魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第百四十五話 決着ゥゥーーーッ!!

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 王都中で戦っていた私たちは、いったん憲兵所に戻って来た。いくらフランさんのバフで強くなったとはいえ、ずっと戦っていると疲れてくる。他の人と交代する形で戻って来た訳だ。
 そして、戻って来たのにはもう一つ理由がある。さっきの戦いに違和感の正体を掴むためだ。


「その前に休まないとね」


 寝る前に報告だけしようと思い検察室を開ける。すると、ミエルさんやフランさん、ビタルさんやスイトさんがいた。


「皆さん、おそろいですね?」
「ちょっと気になる事があってな。ラビュもだろ?」
「その通りですけど、私の名前はラビです」


 皆さんも戦っている間に違和感を持ったみたいだ。
 私も皆さんと同じ、ホワイトボードの前に立つ。


「……あれ?なんでフランさんがいるんですか?王都の半分を守っているんですよね?」
「これはわしの幻影じゃ。本物はまだ戦っておるから安心せい」


 街を半分守りながら、幻影を使うだなんて、やっぱりフランさんは常識外れだ。だけど、今はそんな常識外れが心強い。
 ビタルさんがホワイトボードに貼ってある地図の前に立つ。


「話しは聞いている。今回の襲撃におかしな所があるとか?」
「その通りです」


 ビタルさんの言葉に私は頷く。


「初めに、いくらなんでも数が多すぎます」
「ラビュの言う通りだ。倒してもキリがねえ」
「ラビです」


 召喚士サモナーは魔物を召喚出来る。けど、ゴブリンを1体召喚するにもMPを30も使うから何体も召喚は出来ない。
 しかし、今回の襲撃では私が戦っただけでも300体は越えている。1人で3体召喚出来るとしても100人は召喚士がいる計算になる。そんなに召喚士サモナーを用意出来てるとは思えない。


「次に、召喚の時に出る魔方陣が見当たらないんだ」
「こんなに魔物がいればどこかで魔方陣が目撃されても可笑しくない」


 ミエルさんの言う通り、この戦闘中は魔方陣を見ていない。魔物の群れの元を探ってみたけど、それらしい所は見つからなかった。他の人達にも聞いたけど、それらしい目撃証言はない。


「この量の魔物が魔方陣が目撃されずに召喚されてるとは思えないですね」
「その件だが、私が戦っている時に変な奴を見たんだ」
「変な奴?」
「白いローブの男だ」
「白いローブ!?」


 私とフランさんは目を見合わせる。神殿で見た白いローブの男がこの襲撃の犯人なんだろうか?


「ミエルさん、本当ですか!?」
「ああ、現にそいつはゴーレムを召喚していた」
「倒せたのか?」
「他の人達に手伝ってもらって何とか倒せた」
「それは大変じゃったな」


 フランさんが関心したように頷く。他の人の手を借りたとは言え、ゴーレムを盗伐するなんて。やっぱりミエルさんは強い。


「それで、最後なんですが、経験値が入っていないんです」
「経験値?召喚された魔物って倒しても経験値入らないだろ?」
「いえ、実は1だけ入るんです」


 少なすぎるので無視する人が多いけど、実は微量に経験値が入る。レベル上げの効率はかなり悪いから知らない人も多い。


「私自身は魔物を倒せないので直接確かめては無いんですが、入っていないっていう人がいました」
「確かに入っていないな」


 ミエルさんがステータスを見ながら呟く。やっぱり、他の人が言ってたことは本当だったみたいだ。


「魔方陣や数については何らかのトリック出来ると思うんですけど、これだけは不可解です」
「確かに、この世の仕組みみたいな所だしな。今までで一番不可解だな」
「どちらにせよ、俺達が追うべき人物は白ローブだ。フラン、白ローブの位置は分かるか?」
「分かるぞ」
「流石フランさんですね」


 白ローブも神殿にいたから、フランさんがマーキングしているのではないかと思っていたけど、本当にその通りだった。これで、こちらから行動を起こすことが出来る。


「白ローブは今どこにいるんですか?」
「街の中をうろついておるようじゃな」
「すぐに向かいましょう!」
「落ち着け、疲労している体で行ってもヘマするだけじゃ」
「そう言う事だ。お前は少し休め」
「分かりました、私は後で向かいます。皆さんは頑張ってください」


 両手を握って皆さんにエールを送る。疲れているのは事実だし、私は休んで皆さんの跡を追おう。なんなら、ここの皆さんなら私が向かうまでも無く終わってるかも。
 そう思っていると皆さんから不思議そうな顔をする。


「なんですか?私、何か変な事言いました?」
「変な事って、白ローブとはお前が戦うんだぞ?」
「……へ?」


 疲れからか全く何を言われているのか分からない。私が白ローブと戦うと聞こえてしまった。


「すみません、私が戦うって聞こえちゃいました。もう一回言ってもらっていいですか?」
「お前が戦うって言ったんだ。分かってんじゃねえか」
「いやいや!なんで私が戦う事になってるんですか!もっと適任な人がいますよね!?」


 私が思わず叫ぶと、ビタルさんが呆れた様に溜息を吐く。


「ラビュ、お前は自分がフランに次ぐ戦力であるという自覚を持て」
「で、ですが、敵はどんな行動をしてくるか分からないんですよ?」
「だからこそ最大戦力をぶつけるんだよ」
「最大戦力っていうのなら、フランさんが行けばいいと思うんですけど?」
「わしは王都の半分を守っておるんじゃぞ?手が足りん」
「そ、そうですけど……」


 昨日まで戦えない人間だった私が得体のしれない敵と戦う。不安しか感じない。


「み、ミエルさんの方が適任じゃないですか?」
「私はダメージに強いが、敏捷性に乏しい。捕らえるとなると、ラビの方が適任だ」
「えーっと、ここにはいないですけどロワさんとかは……」
「ロワはのう、詰めが甘いから任せるのは不安なんじゃ」
「えーっと、後は……」


 必死に他の人がいないか考える。その様子をみたフランさんは私をジト目で見て来た。


「お主な。そろそろ観念せい」
「そんな事言われましても、私は戦闘経験が圧倒的に少ないんですよ。不安にもなりますよ」
「そう言う事なら多数決を取ろう。ホワイトボードに名前を書くから適任だと思う奴を選んでくれ」


 そう言ってビタルさんがペンを取る。まあ、多数決で決まるんだったら異論はないかな。
 キャンプを外してキュッキュッという音と共にぽワイトボードに文字が書かれていく。


『ラビ』


 これは私だ。


『プレン』


 これも私だ。


『ラビ・プレン』


 また私だ。


『ラビュ・プレェン』


 恐らく私だ。


「この中から好きな奴を選んでくれ」
「私一択じゃないですか!他の人も入れてくださいよ!」
「これは悩むな……」
「わしは一番ぷりにゃんに似ておる奴に入れるぞ」
「俺は初裁判の相手が領主だった奴に入れるぞ」
「ならば、私はなぜかバフが抜けない者にしよう」
「全部私の事ですよね!?悩んでいるフリしてるだけじゃないですか!」
「ほら、公平な投票の結果ラビュに決まったんだから文句言うな」


 なぜかラビュ・プレンに3票入っている。せめて他の選択肢に入れて欲しかった。


「まあ、こういう茶番は置いておいて真面目な話をするとだな、相手の素性が分からない以上は強い奴をぶつけたい。しかし、人員を割くことは出来ない。そうなると、ラビが一番適任なんだよ」
「それは分かってますけど……」


 理屈では分かっているが素直にハイと言える事ではない。しかし、あまりゴネても仕方ない。素直に折れよう。


「……分かりましたよ。私がやります」
「ありがとな」
「お詫びと言っちゃなんだが、何か食いたい物があれば持ってくるぞ?何かないか?」
「さっき食べそびれたカツサンドが食べたいです」
「分かった。出来立て熱々を持ってきてやる。だから休んでろ」
「分かりました」


 気持ちが重いけど、眠気が最高潮になっている。瞼にダンベルが付いているのではないかと思う程に重い。体を引きずりながら仮眠室に向かったのだった。


☆   ☆   ☆   ☆


 少し眠ってご飯を食べた私は白ローブの元へと向かった。念のため、近くにスイトさん達もいるけど、基本的には私が戦う事になる。もちろん、腕輪は外している。
 フランさんに言われた場所に向かう。そこは周りに民家がある普通の大通りだった。私も出勤にはこの実を通る。
 指定の場所に到着すると、白ローブが魔物を次々と召喚していた。なぜか、魔物は魔方陣が無くても召喚されていた。やっぱり、この人が魔物を召喚していたんだ。
 そんな白ローブの後ろに立って声をかける。


「あの、あなたがこの騒ぎの首謀者ですか?」


 私に声を掛けられた白ローブは召喚をやめると、ゆっくりと振り返った。


「ほう、俺を見つけたか」
「質問に答えて貰っていいですか?あなたがこの騒ぎの首謀者ですか?」
「その通り、俺が魔物を召喚し襲撃した」
「召喚の時には魔方陣が出ないんですね?」
「俺の特殊能力で弱い魔物は魔方陣が無くても召喚出来るんだよ。この世界の住人に分かるように言えばユニークスキルって言えばいいのか?」


 正直、そんなユニークスキルがあるかは私には分からない。でも、この人が犯人だというのは事実みたいだ。


「貴方の目的は?」
「うーん、そうだな。俺を見つけられたご褒美に教えてやるよ。俺の目的は強くなることだ」
「強くなる?」


 魔物をどれだけ召喚しても経験値は手に入らない筈だ。この人は何を言っているのだろうか?


「分からないか?この世界の人間には無理もないか」
「どういう事か説明してくれませんか?」
「俺のユニークスキルにはいくつか効果があってな。1つは召喚のMPが1になる事。2つ目は弱めの魔物は魔方陣が無くても即座に召喚出来る事。そして3つ目は……」


 白ローブが得意げに意気揚々と手を広げる。


「魔物が倒されると俺に経験値が入る事だ」
「なんですって?」
「1体倒される毎に10だったか。それぐらいの経験値が俺に入る訳だ。だから、王都に魔物を出現させて効率よく倒して貰おうって思った訳だ。頭いいだろ?」
「住んでいる人が被害を受けているんですよ!?それでも良いんですか!?」
「別に良いんじゃねえの?俺が痛い訳じゃないし、まだ知り合いとかいないし」


 あっけらかんと答える白ローブ。強がりとか嘘じゃなくて本心で言っている、私はそう確信した。
 私が呆然していると、白ローブた楽しそうに建物の壁を掴む。そして、手に力を籠めるといともたやすく壁をえぐり取った。


「あんたらのお陰でここまで強くなれたんだ。感謝しているぜ?」
「……聞きたい事は聞けました。あなたを捕まえます」


 そう言って私は拳を構える。そんな私を見た白ローブは肩を震わせて笑い始めた。


「あっはっはっは!あんたみたいな女が俺に勝てると思ってるの?」
「はい、勝てます」
「へー、じゃああんたの実力を見せてみてよ」


 白ローブが手を掲げると、地面から魔物が湧き上がって来た。ラインナップはゴブリンやコボルトと言った低級の魔物だけだ。


「かかれ!」


 白ローブの号令と共に魔物が一斉に襲い掛かって来る。
 私は魔物達の攻撃をかわしながら、一匹ずつ殴って気絶させていく。10秒もかからずに召喚された魔物は全滅した。
 それを見た白ローブはパチパチと手を叩く。


「おー、あんた強いね?俺は強い奴が大好きなんだよ。どうだ、俺のハーレムに入れてやってもいいぞ?」


 私は無言で拳を構える。白ローブはやれやれと言った様子で方をすくめると、そのまま両手を掲げた。


「仕方ない、僕も全力で相手しないとね。いでよ!キングゴブリン!」


 地面に魔方陣が現れ、3階の建物よりも大きなゴブリンが現れた。


「さあ、やってしまえ!」
「ごるあああああああ!」


 大木のような巨大なこん棒が振り下ろされる。
 こん棒は地響きと共に私を押しつぶし、土煙を巻き上げた。


「は!俺に逆らうからこうなるんだよ」


 白ローブが勝ち誇ったように宣言する。しかし、土埃から出て来た光景に白ローブは言葉を失う。
 私はこん棒を受け止めて、キングゴブリンを睨みつけていた。


「な、何をやっている!早くそいつを始末しろ!」


 キングゴブリンが再びこん棒を振り下ろしてくる。今度は拳を突き出しこん棒を叩き折る。
 折れたこん棒の一部をキングゴブリンに投げつけて、気絶させる。
 巨体が沈んでいく様子を背後に、私は白ローブに迫っていく。


「な、なめるな!」


 白ローブは完全に動揺した様子だったが、すぐに元気になって殴りかかって来た。私は白ローブの攻撃を額で受けて拳を固める。


「今からの攻撃は私のエゴ」
「な、なにを……」
「これは被害を受けた王都の人達の分!」


 私は軽めに白ローブの顔面を殴る。白ローブは少しのけぞったが、まだ気絶せずに私を睨みつけてくる。


「俺に逆らうんじゃねえぇぇぇ!」
「これは必死に皆を守っている憲兵や騎士団や冒険者の人達の分!」


 白ローブとクロスカウンターになる形で顔面を殴り抜く。
 白ローブは後ろに吹き飛び地面を転がる。ノーダメージの私はそのまま白ローブに向かって歩く。


「ま、まだだ!正義は最後に勝つ!そう相場が決まっているだろ!?」


 私はもう、白ローブの言葉が聞こえない。それほどに私の頭は冷えているのだ。


「くらえ!」


 白ローブが助走を付けて飛び蹴りを放ってくる。私も負けじとハイキックで応戦する。


「これは壊された街の分!」


 私と白ローブ足が衝突し火花が散る。そして、白ローブが吹き飛び壁に叩きつけられる。


「ぐはッ!」


 地面に落ちた白ローブは力無く地面に伏せた。私はそんな白ローブの襟をつかんで無理やり立たせる。


「ちくしょう……なんで俺がこんな目に……。もっと無双して……ハーレムを作って……」
「そしてこれは……」


 私は白ローブの言葉を無視して拳に力を込めていく。



「ぷりにゃんの仮装をしたり、戦うたびに服が破れて恥ずかしい思いをした私の分だ!」
「な──」


 白ローブが何か言う前に私はアッパーカットで打ち上げる。
 白ローブは8階の建物くらいまで吹き飛ぶとそのまま落下してきた。


「これでトドメだ!」


 足に力を込めると、落下してくる白ローブにタイミングを合わせてハイキックを繰り出す。
 狙いはドンピシャ。私のキックは白ローブに命中して、20m先まで吹き飛ばした。
 念のため白ローブに近付いてみるが、白目を剥いて気絶している。瞬間、周りで気絶していた魔物達が光の粒になって消えていった。
 こうして、王都の襲撃事件は幕を閉じたのだった。
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