魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

文字の大きさ
240 / 472

第二百二話 よからぬことを始めようじゃないか

しおりを挟む
 釣りの結果はわしが5匹、ヌカレが0匹じゃった。合計数の勝負でもわしの勝ちじゃな。
 内臓を取り除き、串に刺して網に乗せる。鮎のように小ぶりな魚じゃし、バーベキューには最適な魚じゃな。


「お主ご所望の魚じゃ。わしが用意してやったぞ。お主に変わってわしがな!」
「うるせえよ。さっさと焼け」
「ほいほい」


 わしが魔法で火をつけ、いよいよバーベキューが始まる。


「好きな物を好きなだけ焼くが良い。ただし、ハイ・ミノタウロスの肉だけは後じゃ」
「なんでだ?」
「メインディッシュは後と決まっておるじゃろ?」
「そういうものか」


 ヌカレが鹿肉串と魚串を網の上にどんどん乗せる。一方で野菜やキノコに串には手を付けようとしない。


「好きにとは言ったが、肉と魚ばかりじゃな。野菜とかキノコは食わんのか?」
「気が向いたらな」
「そう言った奴で気が向いた奴はおらんがな。少しは食わんと無理やり口にねじ込むからな?」


 わしの言葉を聞いたヌカレは鹿肉串に手を伸ばした手を、横の野菜串に移動させる。言う事を聞かんかったら本気でやるつもりじゃった。素直なのは良い事じゃな。
 わしもキノコ串を網の上に乗せる。


「お前はあいつに本当によく似てるよ」
「同じような事を元カノに言われたのか?」
「ああ。いつもちゃんと野菜は食えだの、酒は飲み過ぎるなだのうるさかったよ」
「それはお主に非があるじゃろ。不摂生は早死の元じゃぞ?」
「ほっとけよ」
「大事な者に長生きしてほしいと思うのは自然じゃろ。人の忠告は聞いておくものじゃ」


 とはいえ、わしも忠告を聞かない事があるからのう。自分でも気を付けておくとしよう。人の振り見て我が振り直せという奴じゃな。
 他愛のない話をしている間に焼けた食材を抜かれに差し出す。


「ほれ、焼けたぞ」
「ありがとう」
「お礼は素直に言えるんじゃな」
「うるせえよ」


 ソッポを向いて肉を頬張るヌカレ。わしも鹿肉を皿に盛り食してみる。油が少なく肉の味がダイレクトに伝わってくる。好みは分かれるじゃろうが、肉を食っている感じが強くてわしは好きじゃ。
 わしは肉を咀嚼しつつ、ふと思ったことを口に出す。


「そういえば、キャンプの目的はわしと普通に接する事じゃったよな?今は出来そうか?」
「昨日よりはマシだが、まだ無理そうだな」
「そうか」


 完全に無意味ではないようじゃが、まだ足りんか。どうしたものかのう。


「もうわしにはどうすれば良いか分からん。どうすればいい?」
「俺に聞かれてもな。お前とあいつが似ている以上、俺にはどうしようも無い」
「お主が原因のくせに偉そうじゃな。む?待てよ?」


 わしとそいつが似ておるのであれば、逆に似ていない点を上げればいいのではないか?
 そういえば、ヌカレの話は聞いておったが、わしの話はあまりしてなかった。それが問題だった可能性があるのではないか?


「どうした?考え込むなんてらしくないぞ?」
「昨日会ったばかりのお主に何が分かる」
「それもそうだな」
「思い出してみれば、お主の事を聞いてばかりで、わしの事はあまり教えてなかったじゃろ?何かわしに聞きたい事は無いか?」
「無い」
「少しは考えんかい」


 わしの言葉にヌカレがため息を吐く。そして、食べ終わった串を皿に並べると、仕方ないなと言った表情で口を開いた。


「じゃあ……趣味はなんだ?」
「演劇鑑賞」
「それ以外に決まってるだろ。年がら年中、演劇を見てるだけじゃないだろ?」
「…………」
「まさか、本当に演劇鑑賞しか趣味が無いのか?」
「悪いか?」
「いや、その……」
「なんじゃ?言いたい事があるなら聞いてやるぞ?」


 バツが悪そうに顔を背けるヌカレ。そんなヌカレを追い詰めるように、視線の先に回り込む。
 ヌカレが顔を背け、わしが回り込むと言った事を数度繰り返す。その行為はわしが肉が焦げる事に気付く事で終わったのじゃった。
 しかし、わしの趣味が少ないのは事実じゃ。何か人に言えるような趣味を見つけんとな。


「他にわしに聞きたいことはないか?」
「あるぞ」
「お、なんじゃ?」
「なんでそんなに強いんだ?」
「もっともな質問じゃな」


 ハイ・ミノタウロスを一撃で仕留めるなど、普通の戦闘力ではないからな。あんなの間近に見て不思議に思うのは無理もないじゃろう。
 しかし、この質問にはなんと答えれば良いのじゃろうか?素直に答えると頭の可笑しい奴じゃと思われてしまうじゃろうし、嘘を吐こうにも説得力がある嘘は思いつかん。


「どうした?」
「……悪いがノーコメントじゃ」
「言いにくいって事か。ま、普通な手段で手に入れた力じゃなさそうだし、知らない方がいいかもな」
「すまぬな。他に聞きたい事はないか?」
「じゃあ……演劇以外で好きな物はないか?」
「あるぞ。わしは妹のノエルが大好きじゃ」
「昨日も言っていたな」
「そうじゃな」


 わしは誇らしげにノエルが写った写真の束を取り出す。


「見ろ!こんなに可愛い子と一緒に暮らしておるのじゃぞ?羨ましいじゃろ?」
「確かに可愛らしい子だな。義理の妹って言っていたが両親はどうした?」
「……盗賊に殺されたらしい」
「あ、悪い。聞くべきじゃなかったか?」
「わし自身の事ではないし、別に良い。そんな事よりも可愛いノエルを見るんじゃ」


 ノエルの写真をヌカレの目の前に突き出す。


「これは海に行った時の水着ノエル。海は初めてみたいでかなりはしゃいでおったのじゃ。あの時もバーベキューをして楽しかったのう。昼間もビーチバレーをしたり、ビーチフラッグをしたり、海の中にに潜ったり楽しかったのう。しかも、銀の閃光と一緒に宝探しをして面白かったのう」


 わしから写真を受け取ったヌカレは写真に目を通していく。しかし、ある程度目を通したヌカレは首を傾げた。


「なあ、なんで写真に写ってるのはノエルって子だけなんだ?お前や他の奴は写ってないのか?」
「は?ノエルの可愛さを伝えるのに不純物は不要じゃろ?」
「自身でさえ不純物って言い切るのかよ」


 呆れたように写真を次々とめくるヌカレ。当然のごとくノエルが写っておる写真しかない。


「ノエルって子以外に一緒に住んでいる奴はいないのか?」
「脚本家のホウリも一緒に住んでおるぞ。後は騎士団に所属しておるロワとミエルがおる」
「結構多いな?」
「同じ冒険者パーティーのスターダストに所属しておるからな」
「そいつらの写真は無いのか?」
「あるぞ」


 わしは家を買った時に皆で撮った写真を渡す。


「ほれ」
「これがフランの仲間か。お前って冒険者だったんだな」
「訳あって、今はこの街でゆっくりしておるがのう。しばらくしたら出発するつもりじゃ」
「ずっと王都にはいないのか?」
「そうじゃな。劇への出演も今回で最後にするつもりじゃ」
「そうなのか。そういえば、この男はなんで口元を布で覆っているんだ?」
「それはのう……」


 こうして、スターダストの写真を見ながらわしらはバーベキューを楽しむのじゃった。


☆   ☆   ☆   ☆


 フランさんが同じ劇の人とバーべキューに行った日、僕はホウリさんと特訓していました。特訓自体は家の庭でいつもと同じです。違う所と言えば……


「うぐぅ……」
「何をしている。早く立て」


 容赦の無さがいつもの数倍って所でしょう。
 ホウリさんに促され、僕は痛みをこらえて何とか立ち上がります。


「痛てて……」
「立ったなら再開するぞ」
「ちょっと待ってください!まだポーションで回復してな───」
「敵が回復するまで待ってくれると思うなよ!」


 ホウリさんが振るってくる木刀を、弓で何とか受け止めます。いつもなら少しだけ時間くれるんですけど、今日はそういう事は一切ないです。


「くう……」
「受け止めただけで安心してるのか?甘いぞ?」


 そう言ってホウリさんは木刀から力を抜く。必然的に僕が木刀を押し返す形になり、体勢を崩してしまう。


「うおっ!?」
「まだ近距離戦が弱いな。この程度は対処出来て欲しい所だ」


 そう言いつつ、ホウリさんは体勢を崩した僕の髪の毛を掴んできて、膝を叩き込んできます。僕はまともに食らって再び地面に倒れる。


「うぐ……」
「まだいけるだろ?立てよ」
「さ、流石に無理です……」
「そうか。なら少し休むか」


 そう言ってホウリさんがポーションを頭にかけてきます。ポーションは傷を負った所にかけても効果がありますけど、なんだか雑な気がします。
 起きられるようになるまで回復するまで待って、僕は体を起こします。


「あー、疲れました」
「何言ってんだ、まだまだ特訓はこれからだからな?」
「なんだか、今日はいつもよりも厳しいですね。何かあったんですか?」
「近いうちに遠征があるだろ?だから厳しくしてみようと思ってな」
「えー?本当ですか?」


 今の理由もあるかもしれないけど、別の理由もありそうだ。ちょっと聞いてみようかな。


「もしかしてフランさんの事で苛立ってます?」
「それもある」
「あっさり認めますね!?」


 思ったより素直に認めて驚く。やっぱりフランさんが原因みたいだ。


「確か、ヌカレっていう人と山に行ったんでしたっけ?」
「ちょっと面白くないって思ってたんだよ。楽しみにしていたスイーツが販売中止になった時と同じ気分だ」
「それだけ聞くと大したことなさそうですね」


 実際はかなりの衝撃だという事は理解できますけどね。


「けど、それで僕に八つ当たりは止めてくれませんか?」
「さっきも言ったが、近いうちに遠征があるだろ?そうでなくてもお前らには強くなって貰わないと困る。だから、これは八つ当たりってだけじゃないんだよ。分かったらさっさと立て」
「分かりましたよ」


 僕は意を決して立ち上がります。ホウリさんにもストレス発散する機会は必要でしょう。ここは付き合いましょう。
 それにしても、ホウリさんって何でもないような顔をしてましたけど、フランさんの事が好きだったんですね。なんだか意外です。
 ホウリさんにも人間らしい所があったんですね~。


「余計なこと考える暇があるんだな?だったらもっと厳しくしてやる」
「人の心を読まないでくれます!?」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

 社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。

本条蒼依
ファンタジー
 山本優(やまもとまさる)45歳はブラック企業に勤め、 残業、休日出勤は当たり前で、連続出勤30日目にして 遂に過労死をしてしまい、女神に異世界転移をはたす。  そして、あまりな強大な力を得て、貴族達にその身柄を 拘束させられ、地球のように束縛をされそうになり、 町から逃げ出すところから始まる。

僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~

めでめで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。 しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。 そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。 その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。 (スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

不死身のボッカ

暁丸
ファンタジー
逓信(ていしん)ギルドに所属する甲殻人ボッカ。歩荷(ぼっか=運搬人)だからボッカと素性を隠す特急便の運搬人。 小柄な身体に見合わぬ怪力、疾風のスピードと疲れ知らずのスタミナで、野を越え山越え荷物を運ぶ。 逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。 割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。 ※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。 ※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。 ※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。 ※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...