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第百九十三話 ぶち殺すぞゴミめら
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ノエル達はモカちゃんを追って廃工場の中へと向かう。廃工場はボロボロでガラスは砕けているし、壁は錆びて朽ちている。何処からでも入れそうだ。
「モカちゃんは何処だろ?」
「あ!あっち!」
コアコちゃんが指さす方向を見るとモカちゃんが割れた窓から工場の中に入っていくのが見えた。
「まさか、工場の中にまで入るつもり?危ないんじゃない?」
「そうかも?」
廃工場はいつ崩れるか分からない。そんな所に皆を行かせるわけにもいかない。
「ここからはノエルだけで行ってくるよ。皆は外で待っててね」
「……あんたね」
「あ痛っ!」
サルミちゃんがノエルにデコピンを放つ。突然の事で魔装が出来ずにデコピンをもろに食らってしまう。
ノエルは赤く腫れたおでこを押えながら涙目になる。
「なにするの!」
「それはこっちのセリフよ。あんただけに任せて私達だけ待つわけ無いでしょ」
「そうだよ!私達だって頑張るよ!」
コアコちゃんが両手の拳を握りしめて、やる気に満ちた表情をする。その横でアルモンド君も同じように拳を振り上げる。
『そういう事だ。無理にでも俺達はついていくぞ』
「……分かった、皆で行こっか。でも、危なくなったら逃げるからね?」
「あんたに言われるまでもないわよ。そうと決まれば早く行くわよ」
「あ、待ってよー」
サルミちゃんがモカちゃんが入った窓に入る。ノエル達もサルミちゃんに続いて廃工場の中に入る。
「割れたガラスに服を引っ掛けないように気を付けなさいよ」
「はーい」
服を引っ掛けないように気を付けながらノエル達は廃工場に侵入する。
廃工場の床に着地すると、床の埃が一気に舞い上がった。皆は埃を吸い込んでしまったのか、一斉にせき込む。
「ゲホッ!ゴホッ!」
「な、なんなのよここ!」
『本当に手入れされてないんだな』
「見た感じ5年くらいはそのままなのかな?」
埃を吸わないように袖で口を覆いながら、ノエルは懐中電灯をつけて周りの様子を見てみる。
部屋の中には色んな工具とか木の板とかが散乱している。どうやらここは倉庫みたい。
「モカちゃんはどこかな?」
「この部屋に隠れる場所は無いしこの部屋から出たかもね」
肝心のモカちゃんを探すけど見当たらない。扉が壊れて開いているし、どこかに行ったみたいだ。
『行くなら早く行こうぜ。早くしないと工場から出ていくかもしれないぜ?』
『そうだね』
「だったらさ、皆で香水つけておかない?また逃げられたら困るでしょ?」
「ナイスアイディア、コアコちゃん!」
コアコちゃんの提案通り、皆で香水を体に振りかける。皆でお揃いの香りになった所で扉から外を見てみる。
外は廊下になっていて、薄暗くて結構幅が狭い。皆で並んで歩くのは無理そうだけど、歩く分には問題なさそうだ。
「うん、進んでも問題無さそう」
「じゃあ行きましょうか」
安全だと分かり皆も部屋から出てくる。
「モカちゃんはどっちに行ったんだろ?」
廊下は左右に別れていてモカちゃんがどこに行ったか分からない。
『手分けするか?』
『そんな事しなくても大丈夫だよ』
ノエルは埃まみれの地面を懐中電灯を照らす。
「見て、ここにうっすらとにゃんこの足跡があるでしょ?これってモカちゃんじゃない?」
「確かに猫の足跡に間違いないわね」
「良く見つけたね?」
「ふふーん、もっと褒めても良いんだよ?」
「調子に乗らない。さっさと行くわよ」
サルミちゃんがクールに奥に進んでいく。ノエル達もサルミちゃんの後に続いて足跡を追う。
部屋を10個くらい通り過ぎたところで、足跡にとある違和感が出て来る。
「あれ?ここから床が綺麗なってる?」
ある地点から床の埃が無くなっている?この工場ってまだ使っているの?
皆もどういう意味があるのか分かったのか、目を大きく見開いている。
「ここって廃工場じゃないの?」
『使ってはいるみたいだな』
「誰もいないと思ったから入ったのに。もう最悪!」
「こうなったら、早くモカちゃんを見つけて出よう!」
「そうだね!」
『けどよ』
アルモンド君が廊下の先に視線を向ける。
『ここからどうやって探すんだ?』
廊下の先にはまだまだ部屋がある。全部の部屋を探していたら時間がかかってしまう。もしかしたら、帰ってきた人に見つかるかもしれない。でも、探さないとここの人にモカちゃんが見つかるかもしれない。これは困った。
「どうしよっか?」
「手分けして探すしかないでしょ」
「ここの人に見つかったら?」
「……その時は謝り倒すわよ」
『ノープランな訳か』
「けど、それ以外に有効な方法も無いし皆で頑張ろうよ」
「コアコちゃんの言う通りだね」
「じゃあ、私は手前の部屋から見ていくから、ノエルは……」
(……にゃーん)
サルミちゃんが指示を出している中で、にゃんこの鳴き声が聞こえた。今のはモカちゃん?
「どうしたのよノエル?」
「今、モカちゃんの鳴き声が聞こえなかった?」
「聞こえなかったよ?」
『俺も聞こえなかったな』
「けど、あっちの部屋から確かに聞こえたよ?」
ノエルはとある部屋を指さす。その部屋は今までの部屋とは違って重々しい鉄の扉だった。
ドアノブを引くと、鍵もかかっておらずすんなりと開いた。
「おじゃましまーす」
部屋はさっきの部屋の何十倍も大きく、壁際には色んな機械や書類がいっぱい入った棚がある。後は机とか椅子とかの家具がある。。
「わぁ、ここって研究室?」
『こんなに大きな部屋は見たことないぞ』
「コアコ、アルモンド、お喋りは後にして今は猫を探しなさい。早くしないと見つかるわよ」
「そうだったね。モカちゃーん、どこー?」
皆はモカちゃんを探して機械の傍や机の下を探す。だけど、モカちゃんは見つからない。
「ノエル、本当にここの部屋から聞こえたの?」
「…………」
「ノエル?」
対するノエルはというと、ある機械に目が釘付けになっていた。赤いランプが光っていて、レバーが付いているだけのシンプルな機械。だけど、数ある機械の中でその機械に視線が行ってしまう。
「…………」
「ノエルちゃん?どうしたの?」
『気分でも悪いのか?』
「……え?」
コアコちゃんとアルモンド君に呼びかけられて、ボーっとしていたノエルは意識を取り戻す。
「あれ?ノエル何してたの?」
「こっちのセリフだよ。何かあったの?」
『この機械に何かあるのか?』
「えーっと?なんだろ?」
「あんたが分からないなら誰がわかるのよ。なんともないなら、あんたも猫を探しなさい」
「え?あ、うん」
そういえばモカちゃんと探しに来たんだった。忘れてたや。
気を取り直してモカちゃんを探す。
「お~い、モカちゃ~ん。出ておいで~」
「そのセリフは機械にへばり付きながら言うセリフじゃないわよ」
「あ~れ~」
機械から引きはがされ、渋々モカちゃん探しに戻る。
「というか、この部屋に猫がいるかも半信半疑よね」
『鳴き声を聞いたのもノエルだけだしな』
「ちゃんと聞いたから大丈夫だよ?」
「本当かしら?この部屋は粗方探したわよ?どこに……」
(にゃーん)
サルミちゃんが困ったように周りを見渡すと、扉の陰からモカちゃんが飛び出してきた。
「わ!」
飛び出したモカちゃんをコアコちゃんが優しく受け止める。モカちゃんはコアコちゃんの腕の中で気持ちよさそうに喉を鳴らしている。
「扉の陰にいたのね。通りで見つからない訳ね」
『だけど中々早く見つけられたな。さっさとここから出よう』
「そうだね」
アルモンド君が部屋から出ようとドアに手を掛ける。
『……!?アルモンド君待って!』
ノエルはアルモンド君の手を無理やり引いて扉から引きはがす。
『なんだよ』
『足音が近づいてくる。誰か来るよ』
『本当か!?』
「……土下座の用意をした方が良いかしら?」
「諦めるの早くない?」
ここで見つかったら大目玉は確実だ。けど隠れる時間も無い。……あれ?詰み?
ノエルがどうにか出来ないか必死に考えていると、コアコちゃんが心配そうに袖を引っ張ってきた。
「ノエルちゃん、どうしよう?」
「……何も思いつかない」
『……土下座の準備をしておいた方がいいな』
『そうだね』
「皆!?」
ノエルとアルモンド君とサルミちゃんは扉を正面にして正座をする。
「いい?私が合図したら一斉に土下座するのよ?それで何とかなるわ」
「分かった」
『了解だ』
「皆、潔いね?」
「コアコも準備しなさい」
「私はモカちゃん抱いているから遠慮しようかな?」
そうこうしている内に足音は近づいてくる。もしかしたら別の部屋に行くかもという期待を込めるも、足音は部屋の前で完全に止まる。
緊張しながら待っていると、扉が開いた。
「あ?なんだお前ら?」
現れたのは紙がボサボサで目つきが悪いお兄ちゃんだった。要人の為か腰には剣が吊ってある。
お兄ちゃんはノエル達を見ると驚いたように一歩下がる。そこでサルミちゃんがノエルとアルモンド君に目配せしてくる。
ノエル達は意味を理解し、地面に両手を付ける。
「本当に……」
サルミちゃんとタイミングを合わせて頭を地面につける。
「「『申し訳ありませんでした!』」」
「は?」
顔は見えないけど、声でお兄さんが困惑しているのが分かる。さりげなくコアコちゃんを見ると、目を閉じたまま土下座の姿勢を保っていた。ノエルも真似して土下座の姿勢を保つ。
「ごめんなさい、私達、猫を探していたんですけど、この建物の中に入っちゃったんです。猫は見つ買ったのですぐに出ていきます。許してくれませんか?」
コアコちゃんが状況の説明をしてくれる。気配的にコアコちゃんも頭を下げたみたいだ。
「……はぁ」
数秒の無言の後、お兄ちゃんがため息を吐いたどうやら許してくれるみたいだ。
ホッとして頭を上げる。すると、目に飛び込んできたのは……
「死体の処理は面倒なんだけどな」
腰の剣を抜き去るお兄ちゃんの姿だった。
「皆下がって!」
ノエルは叫びながら皆をかばうために前に出る。
「何をするつもりなの?」
「この機械を見られたんだったら、子供でも始末しないとな?」
そう言ってお兄ちゃんは剣をノエル達に向ける。どうやら話し合いは出来そうにないみたいだ。
ノエルはお兄さんに気付かれないように拳銃を取り出す。とりあえず皆を逃がさないと。
「なななな何よ!ちょっと入っただけじゃない!」
「剣!?」
『ノエル、不味いぞ』
『分かってるよ』
動揺しているコアコちゃんとサルミちゃんをアルモンド君が後ろに下げる。
『アルモンド君、ノエルが隙を作るから2人を逃がしてあげて』
『分かった』
アルモンド君は力強く頷くと2人の手を取った。
皆を危険な目に合わせたのはモカちゃんを探そうと言ったノエルのせいだ。一刻も早く決着を付けよう。
「大人しくしろよ?抵抗されると面倒だからな?」
「嫌!ノエル達は逃げるからね!」
「入り口は俺が抑えてる。どうやって逃げるつもりだ?」
「こうやってだよ!」
ノエルは持っていた拳銃をお兄ちゃんに向けて発砲する。狙うところは足、動けなくなった所の脇を通り抜ける。完璧!
弾丸はお兄ちゃんの足に命中する。しかし、
「あ?それって銃か?」
お兄ちゃんはダメージを受けていない。
「なんで!?」
ノエルがビックリしているとお兄ちゃんは楽しそうに笑う。
「俺は正面の防御力を上げるスキルを持ってるんだよ。そんな物、なん百発撃とうと効くわけないだろ」
得意げに笑いながら近づいてくるお兄ちゃん。銃じゃ後ろに攻撃できないって思っているに違いない。確かに、ノエルは後ろから攻撃するようなスキルは無い。けど、スキルを使わなくても後ろを攻撃することは出来る!
ノエルは狙いを悟らせない為に銃を乱射する。
「うわああああ!」(パァン!パァン!パァン!)
「無駄だって言ってるだろ。さっさと諦めて……」
(グシャ!)
「……は?」
瞬間、お兄ちゃんの足に大きく穴が開いた。何が起こったのか分からない様子のお兄ちゃんだったけど、ダメージが深いのか思わず膝を付く。
なんでお兄ちゃんに弾丸が効いたのか。原理は簡単、後ろの扉に反射させただけ。角度が少し気になったけど、ギリギリなんとかなったみたいだ。
ノエルはお兄ちゃんが状況を理解できていない内に、背後に回り込んで首筋を拳銃のグリップで殴る。すると、お兄ちゃんは白目をむいて気を失った。
ノエルは杖を取り出してお兄ちゃんの足だけ治療する。杖を使わないと、全身を治療して目を覚ましちゃうんだよね。
「これでよし!」
「……ノエルちゃん?」
治療が完了して胸を撫でおろしていると、コアコちゃんとサルミちゃんの視線がノエルに……性格にはノエルの持っている拳銃に向いていることに気が付く。
「……あ」
「ノエル、あんたなんて物持ってるのよ」
「これはえーっと……色々とあってホウリお兄ちゃんに持たされてて」
「……まあいいわ。今はここから出るのが先よ。こいつの仲間が来ない前に脱出しましょう」
「そ、そうだね!こんな拳銃よりも脱出が先だよね!」
「詳しい理由は後でゆっくり聞くわよ?」
「あ、あははは……」
曖昧に笑ってサルミちゃんから視線を逸らせる。どうやって誤魔化そうか?
「そうと決まれば早く行こう!」
「そうね。ずらかるわよ」
「あ、ちょっと待って!」
『なんだ?まだ何かあるのか?』
ノエルはさっきの機械に拳銃を向ける。
「あの機械は壊さないと」
「ちょちょちょちょっと!?」
引き金を引こうとした瞬間、サルミちゃんに腕を押えられる。そんなサルミちゃんをノエルは不思議に思う。
「どうして止めるの?」
「むしろなんで止めないと思ったのよ!?さっさと脱出するって言ったわよね!?」
「何発か撃つだけだよ?そんなに時間はかからないよ?」
「銃声で援軍が来るかもしれないでしょ!それに、破壊した瞬間爆発したら死ぬわよ!?」
「そうだよ!早く逃げよ!?」
「うーん、多分大丈夫でしょ」
「あんたの機械に対する執着はなんなのよ!とにかく、さっさと行くわよ!」
コアコちゃんとサルミちゃんに腕をつかまれて、ノエルはさっきの部屋まで連行された。
こうして、ノエル達は援軍が来る前に工場から脱出したのだった。その後、サルミちゃんとコアコちゃんから拳銃の事について聞かれたのは別のお話。
「モカちゃんは何処だろ?」
「あ!あっち!」
コアコちゃんが指さす方向を見るとモカちゃんが割れた窓から工場の中に入っていくのが見えた。
「まさか、工場の中にまで入るつもり?危ないんじゃない?」
「そうかも?」
廃工場はいつ崩れるか分からない。そんな所に皆を行かせるわけにもいかない。
「ここからはノエルだけで行ってくるよ。皆は外で待っててね」
「……あんたね」
「あ痛っ!」
サルミちゃんがノエルにデコピンを放つ。突然の事で魔装が出来ずにデコピンをもろに食らってしまう。
ノエルは赤く腫れたおでこを押えながら涙目になる。
「なにするの!」
「それはこっちのセリフよ。あんただけに任せて私達だけ待つわけ無いでしょ」
「そうだよ!私達だって頑張るよ!」
コアコちゃんが両手の拳を握りしめて、やる気に満ちた表情をする。その横でアルモンド君も同じように拳を振り上げる。
『そういう事だ。無理にでも俺達はついていくぞ』
「……分かった、皆で行こっか。でも、危なくなったら逃げるからね?」
「あんたに言われるまでもないわよ。そうと決まれば早く行くわよ」
「あ、待ってよー」
サルミちゃんがモカちゃんが入った窓に入る。ノエル達もサルミちゃんに続いて廃工場の中に入る。
「割れたガラスに服を引っ掛けないように気を付けなさいよ」
「はーい」
服を引っ掛けないように気を付けながらノエル達は廃工場に侵入する。
廃工場の床に着地すると、床の埃が一気に舞い上がった。皆は埃を吸い込んでしまったのか、一斉にせき込む。
「ゲホッ!ゴホッ!」
「な、なんなのよここ!」
『本当に手入れされてないんだな』
「見た感じ5年くらいはそのままなのかな?」
埃を吸わないように袖で口を覆いながら、ノエルは懐中電灯をつけて周りの様子を見てみる。
部屋の中には色んな工具とか木の板とかが散乱している。どうやらここは倉庫みたい。
「モカちゃんはどこかな?」
「この部屋に隠れる場所は無いしこの部屋から出たかもね」
肝心のモカちゃんを探すけど見当たらない。扉が壊れて開いているし、どこかに行ったみたいだ。
『行くなら早く行こうぜ。早くしないと工場から出ていくかもしれないぜ?』
『そうだね』
「だったらさ、皆で香水つけておかない?また逃げられたら困るでしょ?」
「ナイスアイディア、コアコちゃん!」
コアコちゃんの提案通り、皆で香水を体に振りかける。皆でお揃いの香りになった所で扉から外を見てみる。
外は廊下になっていて、薄暗くて結構幅が狭い。皆で並んで歩くのは無理そうだけど、歩く分には問題なさそうだ。
「うん、進んでも問題無さそう」
「じゃあ行きましょうか」
安全だと分かり皆も部屋から出てくる。
「モカちゃんはどっちに行ったんだろ?」
廊下は左右に別れていてモカちゃんがどこに行ったか分からない。
『手分けするか?』
『そんな事しなくても大丈夫だよ』
ノエルは埃まみれの地面を懐中電灯を照らす。
「見て、ここにうっすらとにゃんこの足跡があるでしょ?これってモカちゃんじゃない?」
「確かに猫の足跡に間違いないわね」
「良く見つけたね?」
「ふふーん、もっと褒めても良いんだよ?」
「調子に乗らない。さっさと行くわよ」
サルミちゃんがクールに奥に進んでいく。ノエル達もサルミちゃんの後に続いて足跡を追う。
部屋を10個くらい通り過ぎたところで、足跡にとある違和感が出て来る。
「あれ?ここから床が綺麗なってる?」
ある地点から床の埃が無くなっている?この工場ってまだ使っているの?
皆もどういう意味があるのか分かったのか、目を大きく見開いている。
「ここって廃工場じゃないの?」
『使ってはいるみたいだな』
「誰もいないと思ったから入ったのに。もう最悪!」
「こうなったら、早くモカちゃんを見つけて出よう!」
「そうだね!」
『けどよ』
アルモンド君が廊下の先に視線を向ける。
『ここからどうやって探すんだ?』
廊下の先にはまだまだ部屋がある。全部の部屋を探していたら時間がかかってしまう。もしかしたら、帰ってきた人に見つかるかもしれない。でも、探さないとここの人にモカちゃんが見つかるかもしれない。これは困った。
「どうしよっか?」
「手分けして探すしかないでしょ」
「ここの人に見つかったら?」
「……その時は謝り倒すわよ」
『ノープランな訳か』
「けど、それ以外に有効な方法も無いし皆で頑張ろうよ」
「コアコちゃんの言う通りだね」
「じゃあ、私は手前の部屋から見ていくから、ノエルは……」
(……にゃーん)
サルミちゃんが指示を出している中で、にゃんこの鳴き声が聞こえた。今のはモカちゃん?
「どうしたのよノエル?」
「今、モカちゃんの鳴き声が聞こえなかった?」
「聞こえなかったよ?」
『俺も聞こえなかったな』
「けど、あっちの部屋から確かに聞こえたよ?」
ノエルはとある部屋を指さす。その部屋は今までの部屋とは違って重々しい鉄の扉だった。
ドアノブを引くと、鍵もかかっておらずすんなりと開いた。
「おじゃましまーす」
部屋はさっきの部屋の何十倍も大きく、壁際には色んな機械や書類がいっぱい入った棚がある。後は机とか椅子とかの家具がある。。
「わぁ、ここって研究室?」
『こんなに大きな部屋は見たことないぞ』
「コアコ、アルモンド、お喋りは後にして今は猫を探しなさい。早くしないと見つかるわよ」
「そうだったね。モカちゃーん、どこー?」
皆はモカちゃんを探して機械の傍や机の下を探す。だけど、モカちゃんは見つからない。
「ノエル、本当にここの部屋から聞こえたの?」
「…………」
「ノエル?」
対するノエルはというと、ある機械に目が釘付けになっていた。赤いランプが光っていて、レバーが付いているだけのシンプルな機械。だけど、数ある機械の中でその機械に視線が行ってしまう。
「…………」
「ノエルちゃん?どうしたの?」
『気分でも悪いのか?』
「……え?」
コアコちゃんとアルモンド君に呼びかけられて、ボーっとしていたノエルは意識を取り戻す。
「あれ?ノエル何してたの?」
「こっちのセリフだよ。何かあったの?」
『この機械に何かあるのか?』
「えーっと?なんだろ?」
「あんたが分からないなら誰がわかるのよ。なんともないなら、あんたも猫を探しなさい」
「え?あ、うん」
そういえばモカちゃんと探しに来たんだった。忘れてたや。
気を取り直してモカちゃんを探す。
「お~い、モカちゃ~ん。出ておいで~」
「そのセリフは機械にへばり付きながら言うセリフじゃないわよ」
「あ~れ~」
機械から引きはがされ、渋々モカちゃん探しに戻る。
「というか、この部屋に猫がいるかも半信半疑よね」
『鳴き声を聞いたのもノエルだけだしな』
「ちゃんと聞いたから大丈夫だよ?」
「本当かしら?この部屋は粗方探したわよ?どこに……」
(にゃーん)
サルミちゃんが困ったように周りを見渡すと、扉の陰からモカちゃんが飛び出してきた。
「わ!」
飛び出したモカちゃんをコアコちゃんが優しく受け止める。モカちゃんはコアコちゃんの腕の中で気持ちよさそうに喉を鳴らしている。
「扉の陰にいたのね。通りで見つからない訳ね」
『だけど中々早く見つけられたな。さっさとここから出よう』
「そうだね」
アルモンド君が部屋から出ようとドアに手を掛ける。
『……!?アルモンド君待って!』
ノエルはアルモンド君の手を無理やり引いて扉から引きはがす。
『なんだよ』
『足音が近づいてくる。誰か来るよ』
『本当か!?』
「……土下座の用意をした方が良いかしら?」
「諦めるの早くない?」
ここで見つかったら大目玉は確実だ。けど隠れる時間も無い。……あれ?詰み?
ノエルがどうにか出来ないか必死に考えていると、コアコちゃんが心配そうに袖を引っ張ってきた。
「ノエルちゃん、どうしよう?」
「……何も思いつかない」
『……土下座の準備をしておいた方がいいな』
『そうだね』
「皆!?」
ノエルとアルモンド君とサルミちゃんは扉を正面にして正座をする。
「いい?私が合図したら一斉に土下座するのよ?それで何とかなるわ」
「分かった」
『了解だ』
「皆、潔いね?」
「コアコも準備しなさい」
「私はモカちゃん抱いているから遠慮しようかな?」
そうこうしている内に足音は近づいてくる。もしかしたら別の部屋に行くかもという期待を込めるも、足音は部屋の前で完全に止まる。
緊張しながら待っていると、扉が開いた。
「あ?なんだお前ら?」
現れたのは紙がボサボサで目つきが悪いお兄ちゃんだった。要人の為か腰には剣が吊ってある。
お兄ちゃんはノエル達を見ると驚いたように一歩下がる。そこでサルミちゃんがノエルとアルモンド君に目配せしてくる。
ノエル達は意味を理解し、地面に両手を付ける。
「本当に……」
サルミちゃんとタイミングを合わせて頭を地面につける。
「「『申し訳ありませんでした!』」」
「は?」
顔は見えないけど、声でお兄さんが困惑しているのが分かる。さりげなくコアコちゃんを見ると、目を閉じたまま土下座の姿勢を保っていた。ノエルも真似して土下座の姿勢を保つ。
「ごめんなさい、私達、猫を探していたんですけど、この建物の中に入っちゃったんです。猫は見つ買ったのですぐに出ていきます。許してくれませんか?」
コアコちゃんが状況の説明をしてくれる。気配的にコアコちゃんも頭を下げたみたいだ。
「……はぁ」
数秒の無言の後、お兄ちゃんがため息を吐いたどうやら許してくれるみたいだ。
ホッとして頭を上げる。すると、目に飛び込んできたのは……
「死体の処理は面倒なんだけどな」
腰の剣を抜き去るお兄ちゃんの姿だった。
「皆下がって!」
ノエルは叫びながら皆をかばうために前に出る。
「何をするつもりなの?」
「この機械を見られたんだったら、子供でも始末しないとな?」
そう言ってお兄ちゃんは剣をノエル達に向ける。どうやら話し合いは出来そうにないみたいだ。
ノエルはお兄さんに気付かれないように拳銃を取り出す。とりあえず皆を逃がさないと。
「なななな何よ!ちょっと入っただけじゃない!」
「剣!?」
『ノエル、不味いぞ』
『分かってるよ』
動揺しているコアコちゃんとサルミちゃんをアルモンド君が後ろに下げる。
『アルモンド君、ノエルが隙を作るから2人を逃がしてあげて』
『分かった』
アルモンド君は力強く頷くと2人の手を取った。
皆を危険な目に合わせたのはモカちゃんを探そうと言ったノエルのせいだ。一刻も早く決着を付けよう。
「大人しくしろよ?抵抗されると面倒だからな?」
「嫌!ノエル達は逃げるからね!」
「入り口は俺が抑えてる。どうやって逃げるつもりだ?」
「こうやってだよ!」
ノエルは持っていた拳銃をお兄ちゃんに向けて発砲する。狙うところは足、動けなくなった所の脇を通り抜ける。完璧!
弾丸はお兄ちゃんの足に命中する。しかし、
「あ?それって銃か?」
お兄ちゃんはダメージを受けていない。
「なんで!?」
ノエルがビックリしているとお兄ちゃんは楽しそうに笑う。
「俺は正面の防御力を上げるスキルを持ってるんだよ。そんな物、なん百発撃とうと効くわけないだろ」
得意げに笑いながら近づいてくるお兄ちゃん。銃じゃ後ろに攻撃できないって思っているに違いない。確かに、ノエルは後ろから攻撃するようなスキルは無い。けど、スキルを使わなくても後ろを攻撃することは出来る!
ノエルは狙いを悟らせない為に銃を乱射する。
「うわああああ!」(パァン!パァン!パァン!)
「無駄だって言ってるだろ。さっさと諦めて……」
(グシャ!)
「……は?」
瞬間、お兄ちゃんの足に大きく穴が開いた。何が起こったのか分からない様子のお兄ちゃんだったけど、ダメージが深いのか思わず膝を付く。
なんでお兄ちゃんに弾丸が効いたのか。原理は簡単、後ろの扉に反射させただけ。角度が少し気になったけど、ギリギリなんとかなったみたいだ。
ノエルはお兄ちゃんが状況を理解できていない内に、背後に回り込んで首筋を拳銃のグリップで殴る。すると、お兄ちゃんは白目をむいて気を失った。
ノエルは杖を取り出してお兄ちゃんの足だけ治療する。杖を使わないと、全身を治療して目を覚ましちゃうんだよね。
「これでよし!」
「……ノエルちゃん?」
治療が完了して胸を撫でおろしていると、コアコちゃんとサルミちゃんの視線がノエルに……性格にはノエルの持っている拳銃に向いていることに気が付く。
「……あ」
「ノエル、あんたなんて物持ってるのよ」
「これはえーっと……色々とあってホウリお兄ちゃんに持たされてて」
「……まあいいわ。今はここから出るのが先よ。こいつの仲間が来ない前に脱出しましょう」
「そ、そうだね!こんな拳銃よりも脱出が先だよね!」
「詳しい理由は後でゆっくり聞くわよ?」
「あ、あははは……」
曖昧に笑ってサルミちゃんから視線を逸らせる。どうやって誤魔化そうか?
「そうと決まれば早く行こう!」
「そうね。ずらかるわよ」
「あ、ちょっと待って!」
『なんだ?まだ何かあるのか?』
ノエルはさっきの機械に拳銃を向ける。
「あの機械は壊さないと」
「ちょちょちょちょっと!?」
引き金を引こうとした瞬間、サルミちゃんに腕を押えられる。そんなサルミちゃんをノエルは不思議に思う。
「どうして止めるの?」
「むしろなんで止めないと思ったのよ!?さっさと脱出するって言ったわよね!?」
「何発か撃つだけだよ?そんなに時間はかからないよ?」
「銃声で援軍が来るかもしれないでしょ!それに、破壊した瞬間爆発したら死ぬわよ!?」
「そうだよ!早く逃げよ!?」
「うーん、多分大丈夫でしょ」
「あんたの機械に対する執着はなんなのよ!とにかく、さっさと行くわよ!」
コアコちゃんとサルミちゃんに腕をつかまれて、ノエルはさっきの部屋まで連行された。
こうして、ノエル達は援軍が来る前に工場から脱出したのだった。その後、サルミちゃんとコアコちゃんから拳銃の事について聞かれたのは別のお話。
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死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~
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※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。
社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。
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気づいたら異世界に飛ばされていた、おっさん大工。
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高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
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