魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

文字の大きさ
184 / 472

第百五十四話 センヲダセ!

しおりを挟む
 次の日、僕は指定された王都の門へ来ていました。
 王都の門の前には、騎士団の制服を着た人が3人いました。その中の男性が僕に笑顔で話しかけて来た。


「おはようございます」
「おはよう。君がロワ君?」
「はい。今日からよろしくお願いします」
「俺はティグレ、今回の遠征試験の評価を担当する。よろしくな。こいつらは一緒に戦う仲間だ」
「あたしはルシアン。ヒーラーをしているわ」
「俺様はレザン。戦士だ」
「よろしくお願いします」


 騎士団の皆さんと握手をしていって挨拶をします。これが終われば入団出来るかが決まります。頑張りましょう。
 こうして、僕の最終試験が始まったのでした。



☆   ☆   ☆   ☆



 ロワが遠征試験の試験官と握手しているのを俺とフランとノエルは遠くから見守っていた。
 フルステルスと俺の尾行術を使っているから見つかる事は無いだろう。だが、俺が気になっている事はそれじゃない。


「なあ、なんで俺達がロワ達を尾行しているんだ?」
「言ったじゃろ、わしのダイエットの為じゃ」
「ノエル達、ここにいて良いの?」
「良い訳ないだろ」


 昨晩、ロワが遠征試験を受けると聞いたフランは自分も連れて行けと言い出した。
 俺はロワに迷惑が掛かるから止めろと言ったのだが、フランはロワが心配だからと譲らなかった。裏があると勘付いた俺がフランを問いただすと、ダイエットの為にMPを使いまくれる場所に行く口実が欲しかったと白状してきた。
 俺は呆れながら再び却下したが、無理にでも行くと脅されたから俺が付いて行く事を条件に泣く泣く許可したのだった。
 フランがノエルにも話した結果、3人でロワをストーキングする事になったのだった。


「言っておくが、俺達が見つかる訳にはいかないからな?」
「分かっておる」
「了解であります!」


 俺達が見つかると不正を疑われてしまい、ロワの合格が絶望的になる。ロワの為にも絶対に見つかる訳にはいかない。


「そう言えば、遠征試験とはどういうものなんじゃ?」
「試しに遠征して集団戦をして、問題なく戦えるかを見る試験だな」
「戦いだけ強くても遠征でグロッキーになれば役に立たないからのう」


 冒険者で遠征慣れしているロワであれば、ほぼ確実に合格するはずだ。フランが余計な事をしない限りはな。
 ロワ達が挨拶を済ませて門を出ていく。


「もう一度だけ言っておくが、絶対にバレるなよ?基本的には手出しもするなよ?」
「分かっておる」
「ノエルもだ。分かったか?」
「うん」


 俺の言葉に2人は頷いてくる。分かっているとは思うが、不安がぬぐい切れないのはなぜだろうか。
 俺の不安をよそに楽しそうな2人を連れて、俺達はロワ達を尾行するのであった。


☆   ☆   ☆   ☆


「へぇー、あのミエル団長と同じパーティーメンバーなんだ」
「そうですよ」
「やっぱり、あの人って普段でもお堅い感じなの?」
「そんな事無いですよ。親しみやすくていい人です」
「本当かぁ?あんな堅物が親しみやすい奴な訳ないだろ?」
「そもそも、ミエルさんがお堅い人だっていうのもピンときませんよ?」
「あいつの笑った顔見たこと無いかも?」
「確かにあたしも無い」


 楽しそうに話しながらロワ達は街道を進んでる。
 本来であれば隠れる場所も無い街道は尾行するのに骨が折れる。だが、俺達には最強の魔王がいる。体を透明化させて音も漏れないから、どんなに平坦な道でも見つからないだろう。


「本当にチートだよな」
「ふふん、そうじゃろ?もっと感謝しても良いんじゃぞ?」
「こんな事してるのは、お前が原因だけどな?」


 なんでそんなに得意気な表情が出来るんだ。
 とりあえず、俺も周りに気を張ってるし、こちらがロワ達に悟られる事は無いだろう。


「見た限り、結構順調みたいじゃな」
「ロワお兄ちゃん楽しそうだね」
「あの人達もロワを歓迎しているみたいだし、話も弾んでいくんだろう」
「楽しそうな事は良い事じゃ」


 念のため話している内容に聞き耳を立てているが、話してはいけない事は話していないみたいだ。
 とはいえ、ロワにはもう一つ心配事がある。それは……


「そう言えばさ、ロワ君ってなんで顔に布を付けているの?」


 やっぱり来たな。ロワと初対面との奴はほぼ確実に布の事を聞いてくる。俺達と一緒にいる場合は、やんわりと遠ざけているが、一人であれば危ないかもしれない。
 試験には関係ないが、女がいる以上は布が外されない事がロワにとって重要だ。何とか回避して欲しいものだ。
 3人で固唾をのんで見守っていると、ロワが寂しそうに笑った。


「実は小さい頃に顔に火傷を負いまして。人に見られないように顔に布を付けているんです」
「そうだったんだ。聞いちゃって悪かったかな?」
「皆さんに説明しているので大丈夫ですよ」


 俺が教えた通りの理由を話しているな。これなら、上手く誤魔化せそうだ。
 そう思ってると、レザンがこっそりとロワの布を取ろうとしていた。それに気が付いたロワは反射的にレザンの手を取った。


「何するんですか!?」
「どうなってるのか気になって」
「見られたくないって言いましたよね!?」
「すまん、つい」
「つい、では済みませんよ!?」


 ロワが目を丸くしていると、レザンは手を引いて歩き始めた。だが、気にしているようにロワの布をチラチラと見てくる。


「あんなに布に興味を持たれるとは思わなかったぞ?」
「なんでロワお兄ちゃんの布に興味があるんだろ?」
「わしにも分からん」
「お前らは押すなって書かれているボタンがあったらどうする?」
「「押す」」
「そう言う事だ」


 今までは火傷と言えば同情してくれたんだが、レザンは同情よりも興味が強いらしい。かなり厄介だ。


「こら!無理やり見たらロワ君が可哀そうだろ!」
「でも、レザンの気持ちも分かるわ。ロワ君って顔立ちが良いし、あたしも素顔が見てみたいわ」
「ルシアンまでそんな事言わない!」
「「はーい」」


 渋々と言った様子で二人が引き下がる。なんだか心配になって来たな。


「そ、そんな事よりも皆さんの話を聞かせてくださいよ。皆さんは仲が良いんですか?」
「偶に喋るくらいの間柄だよ」
「だな。部署も違うし仲が良いとは言えないかもな」


 ロワが出した話題で何とか空気が元に戻る。
 そこからは布を取られそうになる事も無く、ロワ達は進行していったのだった。


☆   ☆   ☆   ☆


 日も落ちかけ辺りが暗くなり始めると、ロワ達は野営の準備を始めた。


「ここで野営するみたいだ。俺達も準備するぞ」
「しかし、見つかる訳にもいかんのじゃろ?どうやって準備するんじゃ?」
「明かりは付けず、食事はエナジーバーで済ませる。それに加えてロワ達の様子を見張るために交代で見張りをするぞ」


 そう言ってフランとノエルにエナジーバーを渡す。


「これだけか?」
「フランには十分だろ。ノエルは冒険の練習と思って我慢してほしい」
「ノエルはこれだけで大丈夫だよ」
「そう言われると、わしが足りぬとごねる事も出来ぬのう」
「ごねたとしてもやらないがな」


 話している間にもロワ達の様子を観察する。あっちの食事は乾パンとスープみたいだ。


「出来たよー」
「わーい、いただきまーす」


 ロワがスープが入った器を受け取って飲む。


「美味しいですね」
「そうか?ずっと食ってると飽きてくるぜ?」
「遠征になったら同じ食事だし、しょうがないよ」
「知ってる?遠征中は木に生っている果物も食べちゃダメなのよ?」
「そうなんですか?」
「毒が入っているかもしれないからダメ。遠征中に毒を食らったら適切な治療が出来ないかもしれないでしょ?」
「なるほど。それなら納得できますね」
「初めてだからそんな事が言えるんだよ。遠征に行ったらそんな言葉は二度と言えないからな?」
「そうね、せめてバリエーションがあれば良いのだけどね」


 会話を聞く限り、食事も楽しくしているようだ。
 ロワ達を観察しながら俺は音を立てずにエナジーバーを頬張る。


「今の所動きはなさそうだ。今のうちにフランはMPの消費をしてこい。ただし、目立たないようにしよよ?場所も1㎞は離れ所にしてくれ」
「分かった。適当にスキルを使いまくってやるわい」


 そう言うとフランの姿が消え去った。一人で行かせるのは不安だが、ロワ達の見張る役目は必要だ。フランも迂闊に目立つ真似はしないだろうし、ここは一人で行ってもらおう。
 フランがいなくなってフルステルスの効果が無くなった。念のためにカモフラージュをしておこう。


「ノエル、これを被っておけ」
「なにこれ?」
「迷彩用の毛布だ。暖かく見つかりにくくなる効果がある」
「へえ、便利な物だね」


 ノエルは言われた通りに毛布に包まって顔だけを出す。なんか、こういう化け物が出てくる映画を見た気がするな。


「それでいい。万が一、ロワ達がこっちに来たら顔まで包まってジッとしておくんだぞ?」
「分かった」


 ミエルが神妙な面持ちで頷く。ノエルは素直で本当に助かる。
 その後、食事を終えたロワ達は交代で見張りをしつつ休み始めた。何もなければこのまま見張るだけでいいな。


「ノエルも寝てていいぞ」
「大丈夫……ノエルも起きて……」


 ノエルが船を漕ぎながら答える。ノエルはもう限界だな。


「無理しないで少し眠った方が良い。もしもの時に動けなくなるぞ」
「分かった……(スゥスゥ)」
「良い子だ」


 眠ったノエルの頭を撫でて、ロワ達の監視に戻る。
 その後、3時間は何事も無く過ぎた。このまま何事も無く夜が明けるかと思った瞬間、それは起こった。
 急な閃光が横から俺の顔を照らしてきた。
 俺は反射的に閃光の方を向く。すると。遠くにある森から一筋の光の柱が立っているのが見えた。


「ノエル、起きろ」
「うーん?どうしたの?」
「6の階乗はいくつだ」
「えーっと……720」
「よし、頭は起きたな。俺はあの光の柱を観察するから、ノエルはロワ達を見張っておいてくれ。何か動きがあったら俺に言うんだぞ?」
「りょーかい」


 ノエルにロワ達の監視を託して、光の柱を観察する。あの辺りには人工物はない筈だから、あれは魔物の仕業か?
 いや、周りに被害がある様子は無いから、光だけか結界とかで周りに被害が出ないようにしているかだ。そんな事は魔物であればしない筈。
 魔物じゃないとしたら人がやっているかだが、あんな芸当できる奴は世界にそういない……。
 そこまで思考を巡らせると、とある魔王の顔が頭に浮かんできた。まさか……。


「ノエル、ロワ達の様子はどうだ?」
「急いで飛び起きて森の方を見てるよ。皆驚いてる」
「だろうな」


 俺の予想が当たっていれば、あの光の柱は数分で収まる。少し様子を見てみよう。
 光の柱は俺の予想通り、数分で跡形も無く消え去った。


「あ、あれはなんだったんだ?」
「分からない。だが、ただ事じゃない事は分かる。ロワ君、試験の途中だけど目的地を変更しても良いかな?」
「勿論です。すぐに行きましょう」


 ロワ達はすぐさま荷物をまとめて光の柱があった方へと向かう。


「む?何かあったのか?」


 後ろから状況が分かっていない呑気な声が聞こえた。
 振り向くとフランが首を傾げてロワ達を見ていた。


「フラン、お前何をした?」
「なんじゃ急に」
「答えろ」


 俺の剣幕に気圧されたフランは何をしたのか話し始めた。


「特別な事はしておらん。スキルを使って森の中を駆けていたが、面倒になってMPを直接空に放出することにしたんじゃ。もちろん、結界で森に被害は無いように心がけたぞ」


 得意気に胸を張るフランに怒りを超えて呆れてしまう。


「やっぱりか」
「何があったんじゃ?」
「お前が放出したMPに驚いてロワ達が森に向かった。恐らく、騎士団にも報告がいくだろう」
「……もしかして、わしやってしまったか?」
「もしかしなくてもやってる」


 やっと事の重大さが分かったフランが額から冷や汗を流し始めた。


「……目標の体重を-8㎏から-10㎏に変更する」
「……甘んじて受けよう」


 こうして、森に向かったロワ達を尾行することになった。そこから先は特に変わった事も無く、ロワの試験は終わったのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

 社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。

本条蒼依
ファンタジー
 山本優(やまもとまさる)45歳はブラック企業に勤め、 残業、休日出勤は当たり前で、連続出勤30日目にして 遂に過労死をしてしまい、女神に異世界転移をはたす。  そして、あまりな強大な力を得て、貴族達にその身柄を 拘束させられ、地球のように束縛をされそうになり、 町から逃げ出すところから始まる。

不死身のバンパイアになった俺は、廃墟と化したこの世界で好きに生きようと思います

珈琲党
ファンタジー
人類が滅亡した後の世界に、俺はバンパイアとして蘇った。 常識外れの怪力と不死身の肉体を持った俺だが、戦闘にはあまり興味がない。 俺は狼の魔物たちを従えて、安全圏を拡大していく。 好奇心旺盛なホビットたち、技術屋のドワーフたち、脳筋女騎士に魔術師の少女も仲間に加わった。 迷惑なエルフに悩まされつつも、俺たちは便利で快適な生活を目指して奮闘するのだった。

僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~

めでめで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。 しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。 そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。 その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。 (スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)

不死身のボッカ

暁丸
ファンタジー
逓信(ていしん)ギルドに所属する甲殻人ボッカ。歩荷(ぼっか=運搬人)だからボッカと素性を隠す特急便の運搬人。 小柄な身体に見合わぬ怪力、疾風のスピードと疲れ知らずのスタミナで、野を越え山越え荷物を運ぶ。 逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。 割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。 ※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。 ※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。 ※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。 ※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん
ファンタジー
気づいたら異世界に飛ばされていた、おっさん大工。 唯一の武器は、腰につけた工具袋—— …って、これ中身無限!?釘も木材もコンクリも出てくるんだけど!? 戸惑いながらも、拾った(?)ギャル魔法少女や謎の娘たちと家づくりを始めたおっさん。 土木工事からリゾート開発、果てはダンジョン探索まで!? 「異世界に家がないなら、建てればいいじゃない」 今日もおっさんはハンマー片手に、愛とユーモアと魔法で暮らしをDIY! 建築×育児×チート×ギャル “腰袋チート”で異世界を住みよく変える、大人の冒険がここに始まる! 腰活(こしかつっ!)よろしくお願いします

処理中です...