魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第百十一話 こんなんじゃ満足できねえぜ!

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 城の人たちへの挨拶もそこそこに門から城の外へ出る。
 城の中からメリゼが俺達を見送りながら恭しく頭を下げる。


「いってらしゃいませ、魔王様」
「うむ、留守は任せたぞ」


 そう言うと、フランは真っすぐと振り返ることなく街へと進む。その迷いなく進む背中には何か大きな決意を感じた。
 城が見えなくなる程に進むとフランは顔を覆ってうずくまる。
 ロワも何かを感じ取ったのかうずくまったフランの方に手を置く。


「フランさん、元気出してください。寂しいでしょうけど、僕たちが付いていますよ」
「…………」


 ロワの言葉を聞いたフランは肩を震わせる。
 そして、顔から手を取ると街中で思いっきり叫び始めた。


「はーっはっはっは!外じゃ!3か月振りの外じゃ!」


 フランが街を駆け回る。時々バク転とか側転とかを挟みつつ縦横無尽に駆け巡る。どんだけ嬉しいんだよ。
 フランは周りの人の視線を一身に受けつつ、街を駆け回ると満足したのか戻って来た。


「満足したか?」
「まだじゃ、まだわしは満足しておらん。3か月分の憂さを晴らしてくれるわ」
「具体的には何を?」
「娯楽施設で一日中遊ぶんじゃよ。お主らにも付き合ってもらうからな」
「魔剣を探さなくていいのですか?」
「早くしないと別の者の手に渡るかもしれないぞ?」
「あんな危険な場所にあるのならば、一日くらい遅れても問題あるまい。そんな事よりも息抜きじゃ!遊ぶぞ!」
「おー!」


 遊ぶと聞いてミエルが乗り気になる。こうなるとダメだ。遊ばないという事を聞きそうにない。
 こうして始まったフランの息抜きは3日に渡って行われたのだった。


☆   ☆   ☆   ☆


「はー、とりあえずは満足じゃ」


 劇場から出てきたフランが満面の笑みになる。この3日で近辺の娯楽施設は全て回る事になるとはな。
 時間がかかってしまったが、これでフランは言う事を聞いてくれるだろう。


「じゃあ行くか」
「そうじゃな。皆で手を繋ぐんじゃ」
「こんな所でワープするのか?色々と不味いのではないか?」
「心配いらん。わしが法じゃ」
「そういう問題では無いのだがな」


 フランにあきれつつも、俺たちは手を繋ぐ
 念のため認識阻害スキルを発動してフランはワープクリスタルを取り出す。


「では行くぞ」


 フランがMPを込めていくと、クリスタルは光を増していく。眩しさに思わず俺たちは目を瞑る。
 次に目を開けると、俺たちは森の中にいた。無事にナプキにたどり着いたようだ。


「全員武器を構えろ。ここからはいつ襲われても可笑しくない」
「やっぱり危険なんですね……」


 絶望の表情で弓と矢筒を取り出すロワ。文句を言うよりも言う通りにした方がいいと思ったんだろう。ロワも成長したものだ。


「それを成長と言ってよいのか?」
「行動が早くなるのは成長だろ」


 ミエルは鎧を身に着け、ノエルは銃とナイフのホルスターをそれぞれ足に着ける。


「お主は準備せんで良いのか?」
「俺はいつでも戦えるようにしてるからな。そういうフランは準備しなくていいのか?」
「愚問じゃな。準備せんでもこの森を丸ごと燃やし尽くせるわい」
「確かに愚問だったな」


 俺とフランいれば全滅することは無いが、基本的に俺たちの力は抑えて戦う。
 俺達はいつまでもこの世界にいる訳じゃないから、今のうちに自分で戦える力を身に着けて貰うのが目的だ。
 全員の準備が出来た事を確認し、俺は地図を広げる。


「フラン、今の位置はどこだ?」
「ここじゃな」


 フランは地図の一点を指さす。ここなら高低差も少ないし進みやすいだろう。


「目標までは約1時間くらいだ。気張っていくぞ」
「「「「はーい!」」」」


 俺をコンパスを目印にしながら俺を先頭にして森の中を進む。フランの認識阻害のスキルも無いから、魔物とすぐに接敵するはずだ。
 そう思っていると奥から不自然な木が擦れる音がした。間違いない、敵だ。
 俺は背後に目をやると、全員武器を構えて音のする方に目を向けていた。俺が声掛けするまでもなく魔物の気配を察したみたいだ。
 進む速度を落として、相手の出方を伺う。瞬間、葉と葉の間から体長60㎝もある緑色のクワガタが3匹突撃してきた。
 こいつの名前はクワガン、大きな鋏は鉄板をも切り裂くほど強力だ。しかも空中を自由自在に飛び回り、姿を捉えるのがかなり難しくなっている。生半可な実力だと簡単に全滅するかなりの強敵だ。
 俺とミエルでクワガンを1匹ずつ受け止める。


「ロワ!」


 俺の号令でロワがクワガンへ矢を放つ。しかし、クワガンの体は固く矢では傷一つ付いていない。
 クワガンは大きな翅を羽ばたかせながら矢を放ってきたロワへと向かっていく。


「挑発!」


 それをみたミエルが咄嗟に挑発を使い、クワガンの狙いを自身に集めた。


「ナイスですミエルさん!」


 そう言うと、ロワはクワガンに向かって立て続けに矢を放つ。
 放たれた矢は先端から裂けていき、数本の矢へと分裂した。クラウドショットのエンチャントだ。
 放たれた矢の1本が素早いクワガンの頭を捕らえる。クワガンは体制を崩すが、ダメージを受けた様子は無かった。
 ロワもそれは想定内だったのか、周りの矢を操作して一気にクワガンへと向かわせる。
 20本にもわたる矢がクワガンの頭に殺到し徐々に日々を入れていく。そして、最後の1本がクワガンの頭に命中すると固い殻が割れて、中身が露出した。
 ロワはそのスキを見逃さず、矢でクワガンを射抜いた。射抜かれたクワガンは地面に墜落し、そのまま光の粒になって消えた。
 クワガンは残り2体、俺とミエルが抑えているだけだ。
 俺は甲殻の間に新月を食いこませてクワガンに止めを刺す。ミエルも大剣でクワガンを叩き潰して光の粒にしていた。
 周りに敵がいなくなる。だが、ロワは油断せずに辺りの気配を探る。前に言った事を実践できているな。
 全員で周りの気配を探る。


「……そこ!」


 ノエルが銃を抜いて草むらに全弾発射する。


(ぎゃあああ!)


 花に目がついたモンスターがノエルの銃弾によって倒れる。
 光の粒になるモンスターの後ろから同じような花のモンスターが列を作ってやって来る。


「なんだか気持ち悪いですね……」
「『フラワーアイ』、1体はそう強くは無いが数が多い。気を引き締めていけ」
「はい!」


 全員で次から次へとやって来るモンスターを倒していく。
 次に来るモンスターを倒しながら俺たちは森の中を進むのだった。


☆   ☆   ☆   ☆



 モンスターを倒しながら進むこと1時間、無事に目的地にたどり着く事が出来た。
 見上げるほどに高い壁がそびえたっている。崖自体も堅そうだし、下手に破壊したら崩れて下敷きになるだろう。


「はぁはぁ……、着きましたか?」
「おう。俺とフランは調査するから少し休んどいてくれ」
「分かった」
「はーい!」


 地面にレジャーシートを敷いてその上に簡単なお菓子を広げる。


「では行ってくる」
「いってらっしゃーい」


 3人を残してフランと共に崖に向かう。
 崖の高さは100m以上はあるし、幅も端が見えない程に広がっている。この崖の中にあったとしても探すのは骨が折れそうだ。
 触ってみると岩肌がかなり固い事が分かる。鉄なんかよりもよっぽど固いだろう


「この崖に魔剣があるのか?」
「可能性はある」
「なぜこの崖なんじゃ?もっと相応しい場所は無いのか?」
「有るが、ここが一番可能性が高い。理由は単純、見つかりにくいからだ」
「隠すのなら地面に埋めてしまえばいいのではないか?」
「それだと地震とかで地上に出てしまう可能性がある。ある程度、強度があり見つかりにくい場所に隠さないといけない。一番適切なのはここだ」


 ここならば見つかりにくく強度も問題ない。無理に掘り出すと生き埋めになるおまけつきだ。


「そう言われるとそうかもしれぬのう?で、どうやって探すんじゃ?」
「一番手っ取り早いのが探知系のスキルがある事なんだがな。どこかの魔王が持ってないかなー?」
「持っておるぞ」
「流石だ」

 
 持ってなかったとしても何とかなるが、持っていれば大幅な時間の短縮になる。


「どのくらいの範囲を探索できる?」
「半径100位じゃな」
「じゃ、適当に歩きながら探索するか」
「そうじゃな。『範囲検索』起動っと」


 フランはスキルを発動させた瞬間、目を見開いて驚いた。


「どうした?」
「……見つかった」
「え?本当か?」


 こんなに早く見つかるとは思っていなかった。だが、早く見つかるのならばそれに越したことはない。嬉しい誤算だ。


「で?どこにあるんだ?」


 俺の質問にフランはすぐそばにある崖を指さす。そこは俺がさっき触っていた所だった。


「……近くね?」
「だから驚いておるんじゃ」


 調べる為に再び崖に近付いてみる。注意深く岩肌を見てみると、うっすらと切れ込みが入っている事に気が付く。ここに何かある事が分からないと見逃してしまうほどに自然な切れ込みだ。
 切れ込みは長方形に入っており、扉のようになっている。


「この形に穴をあけて同じ素材の岩で蓋をしたみたいだな」
「中が空洞になっていて、そこに何かがある。じゃが、どうやって開ける?鍵でもあるのか?」
「封印するために作ったものだからな。外から開けられるようには作られていない筈だ」
「ならばどうする?」
「壊すしかないだろ」
「話が早くて助かるわい。せーの!」
「ちょっと待てや!」


 フランが意気揚々と拳を振り上げた所を、後ろから羽交い絞めにして抑える。


「ええ離せ!さっさと壊して魔剣を回収して王都で遊ぶんじゃ!」
「俺の話聞いてたか!?無理やり壊すと崖が崩れる可能性があるんだよ!崩れた後の回収にどれだけの時間がかかると思ってるんだ!」
「……チッ」


 俺の必死の説得にフランが拳を降ろす。俺は胸を撫でおろしてフランから離れる。


「ならばどうやって取り出す?」
「接着されている部分だけを破壊すればいい」
「そう言った細かい破壊は苦手なんじゃよ。大雑把に破壊する方がよっぽど楽じゃ」
「性格出てるな。だったらノエルにやってもらうか」


 ノエルなら魔装で力が強くなるし、フランと違って細かい作業も出来る。こういう時にはフランよりも適任だろう。
 早速、3人がいる所に戻って事情を説明する。


「……という訳だ。来てくれるか?」
「うん!分かったよ!」
「そういう事なら僕たちも行きますか」
「そうだな」


 3人を壁の隙間がある場所へ案内する。


「うーんと、この隙間の部分を壊せばいいの?」
「そうだ。道具はこれを使ってくれ」
「はーい!」


 ノミを極限まで薄くしたものと、ハンマーをノエルに渡す。


「いっくよー!魔装!」


 ノエルは隙間にノミを差し込んで物凄い勢いで破壊していく。


「なにこれ!すっごく楽しい!」


 ノエルが目を輝かせながら接着部分を破壊していく。表情だけ見たらママゴトしてような感じだが、やってることは破壊活動なんだよな。
 数分ですべての接着部分を破壊したノエルは額に光る汗を拭いながら笑う。


「終わったよ!」
「よし、さっそく開けるか。フラン」
「分かっておる」


 俺達4人は隙間から退避し、フランだけ残る。
 フランは手を鳴らしながらゆっくりと壁に手を添える。


「ここまで厳重に保管されている魔剣、その姿見せて貰うかのう!」


 フランが壁を掴み、一気に後ろに放り投げる。
 すると、奥まで暗闇が続いている通路が表れた。


「この先にまだ見ぬ魔剣が……」
「私もかなりドキドキだ」
「ねえねえ、早く行こうよ」
「お前ら下がれ」


 通路を進みたくてウズウズしてる3人を無理やり遠ざける。


「どうしたんですか?早く行きましょうよ?」
「いいから下がって武器を構えろ」
「……何かくる気配がするわい。かなりの強敵じゃ。心してかかれ」


 俺とフランが真剣な表情なのを見て、3人も武器を構える。
 やっぱり一筋縄ではいかないか。そう思った俺は新月を構えたのだった。
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