魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第三百三十一話 だが、これでいい!

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 矢を手に入れた僕は更にミントさんに叫ぶ。


「次の矢を手配してください!」
「そう言うと思って既に手配してある。君は目の前の相手をなんとかしたまえ」


 流石はミントさんだ。僕が言うまでもなかったみたいだ。


「あとは、手持ちの矢で5分くらいは持たせないとね」


 今の手持ちの矢をフルに使っても、ミノケンタウロスは倒せないだろう。だけど、ダメージくらいは与えられる筈だ。


「まずは動きを止めないと」


 ライトニングボルトは効果が薄い。だとしたら他の矢を使わないと。


「範囲攻撃じゃなくて一点集中ができる矢の方が良いかな」


 そう思いスピニングアローを手に取る。瞬間、右から気配を感じて咄嗟に後ろに跳ぶ。
 すると、僕の目の前をシルバーウルフが通り過ぎ去っていった。シルバーウルフの歯が間近に見ながら、僕は冷や汗を流す。
 そうだ、僕はミノケンタウロスだけじゃなくて、無数の魔物も相手しないといけないんだ。ミノケンタウロスだけならなんとかなりそうだけど、雑魚も多いのは厄介だ。


「けど、やるしかない」


 まずは雑魚の数を減らして、ミノケンタウロスに集中できるようにしよう。
 スピニングアローから手を離して、クラウドショットを取り出す。


「くらえ!」


 クラウドショットを魔物の群れに向かって放つ。矢は先端から裂けて複数の矢に分裂して、十数体の魔物を光の粒へと変えた。


『もおおおおお!』


 僕が矢を放った瞬間に、ミノケンタウロスは僕に向かって走って来た。
 周りに魔物がいなくなって動きやすくなった。迎撃するなら今だ。


「スピニングアロー!」


 今度こそスピニングアローをミノケンタウロスに放つ。
 秒速1000回転の矢がミノケンタウロスの首筋に真っすぐと飛んでいく。ミノケンタウロスの弱点はケンタウロスと同じく首筋だ。そこをスピニングアローで貫けば勝てる。
 だが、ミノケンタウロスも相当賢い。そのことは分かっているだろう。


『ぶも!』


 そうはいかないと、ミノケンタウロスが笑った気がした。
 ミノケンタウロスは斧でスピニングアローを軽々と切り裂いた。やっぱり正面からの攻撃じゃ効果は無い。だから、


「それは囮だよ!」


 立て続けに放っていた矢がスピニングアローの後ろから、ミノケンタウロスに向かって飛んでいく。
 斧を振り切っているミノケンタウロスは、立て続けに迫ってくる矢に対処できずに諸に直撃する。


『ぶも!?』
(ドガアアアン!)


 矢は命中した瞬間、轟音を立てて爆発した。イクスアロー、命中した瞬間に爆発する矢だ。
 トリシューラ以外で僕が出せる威力が高い矢だ。流石のミノケンタウロスでもあれをまともに受けたら無傷とは行かないでしょ。
 そう思っていると、爆破の黒煙が徐々に晴れてミノケンタウロスの様子があらわになってきた。


『ぶもおおおおおお!』


 さっきよりも顔が赤くなっていて怒っているのが分かる。だけど、顔は焦げていて血も出ている。攻撃は少しは効いているみたいだ。


「だとしたら、これを続けていけば首筋を狙わなくても倒せる」


 弱点である首筋は簡単には狙えないだろう。だけど、ダメージを通せるのなら、他の部位を攻撃し続けることでも倒せる。少しだけ希望が見えて来た。


「あとは矢を補給しつつ攻撃してダメージを与えていくだけだ」


 ミノケンタウロスのHPがどれくらいかは分からないけど、倒せないってことはないだろう。
 そう思って次の矢に手を伸ばす。瞬間、ミノケンタウロスに異変が起こった。


『ぶもおおお……』


 ミノケンタウロスの体を緑の光が包む。すると、ミノケンタウロスの傷が徐々に回復していった。
 目を丸くしていると、ミノケンタウロスの後ろから、とある魔物がゆっくりと現れた。
 そいつは円柱状の体に目玉だけがついている不気味や奴だった。体は金属のような光沢を放っていて空中に浮いている。


「あれってヒールビット?」


 ヒールビットは珍しい回復を行う魔物だ。ドロップ品も高価な物だし、攻撃もしてこないから専用のハンターがいるらしい。
 けど、今の状況でヒールビットはかなり厄介だ。折角ダメージを与えても回復されるんだったら、ミノケンタウロスを倒すことが出来ない。


「だったら、ヒールビットを先に倒すだけだ!」


 矢を矢筒から引き抜いて、ヒールビットに狙いをつける。
 ヒールビットのHPは高くない。矢がクリーンヒットしたら1撃で倒せるはずだ。


「いけっ!」


 放った矢がヒールビットに向かって突き進む。よし、ヒールビットは避ける気配が無い。このままいけば……


(ピーン)


 再び弦をはじくような高い音が聞こえた。すると、ブロンズウルフの一匹が矢とヒールビットの間に割って入って来た。
 矢はブロンズウルフに命中し光の粒へと変える。ヒールビットへ矢は届かなかった……。


「だったらもう一度!」
『ぶもおおおお!』



 再びヒールビットへ矢を放とうとしたが、ミノケンタウロスが大斧を振るっているのに気が付いて後ろに下がった。


「マズイな。これじゃ、ヒールビットを攻撃することが出来ない……」


 ミノケンタウロスや他の魔物がヒールビットを守っている。このままだとミノケンタウロスを倒すことが出来ない。
 あと、僕の中で1つの疑問沸き上がってきた。


「あの音は何なんだろう?」


 弦をはじくような音、あれが鳴ってから魔物の動きが変わっている気がする。ウルフ系の魔物はそもそも、命がけで他の魔物を守るようなことはしない筈だ。つまり、矢の間に割って入ることは無い筈。
 けど、あのブロンズウルフは身を挺してミノケンタウロスを守った。
 原因として考えられるのはあの音。あの音が鳴ったら魔物は普通じゃない行動をするとか?でも、なんだかしっくりこない。


『ぶもっ!』
「おっと!」


 ミノケンタウロスの大斧を紙一重でしゃがんで躱す。
 危ない危ない。考え事をしていたら攻撃に反応しきれないところだった。
 とにかく、このことは僕が考えても分かりそうにない。後でホウリさんにでも報告しよう。


「今は目の前の魔物に集中しないとね」


 ヒールビットがいる以上、ミノケンタウロスを倒すには首筋を狙うしかない。もしくは、ヒールビットを倒した後にミノケンタウロスを攻撃するかなんだけど、どちらの方が実行できそうか。


「ヒールビットを倒す方が簡単かな」


 ミノケンタウロスは素早く狙いが付けにくい。賢いから首筋を狙うのも難しいだろう。だったら、遅くて脆いヒールビットを狙う方が良いだろう。
 問題は他の魔物の妨害を受けながらどうやって攻撃するか。真っすぐ攻撃しても他の魔物が盾になる。かなり厄介だ。


「ん?真っすぐ攻撃しても?」


 だったら、真っすぐ攻撃しなければいいんじゃないかな?うん、これならいけそうだ。


「だとしたら、まずは……」


 僕は向かってくるミノケンタウロスに向かって矢を放つ。しかし、矢はミノケンタウロスの大斧に呆気なく弾かれる。


「まだまだ!」



 僕は立て続けに矢を放つ。だけど、矢は全て大斧に空中に弾かれて威力を失う。
 ダメだ、ここからだと角度が悪い。もっと場所を調整しないと。
 僕は動きまわりながら、丁度いい位置を探る。


「……ここだ」


 位置を見つけた僕は再びミノケンタウロスに向かって矢を放つ。


『ぶもおお!』


 ミノケンタウロスはさっきと同じように矢を弾きながら、僕に接近してくる。
 矢はさっきと同じような軌道でミノケンタウロスの頭上に吹き飛ばされる。そして、


「かかったね!」


 吹き飛ばされた矢の1本が空中からヒールビットに向かって飛んでいった。


『ぶも!?』


 ミノケンタウロスは驚いた様子で振り向く。矢は他の魔物に妨害されることも無く、ヒールビットに向かって飛んでいき目玉に突き刺さった。
 HPが0になったヒールビットは光の粒へと変わりながら、後ろに倒れていった。
 このエンチャントはアクセラレート。矢の運動エネルギーを0にして、5秒後に再び運動エネルギーを発生させるエンチャントだ。
 このエンチャントを使って、大斧で弾かれる前に運動エネルギーを0にする。そして、空中で再び運動エネルギーを発生させれば相手の不意を突ける訳だ。上手くいって良かったぁ。


「そして!まだ終わりじゃないよ!」


 ミノケンタウロスはビックリして振り向いている。つまり、僕から視線を外している訳だ。
 僕はミノケンタウロスに近づきつつ、無防備な首筋に向かってスピニングアローを放つ。


「終わりだ!」
『ぶも!?』


 ミノケンタウロスも僕の接近に気が付いたみたいだけど、大斧での防御は間に合わずに諸に受けてしまう。


『ぶ、ぶもおおお!』


 ミノケンタウロスは大斧を持っていない手でスピニングアローを引き抜こうとする。


「その手は前に見たよ!」


 僕はスピニングアローを押し込むように、別の矢を放つ。すると、スピニングアローは更に深く刺さっていた。これで矢を引き抜くのは間に合わない筈だ。


『ぶもおおおおおおおお!』


 ミノケンタウロスもそれを悟ったのか、道連れと言わんばかりに大斧を振りかぶる。
 薙ぎ払われた大斧は僕の鼻先まで来て……


『おおおぉぉ……』


 ミノケンタウロスが先に力尽きて大斧は止まった。
 ミノケンタウロスは横に倒れ伏し、そのまま光の粒へと変わっていった。


「ふぅ、なんとか勝てたや」


 相手が賢くなかったら、ヒールビットを攻撃されてもお構いなしで突っ込んできただろう。相手が賢くて良かったってところかな。


「っと、そうだ。まだ終わってないんだよね」


 僕は次の矢を取り出して周りに注意を向ける。周りには残った魔物たちがいる。
 強敵を倒したのに雑魚にやられちゃ、ホウリさんに怒られちゃう。油断せずに気を引き締めていこう・
 そんな感じで僕のたった一人の防衛戦は続くのだった。
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