそこに書かれている文字を見てみる。
「ラビへ?」
「ラビさんへの手紙ですよ」
「何せお主が裁判をするんだからな。ほら」
「……へ?」
手紙を差し出された私は一瞬固まる。言われてみると、ホウリさんはまだ起きないんだし私がやるしかない。裁判もほぼ勝負が決まっているし私でもなんとかなりそうだ。だけど……
私は差し出された手紙を受け取れずにいた。
「どうした?」
「……私でいいんですか?」
「どういう意味ですか?」
「私が負けたらあなたたちの立場も危ないです。そんな大切な戦いを私なんかに任せていいんですか?」
万が一にでも負けたらここにいる人たちが全員ひどい目にあうだろう。
私はまともに裁判に出た事がない新人だ。私以外にも適任はいると思ってしまうのは当然だろう。
「その手紙は受け取れないです」
「そういうのは手紙を見てから言うんじゃな」
「見るだけ見て、無理だと感じたのならば他の者に頼めばいい」
「そうですよ!まずはホウリさんの言葉を聞いてあげてください」
皆さんに押し切られる形で手紙を受け取る。何が書いてあるんだろうか。
私が手紙を受け取ったのを見たミエルさんは満足そうに頷く。
「今日は危ないから泊まると良い。二階の一番奥の部屋を使うといい」
「何か必要な物があるのならば言うといい」
「はい、ありがとうございます」
私はお辞儀をして二階へと上がる。
言われた部屋に入ってベッドに座って渡された手紙を開ける。月明かりに照らされる中、私は手紙の中身を読み始める。
☆ ☆ ☆ ☆
『ラビへ』
この手紙を見ているのなら、裁判が終わる前に俺の身に何かが起こったのだろう。もしも、裁判が終わっていたり、俺が無事の場合はすぐに手紙を焼いてほしい。
前置きが長くなると読む気が起きないと思うから、さっそく本題に入ろう。断っておくが、重要な情報を先に書いておく。
まず、この手紙には俺のやってきたことが書かれている。詳しく書くと長くなるから2枚目を読んでくれ。
次にラビを助手に選んだ理由を説明する。恐らく、ラビは他の検察官に頼まずに自分に頼んだか気になっていると思う。俺はラビの事を事前に調べさせてもらった結果、ラビが適任であった。信じられないと思うが今回の裁判の一番の適任であるんだ。理由はいくつかある。1つ、ラビは観察眼に優れている。例えば、俺に初めてあった時に最初はいなかったと気付けた。部屋には数十人の人がいたにも関わらずだ。操作や相手の様子を観察するのに必要な要素だ。2つ、正義感。ラビの中には悪を許さないという強い心がある。これの必要性は言わなくても分かるな?3つ、度胸。どんな状況でも自分のやりたいことを通すという意思がラビにはある。今回の裁判はかなり特殊だ。いつもとは違って貴族が多い裁判だから、堂々と受け答えが出来るラビが適任なんだ。長々と書いたが、いつも通りのラビで良いって事だ。
次になぜラビに情報を伏せていたかについて説明する。ノエルについてはフラン達から聞いてると思うが、敵はノエルを狙っている。つまり、ノエルの事を知っている奴も狙われるという事だ。裁判の途中でラビが俺から何も知らされない会話を相手に聞こえるようにしていたと思う。あれはラビが俺から何も知らされてない事のアピールだ。だから、この手紙を見た後も何も知らないフリを続けてほしい。
最後になるが、ここからは俺の気持ちを書く。読み飛ばしても構わない。俺はラビに裁判を引き継いで欲しいと思う。ラビだったら裁判をやり通せるだろう。裁判の進め方は3枚目に書いてある。だが、自分にはできないと思ったのならば他の検察官に任せても良い。なにせ俺たちの今後がかかっているからな。無理だと思ったのなら気にせず他の奴に任せてくれ。後は任せた。
こんな俺に付き合ってくれてありがとう
キムラ・ホウリ
☆ ☆ ☆ ☆
1枚目の手紙を読み終えて、一度封筒に手紙を戻す。そして、そのままベッドに倒れ込む。
今の状況であれば、別の人に頼むのが普通だろう。裁判に負ければさっきの人たちもどうなるか分からない。他の慣れている人に任せるのが一番だろう。だけど……
色々と考えながら、私は手紙を抱きしめる。私の心は既に決まっていた。
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