魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第二百八十三話 木っ端微塵に消し飛ばしてやる!

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 ホウリさんからの説明を受けて、僕らは城門を抜ける。説明と言っても、『前に出過ぎないように』だったり、『決められた位置で戦うように』だったり、『死ぬな』だったり、難しい事はなかった。
 城壁を出ると、目に飛び込んできたのは地平線を覆いつくすほどの魔物の群だった。


「うわぁ、アレを相手にするんですか」
「ゴブリンにガーゴイル、レッドスライム、ブロンズウルフ。レベルは低いが、とにかく数が多すぎるな」
「レベルが低いのも最初だけだ。後から襲ってくる魔物ほど、レベルが高く強くなっていく。更に厄介になっていくぞ」


 ホウリさんが僕の隣で話します。確かに貰った資料には、シルバーウルフとかグリーンドラゴンとかも書いてあった。
 B級冒険者でようやく倒せるような強敵が何万体も迫ってくる。考えただけでも恐ろしい。


「本当に守り切れるんでしょうか?」
「俺がなんとかする。お前らは全力で戦ってこい」


 ホウリさんが自信満々に言い放つ。今はその自信が心強い。
 ホウリさんなら何とかしてくれる、そう思うと何でも出来そうだ。


「魔物は約2時間ほどで到達する。今の内に配置についてくれ」


 ホウリさんの言葉に冒険者の皆さんが街を囲むように配置についていく。
 街は壁に囲まれているとはいえ、攻撃を何度も与えられると守り切れない。出来るだけ街に近づけずに倒さないと。


「さてと、俺はそろそろ戻る。やる事が山積みなんでな」
「分かりました。後で宿で会いましょう」
「ここは私達に任せてくれ」
「頼りにしてるぜ」


 そう言ってホウリさんが街の門へと歩いていく。すると、ホウリさんが開ける前に街の門が独りでに開いた。
 そして、中から数十人の冒険者がぞろぞろと出て来た。その冒険者たちを率いているのは見知った顔の人だった。


「兄貴!?」
「ナップ?」


 僕の叫びに兄貴が手を上げて笑顔で答える。


「よう」
「どうしてここに!?王都にいるはずでは!?」
「ピンチに駆けつけるのは主人公の特権だろ?」


 そう言って白い歯を見せて微笑む。


「その後ろの人達は?」
「俺の伝手で連れて来た奴らだ。腕は俺が保証するぜ?」
「それは心強いですね!」


 兄貴の後ろにいる冒険者の人達も各々の武器を掲げ、自身の力を誇示する。見ただけで分かる、この人たちは相当の実力者だ。僕の何倍もの戦闘経験を積んできたに違いない。
 A級冒険者の兄貴とその兄貴が認めた冒険者。これは心強い援軍だ。


「良かったですね、ホウリさん」
「別にいいが、ちゃんという事を聞けよ?」
「はっ、無用な心配だな」
「そうか。じゃあ、先にこの魔物一覧を確認してくれ。次に討伐の注意点だが……」
「そんなの必要ねぇな!いくぞお前ら!」
「「「「おおおおおお!!!」」」」


 兄貴と冒険者の方々が地平線から向かってくる魔物に突撃していく。


「兄貴!?」
「おい!止まれ!」
「バカ!勝手な真似するなって言っただろうが!」


 僕とホウリさん、ミエルさんで突撃していく皆さんを止めようと叫ぶ。けど、冒険者の皆さんは全く聞かずに突撃する。


「「「「「「うおおおおおお!」」」」」」
「さっさと止まれ!その先には────」


 ホウリさんはスキルの『加速』で敏捷性を上げながら叫ぶ。



「うおおおおお……へ?」


 兄貴が間の抜けた声を上げる。瞬間、足元でスイッチが押されるような音がして……


(ドガアアアアアアン!)


 冒険者の方々を巻き込むように地雷が作動する。


「うおおおおお!?」


 兄貴たちが爆破を諸に受ける。大丈夫かと思ってヒールシュートを構えていると、黒煙の中からアフロになった兄貴たちが出て来た。


「な、なんだこれは!?」
「対魔物用の地雷だ」
「こんなの仕掛けているなら先に言え!」
「言う前に駆け出したのはお前らだろうが!」


 掴みかからんばかりの迫力の兄貴に、ホウリさんが怒声で答える。これに関してはホウリさんの言う事を聞かなかった兄貴が悪いだろう。
 そう言う思いを飲み込み、僕は弓を構えなおす。


「怪我はないですか?HPが減ってればヒールシュートで治しますよ?」
「事前に防御力を上げてたから平気だ」
「怪我しててもほっておけ。自業自得だ」
「そんな言い方はないだろ?」
「注意を聞かずに怪我をする奴に掛ける情けはない。ポーションでも飲んで大人しくしてろ」


 ホウリさんがMPポーションを兄貴に投げる。兄貴はギリギリのところでキャッチして、ホウリさんを睨みながら飲む。


「そのまま注意事項を聞け。後ろの奴らもちゃんと聞けよ?聞かない奴は魔物の群に放り込むからな?」


 ホウリさんが軽く殺気を放ちながら、皆さんを睨みつけます。その効果もあり、皆さんはホウリさんの言葉を大人しく聞きます。


「───以上だ。お前らは午前0時に交代だから、それまで気張れよ」
「午前0時……あと12時間くらいか?」
「今は人数が足りてないからな。ただし、無理だと思ったら引けよ?」
「分かってるさ。俺はA級冒険者だぜ?」


 そう言って兄貴が胸を張る。冒険者に大切なものは引き際を見極める力と言われる程、状況判断は大事だ。
 どれだけ強くても、調子に乗りすぎては早死するからね。
 ちなみに、ホウリさんに僕が一番欠けているって言われているのが、状況判断能力だったりする。……なんだか悲しくなってきた。


「今度こそ俺は行く。期待してるぜ、A級冒険者さん?」


 そう言って、ホウリさんは街への門へと歩いていく。


「おう!魔物なんか全員ぶっ潰してやるぜ」


 兄貴の言葉にホウリさんは振り向かずに手を振るだけで答える。なんだかクールでカッコイイ。


「それじゃ、僕も行きますね」
「ロワは戦わないのか?」
「戦いますよ?」
「じゃあ、どこに行くんだ?」
「街の壁の上です」


 僕は遠距離からの攻撃が得意だ。3㎞までなら僕の射程内だし、ピンチなところに矢を射れる壁の上にいるのが一番都合が良い。


「敵を射抜くことも、回復することもできますので、安心して戦ってくださいね」
「頼もしいな」
「当たり前だ。スターダストの遠距離の要だぞ?」


 なぜかミエルさんが胸を張る。けど、ミエルさんのような実力者に褒められると悪い気はしないかな。


「けどよ、あんな高い所にどうやって行くんだ?」


 兄貴は街を囲む壁を見上げる。街を守るためだけあって、30mは優に超えるほどの高さだ。高すぎて普通に登るのは無理そうなのは一目でわかる。


「普通に登るのは無理です。なら、普通に登らなければいいんですよ」
「何をする気だ?」
「これを使うんですよ」


 僕はワープアローを取りだす。刺さった場所にワープできるコレなら、苦労なく登ることが出来る。しかも、降りるときにも使えば怪我をしなくて済む。


「ワープアローか。貴重なもの持ってるんだな。というか、こんなに貴重な矢を簡単に使っていいのか?」


 兄貴がワープアローを手に取って空に掲げる。


「え?貴重?」
「これって1本10万Gくらいはするだろ?」
「へ?」
「へ?」


 僕と兄貴が揃って首を傾げる。なんだか話がかみ合っていないような?


「これって買ったんだろ?」
「いえ、僕が作ってます」
「はぁ!?作った!?」
「はい。矢のエンチャントならなんでも付与できますよ」
「なんでも?」
「はい。弓神のエンチャントです。知りませんでしたか?」
「初耳だ」


 そういえば、兄貴には弓神のことは話してなかったかも?
 僕の言葉を聞いた兄貴が顎に手を当てて考え事をする。


「どうしました?」
「なあ、実は何本か矢が必要なんだ。いくつか分けてくれないか?」
「え?兄貴って弓は使わないですよね?」
「あ、いや……俺じゃなくて銀の閃光で使うんだよ」
「銀の閃光には弓使いはいないだろう?」
「その……えっと……」


 ミエルさんの指摘に兄貴がしどろもどろになる。


「どうした?ただ理由を言うだけだぞ?」
「いや……えっと……」


 ミエルさんの追及に兄貴の目が泳ぎまくる。そんな兄貴を見たミエルさんの目は更に鋭くなる。


「まさか、ロワを金儲けに使おうとしている訳では無いだろうな?」
「そんなまさか……」


 目を反らせる兄貴にミエルさんの目力が更に強まる。


「言っておくが、ロワを金儲けに使おうとするのは許さないぞ?」
「少しくらい良いじゃねえか」
「ごめんなさい、エンチャント職人の方に悪いのでお断ります」


 エンチャントは使える人が極端に少ないスキルだ。しかも、1つ作るのに使うMPも高くて、1日に数本しか作れない。だから、エンチャントは需要に対しての供給が少なく、価値はいつの時代も高い。
 だから、僕がエンチャントを量産すると市場のエンチャントの価値が下がってしまい、職人の方に迷惑をかけてしまう。
 ちなみに、実は神級スキルのエンチャントは消費MPが99%減っている。スキル説明には何も書いてなかったけど、ホウリさん曰く『あのバカが書き忘れた』らしい。


「ちぇ、ダメか?」
「どうしてもって言うなら、ホウリさんを説得してください」
「無茶言うなよ」


 それ以上は無駄だと判断したのか、兄貴はそれ以上は何も話さなかった。


「そろそろ上に行きますね」
「ああ」
「頼りにしているぞ、ロワ」
「はい」


 ミエルさんと兄貴に見守られながら、僕は壁の上に向かって矢を引き絞る。
 そして、壁の頂点付近に狙いを付けて放つ。ワープアローが壁の側面に刺さり、僕と矢の位置が一瞬で入れ替わる。


「よっと」


 僕は壁の頂点に手を掛けて、一気に登る。登ってみて初めて分かってけど、この壁はかなり分厚い。幅が5mはありそうだ。
 これなら矢を置いておいても問題ないかな。
 アイテムボックスのアイテムを全部取り出して、壁の上に広げる。
 用意した矢は約500本。考えも無く射続けたら、すぐに矢が尽きちゃう。射るべきところを見極めないと。
 壁の上から地平線を眺める。魔物の軍勢がさっきよりも近づいている。あと30分もすれば、冒険者の人達と激突するだろう。
 街の下を見ると、街を囲むように冒険者の人達が配置されている。ミエルさんなどの前衛が前に、魔術師などの後衛は後ろにいる。オーソドックスな布陣だ。いくらミエルさんや兄貴がいるとはいえ、ずっと抑え込むのは厳しいだろう。だからこそ、危ないところは僕が援護しないと。
 とはいえ、まだ時間はある。何かしておくことはないだろうか?矢でも複製しておこうかな?
 そう思って、僕は矢筒から矢を取り出そうとして、傍にあるアタッシュケースに気が付く。


「そういえば、トリシューラって何本あったっけ?」


 ヤマタノオロチ相手に2本は使った記憶はある。あれから補給してないから8本はあるはずだ。
 アタッシュケースを開けると、ちゃんと8本あった。けど、下手にトリシューラを使ったら冒険者の人達まで巻き添えにしそうだ。考えて使わないと。
 そう思いつつ、矢の複製を始める。やれることはやっておかないとね。
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