魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第二百四十六話 不可能だという点に目をつぶればよぉ~~~

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「わしもお主と冒険がしたい」
「藪から棒にどうした?」


 華々しく初公演を終え、その後の公演も成功を収めたフラン。
 そんな順調なフランからリビングでそんな事を言われた。
 俺の反応を不服におもったのか、フランが頬を膨らませる。


「どうしたもこうしたもあるかい。わしだけがお主と冒険に行ってないんじゃぞ?」
「王都に来る前に冒険しただろ」
「そうではない。王都に来てからの話じゃ。他の者とは行ったじゃろう?」
「ミエルとは魔国のリューレの村に、ロワとノエルはハイファイの街に行ったな。だが、あれは明確に用事があったからだし、冒険というよりも、小旅行って感じだったぞ?」
「どちらにせよ、わしとは行って無いじゃろ?」
「面倒くせぇな。メンヘラ彼女かよ」
「だってだって!わしだって冒険したい!」
「メンヘラじゃねえな。ただのガキだ」


 床に寝転がってバタバタと手足を動かすフラン。こうしてみると、ノエルよりも幼く見える。中身と外見が一致していないのも珍しい。


「冒険したいのは分かった。だが、現実的に考えて無理だろ」
「なぜじゃ?」
「長期間の冒険をする気か?絶賛公演中の劇の主演が寝ぼけたことを言ってんじゃねぇぞ?」


 冒険をするには、どうしても纏まった日数がいる。演劇は1日くらいの休みは出るが、冒険が出来るほどの休日は取れないだろう。


「劇の公演が終わったら連れて行ってやるから」
「そんなの待ってられるか!毎日朝から晩まで劇場で頑張っているんじゃぞ!?少しぐらい楽しみがないとやってられんわい!」
「そう言われてもな」


 1日で冒険をするには近所の探検くらいしか手が無い。しかし、フランがその程度で満足できるとは思えない。


「1日で往復出来てフランが満足する冒険。かなりの無茶難題だな」
「何を言っておる。別に1日で往復する必要は無い」
「なにか考えがあるのか?」
「これじゃよ」


 フランがワープクリスタルを得意げに掲げる。


「これを使えば一瞬で帰ってこられる。1日で進める所まで進み、時間になればワープクリスタルで戻ってくる。次の休みはワープした所から開始。どうじゃ、これなら纏まった休みが無くても冒険が出来るじゃろ?」
「良い考えだ」
「じゃろ?」
「不可能だという点以外はな」
「なんでじゃ?」
「ワープが規制されているからだ」


 俺の指摘にフランが思い出したという風に手を叩く。
 さては、ヌカレとキャンプする時に、俺になんとかしてくれって頼んだのも忘れてやがるな?


「まあ、お主ならワープの許可くらい簡単に取れるじゃろ?」
「そんな訳ないだろ。許可取るのは物凄く面倒なんだぞ?」
「そうなのか。残念じゃな」
「待て」


 俺はリビングを出ていこうとするフランの肩を掴む。


「なんじゃ?」
「どこに行くつもりだ?」
「夕飯の買い物じゃぞ?」
「山登り用の格好をして、リュックサックを持って買い物か?」
「別に嘘は言っておらんよ。ただ、他の街に買い物に行こうと思っておるだけじゃ」
「どこの町だ?」
「『スミル』じゃ」
「山をいくつ超えるつもりだ」


 スミルは人国の一番北にある領地だ。直線距離で何千キロも離れているから、夕飯までに往復するとなると、音速以上で動かないといけない。
 しかも、周りは山脈に囲まれているし、生息している魔物のレベルも高く簡単には辿りつけない場所になっている。


「今日の夕飯はボルシチじゃな。スミル特産のホワイトビーツを買ってくるから楽しみにしておれ」
「だから待てって言ってるだろ」
「なんじゃ?まだ何かあるのか?」
「スミルの街までどうやって行くつもりだ?」
「徒歩じゃ」
「ルートは?」
「直進あるのみじゃ」
「山はどうする?」
「そんなの、ぶちぬけばよいじゃろ」
「だと思った」


 山を考えなしにぶち抜いたら崩落する可能性が出てくる。フランなら崩落しようが問題ないだろうが、住んでいる人達にとっては大問題だろう。
 だが、ここで止めても聞く奴だとは思えないし、しょうがないな。


「分かった。俺が許可を取るから、ワープの案で行こう」
「そうか!やったー!」


 余程嬉しかったのか、フランが飛び跳ねて喜ぶ。拒否し続けたらもっと過激なことをするだろうし、こう言うしかないな。


「で、どこか行きたい所はあるのか?」
「クロウブという領地があるじゃろ?」
「大半が砂漠の領地だな」


 中心の街は砂漠のど真ん中にあり、交通の便がかなり悪い。コウリの街ほどではないにせよ魔物も強いし、フランの求める冒険が出来そうだ。


「何か目的はあるのか?」
「ふっふっふ、実はとある筋からお宝の情報を得てのう。今回の冒険の目的はそのお宝を見つけることじゃ」
「どんなお宝だ?」
「触ると雪のように冷たいクリスタル。その名も『スノーダストクリスタル』。それが今回の獲物じゃ」
「あれか」
「流石ホウリ。知っておったようじゃな」


 スノーダストクリスタルは噂だけしか流れておらず、俺も明確な情報は知らない。
 なんでも、いつまでも冷たさが変わらず、クリスタルの中は雪が舞うようにキラキラと輝いているらしい。
 誰がどのように作ったのか、どこにあるのか、どのような形をしているのか、明確な情報は何一つない。


「どこにあるのか目星はついているのか?」
「砂漠の奥の遺跡に眠っているらしい」
「ゴビゴビ遺跡か」


 ゴビゴビ遺跡は砂漠の奥にある遺跡で、いまだに全域の調査が進んでいない。
 その理由は遺跡内の罠と魔物。A級のパーティーや騎士団が何度も調査したが、その度に犠牲を出して調査は断念された。


「調査報告書は読んだが、ゴビゴビ遺跡の全体を考えると調査は20%も進んでいない」
「残りの80%をわしらで調査し、スノーダストクリスタルを見つけ出す」
「冒険としては、これ以上相応しいものはないな」
「じゃろ?」


 砂漠なら事前の準備を怠らなければ問題ない。ゴビゴビ遺跡の罠は俺が、魔物はフランが担当すれば調査も進むだろう。


「了解した。今から出発で良いか?」
「わしは良いが、お主は良いのか?」
「俺はいつでもサバイバル出来るように準備しているからな」
「準備が良いのう」
「じゃあ行くぞ。ここからクロウブまでは急いでも3日はかかる」
「そうじゃ。もう1つだけ頼みたい事があるんじゃが」
「なんだ?」
「わしもバイクを使って移動してみたい」


 そういえば、他の3人はバイクに乗ったことがあるが、フランは乗った事なかったな。


「メンテナンスも済んでいるし良いぞ。だが、フランは走った方がバイクに乗るよりも早いんじゃないか?」
「どちらかと言えばアトラクション感覚じゃな。飽きたら自分で走る」
「了解。持ってくるから南門で待ってろ」
「うむ」


 ☆   ☆   ☆   ☆


 雲1つない快晴の中、俺とフランは門から出る。前後左右には行きかう人で溢れており、街道には行きかく人で溢れている。
 フランは街道から外れたところで困ったように頭を掻く。


「忘れておった。この時間の南門は人の通りが多いんじゃった。これではバイクで爆走することなど出来ん」
「お?最強の魔王様がこの程度で諦めるのか?」
「わしじゃって諦めたくはない。が、こんな所で爆走したら怪我人が出るぞ?」


 フランの言う通り、周りには人が多い。小回りが利くバイクならまだしも、用意しているのはバギーバイク。街道を走れば確実に人を轢くだろう。


「じゃあ、街道を走らなければいいだろ?」
「街道以外に何処を走るんじゃ」
「上だよ」
「上?」


 フランは空を見上げる。しかし、当然ながら真っ青な空以外は何も見えない。


「どういう意味じゃ?」
「道が無ければ作ればいいってことだ」
「ああ、なるほど。結界で道を作ってその上を走るのか」


 フランにもピンと来たのかニヤリと笑う。


「わしには非常識だとかぬかすが、お主の発想も非常識じゃのう?」
「俺は常識を知ったうえで、どうするか考えているんだよ。フランみたいに常識を度外視して考えてない」
「まあ何でもよい。それで行くからバイクを出せ」
「へいへい。スキルで目立たなくしておけよ?」
「わかっておる」


 俺はバギーバイクを二つ取り出す。すると、フランは即座にバギーバイクの上に乗った。


「これがバイクか。やっとわしも乗れるんじゃな」
「気の済むまで乗ってくれ」
「じゃあ、行くぞ!」
「しゅっぱーつ」


 フランが結界を作り、アクセル全開で走り出す。俺も遅れないようにアクセルを前回にする。
 こうして俺たちの新たな冒険が始まった。
 思ったんだが、途中で中断する冒険で良いのか?まあ、フランが楽しそうだし良いか。
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