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第百九十四話 全然わからん
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「いやー、ひどい目にあった」
モカちゃんを抱きながら、ノエルは寂しく帰り道を歩く。お昼だから太陽はまだ真上にあってノエルをじりじりと照らしている。
あの後、サルミちゃんとコアコちゃんに銃の事を説明した。と言っても、全部話した訳ではなく、護身のために訓練して持たされていることにしている。
サルミちゃんはまだ何か聞きたそうだったけど、結局聞かれることはなかった。
お話した後は、危険な目に合ったばっかりだし、それぞれのお家に帰ることになった。サルミちゃんのお父さんが憲兵長みたいだし、通報してくれるって言ってたし解決だ。
「なんだけどなぁ……」
確かにこのままでも解決はすると思う。けど、ノエルの頭はさっき見た機械が離れていなかった。
このままだと憲兵さんに機械が取られちゃう。そうなればあの機械を壊すのが難しくなる。ここは今からでも廃工場に戻った方がいいかな?でも、モカちゃんがいるからあんまり無理しない方がいいし。
「お、ノエルじゃねえか」
考え事をしながら歩いていると、ホウリお兄ちゃんとばったり合った。
ホウリお兄ちゃんはモカちゃんを見ると驚いた表情になる。
「もう見つけたのか。思ったよりも早かったな」
「あ、うん。オカルト研究会の皆と探していたら見つかったんだ」
「そうか。よく頑張ったな。その猫は俺が預かろう」
「うん、はいどーぞ」
モカちゃんをホウリお兄ちゃんに渡す。ホウリお兄ちゃんは優しくモカちゃんを抱くと、顎の下を撫で始めた。
「よしよし」
(ごろにゃーん)
モカちゃんはホウリお兄ちゃんに撫でられて気持ちよさそうに喉を鳴らす。ノエルが撫でていた時よりも気持ちよさそうだ。なんだか悔しい。
「やけに早いな。今帰りか?」
「うん」
「その顔を見るに何かあったんだな」
「……うん」
「暗号は覚えてるな?周りに分からないように暗号で話せ」
やっぱりホウリお兄ちゃんに隠し事は出来ないか。ノエルは今までの出来事を暗号で全部話す。
話を進めてもホウリお兄ちゃんの表情に変化はない。けど、だんだんと雰囲気が怖くなっていく。
「ノエルが壊したくなった機械ってどんなのだ?」
「レバーが付いてて、赤いランプがピコピコしてるしてた」
「それだけじゃ分からないな。実際に見てみた方が早いか」
「どういうこと?」
「決まってるだろ」
ホウリお兄ちゃんはモカちゃんを頭の上に置いてニヤリと笑う。
「今から殴り込みに行くんだよ」
☆ ☆ ☆ ☆
モカちゃんを飼い主さんに預け、ノエルは再び廃工場に来ていた。違うのは隣にホウリお兄ちゃんがいる事と、今着ている格好だ。
ノエルは鉄仮面を被っていて、全身真っ黒の服とズボンを着ている。そして、髪は真っ黒に染まっていた。
「ねぇねぇ、なんでこんな格好しないといけないの?」
「ノエルは顔を見られてるだろ?変装しないと神の使いってバレるかもしれないぞ?」
「むぅ、それは困る」
コアコちゃんやサルミちゃんに話してないのに、他の人からバレるのは困る。
ちなみに、ホウリお兄ちゃんもノエルと似たように仮面を付けて真っ黒い格好をしている。
「それで、これからどうするの?」
「憲兵長に娘が襲われたって知られたらすぐに憲兵が来るはずだ。その前にケリをつける」
「具体的にはどうするの?」
「全員ぶちのめして機械がある部屋まで行く」
「なんだかフランお姉ちゃんみたいなこと言ってる」
「詳しく説明しよう。これが廃工場の地図だ」
ホウリお兄ちゃんが広げた地図を見る。ホウリお兄ちゃんは中央の大きい部屋を指さす。
「ここが機械がある部屋か?」
「そうだよ」
「だったら……」
ホウリお兄ちゃんは入口から時計回りに指を滑らせる。
「ノエルはこういうルートで進んで中央の部屋に進む。俺が逆に行けば全部の部屋を効率良く回れるだろ?」
「なんで全部の部屋を回るの?」
「全員ぶちのめして、後から来る憲兵に逮捕してもらうためだ。既にこの工場で非合法な薬を作っていることは確認しているから遠慮なくやっていいぞ」
「つまり、あった人を全員倒せばいいの?」
「そういう事だ。それから、どちらかが先に着いたら相手が着くまで待つこと。一人で突撃するなよ?あと、言うまでもないと思うが命は奪うなよ?」
「はーい」
銃やナイフを準備しながら返事をする。あった人は全員倒す。分かりやすくて良いね。
ホウリお兄ちゃんも手甲や新月、銃を装備して突撃の準備をしている。
「ここからは時間の勝負だ。手早く全員をぶっ飛ばしていけ」
「了解であります!」
「じゃあ、行くぞ!」
「おー!」
ホウリお兄ちゃんと一緒に廃工場に突撃する。すると、さっきはいなかった人が入口の前に立っていた。手には身長の2倍くらいの槍を持っていて、明らかに見張りって感じだ。
見張りの人はノエル達に気が付くと、槍を突き出して叫ぶ。
「ここから先は私有地だ!止まれ!」
静止も聞かずにホウリお兄ちゃんが槍に向かって発砲する。
槍に弾丸が命中し火花が散る。
「うおっ!?」
弾丸の衝撃で見張りの人の手から槍が落ちた。その隙にノエルは見張りの人の懐に潜り込む。
「やあ!」
魔装を使って拳をお腹にめり込ませると、見張りの人は声も無く倒れ伏した。
ノエルとホウリお兄ちゃんはノンストップで入口に入って、それぞれ右と左で別れた。
ノエルは廊下を走りながら次々と扉を開けていく。
「ああ!?誰だお前は!?」
「さっきの襲撃もお前の仕業か!?」
初めの部屋を開けると、武器を手入れしていた人がノエルに向かって怒鳴ってきた。
さっきの襲撃?モカちゃんを探していた時の事かな?やっぱり見つかっちゃったんだ。早めに逃げといて良かった。
そう思いつつ、武器を持った人のお腹にパンチして気絶させる。今は急いでるから丁寧な描写とかしている暇はない。決して面倒な訳じゃないよ?ほんとだよ?
次々と部屋を開けていって、中にいる人達を次々と気絶させていく。
「ナンオラー!」
「えい」
「グワーッ!」
次の部屋、次の部屋っと。
「スッゾコラー!」
「てやっ」
「グワーッ!」
次の部屋、次の部屋っと。
「た、助かった!これで囚われていた日々も終──」
「うりゃ」
「グワーッ!」
次の部屋、次の部屋っと。
「にゃーん」
「可愛いー」
「ふにゃ!」
猫ちゃんに顔を引っかかれた。痛い。
そんなこんなで、各部屋にいる人たちを気絶させていく。なんだか、気絶させちゃいけないっぽい人もいたけど、まあいいか。
特に何事もなくホウリお兄ちゃんと待ち合わせしている部屋が見えてきた。扉の前には既にホウリお兄ちゃんが立っている。
「ちぇー、負けちゃった」
「勝負じゃないだろ。いいから行くぞ」
ホウリお兄ちゃんがどこか得意げにドアノブに手を掛ける。
扉を開けると、さっきと同じように色んな機械とか書類の入った棚とかある。けど、さっき倒した人はいなかった。多分、誰かが持って行ったんだと思う。
「例の機械はどこだ?」
「あれ」
向こうに見えるレバーが付いてランプが赤くピコピコしている機械を指さす。
「あれか。中を見るからちょっと待ってろ」
「壊しちゃダメなの?」
「待ってろって言ったよな?人の話聞いてたか?」
ホウリお兄ちゃんは機械を分解して中身を見る。それを見ながらノエルは銃を持って大人しく待っている。ホウリお兄ちゃんの事だし、すぐに終わると思おうけど待ち遠しい。
「まだかなー」
「………………」
「まだかなー」
「……………………」
「まだかなー」
「大人しく待ってろって言っただろ?どうしたんだ?いつものノエルらしくないぞ?」
手を止めずにホウリお兄ちゃんが聞いてくる。どうしたかって聞かれてもなんて答えたらいいんだろ?
「うーん?なんとなくその機械を壊さなきゃって思っただけだよ?」
「嘘は吐いてないみたいだな。催眠の類か?だが、俺は何も感じないな」
考えながらもホウリお兄ちゃんは手を動かす。いくつかの基盤や回路を取り出して写真を撮りながら確認する。
「……これは」
ホウリお兄ちゃんは機械の全てを理解したのか言葉を失った。
「ホウリお兄ちゃん?」
「……写真も撮ったし機械の仕組みも理解した。もう壊していいぞ」
「ほんと!?」
良く分からないけど、ホウリお兄ちゃんからお許しが出た!全力で行こう!
ノエルは右足にMPを限界まで籠める。
「壊れろ!」
左足で飛び上がって右足を思いっきり叩き込む。
機械は爆発したような大きな音を立てて、木っ端みじんに消し飛んだ。周りに細かくなった機械の破片が舞い落ちる中、ノエルはすっきりした気持ちで魔装を解除する。
これだけ晴れやかな気持ちは初めてだ。歯に挟まっていた物が取れた時よりもすっきりしてる。
「ふぅ……いい仕事した」
「満足したか?だったら憲兵が突撃する前にズラかるぞ」
「はーい」
部屋を出て窓から廃工場を脱出する。周りの家の屋上を伝いながら工場を離れて、人目のつかないところで仮面を外す。
「ふぅ、息苦しかった」
仮面をしていると、何もしていないのに息苦しくなっちゃう。それに加えて動かないといけなかったから、本当に苦しかった。
大粒の汗を袖で拭っていると、ホウリお兄ちゃんがノエルの髪の色を戻してくる。
「これで良いんだな?」
「うん!ありがと、ホウリお兄ちゃん」
「礼はいらない。何せ、ノエルを危険な目に合わせたからな」
「そう?」
いつものホウリお兄ちゃんなら自分から関わったからノエルが悪いって言ってくると思ったんだけど?
「お腹すいただろ?ちょうど昼飯時だし何か食べるか?」
「ハンバァァァァグ!」
「了解。ファミレスにでも入るか」
目に入ったファミレスに入って適当な席に座る。
「いらっしゃいませ。こちらお冷です」
「ありがとうございます!」
出されたお冷を一気に呷る。火照った体に冷たいお水が染みわたる。
「んぐっんぐっ、ぷはー」
「お疲れさん。じゃ、お楽しみの料金の決算といこうか」
そう言ってホウリお兄ちゃんが依頼帳っていうノートを取り出す。
「まず、猫探しの依頼だな。猫を無傷で確保すれば100万Gだが見事に達成だ」
「わーい!」
ホウリお兄ちゃんが依頼帳の猫探しのページを赤くまるで囲む。これで残りは1900万円。まだまだだけど一歩前進だ。
上機嫌でお水を飲んでいると、ホウリが更にページをめくる。
「次の依頼だな」
「次の依頼?」
ノエルは猫探しの依頼だけしか受けてなかったよね?
ホウリお兄ちゃんが開いたページを見ると、そこには悪の薬品工場の秘密って書いてあった。金額は1000万Gって書いてある。
「何これ?」
「さっき暴れた工場だ。本来であれば証拠品を盗み出す必要があったんだが、今回は俺が奪ってきた」
そう言って、ホウリお兄ちゃんはいくつかの書類を手に取る。
「今から憲兵さんが行くんだよね?証拠を持ってきていいの?」
「これは俺が必要な奴。憲兵が罪を立件できるだけの証拠は残してある」
「そっか、なら安心だね」
あれも依頼だったらいくらかお金が貰えるのかな?ホウリお兄ちゃんの力を借りたし、300万G位くらいは貰えるかな?
ホウリお兄ちゃんは依頼のページに大きく丸を付ける。
「という訳で、報酬は1000万Gだ」
「え?全部貰えるの?」
「端的に言えば、今回は俺がリスク監理が出来てなかったからな。詳しい理由は家で説明する」
「うーん?分かったよ?」
首をかしげながらも首を縦に振る。なんだか分からないけど、1000万G貰えるんだったら良いか。
これで1100万G、残りは900万Gだ。いきなり半分以上稼げたのはラッキーだ。
「依頼の話はここまでだ。飯にしようぜ」
ホウリお兄ちゃんは依頼帳を閉じてメニューを開く。
「わーい、何頼もっかなー」
「好きなの頼んでいいぞ」
「やったー!ブドジュースとハンバーグセットとイチの実のパフェ!」
その後、ノエルは好きな物を好きなだけお腹いっぱい食べた。この日は良い日だったと食べ終わった後に思ったノエルだった。
モカちゃんを抱きながら、ノエルは寂しく帰り道を歩く。お昼だから太陽はまだ真上にあってノエルをじりじりと照らしている。
あの後、サルミちゃんとコアコちゃんに銃の事を説明した。と言っても、全部話した訳ではなく、護身のために訓練して持たされていることにしている。
サルミちゃんはまだ何か聞きたそうだったけど、結局聞かれることはなかった。
お話した後は、危険な目に合ったばっかりだし、それぞれのお家に帰ることになった。サルミちゃんのお父さんが憲兵長みたいだし、通報してくれるって言ってたし解決だ。
「なんだけどなぁ……」
確かにこのままでも解決はすると思う。けど、ノエルの頭はさっき見た機械が離れていなかった。
このままだと憲兵さんに機械が取られちゃう。そうなればあの機械を壊すのが難しくなる。ここは今からでも廃工場に戻った方がいいかな?でも、モカちゃんがいるからあんまり無理しない方がいいし。
「お、ノエルじゃねえか」
考え事をしながら歩いていると、ホウリお兄ちゃんとばったり合った。
ホウリお兄ちゃんはモカちゃんを見ると驚いた表情になる。
「もう見つけたのか。思ったよりも早かったな」
「あ、うん。オカルト研究会の皆と探していたら見つかったんだ」
「そうか。よく頑張ったな。その猫は俺が預かろう」
「うん、はいどーぞ」
モカちゃんをホウリお兄ちゃんに渡す。ホウリお兄ちゃんは優しくモカちゃんを抱くと、顎の下を撫で始めた。
「よしよし」
(ごろにゃーん)
モカちゃんはホウリお兄ちゃんに撫でられて気持ちよさそうに喉を鳴らす。ノエルが撫でていた時よりも気持ちよさそうだ。なんだか悔しい。
「やけに早いな。今帰りか?」
「うん」
「その顔を見るに何かあったんだな」
「……うん」
「暗号は覚えてるな?周りに分からないように暗号で話せ」
やっぱりホウリお兄ちゃんに隠し事は出来ないか。ノエルは今までの出来事を暗号で全部話す。
話を進めてもホウリお兄ちゃんの表情に変化はない。けど、だんだんと雰囲気が怖くなっていく。
「ノエルが壊したくなった機械ってどんなのだ?」
「レバーが付いてて、赤いランプがピコピコしてるしてた」
「それだけじゃ分からないな。実際に見てみた方が早いか」
「どういうこと?」
「決まってるだろ」
ホウリお兄ちゃんはモカちゃんを頭の上に置いてニヤリと笑う。
「今から殴り込みに行くんだよ」
☆ ☆ ☆ ☆
モカちゃんを飼い主さんに預け、ノエルは再び廃工場に来ていた。違うのは隣にホウリお兄ちゃんがいる事と、今着ている格好だ。
ノエルは鉄仮面を被っていて、全身真っ黒の服とズボンを着ている。そして、髪は真っ黒に染まっていた。
「ねぇねぇ、なんでこんな格好しないといけないの?」
「ノエルは顔を見られてるだろ?変装しないと神の使いってバレるかもしれないぞ?」
「むぅ、それは困る」
コアコちゃんやサルミちゃんに話してないのに、他の人からバレるのは困る。
ちなみに、ホウリお兄ちゃんもノエルと似たように仮面を付けて真っ黒い格好をしている。
「それで、これからどうするの?」
「憲兵長に娘が襲われたって知られたらすぐに憲兵が来るはずだ。その前にケリをつける」
「具体的にはどうするの?」
「全員ぶちのめして機械がある部屋まで行く」
「なんだかフランお姉ちゃんみたいなこと言ってる」
「詳しく説明しよう。これが廃工場の地図だ」
ホウリお兄ちゃんが広げた地図を見る。ホウリお兄ちゃんは中央の大きい部屋を指さす。
「ここが機械がある部屋か?」
「そうだよ」
「だったら……」
ホウリお兄ちゃんは入口から時計回りに指を滑らせる。
「ノエルはこういうルートで進んで中央の部屋に進む。俺が逆に行けば全部の部屋を効率良く回れるだろ?」
「なんで全部の部屋を回るの?」
「全員ぶちのめして、後から来る憲兵に逮捕してもらうためだ。既にこの工場で非合法な薬を作っていることは確認しているから遠慮なくやっていいぞ」
「つまり、あった人を全員倒せばいいの?」
「そういう事だ。それから、どちらかが先に着いたら相手が着くまで待つこと。一人で突撃するなよ?あと、言うまでもないと思うが命は奪うなよ?」
「はーい」
銃やナイフを準備しながら返事をする。あった人は全員倒す。分かりやすくて良いね。
ホウリお兄ちゃんも手甲や新月、銃を装備して突撃の準備をしている。
「ここからは時間の勝負だ。手早く全員をぶっ飛ばしていけ」
「了解であります!」
「じゃあ、行くぞ!」
「おー!」
ホウリお兄ちゃんと一緒に廃工場に突撃する。すると、さっきはいなかった人が入口の前に立っていた。手には身長の2倍くらいの槍を持っていて、明らかに見張りって感じだ。
見張りの人はノエル達に気が付くと、槍を突き出して叫ぶ。
「ここから先は私有地だ!止まれ!」
静止も聞かずにホウリお兄ちゃんが槍に向かって発砲する。
槍に弾丸が命中し火花が散る。
「うおっ!?」
弾丸の衝撃で見張りの人の手から槍が落ちた。その隙にノエルは見張りの人の懐に潜り込む。
「やあ!」
魔装を使って拳をお腹にめり込ませると、見張りの人は声も無く倒れ伏した。
ノエルとホウリお兄ちゃんはノンストップで入口に入って、それぞれ右と左で別れた。
ノエルは廊下を走りながら次々と扉を開けていく。
「ああ!?誰だお前は!?」
「さっきの襲撃もお前の仕業か!?」
初めの部屋を開けると、武器を手入れしていた人がノエルに向かって怒鳴ってきた。
さっきの襲撃?モカちゃんを探していた時の事かな?やっぱり見つかっちゃったんだ。早めに逃げといて良かった。
そう思いつつ、武器を持った人のお腹にパンチして気絶させる。今は急いでるから丁寧な描写とかしている暇はない。決して面倒な訳じゃないよ?ほんとだよ?
次々と部屋を開けていって、中にいる人達を次々と気絶させていく。
「ナンオラー!」
「えい」
「グワーッ!」
次の部屋、次の部屋っと。
「スッゾコラー!」
「てやっ」
「グワーッ!」
次の部屋、次の部屋っと。
「た、助かった!これで囚われていた日々も終──」
「うりゃ」
「グワーッ!」
次の部屋、次の部屋っと。
「にゃーん」
「可愛いー」
「ふにゃ!」
猫ちゃんに顔を引っかかれた。痛い。
そんなこんなで、各部屋にいる人たちを気絶させていく。なんだか、気絶させちゃいけないっぽい人もいたけど、まあいいか。
特に何事もなくホウリお兄ちゃんと待ち合わせしている部屋が見えてきた。扉の前には既にホウリお兄ちゃんが立っている。
「ちぇー、負けちゃった」
「勝負じゃないだろ。いいから行くぞ」
ホウリお兄ちゃんがどこか得意げにドアノブに手を掛ける。
扉を開けると、さっきと同じように色んな機械とか書類の入った棚とかある。けど、さっき倒した人はいなかった。多分、誰かが持って行ったんだと思う。
「例の機械はどこだ?」
「あれ」
向こうに見えるレバーが付いてランプが赤くピコピコしている機械を指さす。
「あれか。中を見るからちょっと待ってろ」
「壊しちゃダメなの?」
「待ってろって言ったよな?人の話聞いてたか?」
ホウリお兄ちゃんは機械を分解して中身を見る。それを見ながらノエルは銃を持って大人しく待っている。ホウリお兄ちゃんの事だし、すぐに終わると思おうけど待ち遠しい。
「まだかなー」
「………………」
「まだかなー」
「……………………」
「まだかなー」
「大人しく待ってろって言っただろ?どうしたんだ?いつものノエルらしくないぞ?」
手を止めずにホウリお兄ちゃんが聞いてくる。どうしたかって聞かれてもなんて答えたらいいんだろ?
「うーん?なんとなくその機械を壊さなきゃって思っただけだよ?」
「嘘は吐いてないみたいだな。催眠の類か?だが、俺は何も感じないな」
考えながらもホウリお兄ちゃんは手を動かす。いくつかの基盤や回路を取り出して写真を撮りながら確認する。
「……これは」
ホウリお兄ちゃんは機械の全てを理解したのか言葉を失った。
「ホウリお兄ちゃん?」
「……写真も撮ったし機械の仕組みも理解した。もう壊していいぞ」
「ほんと!?」
良く分からないけど、ホウリお兄ちゃんからお許しが出た!全力で行こう!
ノエルは右足にMPを限界まで籠める。
「壊れろ!」
左足で飛び上がって右足を思いっきり叩き込む。
機械は爆発したような大きな音を立てて、木っ端みじんに消し飛んだ。周りに細かくなった機械の破片が舞い落ちる中、ノエルはすっきりした気持ちで魔装を解除する。
これだけ晴れやかな気持ちは初めてだ。歯に挟まっていた物が取れた時よりもすっきりしてる。
「ふぅ……いい仕事した」
「満足したか?だったら憲兵が突撃する前にズラかるぞ」
「はーい」
部屋を出て窓から廃工場を脱出する。周りの家の屋上を伝いながら工場を離れて、人目のつかないところで仮面を外す。
「ふぅ、息苦しかった」
仮面をしていると、何もしていないのに息苦しくなっちゃう。それに加えて動かないといけなかったから、本当に苦しかった。
大粒の汗を袖で拭っていると、ホウリお兄ちゃんがノエルの髪の色を戻してくる。
「これで良いんだな?」
「うん!ありがと、ホウリお兄ちゃん」
「礼はいらない。何せ、ノエルを危険な目に合わせたからな」
「そう?」
いつものホウリお兄ちゃんなら自分から関わったからノエルが悪いって言ってくると思ったんだけど?
「お腹すいただろ?ちょうど昼飯時だし何か食べるか?」
「ハンバァァァァグ!」
「了解。ファミレスにでも入るか」
目に入ったファミレスに入って適当な席に座る。
「いらっしゃいませ。こちらお冷です」
「ありがとうございます!」
出されたお冷を一気に呷る。火照った体に冷たいお水が染みわたる。
「んぐっんぐっ、ぷはー」
「お疲れさん。じゃ、お楽しみの料金の決算といこうか」
そう言ってホウリお兄ちゃんが依頼帳っていうノートを取り出す。
「まず、猫探しの依頼だな。猫を無傷で確保すれば100万Gだが見事に達成だ」
「わーい!」
ホウリお兄ちゃんが依頼帳の猫探しのページを赤くまるで囲む。これで残りは1900万円。まだまだだけど一歩前進だ。
上機嫌でお水を飲んでいると、ホウリが更にページをめくる。
「次の依頼だな」
「次の依頼?」
ノエルは猫探しの依頼だけしか受けてなかったよね?
ホウリお兄ちゃんが開いたページを見ると、そこには悪の薬品工場の秘密って書いてあった。金額は1000万Gって書いてある。
「何これ?」
「さっき暴れた工場だ。本来であれば証拠品を盗み出す必要があったんだが、今回は俺が奪ってきた」
そう言って、ホウリお兄ちゃんはいくつかの書類を手に取る。
「今から憲兵さんが行くんだよね?証拠を持ってきていいの?」
「これは俺が必要な奴。憲兵が罪を立件できるだけの証拠は残してある」
「そっか、なら安心だね」
あれも依頼だったらいくらかお金が貰えるのかな?ホウリお兄ちゃんの力を借りたし、300万G位くらいは貰えるかな?
ホウリお兄ちゃんは依頼のページに大きく丸を付ける。
「という訳で、報酬は1000万Gだ」
「え?全部貰えるの?」
「端的に言えば、今回は俺がリスク監理が出来てなかったからな。詳しい理由は家で説明する」
「うーん?分かったよ?」
首をかしげながらも首を縦に振る。なんだか分からないけど、1000万G貰えるんだったら良いか。
これで1100万G、残りは900万Gだ。いきなり半分以上稼げたのはラッキーだ。
「依頼の話はここまでだ。飯にしようぜ」
ホウリお兄ちゃんは依頼帳を閉じてメニューを開く。
「わーい、何頼もっかなー」
「好きなの頼んでいいぞ」
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