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第二百五十九話 さよなら天さん
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「あー!また負けた!」
ホウリお兄ちゃんが操作する魔女にほとんどダメージを与えられず、画面の外に吹き飛ばされる勇者。何回目か分からない魔女の勝利演出が表示され、ノエルはコントローラーを投げ出す。
「勝てないよぉ~」
「ノエルちゃんは検討している方よ。私なんて1発も攻撃が当たってないんだから」
「お前らが本気でやれって言ったからな。お言葉に甘えて本気を出させてもらった」
強いだろうなとは思ってたけど、強すぎる。勝てる気が全くしない。リンお姉ちゃんも同じことを思ったのか、乱雑にコントローラーを置く。
ホウリお兄ちゃんはコントローラーも置くと、ゲームの電源を切った。
「さてと、良い時間だし戦闘訓練をするか」
「戦闘訓練?こんな時くらいは休んだら?」
「そうはいかない。5日もサボると後れを取り戻すのに1カ月はかかる」
「ノエルは大丈夫だよ!」
シュウジおじちゃんのロボットと戦った時、魔装とセイントヒールを上手く使えていれば苦戦しなかった。あんなんじゃ、フランお姉ちゃんを倒すなんて出来ない。
「ノエルもっと強くなる!」
「その意気だ」
「ノエルちゃんが良いなら、私から言う事は無いわ。で、四次元場を使うって事で良いのかしら?」
「四次元場?」
聞きなれない単語にノエルは首を傾げる。
「なにそれ?」
「クラスメイトに特殊能力を使う奴がいるって話をしただろ?そいつらの特訓をする空間だ」
「別次元にあるから地平線が見える位に広くて、どれだけ力を使っても迷惑が掛からない。そんな都合の良い空間よ」
「へぇー、ノエルの家にも欲しいなぁ」
家のお庭も広いんだけど、全力で戦うとなると少し手狭だ。なんとかして、元の世界でも使えないかな?
「悪いが、元の世界には持って帰れないからな」
「えー」
「わがまま言うな。この世界の物をあっちの世界には持っていけないんだよ」
「ぶぅぅぅ」
「ぶうたれてもダメだ」
頬を膨らませるノエルを無視して、ホウリお兄ちゃんがスマートフォンを操作する。
「これでよしと」
「ねぇねぇ、私も見ても良い?」
「別に良いぞ。ただし、危ないから中に入らずタブレットで見ろよ」
「分かってるわよ」
ホウリお兄ちゃんから大きなスマートフォンをリンお姉ちゃんに渡す。
「本気でいくから戦闘準備は念入りにしておけよ」
「はーい」
「今回はどんな手を使うつもりかしら?」
「『カプロボ』と『exバトン』と『チップ』と『ハンドベルト』を使う」
「殺意しかないラインナップなんだけど、容赦って知ってる?」
「ちゃんとノエルが勝てる程度には手加減する」
拳銃とナイフを準備していると、そんな話が聞こえて来た。
「あれ?ホウリお兄ちゃんって木刀以外の武器は使えないんじゃないの?」
「新月は天界に置いてきた。この世界であれば、他の武器も使うことが出来る」
「じゃあホウリは本気で戦えるってこと?」
「そういう事だ。言っておくが今回はきつい訓練になる。気張らないと酷い目にあうからな」
「うん」
神妙な面持ちで首を縦に振る。ホウリお兄ちゃんが「きつい」って言うってことは本当に厳しい戦いになるんだろう。
大きく深呼吸して、何か出来る事は無いか考える。弾丸の補充と、ナイフの予備と、後は───
「そうだ、ノエル」
考え込んでいると、ホウリお兄ちゃんの声で現実に引き戻された。
「なあに?」
「その格好だと戦いにくいだろ?これを着てみてくれ」
ホウリお兄ちゃんから洋服を受け取る。伸び縮みする服とズボン、それと真っ黒い上着と短パンだった。
「それを着たら四次元場に来てくれ」
「そういえば、四次元場ってどうやって行くの?」
「このスイッチを押せば行ける」
ホウリお兄ちゃんがテーブルに真っ赤なスイッチを置く。
「俺は先に行って待っておく」
「はーい」
ホウリお兄ちゃんがスイッチを押した瞬間、姿が一瞬のうちに消えた。
「これで四次元場に行けたってこと?」
「そうね」
リンお姉ちゃんが大きいスマートフォンを見せてくれる。そこには荒野みたいな所に立っているホウリお兄ちゃんが映っていた。傍らにはアタッシュケースが置いてある。
「アタッシュケースなんて持ってたっけ?」
「最初から四次元場に置いてたのよ」
「準備万端だったんだ」
ともかく、ノエルも着替えて行かないと。そう着ていた服に手を掛けたとき、とある疑問が頭に浮かぶ。
「そういえばさ、ホウリお兄ちゃんが言ってた武器ってどんな物なの?」
「exバトンは万能武器よ。銃、剣、槍、斧、どんな武器にでも姿を変えるわ」
「あれ?教えてくれるんだ?」
てっきりホウリお兄ちゃんに口止めされてると思ってた。だから、聞いたのもダメ元だったから、教えてくれるなんて思ってなかったや。
「口止めされてないわ。大方、戦う前に情報を収集できるのか、っていうテストなんじゃない?」
「なるほど、ホウリお兄ちゃんっぽい考え方だね」
「仮に口止めされてても教えるけどね。次はカプロボの説明ね」
ノエルは着替えをしつつ説明を聞く。
「カプセルロボット、通称カプロボ。ポケットに入るくらいの大きさだけど、スイッチを入れれば大きくなって遠隔操作が出来るわ────」
こうして全ての説明を聞いたノエルはスイッチを押して、四次元場へと向かった。
☆ ☆ ☆ ☆
視界が一瞬にして部屋から荒野へ切り替わる。
ホウリお兄ちゃんはノエルから10mくらい離れた所に立っていた。
「ちゃんと、凛から情報は聞いてきたみたいだな」
「えへへ」
感心したように褒められ、ノエルは頭を掻く。けど、すぐさま拳銃を抜いてホウリお兄ちゃんに向ける。
ホウリお兄ちゃんは慌てた様子も無く、アタッシュケースに手を掛ける。
「始めるか」
「よろしくお願いします!」
言うや否や、ノエルはアタッシュケースに向かって発砲した。
ホウリお兄ちゃんが使う前に武器を壊す!これがノエルが立てた作戦だ!
弾丸はアタッシュケースのカギの部分に命中し、見事に破壊した。これで武器を使うことは出来ない。
「勝った!」
「そう思うのはまだ早いな」
ホウリお兄ちゃんが地面の岩と岩の隙間を蹴り飛ばす。すると、地面からガチャガチャのカプセルの様なものが数個飛び出した。
「カプセルロボット!」
ホウリお兄ちゃんがニヤリと笑う。瞬間、カプセルが膨張して円柱に手足が付いたような形のロボットになる。
しまった!ポケットが膨らんでないから、アタッシュケースを開けられなくすればいいと思ってた!相手がホウリお兄ちゃんだって認識が足りなかった!
「くうぅ、魔装!」
魔装を使って、思いっきり後ろに跳ぶ。
使わせないことが一番だったけど、使われちゃったら仕方ない。拳銃でロボットを破壊していこう。
ロボットの1体に向けて照準を定めて引き金に力を込める。
≪ピピ、攻撃を確認。防御モードに以降≫
弾丸が発射され真っすぐロボットに向かう。瞬間、弾丸の軌道が曲がりロボットの真上を飛んでいった。
それを見てリンお姉ちゃんのアドバイスを反芻する。
『カプロボは近距離特化のロボットよ』
『じゃあ、遠くから銃で撃てば良いんだね?』
『それがそうもいかないのよ。カプロボは空間のゆがみを発生させることで、弾丸くらいの質量であれば逸らすことが出来るの』
『じゃあどうすれば?』
『破壊する方法は主に2つ。1つは大砲くらいの質量の遠距離攻撃。もう1つは近距離攻撃よ』
今のノエルに拳銃以外の遠距離攻撃は無い。だったら、近距離攻撃をするしかないんだけど、それも気が進まない。
意味が無いと分かっていても、拳銃を発砲する。結果は変わらずに弾丸は全部ロボットから逸れて明後日の方向に向かう。
(カチン、カチン)
「……弾が切れた」
数発撃って、拳銃から弾丸が尽きる。けど、ロボットたちは歩みを止めていない。
ここは広いからいくらでも距離を取れるけど、このままだと埒が明かない。どうしよう───
「ロボットだけに構ってる場合か?」
後ろから声が聞こえた瞬間、咄嗟に振り向いてナイフを振るう。
ナイフは後ろにいたホウリお兄ちゃんの目の前を紙一重で通過する。間合いの管理が完璧すぎ!
「魔装しないと死ぬぜ!」
そう言って、ホウリお兄ちゃんが銃に変形させたexバトンを突き付けて来る。
exバトンはトリシューラみたいに青い輝きを凝縮させていく。良く分からないけど不味い!
「魔装!」
ナイフを振り切って回避も出来ないし、全力で体中を魔装で覆い衝撃に備える。
exバトンから発射されたエネルギーがノエルを襲う。
「くう……」
耐えようと踏ん張るけど、踏ん張り切れず大きく吹き飛ばされる。
「うわぁぁぁぁ!」
ダメージは無い。けど、問題はそこじゃない。
吹き飛びながら、後ろの状況を確認する。すると、そこにはロボットたちが待っていた。
ロボットたちはノエルが吹き飛んでくるのをみて、目を赤く点灯させる。
≪ピピ、目標の接近を確認。自爆モードに移行します≫
点滅が早くなっていき体が光り始める。ロボットの数は5体。魔装しててもこれだとダメージが大きい!
「ちょ、ちょっと待っ───」
≪ピピ、自爆します≫
その言葉と共に地面を揺らすほどの轟音と共にロボットが一斉に爆破した。
「ぐわーッ!」
再び爆風で再び吹き飛ばされ地面に叩きつけられる。
「痛たたた……」
魔装の防御を超えるほどの威力で、ノエルのHPが削られる。すぐセイントヒールで回復するために、魔装を解く。けど……
「そんな暇があると思うか?」
ホウリお兄ちゃんが魔装を解いた瞬間に、銃を撃ちこんでくる。
腕に命中して、骨が折れるんじゃないかという痛みを感じる。燃えるような痛みを感じながらノエルは必死に走る。
止まったら狙い撃ちにされる。今は少しでも動かないと。
そう思いつつ、走りながらセイントヒールでダメージを回復する。
「はぁはぁ……」
回復したらすぐに魔装を使ってステータスを上げる。良かった、追撃が来る前に回復が出来た。後はホウリお兄ちゃんを探して、攻撃しないと……
待って、ホウリお兄ちゃんが回復する隙を見せた?いつもなら回復する隙も無い位の猛攻をしてくる筈なのに?可笑しくない?
そこまで考えを回すと、頭上から何かが降って来た。降ってきたものを見ると、見覚えのある丸いものだった。
「不味い!」
その場を離れようと飛び退いた瞬間、exバトンを大剣に変化させたホウリお兄ちゃんが降って来た。
「隙だらけだ!」
「くう……」
ナイフに魔装して受け止めるけど、大剣の方が重く地面に叩きつけられる。
魔装のおかげでダメージは無いけど、ロボットたちの中心に着地するかたちになる。
≪ピピ、目標の接近を確認。自爆モードに移行します≫
「じゃあな」
ホウリお兄ちゃんは、靴に変化させたexバトンを履くと、エネルギーを噴射させて飛んでいった。これで、ホウリお兄ちゃんが爆発に巻き込まれることは無い。ってことは……
≪ピピ、自爆します≫
さっきと同じようにロボットの体が爆破してノエルを襲う。全力の魔装で体を守るけど、ダメージを抑えきれない。
「ぐあっ!」
再び吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。さっきと同じだと、ここで魔装を解くと撃たれてダメージを貰っちゃう。だったら、今は魔装を解かずにホウリお兄ちゃんから逃げないと。
でも何処に逃げる?周りに障害物は無いし、作ってる暇もない。しかも、ホウリお兄ちゃんは飛べるし、空からロボットを撒くことも出来る。けど、ノエルは決定打が無い。
ノエルの魔装は無限に出来る訳じゃない。全力でやると30分くらいで疲れちゃう。そうなると、攻撃も防御も出来なくなって勝ち目が無くなる。だから、すぐに決着をつける必要がある。
これはかなり厳しい。せめて、ロボットを遠くから破壊できる方法が欲しい。けど、銃は効かないし他の遠距離攻撃なんて……ん?
ノエルの頭にホウリお兄ちゃんが地面を蹴って、ロボットを出した光景が浮かんでくる。
あ、そっか。持っているものだけで、どうにかする必要はないんだ。
作戦が決まったノエルは立ち止って、飛んでいるホウリお兄ちゃんを見据える。
「その顔は作戦が決まったって顔だなー!?」
「そうだよー!」
ホウリお兄ちゃんの叫びにノエルは叫んで答える。
「じゃあ、その作戦を見せてみろ!」
ホウリお兄ちゃんが再びロボットを投下させてくる。それと同時にホウリお兄ちゃんもノエルにむかって降下してきた。
ノエルは今度は飛びのかずに、地面に両手を突き刺した。
そして、全力で地面を持ち上げるように力を込める。すると、地面が割れて巨大な岩状になって持ち上がった。
ロボットは大砲くらいの重さなら逸らせない、だったら、地面を持ち上げて投げれば良い!
「とりゃああああ!」
ロボットに向かって地面の岩を投げつける。すると、岩が命中したロボットは粉々に破壊された。
「よし!」
これでロボットは何とかなる。あとはどうにかしてホウリお兄ちゃんにダメージを……あれ?ホウリお兄ちゃんは?
ホウリお兄ちゃんなら、ノエルが地面に手を突き刺した瞬間に何をするかは分かった筈。退避しているかと思ったけど、空中にはいなさそう。だったら何処に?
そう思っていると、投げた岩が轟音と共に急に割れた。何事かと思って視線を向けると、何かが岩を砕いて真っすぐとノエルに向かっているのが見えた。
それは上半身が赤で下半身が緑のスーツに覆われた人だった。そして、それは片足でキックしながら物凄い速さでこっちに向かってくる。
「ホウリお兄ちゃん?」
「セイヤァァァァァァァ!」
叫び声でホウリお兄ちゃんだと確信し、全力で走ってその場を後にする。
岩を砕くキックをまともに食らったら魔装しててもタダじゃすまない。急いで離れないと。
ホウリお兄ちゃんが地面を蹴りぬくと同時に地面が揺れる。着地点を見てみると、クレーターになっていて、中心にホウリお兄ちゃんが立っていた。
「それって……」
「ハンドベルトとチップで変身したんだよ」
リンお姉ちゃん曰く、変身することによって身体能力が上がったり、特殊な能力を使えたりするらしい。
「変身までするとは思っていなかったぞ。強くなったな」
「まだまだこれから!今日はホウリお兄ちゃんに勝つよ!」
「その意気だ!行くぞ!」
そう言ってホウリお兄ちゃんが殴り掛かってくる。ノエルも拳で迎え撃つ。
こんな感じで30分戦った後、ノエルのスタミナ切れで訓練は終わった。
ホウリお兄ちゃんが操作する魔女にほとんどダメージを与えられず、画面の外に吹き飛ばされる勇者。何回目か分からない魔女の勝利演出が表示され、ノエルはコントローラーを投げ出す。
「勝てないよぉ~」
「ノエルちゃんは検討している方よ。私なんて1発も攻撃が当たってないんだから」
「お前らが本気でやれって言ったからな。お言葉に甘えて本気を出させてもらった」
強いだろうなとは思ってたけど、強すぎる。勝てる気が全くしない。リンお姉ちゃんも同じことを思ったのか、乱雑にコントローラーを置く。
ホウリお兄ちゃんはコントローラーも置くと、ゲームの電源を切った。
「さてと、良い時間だし戦闘訓練をするか」
「戦闘訓練?こんな時くらいは休んだら?」
「そうはいかない。5日もサボると後れを取り戻すのに1カ月はかかる」
「ノエルは大丈夫だよ!」
シュウジおじちゃんのロボットと戦った時、魔装とセイントヒールを上手く使えていれば苦戦しなかった。あんなんじゃ、フランお姉ちゃんを倒すなんて出来ない。
「ノエルもっと強くなる!」
「その意気だ」
「ノエルちゃんが良いなら、私から言う事は無いわ。で、四次元場を使うって事で良いのかしら?」
「四次元場?」
聞きなれない単語にノエルは首を傾げる。
「なにそれ?」
「クラスメイトに特殊能力を使う奴がいるって話をしただろ?そいつらの特訓をする空間だ」
「別次元にあるから地平線が見える位に広くて、どれだけ力を使っても迷惑が掛からない。そんな都合の良い空間よ」
「へぇー、ノエルの家にも欲しいなぁ」
家のお庭も広いんだけど、全力で戦うとなると少し手狭だ。なんとかして、元の世界でも使えないかな?
「悪いが、元の世界には持って帰れないからな」
「えー」
「わがまま言うな。この世界の物をあっちの世界には持っていけないんだよ」
「ぶぅぅぅ」
「ぶうたれてもダメだ」
頬を膨らませるノエルを無視して、ホウリお兄ちゃんがスマートフォンを操作する。
「これでよしと」
「ねぇねぇ、私も見ても良い?」
「別に良いぞ。ただし、危ないから中に入らずタブレットで見ろよ」
「分かってるわよ」
ホウリお兄ちゃんから大きなスマートフォンをリンお姉ちゃんに渡す。
「本気でいくから戦闘準備は念入りにしておけよ」
「はーい」
「今回はどんな手を使うつもりかしら?」
「『カプロボ』と『exバトン』と『チップ』と『ハンドベルト』を使う」
「殺意しかないラインナップなんだけど、容赦って知ってる?」
「ちゃんとノエルが勝てる程度には手加減する」
拳銃とナイフを準備していると、そんな話が聞こえて来た。
「あれ?ホウリお兄ちゃんって木刀以外の武器は使えないんじゃないの?」
「新月は天界に置いてきた。この世界であれば、他の武器も使うことが出来る」
「じゃあホウリは本気で戦えるってこと?」
「そういう事だ。言っておくが今回はきつい訓練になる。気張らないと酷い目にあうからな」
「うん」
神妙な面持ちで首を縦に振る。ホウリお兄ちゃんが「きつい」って言うってことは本当に厳しい戦いになるんだろう。
大きく深呼吸して、何か出来る事は無いか考える。弾丸の補充と、ナイフの予備と、後は───
「そうだ、ノエル」
考え込んでいると、ホウリお兄ちゃんの声で現実に引き戻された。
「なあに?」
「その格好だと戦いにくいだろ?これを着てみてくれ」
ホウリお兄ちゃんから洋服を受け取る。伸び縮みする服とズボン、それと真っ黒い上着と短パンだった。
「それを着たら四次元場に来てくれ」
「そういえば、四次元場ってどうやって行くの?」
「このスイッチを押せば行ける」
ホウリお兄ちゃんがテーブルに真っ赤なスイッチを置く。
「俺は先に行って待っておく」
「はーい」
ホウリお兄ちゃんがスイッチを押した瞬間、姿が一瞬のうちに消えた。
「これで四次元場に行けたってこと?」
「そうね」
リンお姉ちゃんが大きいスマートフォンを見せてくれる。そこには荒野みたいな所に立っているホウリお兄ちゃんが映っていた。傍らにはアタッシュケースが置いてある。
「アタッシュケースなんて持ってたっけ?」
「最初から四次元場に置いてたのよ」
「準備万端だったんだ」
ともかく、ノエルも着替えて行かないと。そう着ていた服に手を掛けたとき、とある疑問が頭に浮かぶ。
「そういえばさ、ホウリお兄ちゃんが言ってた武器ってどんな物なの?」
「exバトンは万能武器よ。銃、剣、槍、斧、どんな武器にでも姿を変えるわ」
「あれ?教えてくれるんだ?」
てっきりホウリお兄ちゃんに口止めされてると思ってた。だから、聞いたのもダメ元だったから、教えてくれるなんて思ってなかったや。
「口止めされてないわ。大方、戦う前に情報を収集できるのか、っていうテストなんじゃない?」
「なるほど、ホウリお兄ちゃんっぽい考え方だね」
「仮に口止めされてても教えるけどね。次はカプロボの説明ね」
ノエルは着替えをしつつ説明を聞く。
「カプセルロボット、通称カプロボ。ポケットに入るくらいの大きさだけど、スイッチを入れれば大きくなって遠隔操作が出来るわ────」
こうして全ての説明を聞いたノエルはスイッチを押して、四次元場へと向かった。
☆ ☆ ☆ ☆
視界が一瞬にして部屋から荒野へ切り替わる。
ホウリお兄ちゃんはノエルから10mくらい離れた所に立っていた。
「ちゃんと、凛から情報は聞いてきたみたいだな」
「えへへ」
感心したように褒められ、ノエルは頭を掻く。けど、すぐさま拳銃を抜いてホウリお兄ちゃんに向ける。
ホウリお兄ちゃんは慌てた様子も無く、アタッシュケースに手を掛ける。
「始めるか」
「よろしくお願いします!」
言うや否や、ノエルはアタッシュケースに向かって発砲した。
ホウリお兄ちゃんが使う前に武器を壊す!これがノエルが立てた作戦だ!
弾丸はアタッシュケースのカギの部分に命中し、見事に破壊した。これで武器を使うことは出来ない。
「勝った!」
「そう思うのはまだ早いな」
ホウリお兄ちゃんが地面の岩と岩の隙間を蹴り飛ばす。すると、地面からガチャガチャのカプセルの様なものが数個飛び出した。
「カプセルロボット!」
ホウリお兄ちゃんがニヤリと笑う。瞬間、カプセルが膨張して円柱に手足が付いたような形のロボットになる。
しまった!ポケットが膨らんでないから、アタッシュケースを開けられなくすればいいと思ってた!相手がホウリお兄ちゃんだって認識が足りなかった!
「くうぅ、魔装!」
魔装を使って、思いっきり後ろに跳ぶ。
使わせないことが一番だったけど、使われちゃったら仕方ない。拳銃でロボットを破壊していこう。
ロボットの1体に向けて照準を定めて引き金に力を込める。
≪ピピ、攻撃を確認。防御モードに以降≫
弾丸が発射され真っすぐロボットに向かう。瞬間、弾丸の軌道が曲がりロボットの真上を飛んでいった。
それを見てリンお姉ちゃんのアドバイスを反芻する。
『カプロボは近距離特化のロボットよ』
『じゃあ、遠くから銃で撃てば良いんだね?』
『それがそうもいかないのよ。カプロボは空間のゆがみを発生させることで、弾丸くらいの質量であれば逸らすことが出来るの』
『じゃあどうすれば?』
『破壊する方法は主に2つ。1つは大砲くらいの質量の遠距離攻撃。もう1つは近距離攻撃よ』
今のノエルに拳銃以外の遠距離攻撃は無い。だったら、近距離攻撃をするしかないんだけど、それも気が進まない。
意味が無いと分かっていても、拳銃を発砲する。結果は変わらずに弾丸は全部ロボットから逸れて明後日の方向に向かう。
(カチン、カチン)
「……弾が切れた」
数発撃って、拳銃から弾丸が尽きる。けど、ロボットたちは歩みを止めていない。
ここは広いからいくらでも距離を取れるけど、このままだと埒が明かない。どうしよう───
「ロボットだけに構ってる場合か?」
後ろから声が聞こえた瞬間、咄嗟に振り向いてナイフを振るう。
ナイフは後ろにいたホウリお兄ちゃんの目の前を紙一重で通過する。間合いの管理が完璧すぎ!
「魔装しないと死ぬぜ!」
そう言って、ホウリお兄ちゃんが銃に変形させたexバトンを突き付けて来る。
exバトンはトリシューラみたいに青い輝きを凝縮させていく。良く分からないけど不味い!
「魔装!」
ナイフを振り切って回避も出来ないし、全力で体中を魔装で覆い衝撃に備える。
exバトンから発射されたエネルギーがノエルを襲う。
「くう……」
耐えようと踏ん張るけど、踏ん張り切れず大きく吹き飛ばされる。
「うわぁぁぁぁ!」
ダメージは無い。けど、問題はそこじゃない。
吹き飛びながら、後ろの状況を確認する。すると、そこにはロボットたちが待っていた。
ロボットたちはノエルが吹き飛んでくるのをみて、目を赤く点灯させる。
≪ピピ、目標の接近を確認。自爆モードに移行します≫
点滅が早くなっていき体が光り始める。ロボットの数は5体。魔装しててもこれだとダメージが大きい!
「ちょ、ちょっと待っ───」
≪ピピ、自爆します≫
その言葉と共に地面を揺らすほどの轟音と共にロボットが一斉に爆破した。
「ぐわーッ!」
再び爆風で再び吹き飛ばされ地面に叩きつけられる。
「痛たたた……」
魔装の防御を超えるほどの威力で、ノエルのHPが削られる。すぐセイントヒールで回復するために、魔装を解く。けど……
「そんな暇があると思うか?」
ホウリお兄ちゃんが魔装を解いた瞬間に、銃を撃ちこんでくる。
腕に命中して、骨が折れるんじゃないかという痛みを感じる。燃えるような痛みを感じながらノエルは必死に走る。
止まったら狙い撃ちにされる。今は少しでも動かないと。
そう思いつつ、走りながらセイントヒールでダメージを回復する。
「はぁはぁ……」
回復したらすぐに魔装を使ってステータスを上げる。良かった、追撃が来る前に回復が出来た。後はホウリお兄ちゃんを探して、攻撃しないと……
待って、ホウリお兄ちゃんが回復する隙を見せた?いつもなら回復する隙も無い位の猛攻をしてくる筈なのに?可笑しくない?
そこまで考えを回すと、頭上から何かが降って来た。降ってきたものを見ると、見覚えのある丸いものだった。
「不味い!」
その場を離れようと飛び退いた瞬間、exバトンを大剣に変化させたホウリお兄ちゃんが降って来た。
「隙だらけだ!」
「くう……」
ナイフに魔装して受け止めるけど、大剣の方が重く地面に叩きつけられる。
魔装のおかげでダメージは無いけど、ロボットたちの中心に着地するかたちになる。
≪ピピ、目標の接近を確認。自爆モードに移行します≫
「じゃあな」
ホウリお兄ちゃんは、靴に変化させたexバトンを履くと、エネルギーを噴射させて飛んでいった。これで、ホウリお兄ちゃんが爆発に巻き込まれることは無い。ってことは……
≪ピピ、自爆します≫
さっきと同じようにロボットの体が爆破してノエルを襲う。全力の魔装で体を守るけど、ダメージを抑えきれない。
「ぐあっ!」
再び吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。さっきと同じだと、ここで魔装を解くと撃たれてダメージを貰っちゃう。だったら、今は魔装を解かずにホウリお兄ちゃんから逃げないと。
でも何処に逃げる?周りに障害物は無いし、作ってる暇もない。しかも、ホウリお兄ちゃんは飛べるし、空からロボットを撒くことも出来る。けど、ノエルは決定打が無い。
ノエルの魔装は無限に出来る訳じゃない。全力でやると30分くらいで疲れちゃう。そうなると、攻撃も防御も出来なくなって勝ち目が無くなる。だから、すぐに決着をつける必要がある。
これはかなり厳しい。せめて、ロボットを遠くから破壊できる方法が欲しい。けど、銃は効かないし他の遠距離攻撃なんて……ん?
ノエルの頭にホウリお兄ちゃんが地面を蹴って、ロボットを出した光景が浮かんでくる。
あ、そっか。持っているものだけで、どうにかする必要はないんだ。
作戦が決まったノエルは立ち止って、飛んでいるホウリお兄ちゃんを見据える。
「その顔は作戦が決まったって顔だなー!?」
「そうだよー!」
ホウリお兄ちゃんの叫びにノエルは叫んで答える。
「じゃあ、その作戦を見せてみろ!」
ホウリお兄ちゃんが再びロボットを投下させてくる。それと同時にホウリお兄ちゃんもノエルにむかって降下してきた。
ノエルは今度は飛びのかずに、地面に両手を突き刺した。
そして、全力で地面を持ち上げるように力を込める。すると、地面が割れて巨大な岩状になって持ち上がった。
ロボットは大砲くらいの重さなら逸らせない、だったら、地面を持ち上げて投げれば良い!
「とりゃああああ!」
ロボットに向かって地面の岩を投げつける。すると、岩が命中したロボットは粉々に破壊された。
「よし!」
これでロボットは何とかなる。あとはどうにかしてホウリお兄ちゃんにダメージを……あれ?ホウリお兄ちゃんは?
ホウリお兄ちゃんなら、ノエルが地面に手を突き刺した瞬間に何をするかは分かった筈。退避しているかと思ったけど、空中にはいなさそう。だったら何処に?
そう思っていると、投げた岩が轟音と共に急に割れた。何事かと思って視線を向けると、何かが岩を砕いて真っすぐとノエルに向かっているのが見えた。
それは上半身が赤で下半身が緑のスーツに覆われた人だった。そして、それは片足でキックしながら物凄い速さでこっちに向かってくる。
「ホウリお兄ちゃん?」
「セイヤァァァァァァァ!」
叫び声でホウリお兄ちゃんだと確信し、全力で走ってその場を後にする。
岩を砕くキックをまともに食らったら魔装しててもタダじゃすまない。急いで離れないと。
ホウリお兄ちゃんが地面を蹴りぬくと同時に地面が揺れる。着地点を見てみると、クレーターになっていて、中心にホウリお兄ちゃんが立っていた。
「それって……」
「ハンドベルトとチップで変身したんだよ」
リンお姉ちゃん曰く、変身することによって身体能力が上がったり、特殊な能力を使えたりするらしい。
「変身までするとは思っていなかったぞ。強くなったな」
「まだまだこれから!今日はホウリお兄ちゃんに勝つよ!」
「その意気だ!行くぞ!」
そう言ってホウリお兄ちゃんが殴り掛かってくる。ノエルも拳で迎え撃つ。
こんな感じで30分戦った後、ノエルのスタミナ切れで訓練は終わった。
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しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。
そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。
その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。
(スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)
神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~
あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。
それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。
彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。
シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。
それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。
すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。
〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟
そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。
同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。
※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
不死身のボッカ
暁丸
ファンタジー
逓信(ていしん)ギルドに所属する甲殻人ボッカ。歩荷(ぼっか=運搬人)だからボッカと素性を隠す特急便の運搬人。
小柄な身体に見合わぬ怪力、疾風のスピードと疲れ知らずのスタミナで、野を越え山越え荷物を運ぶ。
逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。
割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。
※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。
※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。
※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。
※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
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